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2025年1月 4日 (土)

今年も「グレーゾーン」を大切に(年初のご挨拶)

1月4日の全国紙一面はどれも「バイデン、日鉄・USスチール買収中止命令」の記事ばかりでした。昨年2月の「2023年度第3四半期決算説明会」の質疑応答では「政治家に反対されてクロージングできないのではないか」との質問に対して、日鉄さんは「米国はデュープロセスを大事にする国で、我々はそのデュープロセスを踏んでいる。また、我々もそうであるように、米国は透明性が非常に保たれた国だと思っている。」と回答しておられました。おそらくCFIUSが最終判断を大統領に委ねて、政治的合理性によって結論が出されるとは予想もしていなかったのではないでしょうか(私自身は、まだ決着がついていないと考えておりますが)。今年6月までに許認可がおりない場合には、日鉄側に違約金の支払義務が生じる・・・というのも、ちょっと納得いかないところではありますが。

本件に象徴されるように、今年は日本企業の経営環境において、さらに不確実性が高まるものと予想いたします。こんなVUCAの時代だからこそ、人間の種族保存本能として、X(Twitter)やインスタ、YouTubeのようなSNSによる「直感で白黒をハッキリさせる」ことに適したメディアへの依存度がますます高まるものと思います。SNSをもとに、直感による判断の9割は(たとえ二次情報だとしても)正しいでしょうから、生きていくためには誰もが白か黒か(何が事実なのか)、何が正義なのか、短時間で(他人の意見を参考にしながら)判断したい気持ちはとても理解できますし、それ自体は悪いことではないと思います。ただ、1割程度は大数の法則やベイズの定理、平均への回帰等、過不足ない資料に基づいて、自分の頭で考えないと最適解に到達できない問題もあるのではないでしょうか。

たとえば事実認定においても、またどこに正義があるのか、といった評価においても、おそらく無数の「グレーゾーン」があるわけでして、黒に近いグレーもあれば、真っ白に近いグレーもあり、そのグレーゾーンを探ることによって重要な経営判断も変わるはずです。そういった認定や評価のためには、自分が一次情報を取得したり、恥ずかしい失敗から反省したり、自分の知見で調べたり、他人と協議をする必要がありますね。企業の危機対応にしても、再発防止策の検討にしても、またガバナンス・コード対応についても、企業の置かれた環境と、その企業の組織風土によって最適解が異なるわけですから、グレーゾーンを洞察することへの関心を常に持ち続けていたい。さらに、上記バイデン氏の判断と同様、経営判断は理屈だけで変わるはずもなく、それ以外の「何らかの力学」によって変わるわけでして、そこに光を当てたい。そのような姿勢を少しでも、このブログで表現していきたいと思います。本年もよろしくお願いいたします。

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