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2024年12月 5日 (木)

公益通報者保護制度検討会-高い「経団連の壁」だがそれよりも・・・

短めですが、1週間ぶりのブログ更新です。各メディアが伝える通り、公益通報者保護法の実効性検討会も終盤となりまして、最終報告書の全容が示されつつあります(たとえば産経ニュースはこちらです)。通報者への不利益処分に刑事罰が導入されることや民事紛争の際に立証責任が転換されること等を含めて、実務にも影響を及ぼす改正意見報告になります。

刑事罰導入の対象となる「不利益処分」については経済団体の強い意見もあって、(個人的には残念ですが)解雇、懲戒処分のみとなりそうであり、今回も経団連をはじめ、経済団体の方々のご意見が通りそうです。企業実務への影響の大きさを考えるとご意見はごもっともですが、本当に高いハードルですね。立法事実をさらに重ねなければ、この先に進むことはむずかしそうです。

昨日の検討会における私の発言も(日経ニュースにて)紹介されていますが、もうここまで来ますと一番の懸案事項は「報告書の改正要望を政府は真摯に受け止めて、改正法案を国会に上程してもらえるか」ということです(もう、自分の意見が盛り込まれなかったことを嘆く段階ではありません)。消費者庁の公益通報者保護法改正チーム(事務局)の皆様による多大な尽力でここまで来れたので、この努力をなんとか形にしたいと思います。

それにしても「法改正」というのは近くで眺めていると本当にむずかしい作業だと実感します。国会議員、他省庁、そして法制局の壁を乗り越えるための根回しが不可欠でして、理屈だけではなくて、改正に向けた「機運」とか、政治的背景とか、省庁間での「貸し借り」への配慮が必要ですね。あと「ここで法案を通さないと、もう一生変わらない」くらいの熱意がないと実現しないのかもしれません。

委員間でいろいろな意見の相違はありましたが「成果物を法案につなげたい」という気持ちは一緒です。ここからは、なんとか改正法成立までの難関を乗り越えるために、できるだけの協力をしたい、と思います。

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コメント

山口先生 おはようございます。本当にお疲れ様です。少しPCの画面が霞んでしまい家族に嗚咽が聞こえないよう歯を食いしばってキーを打つのが精一杯です。日弁連での鳳鳴春での会食が思い出されます。これが現実なのですね。消費者団体の皆様と短い期間ではありましたが熱い議論をさせていただいたのが懐かしく思い出されます。

投稿: サンダース | 2024年12月 5日 (木) 06時49分

山口先生
お疲れ様です。下記のような記事を目にしました。公益通報者保護法の実効性を問う重大な事案として注目せざるを得ないように感じます。
寒い日が続きますので、ご自愛くださいませ。
>匿名公益通報に「氏名教えて」 執拗に迫った警視庁 「大川原」冤罪
スクープ

要約
警視庁による匿名公益通報への実名強要問題が明らかに

2023年に発生した「大川原化工機」冤罪事件に関連し、匿名で公益通報を行った警視庁の警察官に対し、警視庁人事1課が執拗に身分を明かすよう迫っていた事実が報じられました。
公益通報者保護法は匿名での通報を可能としていますが、人事1課は通報窓口として受理した後、通報者に電話連絡を求め、実名の開示を強要しようとしたとのこと。

記事では、通報者がメールでのやり取りを希望したにもかかわらず、人事1課が強硬な態度を崩さなかった経緯や、公益通報の重要性が詳細に取り上げられています。
※ 通報窓口の人事1課は、警察官の懲罰を担当する監察部門を持つ。

投稿: たか | 2024年12月24日 (火) 19時40分

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