電子楽器
電子楽器
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/23 00:59 UTC 版)
管弦楽において電子楽器・電気楽器が使用されることも近代以降では多い。 主にフランスの作曲家がオンド・マルトノを好んでオーケストラ内で用いた。オネゲルの『火刑台上のジャンヌ・ダルク』やケクランの『燃ゆる茂み』などがその初期の試みとして挙げられる。メシアンは『神の現存のための3つの小典礼楽』をはじめ、代表作『トゥランガリーラ交響曲』ではピアノと並んでソリストとして、そしてオペラ『アッシジの聖フランチェスコ』においては3台のオンド・マルトノを使用している。 エレキギターやエレキベースは主に、映画音楽などの劇伴音楽やポピュラー音楽などにおいて、オーケストラあるいは吹奏楽の中で使われるが、例えばラッヘンマンのオペラ『マッチ売りの少女』などのような作品の中でも用いられている。 オーケストラの生演奏に合わせて、録音された音源を同時に演奏することも行われる。その最初期の例としては、レスピーギの交響詩『ローマの松』において、ナイチンゲールの鳴き声を用いたことが挙げられる。現代においては、例えばラウタヴァーラの「鳥とオーケストラのための協奏曲『北極詩篇(極北の歌)』」で、全編において鳥の声の録音テープがオーケストラの演奏と同時に再生される。 シュトックハウゼンが多用したように、オーケストラ全体の音色をマイクで入力し、リングモジュレーターなど初期のシンセサイザーで変調・加工してスピーカーから出力し、オーケストラと共に用いることもある。 電子音響技術とオーケストラが密接に結びついた例として、IRCAMの研究が挙げられる。演奏行為と密接に結びつく電子音楽の活用の試みが行われており、これをライブエレクトロニクスと称する。初期には4Xというコンピュータが使われ、ブーレーズはこの技術を用いて代表作の一つ『レポン』を作曲している。 1970年代には、コンピュータ技術の支援による音響の分析結果に基づく生楽器のオーケストレーションの作品が多く生まれた。中でもスペクトル楽派と呼ばれる一群の作曲家たち、特にグリゼーの代表作『音響空間』が挙げられる。 1980年代にはコンピュータや電子キーボード楽器のMIDI制御によるテープ録音を伴い、シンセサイザーの各種エフェクトなどを経て奏者の任意のタイミングによって再生し、アンサンブルやオーケストラと共演するという試みが多く行われた。サーリアホやハーヴェイなどの作品にそれらの技術使用が見られる。 1990年代以降はリアルタイム音響制御ソフトMax/MSPにより、ライブエレクトロニクスはより身近なものとなった。IRCAMを中心として多くの作曲家がこの技術を用いており、ソロ、室内管弦楽(主にアンサンブル・アンテルコンタンポランの演奏会では多く用いられる)からオーケストラやオペラに至るまで、ライブエレクトロニクス技術は幅広く用いられている。近年では特に前述のサーリアホが2つのオペラ『遥かな愛』(2000年)と『アドリアナ・マーテル』(2006年)において、それぞれ合唱を舞台裏に配置し、マイクで拾った音を元に会場全体の多くのスピーカーに空間配置して移動音響として用いるなど、あからさまな電子音響だけではなく様々な場面で管弦楽においてライブエレクトロニクス技術が援用されている。
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