かく‐り【隔離】
隔離
隔離
【概要】 感染症の予防のためには感染源から遠ざけることが一つの方法である。感染源をもっている人まるごとを、接触の機会を減らすために特別な施設に収容すること。
【詳しく】 詳細がわからない時代や場所では考え得る。現行の感染症予防法で、"強制隔離"が必要なものは、強い伝染力と有効な治療薬や予防薬のないエボラ出血熱、ラッサ熱、マールブルグ病、クリミア・コンゴ出血熱、ペストに限定されている。必要に応じて入院命令のものはコレラ、細菌性赤痢、腸チフス、パラチフス、ポリオ、ジフテリアであり、O157などの腸管出血性大腸菌感染症は就業制限の処置となる。入院患者で他の患者と接触を遠ざけるという意味の隔離が行われるものとしては、MRSA感染症、水痘がある。
《参照》 感染予防
隔離
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/11/02 23:04 UTC 版)
隔離(かくり)とは、あるものを他とへだてて離すこと。医療政策としては感染症のまん延防止や精神障害の治療、危険防止のために行われることがある。
概説
医療政策としての隔離には医療施設への隔離や自宅への隔離などがある。
感染症のまん延防止を目的とする伝染病床(日本の現行法では感染症病床)や精神障害の治療を目的とする病床などを特殊病床という。隔離するために設けられる病棟を隔離病棟(isolation ward)という。
一般病床の場合には基本的に患者個人が病気による苦しみを除去しようとする意思により利用が開始される[2]。これに対して特殊病床は主に社会的目的を第一義に設置されたものである[3]。そのため、例えばかつて感染症患者が収容された隔離病舎や隔離所などでは治療も満足に実施されず収容者にとってはむしろ危険が増すものであった[3]。
特殊病床は公衆衛生上「隔離法」をとる有効性が確かであるという前提のもと、患者の発生を把握し、隔離に強制力を整えることができれば一定の効果をあげることができる[2]。隔離法は感染症の機序や治療法が明らかでない時代には最も効果的な方法とされていた[4]。一方で特殊病床には社会的目的や手段が変化することで盛衰を生じるという特徴があり、抗生剤などの医療技術の進歩により隔離法をとる必要がなくなれば、人権保障の観点からも特殊病床での対応から一般病床での対応に組み込まれるようになるため特殊病床数は減少する[2]。
各国の法制度
日本
感染症病床
日本では古くから感染症の流行はあったが、1874年に制定された医制でも医務取締や戸長への届出義務などがあるだけで公衆衛生政策は明確ではなかった[4]。しかし、1870年代にコレラが大流行したため明治政府は急性伝染病対策に乗り出した[4]。
1877年、内務省の「虎列剌病予防法心得」で患者の届出や避病院の設置が定められた[4]。
1895年、勅令第14号(伝染病予防上必要諸費ニ関スル件)では府県知事は命令で、避病院、隔離病室、隔離所の費用を市町村に負担させることができると定めた[4]。
1897年、伝染病予防法により避病院は伝染病院に改められ、市町村は地方長官の指示に従って伝染病院、隔離病舎、隔離所または消毒所を設置することとされ、その諸経費は市町村の負担とされた[4]。
1999年、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律により伝染病院は廃止され、かつての伝染病床は感染症指定医療機関の隔離病棟の感染病病床が担うことになった。
精神病床
精神科における隔離は、治療上、静穏な環境で安静を保つ必要がある場合、自殺のおそれがある場合、他人に危害を加えるおそれがある場合、感染症の場合などに行われる。
精神科において隔離室への入室手続きは、精神保健福祉法第36条第3項に基づく場合、第37条に基づく場合、患者本人の申し出による場合の3通りがある。
- 第36条第3項に基づく場合:精神保健指定医の診察により行われ、時間制限はない。
- 第37条に基づく場合:精神保健指定医以外の医師の診察により行われ、12時間までの制限がある。
- 患者本人の申し出による場合:上記の手続きが別に行われない限り、本人の申し出により、自由に退室できる。
なお、隔離室は、保護室と俗称されることがある。
米国
感染症対応の個人の隔離を含む公衆衛生対策は、一次的には自治体及び州政府が決定権をもつとされており州法が制定されている[5]。
- テキサス州健康安全法第81条 - 保健当局は公衆衛生災害の宣言された地域内での検査、観察、隔離、治療、または管理措置等が可能[5]。
- フロリダ州法(Fla. Stat. §381.00315) - 州保健担当官は公衆衛生緊急事態宣言が出された場合は感染症の検査、予防接種、治療、隔離等が可能[5]。
- メリーランド州法(Md. Code Ann., Pub. Safety§ 14-3A-02) - 州知事は公衆衛生緊急事態宣言が出された場合は隔離指示等が可能[5]。
自宅隔離(自己隔離)
重症急性呼吸器症候群(SARS)や、2019年-2020年の新型コロナウイルス感染症の拡大に際して、自宅隔離(自己隔離、Self-isolation)も感染を抑制するものとして各国で推奨された。
シンガポール
シンガポールの感染症法では、重症急性呼吸器症候群(SARS)感染者と接触した者に対しては10日間自宅に強制隔離される[6]。
脚注
- ^ “感染を絶つため 発症者が自ら入り死を待つ墳墓が18世紀ロシア南部の村にあった:東京新聞 TOKYO Web”. 東京新聞 TOKYO Web. 2024年11月2日閲覧。
- ^ a b c 猪飼周平 2010, p. 241.
- ^ a b 猪飼周平 2010, p. 240.
- ^ a b c d e f 猪飼周平 2010, p. 242.
- ^ a b c d 平川幸子「日本と米国の公衆衛生緊急事態対応の比較分析」『公共政策志林』第6巻、法政大学公共政策研究科『公共政策志林』編集委員会、2018年3月、231-247頁、doi:10.15002/00014467、ISSN 2187-5790、NAID 120006455069、2021年12月12日閲覧。
- ^ 奥野克巳『帝国医療と人類学』春風社、2006年、17頁。ISBN 4861100623。 NCID BA76048278 。
参考文献
- 猪飼周平『病院の世紀の理論』有斐閣、2010年。ISBN 9784641173590。 NCID BB01684693 。
- 猪飼周平「病院の世紀の理論」東京大学 博士論文 (経済学)、乙第17440号、2011年、NAID 500000551295。
関連項目
隔離
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/12/06 13:52 UTC 版)
「香港植民地史 (1800年代-1930年代)」の記事における「隔離」の解説
自由貿易港を創設することで、その始めから香港を主要な貨物集散地とし、香港人を同様に中国やヨーロッパから魅惑していた。人種隔離政策が残り、イギリスの植民地政策や姿勢の為に方向付けていた。イギリスで教育を受けた中国人上流階級が19世紀後半までに増えたにもかかわらず、山頂区保留条例のような人種法によりヴィクトリア・ピークのようなエリート地域に中国人は住めなかった。多数派を占める中国人は、初期の段階では公務員になる機会は殆どなかった。しかし、例外的に何啓卿や何啓東のような人物もいた。香港の階層制度における自らの立場を受け入れ、政府と中国人の主要な橋渡し役を演じた。何啓卿は立法会の非公式議員であった。何啓東は香港が1911年の中国の最後の王朝が滅亡してからの新しい家であることを中国市民に認識して欲しかった。財政肥大化による億万長者として香港の人口を占めるのは、純粋な先住民ではないことを強調した。
※この「隔離」の解説は、「香港植民地史 (1800年代-1930年代)」の解説の一部です。
「隔離」を含む「香港植民地史 (1800年代-1930年代)」の記事については、「香港植民地史 (1800年代-1930年代)」の概要を参照ください。
隔離
「隔離」の例文・使い方・用例・文例
- 隔離して
- 隔離を解いて
- 隔離病棟
- その馬はベネズエラウマ脳脊髄炎のため隔離された。
- そのホテルは、以前は隔離病院として使われていました。
- その現場にいた者たちは当局に一週間、隔離させられた。
- 私は隔離されていた。
- 細菌などから隔離するため、面会謝絶となっています。
- 私は人種隔離に反対だ。
- 私たちは、一人の患者を残りの患者から隔離した。
- モントゴメリーのバスは人種隔離が行われていた。
- その伝染病患者は他の患者から隔離された。
- コレラに感染した人は直ちに隔離された.
- 隔離患者.
- 彼は赤痢で 1 週間隔離された.
- 隔離中である[検疫済みである].
- 人を隔離する.
- 病気の子供を集団の他の子供から隔離する.
- 隔離室[病棟].
- 伝染病だから隔離しなければならぬ
品詞の分類
- >> 「隔離」を含む用語の索引
- 隔離のページへのリンク