金属ALD
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/19 08:12 UTC 版)
脱離反応による金属ALDは一般的に金属フッ化物などのハロゲン元素で官能基を持った金属がシリコンプリカーサと反応して起こる。フルオロシランを使った金属成膜としては、タングステンやモリブデンが一般的である。これらの金属を使った脱離反応は発熱性が高いためである。タングステンALDでは、最終パージ前には基板表面はSi-HとW-Fで構成されており、プリカーサABの各反応サイクルごとに直線的なデポレートが観察される。タングステンALDの典型的なサイクルあたり成長率は4〜7オングストロームであり、典型的な反応温度は177℃〜325℃である。タングステンALDにおいて、2つの表面反応、及びALDの全プロセスを以下に示す。その他のALD金属成膜も基本的にフルオロシラン脱離反応であれば同様の反応順序である。 表面での主な反応: WSiF2H* + WF6--> WWF5* + SiF3H (7) WF5* + Si2H6 --> WSiF2H* + SiF3H + 2H2 (8) 全体のALD反応: WF6 + Si2H6 --> W + SiF3H + 2H2 ∆H = -181kcal (9) ALD反応メカニズムの要約 ALD種類 温度領域 プリカーサ 反応体 アプリケーション 触媒 ALD >32 ℃ルイス塩基触媒による 金属酸化物 (例 TiO2、ZrO2、SnO22) (Metal)Cl4, H2O High-k誘電層、保護層、反射防止層、等 Al2O3 ALD 30–300 ℃ Al2O3、金属酸化物 (Metal)Cl4, H2O, Ti(OiPr)4, (Metal)(Et)2 誘電層、 絶縁膜、太陽電池表面パッシベーション等 金属 ALD熱化学反応 175–400 °C 金属フッ化物、有機金属類、触媒金属類 M(C5H5)2, (CH3C5H4)M(CH3)3 ,Cu(thd)2, Pd(hfac)2, Ni(acac)2, H2 導通路、触媒表面、MOSデバイス ポリマーへのALD 25–100 °C 一般的なポリマー(ポリエチレン、PMMA、PP、PS、 PVC、PVA等) Al(CH3)3, H2O, M(CH3)3 ポリマー表面機能付与、複合材料合成、 拡散防止膜など 粉体ALD ポリマー粉末: 25–100℃、 金属・合金粉末:100–400℃ BN、ZrO2、カーボンナノチューブ、ポリマー粉末 個々の粉末粒子にコーティングするため、流動層反応装置が用いられる。 保護膜・絶縁膜コーティング、光学的・機械的特性調整、複合材構造形成、導電媒体 単一元素のプラズマ・ラジカル ALD 20–800 ℃ 純金属 (例:Ta、Ti、Si、Ge、Ru、Pt)、金属窒化物(例:TiN、TaN等) 有機金属類、MH2Cl2、トリス(ジエチルアミド)(tert-ブチルイミド)-タンタル(V) (TBTDET), ビス(エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム(II)、 NH3 DRAM構造、MOSFET及び半導体デバイス、キャパシタ 金属酸化物及び窒化物のプラズマ ALD 20–300 °C Al2O3、SiO2、ZnOx、InOx、HfO2、SiNx、TaNx サーマルALDと同様
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