酒乱
酒乱
酒乱
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/01 04:03 UTC 版)
酒乱(しゅらん)は、飲酒をきっかけに異常な興奮状態となり、粗暴な発言をしたり、無意味または理不尽な暴力を振るったりするなどの問題行動を起こすこと、またそれを起こす人のことである。意識障害の一種で、このような行為に及ぶ人が必ずしも多量に飲酒しているわけではなく、人によっては少量の飲酒でもこのような行為に及ぶこともある。時間が経過し、酔いがさめれば過去の発言や暴力行為を記憶していないことも多い。
概要
飲酒により、大脳皮質が麻痺することにより道徳的な規範などが守れなくなる。酒乱の基盤や誘因には、体内のアセトアルデヒド脱水素酵素およびアルコール脱水素酵素の遺伝子型[1]のほかアルコール依存症、脳器質性障害、ストレス、肉体疲労などが挙げられる。アルコールの血中濃度に対応しない著しい興奮や幻覚などの精神症状を伴うため、Binderの酩酊分類では単純酩酊とは異なり異常酩酊(病的酩酊)として分類される。善悪の判断のつかない状況で、事故や事件を生じさせる危険性が高いため、断酒をすることが勧められる[2]。
帝京科学大学の眞先敏弘『酒乱になる人、ならない人』(新潮新書)2003年によれば、酒乱になりやすい要因には、環境的なものと遺伝的な要因とがあるという。
歴史上の人物
- 福島正則 - 泥酔中に母里友信を挑発した結果、名刀・日本号を取られた逸話が「黒田節」として伝わる。また、酒に酔った勢いで家臣の柘植清右衛門を切腹に追い込み、翌朝に目覚めて号泣した逸話が「武功雑記」に残る。
- 稲葉通重 - 美濃清水藩藩主であったが、酒乱による乱暴行為により改易。
- 溝口政親 - 越後沢海藩藩主であったが、家臣より酒乱として訴えられ改易。
- 芹沢鴨 - 新選組局長であったが、角屋での暴挙など酒席での乱暴を働く。後に泥酔時に暗殺される。
- 黒田清隆 - 開拓長官時代、酔って小樽市沖合の船上から大砲を撃ち沿岸の民家を破壊して死者を出すなど。
- 梶井基次郎 - 酒に酔った勢いで焼き芋・甘栗屋の釜に牛肉を投げ込み、親爺に追い駆けられたり、中華そば屋の屋台をひっくり返したり、乱暴狼藉を働いた[3]。
- 中原中也 - 普段はおとなしかったが、酒に酔うと罵詈雑言が飛び出した。初対面の太宰治を前に「青鯖が空に浮かんだような顔をしやがって」と絡んだ[4]。
脚注
- ^ “原因は遺伝子? 酒乱になる人とならない人、何が違う”. 日経gooday. 2018年7月23日閲覧。
- ^ “e-ヘルスネット 酔い方の異常”. 厚生労働省. 2018年7月23日閲覧。
- ^ 外村繁「梶井基次郎に就いて」(評論 1935年9月号)。別巻 2000, pp. 62–63に所収
- ^ 檀一雄『小説 太宰治』岩波現代文庫、40頁。
関連項目
酒乱
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/15 08:08 UTC 版)
22歳のとき、『白痴群』の同人の村井康男、阿部六郎と酒を飲んだ帰り、沿道の家の外灯を傘で叩き壊した。家の主人の町会議員は3人の後をつけ、交番につきだしたが、村井と阿部は教師だったため5日で釈放された。しかし身分がはっきりしない中也は15日間も留置された。警官への恐怖が後まで残ったという。 青山二郎は死別した夫人の弟にバー「ウィンゾア」を出店させていた。常連は小林秀雄、井伏鱒二、大岡昇平ら若い文人たちだったが、中也が毎日顔を出し、誰かれかまわず絡んだり喧嘩をふっかけるので、1年でつぶれてしまった。 坂口安吾は「ウィンゾア」で中也と知り合った。中也はお気に入りの女給が安吾と親しいのが気に入らず、いきなり殴りかかったが、大柄な安吾から少し離れたところから拳を振り回しているだけだったので、安吾は大笑いした。 大岡昇平は『白痴群』の同人会で酔った中也に殴られたことがあった。他にも中村光夫は「お前を殺すぞ」と言われビール瓶で殴られたことがある。 吉田秀和は著書の中でレコードを購入した後に余った金で酒を飲もうとする中也を無理やり自宅へ連れて帰り、共に音楽に耳を傾けたエピソードを記している。 太宰治は同人誌「青い花」を創刊するにあたり、檀一雄や中也を誘った。東中野の居酒屋で飲んでいると中也は「青鯖が空に浮かんだような顔をしやがって」「お前は何の花が好きなんだい」と絡みだし、太宰が泣き出しそうな声で「モ、モ、ノ、ハ、ナ」と答えると、「チエッ、だからおめえは」とこき下ろした。「青い花」は1号で終わり、太宰は「ナメクジみたいにてらてらした奴で、とてもつきあえた代物じゃないよ」と中也を拒絶するようになったが、中也の死に対して太宰は「死んで見ると、やっぱり中原だ、ねえ。段違いだ。立原は死んで天才ということになっているが、君どう思う?皆目つまらねえ」と才能を惜しんでいる。
※この「酒乱」の解説は、「中原中也」の解説の一部です。
「酒乱」を含む「中原中也」の記事については、「中原中也」の概要を参照ください。
「酒乱」の例文・使い方・用例・文例
- あの人は酒乱だ
- >> 「酒乱」を含む用語の索引
- 酒乱のページへのリンク