榎本流とは? わかりやすく解説

榎本流

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/10 06:35 UTC 版)

角頭歩戦法」の記事における「榎本流」の解説

米長次に角頭の歩を突いた戦法用いたのが榎本というアマチュア棋士後手番で用いたもので、加藤治郎他『将棋戦法事典』(大修館書店1985年)によると、▲7六歩に△2四歩と、榎本流なら4手目の△2四歩を2手目早めていることが判明する。なぜならこのあと先手が▲2六歩なら、後手は△3四歩。この局面前掲とすっかり同じとなるからである。 これについては、この戦法他流試合には格好心理戦法の側面があり(後述)、2手目4手目の角頭の歩突きでは、どちらがより大きく相手感情を動かすかということ示している。 角頭の歩を突く時期は、坂田初手から数えて3手目米長流も早くて3手目初手から数えてわずか3手目4手目に、いきなり奇手現われているが、先手での角頭歩は、榎本流のように相手角道をあけてないことで角交換不能なため、仮に、阪田流向かい飛車坂田流向かい飛車)で1手目に上手△2四歩なら、下手に▲2六歩と突かれてたちまち不利になるし、米長流も初手▲8六歩では後手に△8四歩と突かれて、同様に形勢悪化させてしまう。いくら早い方が相手を驚かすからといっても、先手でいきなり初手角頭の歩を突くことはできない加藤が榎本流角頭歩突き戦法存在知ったのが1967昭和42)年の正月で、これを当時将棋連盟機関誌将棋世界同年九月号、同十月号に発表する。これは同年八月の末、元祖である榎本から手紙頂いて本人からの解説掲載した榎本によると、「阪田流、角頭歩突き戦法は香落で角道をあけると角の素抜きにあうため仕方なく指した手ですが、私の場合相手を有利と楽観させてのち、一挙に終盤戦持ってゆく烈しいねらいを秘めている積極戦法なのです」「序盤戦二手目に△2四歩と突かれ相手がこれに向ってこないようでは、おそれていると笑われてもしかたがないのです。△2四歩と突くときは考えて効果がありません。△2四歩としてから相手表情それとなく観察すると、眼は二倍ぐらい開かれ首をひねり、気味悪そうに考えてます。なかには突き違えたのだろうと、△2四歩をわざわざ△3四歩と直してくれる親切な人もいたくらいで、序盤間合いのとり方には大変苦労するのです。」とし、間合いをはかる、相手表情で心の動きキャッチするなど、心理戦手法まで解説。また手紙解説されるまで、榎本流の手順も▲7六歩△3四歩▲2六歩△2四歩のように、角頭の歩突き四手目と考えていたが、榎本の手紙の解説によって、角頭歩突きは▲7六歩△2四歩と二手目と判明する正確に先手初手に▲7六歩と角道をあけた場合は、後手(榎本流)は二手目に△2四歩と突く、先手初手に▲2六歩と飛先の歩を突いた場合に、後手は一応△3四歩とし、先手の▲7六歩を待って四手目にはじめて△2四歩と突く、である。 また榎本は「先手意を決して▲2六歩と指してきたら、次の手をすぐに指していけません早く指すと返って警戒されてダメです。いかにも困ったような渋い顔をして1分ぐらい考え振りをしなければ効果がでません。△3四歩▲2五歩△同歩▲同飛と進んだとき、少し時間をかけなければならないのです。なぜなら時間をかけるほど、相手表情ゆるんでくるからです。その顔も△8八角成▲同銀△3三桂と進むと多少締まります。が、そのうちと金できることがわかるので、それほどには締まらないのです。」と、時間の使い方、渋い顔の演技相手表情観察など、心盤両面秘技公開している。 榎本氏文中で「と金ができるので」と指摘したのは、▲2一飛成△2二飛▲同竜△同銀、もしくは▲2三飛成△2二飛▲2四歩△2三飛▲同歩成△4五桂局面である。 またこの戦法榎本は随分と戦ったようであるが、△同銀の局面にはほとんどならないという。「それは先手有利さ大方消えてなくなる感じがするためでないかと思います。で、大体は△4五桂跳ね局面へと進みます初手から数えてわずかに十六手目ですが、これからはもう終盤戦です。後手と金作られていますが、先手居玉歩切れ傷手で、後手攻めやすい局面です。」ほかに、1五角攻めてくる場合もあるが、これは以下▲1五角△4四角▲7七銀△1四歩▲2四角△2二飛となり、「先手不利になります。」 そして榎本は「形勢混沌としていますが、私のもっとも好きな局面でほとんど勝ってます。先手が一番ひっかかり易いのは早逃げの▲6八玉です」以下▲6八玉△2五飛▲2四飛△5七成▲同玉△3五角。▲4八玉なら△2四角▲同と△2九飛成。▲4六角なら△2四角▲同角△6二玉。で両方とも後手たしかに優勢になることになる。さらに「▲6八玉のほかに、▲3三角や▲2一飛と攻めてくる人もあります。が、いずれの場合も△6二玉と上がって後手がほとんど必勝となりますいままで経験では、両局面以下三十手ないし五十手ぐらいの短手数勝負決まっています」という。 榎本将棋世界掲載年の五月中旬日本将棋連盟道場で、プロ棋士に香落で試みてみたという。また加藤はこの榎本流超珍戦法存在教えられてからしばらくして大内延介本戦法を示したところ、大内は「実は数年前、真剣にこの戦法研究したことがあるのです」と告白した同時にいろいろな変化逆に示したという。

※この「榎本流」の解説は、「角頭歩戦法」の解説の一部です。
「榎本流」を含む「角頭歩戦法」の記事については、「角頭歩戦法」の概要を参照ください。

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