導電性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/04 01:00 UTC 版)
実験結果から、グラフェン中の電子の移動度は、室温で15,000 cm2V-1s-1と驚くほど高い。加えて実験から電気伝導度が対称であることが分かっており、これは電子とホールの移動度がほぼ同じであることを示唆している。移動度が10 Kから100 Kの範囲で温度にほとんど依存しないことから、格子欠陥が散乱の主な原因であると思われる。グラフェン中の音響フォノンによる散乱のために、室温での移動度は200,000 cm2V-1s-1(キャリア密度が10-12cm-2のとき)に制限されるが、これに対応する抵抗は10-6Ω・cmである。この値は、室温での抵抗が最も小さい物質である銀よりも小さい抵抗値である。しかし二酸化ケイ素基板上のグラフェンでは、室温でグラフェン自身の音響フォノンによる散乱よりも、基板の光学フォノンによる電子散乱の影響が大きく、移動度は40,000 cm2V-1s-1まで制限される。 ディラックポイント近傍ではキャリア密度がゼロであるにもかかわらず、グラフェンは 4 e 2 / h {\displaystyle {4e^{2}}/h} のオーダーの最小電気伝導度を示す。この最小電気伝導度の起源はいまだにはっきりしていない。しかし、グラフェンシートを引きはがしたり、SiO2基板にイオン化した不純物を混入したりすることで、キャリアの水溜りを局在させることができ伝導するようになる。いくつかの理論は、最小伝導度が 4 e 2 / h Π {\displaystyle {4e^{2}}/{h\Pi }} であることを説明するが、ほとんどの推定は 4 e 2 / h {\displaystyle {4e^{2}}/h} かそれ以上のオーダーである上、不純物の濃度に依存する。 最近の実験により、化学的ドーパントがグラフェン中のキャリアの移動度に影響を与えることが証明されてきている。Schedinらは、さまざまな気体種(あるものはアクセプターとなり、あるものはドナーである)をグラフェンにドーピングし、真空中でグラフェンをゆっくりと加熱することにより、ドープ前のグラフェン構造が再現することを発見した。Schedinらは、ドーパント濃度が1012cm-2を超える場合でも、キャリアの移動度には目立った変化は無かったと報告している。Chenらは、超高真空・低温でカリウムをグラフェンにドープし、予想通りカリウムイオンがグラフェン中で荷電不純物として振舞い、移動度を20-foldほど減少させることを発見している。グラフェンを熱してカリウムを除去することにより、減少した移動度は元に戻すことが可能である。
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