先頭形状
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/19 08:24 UTC 版)
「新幹線N700系電車」の記事における「先頭形状」の解説
N700系の先頭形状 N700系の先頭形状 N700系先頭車の開発にあたっては、300 km/h運転を実現しつつも700系など従来からの16両編成車と同じ運用が可能となることが主な目的とされた。ノーズ部長さは10.7 mで、700系ノーズ部の9.2 mより1.5 m長い(先頭車全長は両者とも27.35 m)。ワシが翼を広げた形に見えることから「エアロ・ダブルウイング形」と呼ばれる。 「エアロストリーム形」と呼ばれている700系先頭車は、トンネル微気圧波を抑えるためには「車両の断面積を一定の割合で変化させる先頭形状が最も有効」という、当時としては最良と考えられていた理論のもと、連結器や運転台などに必要な容積を加味して設計されている。しかし、最高速度を285 km/hから300 km/h(山陽区間)へと引き上げた場合、700系の先頭形状ではトンネル微気圧波による騒音が約1.26倍になってしまう。東海道新幹線走行時と同等の騒音レベルにするためには、小断面部分の長さが13 m必要と試算された。 しかし、前述のとおりN700系の設計に当たっては「従来からの16両編成車と同じ運用が可能となる」という要件を満たす必要があり、客室スペースを犠牲にして小断面部を伸ばすと先頭車の定員が減少してしまう一方、定員を確保するために先頭車の全長を伸ばすと、車両限界や建築限界に抵触するほか、従来車に合わせて設計された車両基地や駅のホームでの運用に問題を生ずる。特に行き止まり式の東京駅などでは大規模な改修を余儀なくされる。そこで、先頭車両の形状デザインの再検討が行われ、コンピュータによる理想的な断面積の増加割合の計算結果と、運転士など4人が乗ることのできる運転台、連結器などの必要な部分のスペース確保を考慮して最終的な先頭形状が決定されている。 N700系の先頭車は、遺伝的アルゴリズムを使用し、約5000パターンのコンピュータシミュレーションの結果から決定された。先頭部は横方向にウイング断面の形状をしており、飛行機でいう水平尾翼的な役目を持たしている。また、運転室を中心した部分はエッジを持たせることにより同じく飛行機でいう垂直尾翼的な役目を持たしている。この形状は、最後尾車になった際に空気を整流することにより、走行中の動揺を抑える効果をもたらす。その為、先頭車の先端部分では断面積の増加割合を大きくしているため、700系よりも先端部の形状が丸みを帯びている。またこれだけでは万全ではないため、両先頭車の屋根高さを可能な限り低くし、断面を小さく抑えている。これらの施策により、トンネル微気圧波のピークを700系と同程度に分散させることに成功している。 また、N700系の先頭形状の決定はコンピュータシミュレーションの結果からのみではなく、実際に乗務する運転士の意見も参考にされた。具体的には、前照灯の視認性や、運転台のモニターに映りこむ陽光の排除などで、運転席の内装も含め、近年増えている女性運転士にも配慮されている。ワイパーと作業用取っ手についても音源探査試験を行って位置と形状が決定されている。「エアロ・ダブルウイング形」の先頭部から続く部分にある、乗務員室扉両側のつかみ棒は車体内部に埋め込まれており、70 km/h以上になるとふさぎ板で自動的に閉じられ面一となるほか、1、16号車の博多、東京寄りの客用ドアをプラグドアにするなど、パンタグラフ形状の簡素化や「全周ホロ」の導入、車両全体の平滑化などの改良に加えて、先頭車にも徹底した騒音対策が講じられている。
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先頭形状
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/22 10:21 UTC 版)
0系先頭部 N700系先頭部 一般に、高速車両の先頭部の形状の決定には空気力学に基づく要素が重要となる。先頭形状が影響する空力的な現象には、走行中の空気抵抗、列車すれ違い時の圧力変動、列車通過時の列車風、空力音による騒音、トンネル微気圧波などがある。新幹線車両も、走行抵抗低減のために空気抵抗が少ない流線形の先頭形状が採用されている。すなわち、車両の先端を尖らせ、徐々に滑らかな曲線で広がりながら通常客室部分の形状に移っていくような形状である。このような先頭形状を「鼻」や「ノーズ」と呼んだりもする。このように空気抵抗低減を目指した結果、初期の新幹線車両の0系や200系の先頭形状は旅客機の機首に似た形状となった。 一方、新幹線の高速化を進める中で、上記の問題の内、トンネル微気圧波が特に問題となってくる。100N系の設計上の最高速度は270 km/hであったが、微気圧波の問題のためこの速度での営業走行は断念された。また、200系で275 km/h走行を開始するときにも微気圧波が問題となった。微気圧波の抑制のためには、先頭部の鼻の部分を長くして、先端部から通常客室部分までの断面積が少しずつ大きくなっていくような形状が有効である。トンネルの多い山陽新幹線で300 km/h運転を達成した500系ではこのような設計が徹底され、先頭車両の車両長の内の3/5を先端部が占めるようになっている。このような長い先頭部採用と視界及びスペース確保を両立させるため、運転台は飛行機の操縦席のようなキャノピー型となっている。 500系の車両の3/5に及ぶ先頭部の長さは、速度向上の成功の要因とはなったが、運転席背後の客室扉の廃止やデッキの廃止、客室面積の減少などの問題も引き起こした。このため、微気圧波の対策を取りつつ先頭部長さもできるだけ小さくする研究が、スーパーコンピュータによる解析や風洞実験を通じて進められ、先端部における断面積の変化率を小さくする以外にも断面積の変化率を一定にすることが有効であることが判明した。この知見はE1系の開発で最初に取り入れられた。また、鉄道車両の特徴として往復運転を行うので、先頭部が最後尾に位置する場合の空力特性も考慮する必要がある。上記の2点を考慮して改善を重ねた結果、700系では「エアロストリーム」と呼ばれる先頭形状が開発、採用された。これにより、300系と同じ客室面積と座席配置の確保と、運転席背後の客室扉の維持が達成されている。700系をベースにした800系も、一見の先頭部形状は700系と異なるが、断面積変化率は700系と同じに保たれている。 最高営業速度285 km/hの700系から300 km/hのN700系を開発するにあたっては、エアロストリーム型でも不十分だったため、さらに先頭部形状の研究が進められた。遺伝的アルゴリズムも取り入れて最適な先頭部形状を割り出し、エアロストリーム型よりも更に3次元的に複雑な形状となった「エアロ・ダブルウィング」と呼ばれる先頭部形状が開発された。このエアロ・ダブルウィング型の採用により、300系、700系と同じ客室面積、扉配置の維持ができている。 系列0系100系300系500系700系800系N700系営業運転開始 1964年 1985年 1992年 1997年 1999年 2004年 2007年 新幹線車両の先頭部長さ(先端から全断面まで) 3.9 m 4.8 m 6 m 15 m 9.2 m 9.2 m 10.7 m 系列200系400系E1系E2系E3系E4系E5系・H5系E6系E7系・W7系営業運転開始 1982年 1992年 1994年 1997年 1997年 1997年 2011年 2013年 2014年 新幹線車両の先頭部長さ(先端から全断面まで) 3.9 m 9.4 m 9.1 m 6 m 11.5 m 15 m 13 m 9.1 m
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