エンジンの構成
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/02 09:58 UTC 版)
「シトロエン・2CV」の記事における「エンジンの構成」の解説
強制空冷水平対向2気筒OHVのガソリンエンジンを、車体前端にオーバーハングして搭載された。一見農業用発動機のように簡素で騒々しい代物ながら、その実きわめて高度な内容を備える緻密な設計であり、主要部分はガスケットなしで組み立てられている。設計者のワルテル・ベッキアは、前職のタルボ社在籍時には高性能車用のハイスペックエンジンを設計していた人物である。 ベッキアがエンジンを空冷式としたのは、1930年代~1940年代の水冷エンジンにおいて冷却系統の不調がしばしばエンジントラブルの原因となっており、またTPV試作初期に搭載されたモーリス・サンチュラ設計の水冷エンジンが寒冷時のコールドスタートを困難としていたためである。更に軽量化、簡略化の効果も狙った。空冷方式の採用に限らず、このエンジンからはトラブルの原因となる要素は努めて排除され、基本的に故障しにくい構造になっている。 気筒数は快適さを損なう手前の極力まで減らされた2気筒で、BMWなどのオートバイエンジンなどを参考にし、コンパクトで一次振動の心配のない水平対向式を採用した。材質は1940年代としては先進的なアルミ合金を用いて軽量化、燃焼室は高効率な半球式で、バルブのレイアウトは吸排気効率の良いクロスフロー型とした(半球型燃焼室とクロスフロー型弁配置は、当時、レーシングカーに採用される技術であった)。エンジン前方に大きなファンを直結し、エンジン全体を冷却する。なおかつエンジン直前に置かれたオイルクーラーも同時に冷却される設計である。 通常のレシプロエンジンでは、ピストンからの動力をクランクシャフトに伝えるコンロッドは2ピースの分割式として、ボルト留めでクランクシャフトに脱着するようになっている。 ところが2CV用エンジンでは、コンロッドはクランク穴の空いた一体式として、工場で窒素冷却した組み立て式クランクシャフトを圧入してしまうやり方を取った。これで強度と工作精度を高めようという大胆不敵な発想である。クランクシャフトとコンロッドは分離不能となるが、現実にはほとんど分離を要さないので、これでもよいと割り切られた。 点火機構もトラブル排除のため徹底簡素化・単純化され、確実な作動と長期のメンテナンスフリーを実現している。クランクスローは180度であるが、点火は1回転毎の左右等間隔ではなく、2回転毎に左右シリンダーが同時点火される。更に、排気行程のピストン上死点時にも両シリンダーのプラグが「捨て火」とも言うべき空のスパークを発生する構造である。エンジンのトルク確保の面ではやや不利であるが、単純化優先でこの手法を採用した。2CVエンジンのフライホイールが大きいのは、この同時点火に対する回転円滑化の一策である。
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