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「政治家のレベルが下がったというより、国民の要求レベルが上がった」というごもっともな話/ほか -原田泰『日本はなぜ貧しい人が多いのか』を再び読む-
原田泰『日本はなぜ貧しい人が多いのか』(2009年)をまた読む。
著者は、日本は、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカ、のように、生活保護の給付水準を引き下げて、生活保護を受ける人の比率を高くすべきだ、という(96頁)。
イギリスやフランス、ドイツの生活保護総額の対GDP比は、それぞれ、4%、2%、2%なのに対して、日本は0.3%。
代わりに、日本は生活保護受給者の総人口比率が0.7%しかいないが、イギリスだと16%、フランスだと2.3%。ドイツだと、5%。(「第65回「日本の奇妙な生活保護制度」原田泰氏 大和総研」)
まず単純にいって、生活保護にかける金額が少なすぎ、日本!!
当然増やすべきだろう。
次に、生活保護の受給者の総人口比率も少なすぎる。
当然広くあげるべきだろう。
仮にフランスの基準に合わせると、日本の生活保護総額を対GDP比にすると、単純計算して、総人口比、2.1%位の人には受給できるようになる。
その分、一人当たり受給金額が下がる可能性もあるわけだが(著者は、諸外国は日本に比べ2割くらい安い、と述べている)。
ただ、日本の生活保護費の総額は、医療費が結構占めていたはずで、この辺、諸外国はどうなんだろ(この辺曖昧です orz)。
日本における不平等の問題。
少なくとも90年代以降の場合、正社員になれない若者層が増大して、将来的にそういった人々が年功賃金を得られにくい、という側面がある(101頁)。
個人への所得再分配が少ないのも、その不平等を助長する。
これが最も大きい。
公共工事入札をめぐる知事の汚職も、昔なら問題にならなかっただろう。
談合や汚職などは大昔からあり、政治家の失言だって、今に始まったことじゃない(146頁)。
公職に就く人の資質が低下したのではなくて、求められている基準が上昇した。
ただし著者は、そのように厳しく見ることは、悪いことじゃない、というふうにいっている。
ひたすらに、ごもっとも。
もし消費税を上げるなら、その税収は家族対策に使うべきだと著者は言う(149頁)。
もう高齢者向けの社会保障支出は先進諸国に比べても、十分ある。
それに、家族対策に使えば、子供も増えて、将来の担税力を増やせる。
子供が増えなくても、今の子供に使えば、将来彼らに増税しても、まだ公平。
(ここでいう、家族対策とは、医療費であり、児童手当であり、失業手当であり、職業訓練費用であり、住宅手当のこと)
高齢者向けの社会保障を減らして家族対策に使え、というアホな主張よりも、はるかにマトモ。
日本で生産性を高めるという議論をするとき、既存の産業の生産性をどう高めるのか、という議論はあるけど、アメリカの生産性の高さは、生産性の低い産業は輸入に置き換える、という面が大きい(184頁)。
アメリカの場合、造船業と列車製造業がほとんどない。
アメリカでは、船や列車は、輸入して、航空機だけ生産して輸出している。
だから生産性が高い。
比較優位を上手く利用しまくって、アメリカの生産性がある。
逆に言うと、生産性の低い産業を、輸入に置き換えない限り、生産性は上がりづらい、ってことか orz
日本は80年代から、ずっと経済に構造問題を抱えていて、それなのに、4%の成長をしている。
じゃあ、なぜ、90年代の成長率は低下したのか。
どう考えても、経済の構造問題が原因じゃないだろ、と著者は言ってる(208頁)。
ごもっとも、というほかなし。
著者曰く、金融緩和をやって、需要を増大させ期待インフレ率を上昇させれば、市中金利を上昇させられる(247頁)。
短期的には、金融緩和→コールレート低下→マネーストック増大→市中金利低下。
だが、この金利低下によって、設備投資などの実物資産の購入は刺激され、物価は上昇し、長期的には市中金利は上昇する。
もし金融緩和をしても民間がお金を使わないなら、政府や中銀が実物資産を買い取って物価を上昇させる、という手法も存在する。
市中金利を引上げたい日銀は、まず、金融緩和をすべきなのである。普通に。
(追記 2012/9/26)
コメ欄にマヌケなコメントがあって、メンドクサイから消してしまったけど、やっぱり応答しておこう。
「日本は生活保護受給者の総人口比率が0.7%」云々の出典はどう考えても、原田先生の当該書以外ない、ということを、このコメント主は理解していないらしい。
あと、本書は2009年に出た書物なのだから、当然この比率は2009年以前のものであって、「生活保護受給者、211万人に 過去最多を更新 2012/9/13 14:50」のj-castの記事と比較するのは、どう考えても間抜けである。
いやまあ、本書とこのブログの記事の時点では時間的に隔たりがあって、その間に生活保護受給者の数は増えているから(この記事参照)、その点ではこっちにも非はあると思うけど、でもそれを差し引いてなおも、当該のコメントはマヌケである。
・・・仮に211万人になったとしても、総人口比率から言えば、1.6%前後に過ぎないないわけで、まだまだ事態は変わってないと思うんだけどね。
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著者は、日本は、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカ、のように、生活保護の給付水準を引き下げて、生活保護を受ける人の比率を高くすべきだ、という(96頁)。
イギリスやフランス、ドイツの生活保護総額の対GDP比は、それぞれ、4%、2%、2%なのに対して、日本は0.3%。
代わりに、日本は生活保護受給者の総人口比率が0.7%しかいないが、イギリスだと16%、フランスだと2.3%。ドイツだと、5%。(「第65回「日本の奇妙な生活保護制度」原田泰氏 大和総研」)
まず単純にいって、生活保護にかける金額が少なすぎ、日本!!
当然増やすべきだろう。
次に、生活保護の受給者の総人口比率も少なすぎる。
当然広くあげるべきだろう。
仮にフランスの基準に合わせると、日本の生活保護総額を対GDP比にすると、単純計算して、総人口比、2.1%位の人には受給できるようになる。
その分、一人当たり受給金額が下がる可能性もあるわけだが(著者は、諸外国は日本に比べ2割くらい安い、と述べている)。
ただ、日本の生活保護費の総額は、医療費が結構占めていたはずで、この辺、諸外国はどうなんだろ(この辺曖昧です orz)。
日本における不平等の問題。
少なくとも90年代以降の場合、正社員になれない若者層が増大して、将来的にそういった人々が年功賃金を得られにくい、という側面がある(101頁)。
個人への所得再分配が少ないのも、その不平等を助長する。
これが最も大きい。
公共工事入札をめぐる知事の汚職も、昔なら問題にならなかっただろう。
談合や汚職などは大昔からあり、政治家の失言だって、今に始まったことじゃない(146頁)。
公職に就く人の資質が低下したのではなくて、求められている基準が上昇した。
ただし著者は、そのように厳しく見ることは、悪いことじゃない、というふうにいっている。
ひたすらに、ごもっとも。
もし消費税を上げるなら、その税収は家族対策に使うべきだと著者は言う(149頁)。
もう高齢者向けの社会保障支出は先進諸国に比べても、十分ある。
それに、家族対策に使えば、子供も増えて、将来の担税力を増やせる。
子供が増えなくても、今の子供に使えば、将来彼らに増税しても、まだ公平。
(ここでいう、家族対策とは、医療費であり、児童手当であり、失業手当であり、職業訓練費用であり、住宅手当のこと)
高齢者向けの社会保障を減らして家族対策に使え、というアホな主張よりも、はるかにマトモ。
日本で生産性を高めるという議論をするとき、既存の産業の生産性をどう高めるのか、という議論はあるけど、アメリカの生産性の高さは、生産性の低い産業は輸入に置き換える、という面が大きい(184頁)。
アメリカの場合、造船業と列車製造業がほとんどない。
アメリカでは、船や列車は、輸入して、航空機だけ生産して輸出している。
だから生産性が高い。
比較優位を上手く利用しまくって、アメリカの生産性がある。
逆に言うと、生産性の低い産業を、輸入に置き換えない限り、生産性は上がりづらい、ってことか orz
日本は80年代から、ずっと経済に構造問題を抱えていて、それなのに、4%の成長をしている。
じゃあ、なぜ、90年代の成長率は低下したのか。
どう考えても、経済の構造問題が原因じゃないだろ、と著者は言ってる(208頁)。
ごもっとも、というほかなし。
著者曰く、金融緩和をやって、需要を増大させ期待インフレ率を上昇させれば、市中金利を上昇させられる(247頁)。
短期的には、金融緩和→コールレート低下→マネーストック増大→市中金利低下。
だが、この金利低下によって、設備投資などの実物資産の購入は刺激され、物価は上昇し、長期的には市中金利は上昇する。
もし金融緩和をしても民間がお金を使わないなら、政府や中銀が実物資産を買い取って物価を上昇させる、という手法も存在する。
市中金利を引上げたい日銀は、まず、金融緩和をすべきなのである。普通に。
(追記 2012/9/26)
コメ欄にマヌケなコメントがあって、メンドクサイから消してしまったけど、やっぱり応答しておこう。
「日本は生活保護受給者の総人口比率が0.7%」云々の出典はどう考えても、原田先生の当該書以外ない、ということを、このコメント主は理解していないらしい。
あと、本書は2009年に出た書物なのだから、当然この比率は2009年以前のものであって、「生活保護受給者、211万人に 過去最多を更新 2012/9/13 14:50」のj-castの記事と比較するのは、どう考えても間抜けである。
いやまあ、本書とこのブログの記事の時点では時間的に隔たりがあって、その間に生活保護受給者の数は増えているから(この記事参照)、その点ではこっちにも非はあると思うけど、でもそれを差し引いてなおも、当該のコメントはマヌケである。
・・・仮に211万人になったとしても、総人口比率から言えば、1.6%前後に過ぎないないわけで、まだまだ事態は変わってないと思うんだけどね。