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    黄色い種と映画




    サビ男サビ女 :: 2011/08/01(Mon)

    金属の「錆び」でも、わびさびの「さび」でも無く、音楽の「サビ」。
    AメロBメロを飛ばしていきなりサビから入ってしまうような
    普通の人から見ると一見突発的な行動を取る彼らだが、本人からしてみれば一生懸命やっているだけ。
    周りの人間を何が何でも励ましたくなる『ハゲマシガールズ』、
    目立たない男子が好きな女子と仲良くなるために女装に走ってしまう『Boy? meets girl.』、
    電気代滞納で電気を止められた女がとことんクレームをつけていく『くれえむないと!』、
    可哀想な猫を拾ってきてしまう癖のある主婦が今度はリストラされ行き場を無くした中年男たちを拾ってきてしまう『せびろやしき』、
    4本の作品で編成されたオムニバス映画である。

    サビ男サビ女

    2011年1月15日公開
    【監督】
    藤田容介 松梨智子 呉美保 関口現 筧昌也
    【脚本】
    藤田容介 松梨智子 吉川菜美 関口現
    【出演】
    桜庭ななみ 中村蒼 友近 小泉今日子 川村エミコ(たんぽぽ) 白鳥久美子(たんぽぽ)
    中村倫也 杉村蝉之介 荒川良々 蓮佛美沙子 草野イニ
    福田転球 森下能幸 堀部圭亮 田中哲司



    この作品のテーマである「サビ」。
    それはAメロBメロをすっ飛ばして、サビに突入してしまうような人間のことを指しているようですが
    序章をすっ飛ばして生きているというテーマが、短編の映画に合っていて
    短編のオムニバス映画が好きな私には結構ツボに入る作品でした。

    桜庭ななみちゃん主演の『ハゲマシガールズ』は、落ち込んだり困ってる人、奮闘している人を見ると
    励まさずにはいられないチアガールの女の子のお話。
    4本の中では、この作品と小泉今日子さんが主演の『せびろやしき』がお気に入りなんですが…

    チアガールであるハゲマシガールズを演じる3人は桜庭ななみちゃんと、お笑い芸人のたんぽぽのお2人。
    脇を固めるたんぽぽのお2人は特徴のある顔の芸人さんですから…、ななみちゃんの可愛さがより引き立つこと…
    そんなハゲマシガールズの中でもリーダーシップを発揮するななみちゃん演じるチハルは、他の二人からも尊敬されるような優等生タイプな女子。
    世の中の曲がったことを嫌い、がんばる人をただひたすらに応援し続ける。
    でも、なんだか最初から無理な感じのあるチアガールのななみちゃん。(かわいいんだけどネ)
    あの微妙なノリのダサいチアダンスで元気が湧く人は果たしているのだろうか。でも、それが面白いんだけど。
    誰からも頼まれていないのに困っている感じの人を見つけると、ユニホームに着替えいきなり踊り始めるハゲマシガールズ。そして周りからキョトーンという顔をされてしまう始末。

    そんな突拍子もない行動を起こす彼女ですから、いろんな苦節があり、最後のオチが最高に笑えました。
    いかにも自分勝手で意地悪そうなサラリーマンを演じている村杉蝉之介さんが絶妙。
    喫茶店?のマスターを演じていた荒川良々さんのいい人と不気味さが入り混じったような雰囲気もおもしろかったし。
    なにより、桜庭ななみちゃん、よくぞここまでやってくれた。
    「シネーシネー!星村ー!」の応援最高でした。
    この作品を観て思ったのは結局、誰かのためになろうなんてお門違いもいい所なんじゃないかということ。
    誰か困ってる人を応援するのも全ては自分のため。
    ただひたすらに自分の役目を果たすことが、後々人に勇気を与えるということになるのかも…?
    綺麗事なしですんごいシュールだけど、妙な勇気が湧いてくる作品でした。

    2本目の中村蒼くんと蓮佛美沙子ちゃんの『Boy? meets girl.』は
    中村蒼くんの女装がちょっと無理がありすぎて、作品自体とっつきにくかったです。
    そもそもあんなくっきりした顔立ちの爽やかイケメンな彼が、クラスの誰からも相手にされない空気みたいな存在っていう設定に無理があったような気もしますが。
    そんな中村蒼くんが夢中になるクラス一の美少女を演じた蓮佛美沙子ちゃんも、クラスで一番の綺麗な子っていう設定は納得できるものの、カメラに夢中になってる少女という設定に無理があって
    持ち方から獲り方すべてにおいて素人感が丸出しで、あのウソ臭さが逆にさわやか美少女を演出していたのかもしれないけど。最初からつっこみたくなってしまいました。
    結局は2人とも、普通の人間からは理解できない突発的な行動をとる変わった者同士で仲良く。めでたしめでたし。といったところでしょうか。

    3本目の『くれえむないと』は35歳独身OLを演じた友近さんが怖すぎて鳥肌者でした。
    ああいう女性、リアルにいますよ…
    もともとは自分の行いのせいなのに、他人のせいしてクレームをがんがん付けて行き、
    さらには、自分の巣にかかった獲物を誘惑し掴んだら離さない。毒を持った友近に捕まってしまう福田転球さんの冷や汗がこれまたリアル~。
    これを見ると女と言う生き物が悲しくなっちゃいますね。
    コントでもリアルにいそうなお芝居をされる友近さんですから、そのリアルさは半端無いです。
    わざわざお化け屋敷に怖いものを観に行くのが好きなような人にはお勧めの作品です。

    そしてラストの『せびろやしき』は小泉今日子さん主演で、こちらもどちらかというと悲しくなっちゃうお話なんですけど、きょんきょんの癒やしパワー恐るべし。
    何歳になっても美しく、愛される人って羨ましいですね。
    捨てられた猫を拾ってくる癖が止まらなくなったことのある過去を持つ主婦が
    あるとき、近所に住むサラリーマンが公園で時間を潰しているのを発見し、声をかけて家に連れてくることが事の発端。それ以来、きょんきょんに優しく声をかけられどんどん家に集っていくリストラされたサラリーマンたち。
    こちらのお話も『ハゲマシガールズ』の桜庭ななみちゃんと同じようなタイプの女性ですが…
    こんなおじさんばかり集めてきてしまう収集癖いやだけど、きょんきょんならありだなと思わせてくれるナイスな配役でした。
    とにかく凄い光景w


    ガッツある応援を振りまいてくれた桜庭ななみちゃん
    桜庭ななみ

    中村蒼くんの女装…どうっすか?
    中村蒼

    きょんきょんが中年男を拾ってきてしまった凄い光景
    小泉今日子




    1. ★★★★☆
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    RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語 :: 2011/07/13(Wed)

    大手家電メーカーの経営企画室長、筒井肇は昇進も決まり、順風満々なサラリーマン生活を送っていたが、母が倒れ久しぶりに故郷の島根に帰る。さらに同じ頃に夢を追っていた親友が事故死。今まで仕事に追われて暮らしてきた肇はそこで初めて自分の人生を見つめ直し、子供の頃に抱いていた「バタデンの運転手になる」という夢を思い出しある決意をする。

    RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語

    2010年5月29日公開
    【監督】
    錦織良成
    【脚本】
    錦織良成、ブラジリィー・アン・山田、小林弘利
    【出演】
    中井貴一 高島礼子 本仮屋ユイカ 三浦貴大 橋爪功 佐野史郎 宮崎美子 遠藤憲一
    中本賢 甲本雅裕 渡辺哲 緒形幹太 石井正則 笑福亭松之助


    やっぱり錦織監督の作品は温かくて素晴らしい。
    そして人を包み込む島根の景色も空気も最高!
    島根3部作のラストみたいですが、監督の島根を舞台とした作品がもっともっと観たいです。

    人生を見失ったとき、癒やしてくれたり原点に立たせてくれるのは
    自分の故郷であり幼き頃の大切な思いであったり。
    夢を忘れた一人の大人がもう一度故郷に戻ってきて
    人生を走り始める姿と、電車が動き始める姿がぴったりあってて
    のどかな電車のある風景に勇気をもらいました。
    50歳を前にして夢を持ち始めた大人もいれば
    20歳そこそこで挫折をし夢を失った若者もいる
    将来の計画がうまく立てれない大学生の倖ちゃん(本仮屋ユイカちゃん)の存在が一番身近に感じたかな
    それでも親目線で見てしまうと、主人公のお母さんの言うことは本当にそのとおりで
    親にとって、子供がやりたいことをやってくれるのが何よりの親孝行なのです

    それにしても、私はこの映画のタイトルを観て某映画を連想してしまいました
    中身も全然違うんですけどね

    それから、三浦友和さん山口百恵さんの息子さんである三浦貴大くん。
    最近ちょくちょく映画で見かけるようになってきましたが
    ご両親にはあまり似てないですね。
    桐谷健太さんと小出恵介さんに似ているような

    心から元気になれる励まされる映画でした。
    「白い船」も子供を応援する温かいパワーにとても励まされましたが
    この映画の大人を応援するパワーもすごい。

    ユーミンの主題歌もぴったりだなぁ


    こどもみたいに楽しそうな中井貴一さん
    中井貴一




    1. ★★★★★
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    君に届け :: 2011/04/10(Sun)

    高校1年生の黒沼爽子は見た目が暗く、周りから「貞子」と呼ばれクラスメイトから避けられていた。しかし、クラスの中心人物として人気のある爽やかな男子、早風翔太や、一見不良っぽい女子の矢野あやねや吉田千鶴と出会い、周りの誤解を解き成長していく。

    僕等がいた

    2010年9月25日公開
    【監督】
    熊澤尚人
    【脚本】
    根津理香 熊澤尚人
    【出演】
    多部未華子 三浦春馬 蓮佛美沙子 夏菜 青山ハル 桐谷美鈴 ARATA 金井勇太 勝村政信 富田靖子


    もともと原作読者でして、実写化と聞いて、なんとなく観ることなく過ごしていましたが、DVDでレンタルして観てみてみたら…良いじゃん!!!
    最近の少女漫画の「僕等がいた」が実写映画化されるらしく、そちらも配役がどうなってしまうのか気になってますが…
    「君に届け」は、爽子を多部ちゃんがやると聞いて
    今の女優さんの中では確かに純粋で独特の雰囲気があるのは彼女かなと思うんですけど
    私の持っている多部ちゃんのイメージはもっと爽やかなイメージだったので、何か違う!!と思っていました。
    実際観てみると、「多部ちゃんが良い!!!!」
    爽子の純粋さが存分に出てて、思わず突っ込みたくなるような思い込みの数々。とことんひたむきなキャラをあそこまでやりきってくれる多部ちゃんがこれを観る前から、デカワンコで大好きになりつつありましたが、これをきっかけに大大大好きになりました。
    三浦春馬くんは爽やかな俳優さんではありますが、早風くん役はもう少し明るくて小柄な俳優さんをイメージしていたので、やっぱり少し違いましたが
    それでも彼特有の爽やかさは効いてました。最近のドラマの高校教師役よりもこっちのほうがしっくりきます。

    君に届けといえば、爽子と早風のドキドキするもどかしい恋も良いんだけど
    やっぱり友情。
    多部ちゃん扮する爽子と、ひょんなことで仲良くなる矢野ちんや千鶴(ちづ)との友情がすてきー。
    特にぶっきらぼうだけど素直な吉田千鶴を演じた蓮佛美沙子ちゃんの捌けた演技。
    彼女と多部ちゃんとのコンビが良かったです。
    矢野ちん役の夏菜ちゃんを加え、この3人の友情が眩しくて、友情をはぐくんでく姿に映画の序盤から泣いてしまいました。

    高校生っていいですね…
    あんなキラキラした時代が自分にもあったのでしょうか。
    大人になればいろんな乗り越えなきゃいけない試練がいっぱいあって
    それは子どもでも大人でも一緒なんだけど
    どうせ乗り越えるのなら、まっすぐな気持ちを失わず正直に生きてぶつかりたいと思える作品でした。
    爽子のひたむきさと、矢野ちんちづちゃんの友達を思う純真さに心が磨かれます。

    そういえば担任ピンを演じた俳優さん…最初、誰?と思っていたら
    ARATAさんでは無いですか!?かなり印象が違くて驚きました。
    荒々しいファッションにあのキャラクター、嶋大輔さんかと思いましたw
    純真でまっすぐな若者たちに混ざりただひとり、空気の読めない身勝手な大人役が見事でした。
    青春時代をとうに通過してしまった大人のデリカシーの無さw
    かと思えば、粋なところもあって、とってもいい役です。
    1. ★★★★★
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    扉をたたく人 :: 2011/04/03(Sun)

    妻を亡くして以来、心を閉ざして人生を歩んできた大学教授のウォルター。
    学会に出席するために久しぶりにニューヨークを訪れた彼は、しばらく帰っていなかった自分の別宅にやってくるが、そこには見ず知らずの若者が住み込んでいた。一人はシリア出身でジャンベ演奏者のタレク。もう一人はタレクの恋人でセネガル出身の黒人女性、ゼイナブ。2人は不法滞在者であった。騙されてこの家に住み着いてたという事実を知り2人は立ち去ろうとするが、ウォルターは永住権の無い2人の状況を察し、引き止めてしばらく部屋を貸すことにする。そして、ウォルターの親切に感謝したタレクは、自分のジャンベに興味を持ち始めた彼に楽器を教え始め、そこから心の交友が始まる。親しくなる2人だが、あるときタレクに悲劇が起こる。地下鉄に乗ろうとしていたところを、無賃乗車と勘違いされ逮捕されてしまったのだった…。

    扉をたたく人

    2008年、アメリカ
    【原題】
    THE VISITOR
    【監督・脚本】
    トム・マッカーシー
    【出演】
    リチャード・ジェンキンス ヒアム・アッバス ハーズ・スレイマン ダナイ・グリラ


    異なる人種、異なる文化、現代人がかかえる喪失感が絡み合い、人と人との触れ合いを丁寧に描き、そして残酷な現実に進み行く物語。
    けれども人間の心の温かさを感じる作品でした。
    この映画の邦題「扉をたたく人」が凄く好きです。
    扉を「たたく」なのがしっくりきます。

    妻を先に亡くし喪失感を抱きながら人生を歩んできた大学教授のウォルター。
    どことなく寂しさが漂っていて、周りの人間を拒み物事に関心を持たないような60前後の男性の雰囲気を感じます。
    そんなウォルターが自分とはこれまで交わらなかった異文化の若者とかかわりジャンベという、これまで好んできたクラシックとは全く違う音楽に興味を持ち始め
    不器用ながらもそれまでの周りを拒み面倒な人間関係からは遠ざかっていたウォルターとはまるで別人のように、見知らぬことに興味を持ち始め、小さなジャンベとともに新しい扉を叩き始める。
    シリア出身の若者タレクもまた人懐こい好青年で、自分とは明らかに趣味や生き方の違うウォルターにジャンベのリズムを通して、ずっと心を閉ざしてきたウォルターの心を理解し、自分の心を素直に彼に伝えて行きます。
    この年齢も歩んできた道も違う2人の友情が本当に素敵。これこそ裸と裸の付き合いと言うのでしょうか。
    扉を叩いてこそ始まる何かの偉大さを感じさせてくれます。

    そして、この映画のいたるところに出てくる「はじめまして」のあいさつの代わりに出てくる「出身はどこ?」と言う台詞。
    そのことを聞かれるたびに煩わしい表情を見せるタレクの恋人ゼイナブや、タレクの母。
    映画を観ているこっちも、煩わしく感じちゃいますね。
    確かに私も初対面の人にはつい聞いてしまう質問かもしれない。
    でも、この「出身はどこ?」には知らないうちに人間を区分し、そこに安心を求めているように取れる。
    単純に他に話すことが無いからとりあえず聞いてみる的な部分もあるのだろう。
    その人自身に興味がないからこそ、知りもしない人に最初に聞いてしまう質問の一つなのかもしれません。

    決して人種差別反対!とか偏見のある取り締まり反対!そういうことを声高らかに訴え平和に導こうとする映画ではありません。
    厳しい取り締まりがあればそれで平和というわけでもないし、かといって取り締まりが無かったら維持できないものもある。
    しかし今自分たちを守ってくれているものは、問題を避けるため面倒なことを断絶してるだけではないかと気付かされる作品でありました。
    不法滞在とは無縁の生活をしている者には何の関係もないことなのだろうか。
    事なきを得て面倒な現実から逃げたその先に前進する答えはあるのだろうか。

    「この20年、本当は自分は仕事なんてしていなかった。していたフリだけだ。」
    タレクの母親は、忙しく仕事を抱えるウォルターを気遣うが、そんなタレクの母親にウォルターがぶつけた本音です。
    この本音は、上手く生きていこうとすればするほど核心をつかれるような言葉でした。

    そしてタレクの釈放を願い面会に通い続けたあとに待っていた現実に対するウォルターの自分の無力さを訴える心の叫び。
    愛する人を救えない無情さを訴えるように鳴り響くジャンベのリズムが荒々しく伝わってきました。

    リチャード・ジェンキンスが演じた主人公のウォルターが、おとなしく物悲しい堅物の中年男性の雰囲気を醸し出していて凄くよかったです。そんな彼がジャンベに夢中になっていくからこそ、本心で訴えかけられるものがありました。



    1. ★★★★★
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    海の金魚 :: 2011/04/01(Fri)

    鹿児島県で暮らす高校生のミオは小説家である父が海で行方不明になった過去を持つ。今は父のヨットをとある港に泊めて住んでいる。孤独を抱えながらも明るさを失わないミオはある日、自分と同じように孤独を抱えた少女、キヨミと出会う。キヨミはヨットマンである父のもと自分もヨットの道に進み留学をしていたが、ある日練習中に友人を事故で失い、助けることができなかった自分に責任を感じて逃げるようにして地元鹿児島の高校にやってきた。
    ともに心に深い傷を抱えたふたりが運命的な出会いをし、2人は親友になっていく。そして2人は周りの仲間を集めヨットレースに参加することになる。

    海の金魚

    2010年4月10日公開
    【監督】
    雑賀俊郎
    【脚本】
    塚田耕野
    【出演】
    入来茉里 田中あさみ 賀来賢人 白石隼也 柄本時生 吉瀬美智子 高嶋政宏 芳本美代子



    重いテーマを扱いながらも人との出会いで人が救われる姿に勇気づけられました。
    ざっと見た感じ、イケメンぽい若い男の子といまどきな若い女子の青春ものかななんて侮っていましたが
    展開的に荒い部分もあるけど、重いテーマを寛大に見つめた再生ストーリーで
    最近、様々な辛いニュースを見て現実に心を痛めていましたが、今こそ一歩進み出そうと思える作品に出会えて勇気がもらえました。

    まず主人公の2人。若くて可愛い。
    とくに明るいミオを演じた入来茉里ちゃんは21歳には見えません。
    10代半ばくらいに見える。子供っぽい無邪気さが輝く女優さんです。
    清海を演じた田中あさみちゃんは、ヨットの道に進むエリートという設定に無理がないほど体格がいい。
    最初は感じの悪い嫌な感じの女の子だったけどだんだんと打ち解けて表情が柔らかくなっていくのがかわいかったです。笑顔が前田愛ちゃんに似てる。

    そして男子3人。清海が転入してきたクラスの委員長でミオの友人でもある賀来賢人くん。気弱な部分もあるけど底抜けに明るくて優しい男の子。
    ヨットをやっていて、清海が友人の事故死から逃げたした過去を唯一知るミステリアスな同級生は白石隼也くん。彼の印象はクールなイケメン。
    港の若い漁師?でミオの知り合い。なぜかヤンキーから慕われてる柄本時生くん。彼がヤンキーの取り巻きを演じた小島よしおから慕われてる設定は少し無理があった気がします(苦笑)うーん、なぜ小島よしお?
    この3人、Q10ってドラマでもクラスメイト役でしたよね。ビンボーな藤丘くんを皆が歌で励ますシーンが好きでした。

    この映画はこの5人でヨットレースに臨むのがメインっぽいんですけど
    私はその前のミオと清海が友情を育むまでが素敵で大好きです。
    そのあとのヨットレースはあくまでもオマケに感じました。
    誰にでもツンツンして心を開かなかったキヨミがなぜかヨットで暮らす不思議な少女ミオと出会う。
    ミオもミオで、明るく人と接しながらも自分が暮らすヨットには誰も中に入れない。
    人当たりはいいのに、心の内は絶対人には見せない孤独な少女でした。
    そんな2人が出会い、お互いの心の中にある孤独に気付きはじめ
    清海はミオを、ミオは清海を。励まそう、支えようと、それまで逃げたり気持ちを隠したりしていた2人が、本当の気持ちそのままぶつけて、相手を前に進ませようとする姿が素敵なんです。
    女同士の友情が熱くて眩しい。
    男の子とのやりとりよりも、この2人の女の子同士のやりとりがきらきら輝いてる映画でした。

    雑賀監督の映画は同じ鹿児島の海を舞台にしたチェスト!も明るくて勇気づけられる素敵な作品でしたが
    この映画も同様、広くて眩しい海を舞台に若い子たちが挫折を乗り越え、誰かを助けたり助けられたりしながら、一歩ずつ進んでいくんです。

    人って一人だけの力で立ち上がろうとするのは難しくても
    近くに同じように苦しんでる人やがんばってる人を見ると、その人を思う気持ちが湧いてきて
    そこから一歩踏み出す勇気がもらえたりしますよね。

    チェスト!でもいい味を出していた、お父さん役の高嶋政宏さんの「自分だけで生きてるような顔するな!」という言葉にとても愛を感じました。
    若いときの挫折、苦しみをこうやって前向きな方向に導くことができる大人って本当に素晴らしいです。


    2人の友情が良い。キヨミ役の田中あさみちゃん。
    田中あさみ

    天真爛漫なミオ。入来茉里ちゃん。
    入来茉里



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