テロ事件を起こしたカルト教団「ニルヴァーナ」の施設から保護され児童相談所に預けられた12歳の光一。
迎えに来た祖父は4つ年下の妹の朝子だけを引き取って行ってしまう。
教団の幹部である指名手配中の母の行方は分からない。妹を取り戻す為、児童相談所を脱走した光一は、途中で知り合った同い年の由希と共に東京を目指していく。彼女もまた母親を亡くした孤独な少女だった。
2005年3月12日公開
【監督・脚本】
塩田明彦
【出演】
石田法嗣 谷村美月 西島秀俊 りょう つぐみ 甲田益也子 池内万作 水橋研二 1995年に起きたあの事件が完全にモチーフになっている作品です。
悲劇で子供に対する哀しみや同情を誘うようなものではなく、その子供たちが「生きる」ことを描いた強い映画です。
この当時はまだ子役と言えるであろう谷村美月ちゃんと石田法嗣くんが凄い存在感を放っていて
子供なのに、大人を頼ることができず、自分の足で生きて行かなきゃいけない子供を熱演。
その存在感の光り方が観ているこちらの胸を締め付けます。
社会から大きくはみ出してしまった大人。
そしてその子供たちはどうやってこれから人生を歩んでいくんだろうと、あの事件が起きたときまさにそれを思いましたが、この映画でも同じことを思いました。
子供たちに罪は無いし、子供に親は選べない。
子供を不幸にする親の罪は重いけど、その親を憎めず愛し続けるのもまた子供だったりします。
親やカルト教団の幹部をただ信じて生きてきた光一が、宗教に染まってしまった大人たちに教えられたとんちんかんな信念を貫く姿が非常に辛く切なかった。
また自分の身を削ってまで光一を支えようとする由希。ちょっと生意気な関西弁の少女だけど、本当の彼女は光一以上に強くなく、そして誰よりも寄り添える人を求めている気がしました。そんな彼女の光一に対する優しさを見ているのもまた切ない。
目の前の親を信じるしかない子どもがその親を失ったとき、これから何を信じて生きていけばいいのか。
それが大人たちが子供に与えてしまった不幸な運命であっても、それでも自分が自分であることに負けずに強く生きて欲しい。そんなことを元信者が光一に語りかけます。
さまざまな事情を抱える大人や、我にかえって現実を見つめなおす大人たちと出会い2人はつかの間の幸せを手に入れ笑顔を取り戻し、改めて目標に向かい立ち上がりますが、
道の途中、定食屋であたたかいオムライスにありついた矢先、またしても2人を待っていたのはさらなる厳しい現実。
次第に大人たちの過ちに気付いていくものの、それでも心のどこかで信じていたたった一つのもの。それを失ってしまう光一。
大きな壁に立ちふさがった時、由希は彼を想い行動を起こし、そして光一はその壁を大きく乗り越えるものになるのです。
この二人にはたして幸せな未来が待っているのか。まったく幸せな姿が想像ができない終わり方でしたが
主人公の2人の名前に込められた、光一の光と、由希の希望。
それでも光り輝く希望に向かって強く生きる。そんな2人の背中に、彼らを見つめる大人たちの思いを感じることができました。
凄く力強い作品です。
とにかく石田法嗣くんと谷村美月ちゃんの熱演ぶりが凄いです。
石田法嗣くんの表情の鋭さ
攻撃的なシーンが多いだけに、幼い2人が寄り添うシーンは胸が締め付けられます。
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