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My最新アニメ感想文:特別編「〝フリクリ”の見方、教えます」(第四話:フリキリ)

取り敢えず、連載ものなので未読の方はまずこちらを参考に。

My最新アニメ感想文:特別編「〝フリクリ”の見方、教えます」
My最新アニメ感想文:特別編「〝フリクリ”の見方、教えます」(第二話:ファイスタ)
My最新アニメ感想文:特別編「〝フリクリ”の見方、教えます」(第三話:マルラバ)


<OVA:1999年製作:アニマックス>

 さて穴埋めを終えて、再びメインストリームに戻ってまいりました(笑)。実はこの話は、最初から「タスク=カンチ」の伏線が山ほど張られており、〝頼むから気づいてくれ”という榎戸先生の叫びが聞こえてきそうです(笑)。

 冒頭の野球のシーンは、ハル子が人間離れした能力の持ち主であることを表現すると同時に、ナオ太は一回もバットを振らないことで、「凄いことなんか無い。ただ当たり前のことしか起こらない」という彼の生き方(オタク的には、心が痛いところですが)を見せています。誰にも注目されない(まあ本人が何もやっていないのだから当然なのですが)ナオ太の心情を思いやってかわいそうに思う・・・というのは確かに正しい見方なのかもしれませんが、それでは見事にダミー伏線に引っかかって製作サイドの思う壺ですね。これに眼を奪われてしまうと、肝心な所が見えなくなってしまいます。正解は、カンチが野球が超上手い所のを見て、タスク=カンチなのではないかと想いを巡らせることです。「タスクちゃんがアメリカ行ってから、ずっとこの調子(野球で負け続け)だよなあ。あの工場がきたころからずっと(後略)」という台詞も、タスクとMMの密接な関係を物語っています。

 マッサージをしているカモンがロボットなのは、電気の使用メーターの高速回転ととカモンのコンセント、「電気代の足しにしようと思ってね」の台詞を見れば一目瞭然なのですが、ハル子の「タッ君のユニフォーム、全然汗臭くないね」などという台詞に耳を奪われてしうと、けっこう見落としがちです。案外こうしたすぐ分かる迷彩のかけ方を見せることで、フリクリという作品自体が真実に対して強力にカモフラージュをかけていることを気づかせようとしているのかもしれません。またこうした人間そっくりのロボットを出すことで、すでにいないはずのタスクの写真が何故送られてきたのかを説明していることも、言うまでもありません。

 アマラオ登場。外見はダンディな大人の男性に見えます(スクーターに乗っている時点でなんですが)が、激辛カレーパンを見て「なんか余計な奴が増えたって感じだよね(実はハル子のことを揶揄している)」ということで、精神的にはナオ太と同レベルであることを表現しています。でもフリクリのMOOKによると、アマラオは「宇宙警察捜査官(フラタニティとは別でしょうね)」とあります。え~っ、そうだったの~??、てっきり地球サイドのスタッフだと思ってた。ちなみに小説版によると、あの付け眉毛は、額の角が生えてこないようにするためのものとのこと。

 ハル子のナオ太に対する「やっぱり、あんたの頭じゃなきゃだめね~」は、カモンの頭を殴ってみたけど、角が生えてこなかった(あるいは要求性能を満たさなかった)ことを意味しているのでしょう。ってことは、やっぱりカモンも宇宙人の血を引いているんだろうか?。カモンは(一時的とは言え)死んでいたのに、何とも思わない(一応隠そうとはしたけど)ハル子はやはり通常の人間のメンタリティを逸脱してます。どう見てもハル子は、ナンダバ一家を利用しようとしているだけで、何らかの感情を持っているようには見えないですよね(キツルバミも同じこと言ってるし)。一度は(カモンを利用することで)ナオ太を切り捨てようとしたわけだし。まあそのハル子と楽しそうに第5話で一緒にサバイバルゲームをやっているカモンも、かなりの大物ですが(笑)(もしくは猛烈に頭が悪いか)。

 フリクリは全般的に隠喩や二重三重の含意のある台詞が大量にあって、それらを消化するだけでも相当にエネルギーを使ってしまうわけですが、特にこの話は性的な隠喩や当てこすりがそこら中に散りばめられていて、それだけでも結構楽しめてしまします。が、そんなのにかまってたらどれだけ書いても果てが無いので、全部無視でいきます。ハル子の打った場外ホームランの直撃を受けての衛星爆弾の落下に対して、「入国管理局CP」が対応してます。これは小説版によると、「内閣の特別諮問機関でもある枢密公安組織」・・・って意味が分かんねえよお(笑)。アマラオは宇宙からゲストとして招かれたのかもしれません。アマラオがナオ太の角(超空間チャンネルうんぬん)について説明していますが、エヴァの時と同じで、説明を聞けば聞くほど謎が増えていく構図は榎戸先生お得意の技法です。今回の説明も結局「なぜ」ナオ太に角が生えてカモンに生えなかったのか全く分からないままだし。

 衛星の落下に対して、アマラオは「場外ホームランをもう一度。地元のファンがそう言っていたと伝えてほしい」とハル子に伝えてほしいと言います。地元というのはおそらく「宇宙」のことなのですが、アマラオは「我が政府」という言い方をしているので、やはりフラタニティとは別の宇宙警察の捜査官と考える方が自然でしょう。アマラオは、ハル子と一緒に宇宙に出て行ったナオ太が大人になった姿とも言えるわけですが、これを見る限りナオ太が最終回で宇宙に行くのと、マバセに残るのとどちらが幸せだったのか、相当微妙な気がします。ハル子がナオ太からの「あなた本当に何者なの」という質問に対する答えは、銀河鉄道999のメーテルの台詞そのまんま。次回作「忘却の旋律」が松本零士作品からパクリまくりだったことは、この時点で予想できたことだったのですね。

 最後に衛星爆弾に対してバット(ギターですが)を振るシーンは、当然ナオ太の精神的肉体的成長・・・なんかを意味している訳では全然無いわけで、ナオ太のカンチ(=タスク)との精神的結びつきを表現して、カンチの正体を明らかにしているシーンだと考えるべきです。つまりバットを振ったのはカンチ(=タスク=アトムスク)であって、ナオ太なんかにバットを振れる訳がないのです(その証拠に、ナオ太の額にはカンチと同じ(おそらくはアトムスクの)エンブレムが浮かんでいるでしょ?)。だってナオ太は、ここに至るまで何一つ成長のための試練をこなした訳でもないし、何一つ努力をしたわけでないし、精神的な支えを得たわけでもないのですから。そしてここまででカンチの正体が分かっていないと、このことが全く分からないまま最終エピソードを迎えなくてはならないはめに陥ります(とりあえず、第5話が訳が分からなくなるね)。マミ美の「タッ君、バット振っちゃった・・・」はほとんど「はめ技」並みのきたなさ。たいていの人は、この言葉通り、受け取っちゃうよねえ。この後のナオ太のモノローグも同じ。ね、だからナオ太のモノローグは信用できないって言ったでしょ?。

 ちなみに小説では、ナオ太が一人で爆弾衛星を打ち返したことになっていますが、流石にまずいと思ったのか、〝けれどそこには、ハル子という超常現象女が携わっていたことを忘れてはいけない。それを抜きに憧憬の対象である兄を凌駕したと思うのは、どこまでも自分勝手な、自分だけの思い込みにすぎなかった”という強烈なフォローをいれています。アニメ版のほうが判りやすくて良かったとは思うんだけどね。

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コメント

>〝頼むから気づいてくれ”
改めて考えると丁寧ですよね。ごみの山から大事な情報を取り出す能力というのは、まさに現代において重要なことなので、そう考えるとこうした作品はそういう意味でも評価を受けてもいいような気もします。

機械になった兄も、父も越えられていないということに意味があるのでしょうか。そもそも「超えいたい」「超えられない」とか考えている対象のことを、そう考えているものがどれほど理解できてるのか(もちろんできていない)ということかもしれませんね。(「他者の理解の困難さ」ということ自体はエバやウテナともいっしょなのかな。)兄がいたときも、カンチに対するのと同じくらいの理解しかなかったということのような気もします。

「想像の産物」へのコンプレックスやそれによるあきらめ、(ナオ太は意図的に限りなく無思考の存在のほうが近い気もするけど)なんかは本当は存在しない(と、いう風に打ち破ることもできるんだ)ということなのでしょうかね。ただそうした「見えない壁」は現実に戦い続けるものには意味がある、とも言いたいような気も(とくに最終回、そうでもないか?)。

投稿: harada | 2005.01.25 00:35

お前全然わかってないよ・・・
ぐぐってきただけだから
いまさらこんな記事読み返さないかもしれないけど
一応コメントしとこうと思った
本当、全然、わかって、ない。
あと妄想を勝手にそうに決まっているかのように話すのもどうかと思います。

投稿: ななす | 2006.03.23 08:21

アマラオの地元って地球だと思ってました。
五話で「それは発展途上惑星人に対する差別発言だ!!」とか言ってたので・・・

投稿: | 2006.07.22 22:02

初めまして。
私もググっていたら辿り着いた口です。全話分読ませて頂きました。これだけ違う見方もあるのだなと刺激的でしたので、私の”正しい見方”というのもコメさせて頂きました。
(ただ、これだけ古い記事だと、もう考えも違いそうですね)

私は、サブ情報を本題を判りやすくする為のものとしか捉えていません。決して中心に据えていないので、あしからず。

ナオ太は無変化だった訳ではないです。5話目を見ればわかりますが、根に諦観があり、冷めた感のあったナオ太が”浮かれ”てしまったのは、心境の変化(変化を成長と捉えるかは個々人次第)+特別かもしれないという勘違いがあったからです。そして変わってしまえば、現実の影響を受けずにはいられない。
5話目でのあの扱いは、今まで知っていたけど触れてこなかった現実というツケを払っているに過ぎません。そこで、初めて本当に全ての甘さを叩き折られる。成長の一歩を見せるのはそこからですね。

大きな本筋の見方の違いは、以上です。といってもここが違うと、5話、6話の見方も大分違いますけどね。あと、モノローグとかの捉え方も違うんですが、どうとでも捉えられるので些細な事でしょう。

ちなみに、マミ美が自立してるかどうかは、あのラストでは判りません。たまたま賞をとった写真に逃げただけかもしれませんし。彼女こそ本当に何もしてないですからね(汗

投稿: psp2 | 2006.10.21 10:34

始めまして。
コメントありがとうございました。
いつもは好意的なコメントを書いてもらっても、気が付くのに一月以上かかってしまったりして、なかなかお返事する機会が無いのですが、今回は一週間ほどで気が付くことができましたので(笑)お返事させていただきます。

>私もググっていたら辿り着いた口です。全話分読ませて頂きました。これだけ違う見方もあるのだなと刺激的でしたので、私の”正しい見方”というのもコメさせて頂きました。

そうですね、この時は果たして自分の考えが他の人と比べてどうなのかということを知りたかったので、あえて刺激的に書いているということもありましたね(笑)。つたない文章を最後まで読んでいただいて、本当にありがとうございました。

>ナオ太は無変化だった訳ではないです。5話目を見ればわかりますが、根に諦観があり、冷めた感のあったナオ太が”浮かれ”てしまったのは、心境の変化(変化を成長と捉えるかは個々人次第)+特別かもしれないという勘違いがあったからです。そして変わってしまえば、現実の影響を受けずにはいられない。

確かに心境の変化を成長と見るかは人それぞれですね。この文章はまず結論ありきだったので、こういった書き方になったのですが(笑)、少しづつは成長(変化?)していると考える方がより自然かもしれません。

>5話目でのあの扱いは、今まで知っていたけど触れてこなかった現実というツケを払っているに過ぎません。そこで、初めて本当に全ての甘さを叩き折られる。成長の一歩を見せるのはそこからですね。

そう、もし成長が始まるとすればそこからでしょうね。

>大きな本筋の見方の違いは、以上です。といってもここが違うと、5話、6話の見方も大分違いますけどね。あと、モノローグとかの捉え方も違うんですが、どうとでも捉えられるので些細な事でしょう。

このくらいの違いはむしろ少ない方なのではないかと(笑)。筆者の友人には、今でもタスクとカンチは絶対に別人だと断言しているのも居ますし。

>ちなみに、マミ美が自立してるかどうかは、あのラストでは判りません。たまたま賞をとった写真に逃げただけかもしれませんし。彼女こそ本当に何もしてないですからね(汗

全くその通りです。私は願望が先に立って、作品を見誤ってしまったのかもしれません。ただ結局何もせず元の鞘に納まってしまったように見えるナオ太に対して、まがりなりにも前に進み始めたマミ美にはぜひ自立していて欲しいものです(きっと彼女なりに裏でがんばっていたということで)。

投稿: 少年王3号 | 2006.10.30 01:03

ナオ太はマミ美のこと見限ってないだろ
だから助けたんじゃん
だから写真が載ってる雑誌を持ってるんじゃん
全然分かってないだろ

投稿: 名無し | 2007.01.24 19:08

個人的な見解にまでケチをつけるつもりはないですけど、それをさも決まっているかのように話すというのは、私もどうかと思います。
といっても古い記事なので今さらなのですが・・・。
あまりにも個人的誇大意見を、さも正当な唯一の答えとして語っている所に、フリクリ好きとして少し反論させていただきます。
輪郭や部分的には賛同する部分もありますし、おもしろいのですが。


とりあえず、ひとつだけ例にとって反論させていただきます。

まずタスクが左利きであることは、鶴巻監督が明言しています(オーディオコメンタリーにて)。
また、1話でハル子がカンチを左打ちで殴る際の、ナオ太が兄に似ている発言により、左打ちでもあるであろうことは、単に推定の範囲以上に、説得力があると考えられます。

少なくとも4話で見るようにカンチは右利き(右投げ)なのでそれだけでもタスクではないということは言えます。
打席についても右打ちで、この点も矛盾しているというのは先の説明により、ある程度の説得力をもって、反論できます。

以上の理由により、タスク=カンチであるという意見は(勿論0ではありませんが)説得力に乏しいとしか言いようがありません。

また、ラストのバットを振るシーンの意見についても、以上の理由により、私はまったく見当違いの解釈であると思います。
同時にこのタスク=カンチ説の一点をもって、付随する全体の解釈についても同じく疑問を抱かずにはおれません。

また、他に気になった点に、小説(榎戸さんver)からも引用が見られますが、あくまでもあの設定は小説のフリクリであって、その設定をそのままアニメに当てはめるのは違うと思います。
実際に同じシーンを見てもアニメと小説に明確な違いがある以上(この4話の最後のシーン等)別物であると判断すべきです。


とりあえず、何が言いたいかといえば、十年も昔の作品に今でもどうこう言いたくなってしまう魅力がフリクリにはあるわけで、私の意見を含め、このページを見て一方的な解釈に安易に傾倒せず、ぜひ何度も見て、おもしろさや新しい発見を自分で見つけてほしいということです。

以上、書き込み失礼いたしました。


投稿: addict | 2009.06.14 01:05

コメントも含めて勉強になりました。自分はフリクリ2回通してみただけですが、全然気づかなかったことだらけです!ありがとうございます

投稿: ごろ | 2010.03.05 13:47

ここまでひどいとは…。

たぶんあなたとあなたの記事を読んでしまった一部の方のみの
解釈かと思います。(断定的に語ることや、(笑)など実に不快です)

投稿: | 2010.09.01 15:19

フリクリ 鶴巻和哉監督 オーディオ・コメンタリー
オーディオ・コメンタリーは、北米版DVDに収録されてる模様

(タッくんバット振っちゃった)
「バットを振ったってのはどういう意味ですか?」
バットを振るやつと振らないやつと言う分け方をした。この話の冒頭ではバッターボックスに立ってるのに振らないで三振する。やる気が無いというか、バットを振ることによって結果を出したくない。自分の限界を見たくない。バットを振らないと、振ったらホームランかもしれない、という可能性は残る。ちょっといいわけっていうか、担保が残る。そういうホームランか三振か。

マミ美はナオ太がバットを振らない男だから自分のそばにおいていた。だからマミ美はがっかり、つまり男だと。つまり危険だということですよ。今まではナオ太かわいい、かわいい。とマミ美が イニシアティブを握っていたんだけど、ナオ太がバットを振る男だとイニシアティブをナオ太に奪われてしまう。マミ美にとってはそれが困る。
「ナオ太的には成長したと言うことですね」
そうそう。

投稿: | 2011.06.05 22:17

カンチ=タスク説についてはOVAの監督がそのような見方をあざ笑うようなコメントを出しています。伏線に気づいたつもりで、実は小説版の作者ともどもGAINAXの術中に陥ってるだけなのかもしれません。

投稿: | 2011.06.22 22:39

ナオ太が衛星を打ち返すときハル子が手助けするじゃないですか
あれってハル子的には落ちてくれた方が都合が良かっわけではないのですか?
誰か解説お願いします

投稿: | 2011.07.03 23:22

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