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My最新アニメ感想文:特別編「〝フリクリ”の見方、教えます」

<OVA:1999年製作:アニマックス>

<第一話:フリクリ>
 やっと満を持してフリクリに辿りつきました(笑)。以下一度もフリクリを見たことの無い方、あるいはフリクリは感動的な少年の成長物語だとお思いになった方は、できれば読まない方が賢明かと思います。ばりばりネタバレです。多分本編を見るよりも・・・。

 いきなり視聴者にはわけの分からん前振りとしか思えない言葉の羅列の中に、必要な情報がぎっしり満載されたナオ太とマミ美の会話から本編はスタート。「あしたのジョー」の「明日のためのその一」の内容と見せて、実は野球のバットの振り方の講義と見せて、実はナオ太が常にバットを持っていながら野球をやらないことへの前振り・・・。マミ美もバットの振り方のウンチクを垂れていると見せて、実は野球になんてさっぱり興味は無くて、直太に興味があると見せて、実は別の人間の影を追っている・・・。こんな三段、四段捻りはフリクリでは極当たり前に行われています。全てに触れていたらとても切りが無いので、重要な所だけいきます。

 「凄いことなんか無い。ただ当たり前のことしか起こらない」。これはナオ太の口癖であり、全編を通してのテーマといえます。女子高生、学級委員、宇宙人に(少なくとも表面的には)もてまくりながら、この台詞を口にするナオ太は相当傲慢に見えますが、これは我々アニメオタクへの警鐘とも言えます。実際には物凄い事、ナオ太の人生を左右する出来事が次々と起こる中で、全くそのことに気がつかず最終回でもこの言葉を口にするナオ太は、父親のカモン同様恐ろしく鈍感であり、自分から積極的に行動できなかったナオ太は、兄はおろか女子高生も、宇宙人も、おそらくは学級委員さえも失い、父親同様に文字通り「全てを失ってしまう」わけです。しかし本人はそれらに対してチャンスがあったことにすら気がついてないのですから、どうにもなりません。恐らく榎戸先生は、我々アニメオタクをナオ太に投影しているのであり、「もっときちんと考えて生きないと、ナオ太(&カモン)みたいに全てを失ってしまうよ」と言いたいのではないかと考えます(父親のカモンは、少なくとも子供は作ったんだから、やることやってたんだけどね(笑))。・・・ピンときませんね?。では続きを。

 ナオ太のモノローグは、相当曲者です。最初のメディカルメカニカの説明は初情報なので聞き入ってしまいますが、一番気をつけるべきなのはナオ太は全てを知っての上でモノローグを語っているのではなくて、自分が知っている表面的な偏った知識を語っているに過ぎず、全てを信用してはいけないということです。さらに第二話では、ナオ太のモノローグをバックに、全編を通しての最大のトラップが発動されます・・・。ナオ太が「すっぱいのが嫌い」(第三話では「辛いのも苦手だから、星の王子様カレーじゃなきゃ駄目」とか言ってます)なのは、当然ナオ太の精神的未熟さを象徴しているわけですが、ここまで情報が2重、3重に入り組んでくると、もはやダミー情報と言っていいほどのレベルになってしまいます。だってこんなところに注目していたら、もっと重要な情報を明らかに見逃してしまうから。つまりラストのジュースの受け渡しも、第一話のオチと見せて、本質的にはほとんど無意味な情報だということです。

 べスパを駆って、ハル子の登場。ハル子にバイクで轢かれて大変なことになっているナオ太に対するマミ美のリアクションを見ていると、マミ美がナオ太に惚れているわけではないことがはっきりと分かります。後に分かることですが、ナオ太に対して愛するナオ太の兄であるタスクの影を投影しているわけですが、流石にこの辺りは誰でも判ることですね。ハル子は(後に分かることですが)角の生える人間を探してその辺を走り回って片っ端からギターで頭をぶったたきまくっていたわけですが、対象の名前を「タロー君」としか聞いていないところに、ハル子の超いいかげんな性格が現れています(笑)。もしかしたらフラタニティがろくでもない組織でまともに伝えていない可能性もありますが・・・両方ともかな?(自爆)。ここで第一話の最大のトラップが。もしナオ太がギターでぶったたかれたから角が生えてきたと思い込んでしまうと、全く意味が通じなくなります。正解は「ナオ太が宇宙人とのハーフであり、角が生えてくる体質だったから」。ギターはきっかけに過ぎず、角は誰でも生えてくるというものでもなく、ナオ太だから生えてきたのです。ここを見誤ると、完璧にフリクリの本質を見失うことにことになります。・・・そうは言っても第一話だけ見ても、全然分かんないんだけどさ(泣)。

 ふと思ったんだけど、「べスパ女→ハチ女」という連想は、明らかに仮面ライダーですよね?。次回作「忘却の旋律」が仮面ライダーをベースにしている、というのはけっこういい線かもしれません。閑話休題。角の生えたナオ太を利用するため(そのために病院で確認した)ナンダバ家に潜入したハル子は、猫を相手に謎の会話をしています。榎戸作品は基本的に全て母親不在なのですが、本作では猫が母親なのかなあ、などと漠然と考えていたのですが、正解は「光域宇宙警察フラタニティ」との超空間通信機。これでフラタニティの捜査官であるナオ太の母親と話していたんですねえ。でもこのことは小説版にしか書かれていません(泣)。そんなの分かんねえよ!。体面を気にするあまり全てを失ってしまったナオ太に対して、女好きのカモンは少なくとも子供は作ってました。それだけでもカモンの方が上だと、榎戸先生は考えておられるのかもしれません(エヴァの謎本も作ってたし?(笑))?。そんなわけで当然カモンはハル子にちょっかいを出すわけですが、見事に振られるカモン。「最初に会ったのは、タッ君だったから」というハル子の台詞からすると、実はカモンも宇宙人の血を引いており、角が生える体質だったのかもしれません。今となっては分かんないですが。

 「タバコなんて吸ってないよ」と冒頭で語っていながら、見事にタバコを吸っているマミ美。まあ火に縁のあるマミ美にとっては当然のことですね。兄タスクの情報は「アメリカに行った」「野球が上手い」「(恋人のマミ美の所には)手紙が届いていない」と断片的に語られますが、これらは全て、超重要情報。聞き逃すと、やはりフリクリの本質が全く見えなくなりますので注意。タスクは「金髪ギャルをGETだぜ!」という写真を家族に送ってきています。しかしタスクがそういった性格では無いことは、今後も言葉の端々で何回も語られます。これらの情報を組み合わせると(というか、これだけ大量に伏線を張ってくれることは榎戸先生にしてはとても珍しいことなので、よっぽど分かって欲しかったんでしょうね)、タスクがどんな運命を辿ったかが見えてきます・・・。

 カンチ登場。ナオ太の角は「性的な象徴」という表面的な情報に加えて、実は超空間転送機(とでも言うべきもの)だということは分かると思います。そして敵ロボットと戦闘に突入。最初は赤くてかっこよかったカンチが、ハル子のギターでぶっ壊された結果、青の気弱なカンチになってしまったのは、涙無くしては見られません。って悪いのは全部、ハル子じゃねえか!!!。このことが如何に大きな出来事だったか、当然ナオ太は最後まで気がつけないわけで、そのことも哀れさに一層拍車をかけます。本当にかわいそう・・・。詳しくは第二話にて。

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コメント

成長しないのはオタクだけでなく、もっと広く、それを自覚してたりしてなかったり思い込んでいたりするたくさんの人達と、また作者自身への自戒(必要があるかどうかは別として)もこもっているような気がします。

自らの尽きせぬ衝動によって作品を生み出していく存在=作者(最終話では特にそのようなイメージを感じた)だって自分がどのように成長していくのかは未来が見えるわけではないけど、情熱とそれを一歩一歩実現していく歩みがあれば進んでいけるのに、という話なのかな。

一方でいつまでたっても世界は流れ流れても自分はちっとも成長しないという想いの人達がこの作品に共感をもったりするのでしょうか?あんまりしない気もするけど。。。

会川昇とかはどこかのインタビューで自分が今後どう成長するかわからないから次回作がどうなるかはわからないというような趣旨の発言があったりしたけど、これはこれでとても正直な感じがします(ちょっと横道)。

投稿: harada | 2005.01.17 00:00

FLCLを視聴した後のもやもや感をかなり吹き飛ばしてくれました(ただ、5話を見終わった時このブログを見てしまったため若干色目で見てしまったかな…と思う気はしますが笑)
おかげでFLCLのよさをさらに知れました。
the pillowsのプロモアニメだなんて思っていてごめんなさい(笑)

本当にありがとうございました。

投稿: | 2008.09.10 01:07

 こちらこそ大変読みにくい拙著を最後までお読みいただき、恐縮です。

 ブログをやっていてこういったレスをいただくと、一番勇気づけられ本当に嬉しいです。こちらこそ本当にありがとうございました(o^-^o)

投稿: 少年王3号 | 2008.09.15 00:00

このページ「フリクリ 裏設定」で検索すると最初にでちゃうんだから
ちゃんと間違ってるところ修正してくださいね
悲しいです

あと言い切りや教えますっていう題にするあたり
見直したほうがいいと思います
アニメが本当にすきならば

投稿: あ | 2009.10.03 09:15

制作:アニマックス(笑)

中々面白い記事です。

投稿: | 2010.09.01 14:59

間違いだらけであきれ果てます。
一番愚かだと思ったのは「フリクリの本質」という言葉。
小説版や細かな演出・伏線の意図を汲み取れないと本質が理解できない、とは……
そんな、一部のコアなオタク向け作品じゃないんですよ。
音楽がかっこいい、演出がかっこいい、作画がかっこいい。僕はこのシンプルな要素がフリクリの本質だと思っています。
何も考えずにただボーっと見ていても十分楽しめる、そんな作品だと思っています。まさにFooly Coolyです。

投稿: 名無し | 2018.09.20 10:15

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