この本は、最近読んだ本のなかで、かなり面白かったのでおすすめ。
書評書こうかと思っていて忘れてたのだけど、shi3z氏の日記のエントリーみて思い出した。
この本、shi3z氏が買って読まずにほっておいてた本で、オレが「これ面白いのかな?」と勝手に読み出してみたら、面白くてオレのほうが先に読み切って、
「いや、この本、すげー、面白いよ。shi3z氏も読みなよ。」
「あ、その本買ったの?オレ買って積んであったのに。」
「あ、そうそう、ごめんなさいね。これ君の。」
という、この本との出会い。
村上隆という人については、よく考えれば全然知らない人なんだけど、失礼ながら余り良いイメージは持っていなかった。
でも、この本を読んで、村上隆氏の戦略性、芸術と経済との関わりに関する慧眼に舌を巻いた。
創作で食っていくということに関しての、村上氏の考察は非常にするどい。
全ての芸術家の目的は、作品を換金することだ。それは美大ではけして教えてくれないことだ。
と氏は言う。
36歳までコンビニの廃棄弁当を貰って生活していたという村上氏は、奨学金をもらって単身アートの本場、ニューヨークへ。
換金可能なアート作品とは、欧米を中心とするアート界の文脈において説明可能な意味をもっていなければ成立しない。
そのためには欧米のアート界の文脈を知る必要がある。
その本場で試行錯誤するうちに、氏の日本人であるという背景を持って、大衆芸術であるアニメの文法(ローアート)を、金持ち向けのハイアートの文法にあてはめ、再構築する作風を確立したという。
日本では、芸術作品といえば説明不能な自己表現のように考えられがちだが、それは現在のアート界では通用しない。
芸術作品は、アートの歴史の中で説明可能な文脈をもっていなければ、充分な批評の対象にならず、商品として通用しない。
そのために、芸術作品を購入する顧客である大金持ちが、どのような文化背景、考え方をもっているかを理解するべきであり
作品制作にかかる費用とその回収を行うための、ビジネス的な枠組みを作ることも、芸術家として重要なことだという。
この本は、創作活動とお金、経済というものに関する洞察もバツグンに面白く、
村上氏がその中でどのように自分の作品をプロモーションし、「村上隆」というブランドを構築するために、戦略をたてて実行してきたかという記述も面白い。
おすすめ。
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