2017-06-21(Wed)
安倍政権は2017年6月19日をもって変質した 本当にヤバい
月曜日の夕方に行われた安倍晋三の「会見」を見て、かなりの違和感を感じた人は多かっただろう。
反安倍で怒りまくっている人だけでなく、なんとなく見ていても、サイボーグのようで不気味な感じがしたのではないか。
また、記者からの質問に対して机の上のペーパーを読んでいるのは丸わかりで、えっこれってヤラセなの とも感じたはずだ。
これについては、渡辺弁護士が詳細に検討している。
安倍首相の印象操作-記者会見で黒ファイルを見るタイミング
渡辺輝人 2017.6.21
正直に言うと、私はこの会見で安倍晋三がやめるのではないかと50%くらい思っていた。
それは、野党や世論が追い詰めたというよりは、それが既定路線なのではないかと以前から薄々思っていたからだ。
なにが既定路線かというと、戦争法と共謀罪を成立させるところまでが、安倍晋三の役割だったのではないか ということ。
逆に言えば、あの二つを成立させるのは、安倍晋三にしかできなかった ということでもある。
安倍晋三というキャラクターの特異性を、反安倍の人でもよく理解していない人が多い。
彼は、極右と新自由主義の融合体なのである。
ここまで見事に融合し、相矛盾する双方の特徴を兼ね備えた政治家は 他にいない。
極右とは、つまるところ、「あの戦争は間違っていなかった」という人のことだ。
ABCD包囲網でやむを得ず死中に活を求めるたたかいだった。アジア各国を欧米支配から解放するたたかいだった。と、今でも信じている人たちのことだ。
田中真紀子氏の備忘録にもあるとおり、安倍晋三は、まさに極右のど真ん中である。
田中真紀子氏が加計問題に参戦
2017/6/20 アエラ
田中氏「日本が敗戦して」
安倍氏「真紀子さん、今なんて言った?」
田中氏「敗戦よ」
安倍氏「あれ終戦なんだけど」
田中氏「中国や東南アジアへの侵略戦争でしょ」
安倍氏「違う違う。アジアを解放するために行ったんだ」
(引用以上)
これが、安倍晋三という人物の核であると思われる。
米国に屈服することでA級戦犯で処刑されることを逃れた岸信介が祖父であったことが、こうした歪んだ復讐心を育てたことは想像に難くない。
ちなみに、私はABCD包囲網は実際にあったと思っているし、日本の侵略がアジアの解放にまったく無関係だったとも思わない。
とくにインドの独立にとって、日本軍の侵攻は大きな影響があった。チャンドラ・ボースのように日本軍と組んだ勢力もあったし、何よりイギリスがガンジーの存在を認めざるを得なかった背景には、インドの国中に拡がる暴動、中国革命の現実性と並んで、日本軍の侵攻があったことは間違いない。
手の付けられない暴動で統治機構が根本から崩壊すること、中国革命の影響でインド革命がおきること、日本に占領されること、こうした事態に比べれば、ガンジーに任せたほうがまだマシだという、イギリスにとってみれば苦渋の決断をした。
こうした背景なしに、ガンジーがひとりで非暴力不服従をやったならば、歴史に名を残す前に秒殺で暗殺さされていただろう。
そういう歴史的な観点では、私も極右の言うことにも、一分の利はあると思っている。
しかし、だからといって、それが侵略戦争の合理化にはならない というのが、人間の感覚なのではないかと思うのだが、合理化しちゃう人たちの集まりが、極右 という集団なのである。
だから、極右は、本質的に反米である。
もちろん米国の戦後支配は実にうまく考えられていて、A級戦犯を転向させた岸、笹川、児玉を右翼の親玉に据えた。
彼らが親玉である以上は、右翼のくせに従米という、まるでニャアニャア鳴く犬のようなケッタイなものが作られてきた。
右翼といっても、思想なんてなくてカネだけでつながっている連中は従米右翼でもなんの矛盾も感じなかっただろうが、やはり多くは「屈服させられた」という屈辱感を胸の中に貯め込んできている。
安倍晋三は、まさに屈服させられた親玉が祖父であっただけに、その屈辱感は強いはずだ。
だからこそ、日本会議は安倍晋三に期待し、安倍晋三を首相にすることを悲願にして長年活動を続けてきたのだ。
2012年に返り咲きを果たしたのも、そうした期待を集めたことが大きかった。
■
一方で、新自由主義はどうか。
もっとわかりやすく言うと、グローバル巨大資本 である。
各国の制度を、自分たちの都合が良いように「岩盤規制」に穴を開けさせ、自分たちだけが優遇されるように政府を操る。
そして、大きな損失を出したときは、税金で穴埋めすることを強要する。
大きなマネーを投下するけれども、それは生産事業ではなく、利ざやを稼ぐだけのマネーゲームであり、その国の経済には何のメリットももたらさない。その意味では、新自由主義は資本主義ではない。
資本主義は、生産活動に資本を投下し、その剰余価値(付加価値)を搾取(回収)することがその根本原理なのであって、だれかが得した分だけ誰かが損をするゼロサムゲームによる利ざや稼ぎには、資本主義の要素はまったくない。
グローバル資本=米国と勘違いしている人もいるが、それは違う。
米国政府もまた、グローバル資本によって支配され、使役されている政府の中の一つであり、その旗頭である。
ちなみに、日本の「リベラル」はその文脈を見ようともしないが、トランプはそのグローバル資本の支配に対抗して 「アメリカファースト」を打ち出しているのである。が、この話題はまた別の機会にしたい。
1990年代に日本にも本格的に進出してきたグローバル巨大資本は、橋本行革、小泉・竹中路線を通して、がっちりと日本政界を羽交い締めにした。
もちろん、その仕事は米国政府を使役してやらせたのであって、従米右翼も表だっては抵抗できなかったけれども、裏ではかなりの反発はあったと思われる。
その象徴が、小泉の靖国参拝だ。あれは小泉の個人的な意思ではなく、最低限あれをやらなくては、自民党の大きな支持基盤である右翼がなっとくしなかったからだ。
グローバル資本は、自分たちの思い通りに日本政府を使いながら、しかも右翼を納得させられる指導者を必要としていた。
いちいち自民党がギクシャクしていたのでは、気持ちよく荒稼ぎすることができない。
そこで白羽の矢が立てられたのが 安倍晋三である。
極右の熱烈な期待に応えつつ、新自由主義の傲岸不遜な要求を同時に満たすという離れ業を、安倍晋三はやることになった。
■
その試みは、2007年には一度破綻した。
矛盾を抱え続けるストレスに耐えられなくなったのだ。
しかし、2012年、再度安倍の登場となった。
結局のところ、この役回りをこなせる政治家は、安倍晋三しかいなかったのである。
2度目の安倍政権は、強力な官邸体制を築いた。秘密警察の機能を中心に、官僚にも政治家にも圧倒的な権力を振るうことのできる官邸として、極右にも新自由主義にも対応できるようにして、その矛盾を突くようなものはあらかじめ潰していった。
そんな安倍政権にとって、格好のテーマが戦争法であり共謀罪だった。
グローバル資本に吸い取られてスッカラカンの米国政府は、なんとかして軍事費を削減することを必要としていた。
しかし同時に、世界中でのグローバル資本の「自由」な活躍を保証するために、米軍のプレゼンスを低下させることは許されなかった。
そこでうちだされた方針が、自衛隊の下請化である。自衛隊を増強してアジアの米軍の下請にする。米軍は司令部だけを残し、戦闘は自衛隊にさせる。
日本列島からホルムズ海峡まで、第7艦隊の守備範囲を自衛隊が下請として肩代わりする。
そのためには日本の憲法を変えるか、解釈改憲で法律をかえることが必要だった。
また、そのような戦争をやらせるためには、自由自在に誰でも捕まえることのできる弾圧法が不可欠であった。
この課題は、きわめて珍しく、極右と新自由主義の方向性が一致しており、極右は「軍隊が持てる」と喜び、新自由主義は「軍隊をタダで使える」と喜んで、一致団結して実現に取り組んだ。
まさに、極右と新自由主義の融合体である安倍晋三の独壇場だった。
■
しかし、異変が起きた。
2月に始まった 森友学園問題である。
3月に入るとこれまで万全の対策をとってきたマスコミ各社が、あろうことかバンバン報道しまくり、昼のワイドショーまでが森友で染まった。
さらに加計問題がつづき、アッキードどころか安倍晋三本人の心の友が登場した。
安倍官邸の極悪の振る舞いも暴かれ、ついに文部事務次官だった人物までが公然と反旗を翻した。
このキッカケは、おそらく安倍晋三のトランプ詣でだろうと思われる。
これまで忠誠を誓ってきた新自由主義を裏切って、安倍晋三はいそいそとトランプタワーに出向いていった。その姿は、まるでトランプ家の手代かのようであった。
この動きは、安倍晋三の核である極右の心が、トランプに頼ることで新自由主義から少し自由になって、もっと極右の方向に進めるのではないか と考えたのだろう。
その動きに、新自由主義をすすめるグローバル資本や、従来からのジャパンハンドラーズの面々は激怒した。
それが、森友問題や加計問題でのマスコミ解禁になっているのだろうと推察する。
また、森友問題が 「教育勅語」であり、もう一点の曇りもなく極右ネタであったことも、新自由主義サイドには許せなかった。
「教育勅語」とは、とりもなおさず「鬼畜米英」の教育であり、こんなものを奉じる勢力が安倍晋三を支えてきたということが可視化され、日本会議という実体も明らかになるにつれて、新自由主義サイドは愕然としたことだろう。
この時点で、共謀罪成立で安倍晋三の役目は終わり という既定路線ができたのではないか、と私は予測したのだ。
そして、これまでの日本であれば、その通りになったと思う。
■
しかし、そうはならなかった。
なぜか。理由は三つあると思っている。
ひとつは、野党第一党が民進党だからである。
民進党は、もう二度と政権はとりたくない。適度に「良いことを言う」野党としてぬるま湯で生きていきたい政治屋の集団として、決定的な場面では、決して政権が倒れないように横から下からサポートしている。
それは、今国会の運営を見ていれば明らかである。
ふたつめは、トランプがしぶといということ。
安倍がトランプを頼った動機は不純だったかもしれないが、新自由主義と対抗するためにトランプを使うという考えは外れてはいなかった。
トランプ政権でアーミテージ報告書路線は… 日米連携の設計図失う?
2017年1月20日 東京新聞
(引用以上)
そして、四面楚歌に見えるトランプは意外にもしぶとく、アーミテージやマイケル・グリーンなどの従来のジャパンハンドラーズはかえって影響力を失っている。
米国、支配層とFBIによるトランプ政権転覆活動の内実…ロシア工作説の真相
2017年06月20日 ビジネスジャーナル
みっつめには、安倍晋三が「やめない」と決心している ということだ。
ここが、実はいちばん怖い。
これまでの安倍政権は、なんやかんや言っても傀儡だったわけで、親分の方向性が変われば、お役御免になる運命だった。
ところが、月曜の会見で明らかになったのは、「なにがなんでもやめない」という、安倍晋三個人の怨念のような執念のような、権力の亡者となった姿だった。
権力者としての合理性も合目的性もかなぐり捨てて、ただただ己の権力欲、すなわちそれは「憲法改正をやり遂げた総理大臣として歴史に名を残したい」という強烈な意思を表明している。
2017年6月19日をもって、安倍晋三は本当のモンスターに変質した。
ジャパンハンドラーズも潰しにかかるだろうし、トランプも自らの問題に決着がつけば安倍政権がアメリカの利益にならないことに気が付くかもしれないが、しかしゲシュタポなみの秘密警察機能をもった安倍官邸が暴走をはじめると、これまでのような「ハンドラーズ」のやり方では止まらない。
どんなに悪い政治家でも、悪いなりの合理性、すなわち損得を考えているかぎりは、その動きは読めるし妥協の地点もある。北朝鮮のあの政権でも、金王朝の存続という合理性で動いているから、いきなりミサイルやらをぶち込んでくるはずはないと判断できる。
しかし、ブレーキペダルを引きちぎってアクセルを踏み込んだままロックしてしまった政権は、支持率が下がろうが、内紛が起きようが、目的に向かってただひたすらに暴走を続ける。
どうやら安倍晋三は、その領域につっこんでしまったようだ。
■
変質を遂げた安倍政権Ver3は、本当にヤバい。
これまでの安倍政権は、私はファシズムとはぜんぜん違うと思ってきたが、これからの安倍政権はファシズムに限りなく近づいていく。
民進党のような腑抜けた野党第一党と野党共闘したくらいでどうこうなるものではない。
むしろ、トランプ、習近平、プーチンとの共闘で安倍を潰す くらいのことを考えないといけない。
共産、社民、自由の各党も、それぞれのルートをフル活用して、米・中・露の国益にとって安倍政権がいかにハイリスクかを説得することを視野に入れるべきだ。
そして、私たちは言葉を発し、街頭にでることを諦めてはいけない。
これから急速に激化していく安倍政権の振る舞いに、「ええっ ほんまかいな」「いくらなんでもちょっと」と思う人が、一気に増えていく。
その人たちを孤立させず、気持ちをすくい上げていく行動を、続けていかなければならない。
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反安倍で怒りまくっている人だけでなく、なんとなく見ていても、サイボーグのようで不気味な感じがしたのではないか。
また、記者からの質問に対して机の上のペーパーを読んでいるのは丸わかりで、えっこれってヤラセなの とも感じたはずだ。
これについては、渡辺弁護士が詳細に検討している。
安倍首相の印象操作-記者会見で黒ファイルを見るタイミング
渡辺輝人 2017.6.21
正直に言うと、私はこの会見で安倍晋三がやめるのではないかと50%くらい思っていた。
それは、野党や世論が追い詰めたというよりは、それが既定路線なのではないかと以前から薄々思っていたからだ。
なにが既定路線かというと、戦争法と共謀罪を成立させるところまでが、安倍晋三の役割だったのではないか ということ。
逆に言えば、あの二つを成立させるのは、安倍晋三にしかできなかった ということでもある。
安倍晋三というキャラクターの特異性を、反安倍の人でもよく理解していない人が多い。
彼は、極右と新自由主義の融合体なのである。
ここまで見事に融合し、相矛盾する双方の特徴を兼ね備えた政治家は 他にいない。
極右とは、つまるところ、「あの戦争は間違っていなかった」という人のことだ。
ABCD包囲網でやむを得ず死中に活を求めるたたかいだった。アジア各国を欧米支配から解放するたたかいだった。と、今でも信じている人たちのことだ。
田中真紀子氏の備忘録にもあるとおり、安倍晋三は、まさに極右のど真ん中である。
田中真紀子氏が加計問題に参戦
2017/6/20 アエラ
田中氏「日本が敗戦して」
安倍氏「真紀子さん、今なんて言った?」
田中氏「敗戦よ」
安倍氏「あれ終戦なんだけど」
田中氏「中国や東南アジアへの侵略戦争でしょ」
安倍氏「違う違う。アジアを解放するために行ったんだ」
(引用以上)
これが、安倍晋三という人物の核であると思われる。
米国に屈服することでA級戦犯で処刑されることを逃れた岸信介が祖父であったことが、こうした歪んだ復讐心を育てたことは想像に難くない。
ちなみに、私はABCD包囲網は実際にあったと思っているし、日本の侵略がアジアの解放にまったく無関係だったとも思わない。
とくにインドの独立にとって、日本軍の侵攻は大きな影響があった。チャンドラ・ボースのように日本軍と組んだ勢力もあったし、何よりイギリスがガンジーの存在を認めざるを得なかった背景には、インドの国中に拡がる暴動、中国革命の現実性と並んで、日本軍の侵攻があったことは間違いない。
手の付けられない暴動で統治機構が根本から崩壊すること、中国革命の影響でインド革命がおきること、日本に占領されること、こうした事態に比べれば、ガンジーに任せたほうがまだマシだという、イギリスにとってみれば苦渋の決断をした。
こうした背景なしに、ガンジーがひとりで非暴力不服従をやったならば、歴史に名を残す前に秒殺で暗殺さされていただろう。
そういう歴史的な観点では、私も極右の言うことにも、一分の利はあると思っている。
しかし、だからといって、それが侵略戦争の合理化にはならない というのが、人間の感覚なのではないかと思うのだが、合理化しちゃう人たちの集まりが、極右 という集団なのである。
だから、極右は、本質的に反米である。
もちろん米国の戦後支配は実にうまく考えられていて、A級戦犯を転向させた岸、笹川、児玉を右翼の親玉に据えた。
彼らが親玉である以上は、右翼のくせに従米という、まるでニャアニャア鳴く犬のようなケッタイなものが作られてきた。
右翼といっても、思想なんてなくてカネだけでつながっている連中は従米右翼でもなんの矛盾も感じなかっただろうが、やはり多くは「屈服させられた」という屈辱感を胸の中に貯め込んできている。
安倍晋三は、まさに屈服させられた親玉が祖父であっただけに、その屈辱感は強いはずだ。
だからこそ、日本会議は安倍晋三に期待し、安倍晋三を首相にすることを悲願にして長年活動を続けてきたのだ。
2012年に返り咲きを果たしたのも、そうした期待を集めたことが大きかった。
■
一方で、新自由主義はどうか。
もっとわかりやすく言うと、グローバル巨大資本 である。
各国の制度を、自分たちの都合が良いように「岩盤規制」に穴を開けさせ、自分たちだけが優遇されるように政府を操る。
そして、大きな損失を出したときは、税金で穴埋めすることを強要する。
大きなマネーを投下するけれども、それは生産事業ではなく、利ざやを稼ぐだけのマネーゲームであり、その国の経済には何のメリットももたらさない。その意味では、新自由主義は資本主義ではない。
資本主義は、生産活動に資本を投下し、その剰余価値(付加価値)を搾取(回収)することがその根本原理なのであって、だれかが得した分だけ誰かが損をするゼロサムゲームによる利ざや稼ぎには、資本主義の要素はまったくない。
グローバル資本=米国と勘違いしている人もいるが、それは違う。
米国政府もまた、グローバル資本によって支配され、使役されている政府の中の一つであり、その旗頭である。
ちなみに、日本の「リベラル」はその文脈を見ようともしないが、トランプはそのグローバル資本の支配に対抗して 「アメリカファースト」を打ち出しているのである。が、この話題はまた別の機会にしたい。
1990年代に日本にも本格的に進出してきたグローバル巨大資本は、橋本行革、小泉・竹中路線を通して、がっちりと日本政界を羽交い締めにした。
もちろん、その仕事は米国政府を使役してやらせたのであって、従米右翼も表だっては抵抗できなかったけれども、裏ではかなりの反発はあったと思われる。
その象徴が、小泉の靖国参拝だ。あれは小泉の個人的な意思ではなく、最低限あれをやらなくては、自民党の大きな支持基盤である右翼がなっとくしなかったからだ。
グローバル資本は、自分たちの思い通りに日本政府を使いながら、しかも右翼を納得させられる指導者を必要としていた。
いちいち自民党がギクシャクしていたのでは、気持ちよく荒稼ぎすることができない。
そこで白羽の矢が立てられたのが 安倍晋三である。
極右の熱烈な期待に応えつつ、新自由主義の傲岸不遜な要求を同時に満たすという離れ業を、安倍晋三はやることになった。
■
その試みは、2007年には一度破綻した。
矛盾を抱え続けるストレスに耐えられなくなったのだ。
しかし、2012年、再度安倍の登場となった。
結局のところ、この役回りをこなせる政治家は、安倍晋三しかいなかったのである。
2度目の安倍政権は、強力な官邸体制を築いた。秘密警察の機能を中心に、官僚にも政治家にも圧倒的な権力を振るうことのできる官邸として、極右にも新自由主義にも対応できるようにして、その矛盾を突くようなものはあらかじめ潰していった。
そんな安倍政権にとって、格好のテーマが戦争法であり共謀罪だった。
グローバル資本に吸い取られてスッカラカンの米国政府は、なんとかして軍事費を削減することを必要としていた。
しかし同時に、世界中でのグローバル資本の「自由」な活躍を保証するために、米軍のプレゼンスを低下させることは許されなかった。
そこでうちだされた方針が、自衛隊の下請化である。自衛隊を増強してアジアの米軍の下請にする。米軍は司令部だけを残し、戦闘は自衛隊にさせる。
日本列島からホルムズ海峡まで、第7艦隊の守備範囲を自衛隊が下請として肩代わりする。
そのためには日本の憲法を変えるか、解釈改憲で法律をかえることが必要だった。
また、そのような戦争をやらせるためには、自由自在に誰でも捕まえることのできる弾圧法が不可欠であった。
この課題は、きわめて珍しく、極右と新自由主義の方向性が一致しており、極右は「軍隊が持てる」と喜び、新自由主義は「軍隊をタダで使える」と喜んで、一致団結して実現に取り組んだ。
まさに、極右と新自由主義の融合体である安倍晋三の独壇場だった。
■
しかし、異変が起きた。
2月に始まった 森友学園問題である。
3月に入るとこれまで万全の対策をとってきたマスコミ各社が、あろうことかバンバン報道しまくり、昼のワイドショーまでが森友で染まった。
さらに加計問題がつづき、アッキードどころか安倍晋三本人の心の友が登場した。
安倍官邸の極悪の振る舞いも暴かれ、ついに文部事務次官だった人物までが公然と反旗を翻した。
このキッカケは、おそらく安倍晋三のトランプ詣でだろうと思われる。
これまで忠誠を誓ってきた新自由主義を裏切って、安倍晋三はいそいそとトランプタワーに出向いていった。その姿は、まるでトランプ家の手代かのようであった。
この動きは、安倍晋三の核である極右の心が、トランプに頼ることで新自由主義から少し自由になって、もっと極右の方向に進めるのではないか と考えたのだろう。
その動きに、新自由主義をすすめるグローバル資本や、従来からのジャパンハンドラーズの面々は激怒した。
それが、森友問題や加計問題でのマスコミ解禁になっているのだろうと推察する。
また、森友問題が 「教育勅語」であり、もう一点の曇りもなく極右ネタであったことも、新自由主義サイドには許せなかった。
「教育勅語」とは、とりもなおさず「鬼畜米英」の教育であり、こんなものを奉じる勢力が安倍晋三を支えてきたということが可視化され、日本会議という実体も明らかになるにつれて、新自由主義サイドは愕然としたことだろう。
この時点で、共謀罪成立で安倍晋三の役目は終わり という既定路線ができたのではないか、と私は予測したのだ。
そして、これまでの日本であれば、その通りになったと思う。
■
しかし、そうはならなかった。
なぜか。理由は三つあると思っている。
ひとつは、野党第一党が民進党だからである。
民進党は、もう二度と政権はとりたくない。適度に「良いことを言う」野党としてぬるま湯で生きていきたい政治屋の集団として、決定的な場面では、決して政権が倒れないように横から下からサポートしている。
それは、今国会の運営を見ていれば明らかである。
ふたつめは、トランプがしぶといということ。
安倍がトランプを頼った動機は不純だったかもしれないが、新自由主義と対抗するためにトランプを使うという考えは外れてはいなかった。
トランプ政権でアーミテージ報告書路線は… 日米連携の設計図失う?
2017年1月20日 東京新聞
(引用以上)
そして、四面楚歌に見えるトランプは意外にもしぶとく、アーミテージやマイケル・グリーンなどの従来のジャパンハンドラーズはかえって影響力を失っている。
米国、支配層とFBIによるトランプ政権転覆活動の内実…ロシア工作説の真相
2017年06月20日 ビジネスジャーナル
みっつめには、安倍晋三が「やめない」と決心している ということだ。
ここが、実はいちばん怖い。
これまでの安倍政権は、なんやかんや言っても傀儡だったわけで、親分の方向性が変われば、お役御免になる運命だった。
ところが、月曜の会見で明らかになったのは、「なにがなんでもやめない」という、安倍晋三個人の怨念のような執念のような、権力の亡者となった姿だった。
権力者としての合理性も合目的性もかなぐり捨てて、ただただ己の権力欲、すなわちそれは「憲法改正をやり遂げた総理大臣として歴史に名を残したい」という強烈な意思を表明している。
2017年6月19日をもって、安倍晋三は本当のモンスターに変質した。
ジャパンハンドラーズも潰しにかかるだろうし、トランプも自らの問題に決着がつけば安倍政権がアメリカの利益にならないことに気が付くかもしれないが、しかしゲシュタポなみの秘密警察機能をもった安倍官邸が暴走をはじめると、これまでのような「ハンドラーズ」のやり方では止まらない。
どんなに悪い政治家でも、悪いなりの合理性、すなわち損得を考えているかぎりは、その動きは読めるし妥協の地点もある。北朝鮮のあの政権でも、金王朝の存続という合理性で動いているから、いきなりミサイルやらをぶち込んでくるはずはないと判断できる。
しかし、ブレーキペダルを引きちぎってアクセルを踏み込んだままロックしてしまった政権は、支持率が下がろうが、内紛が起きようが、目的に向かってただひたすらに暴走を続ける。
どうやら安倍晋三は、その領域につっこんでしまったようだ。
■
変質を遂げた安倍政権Ver3は、本当にヤバい。
これまでの安倍政権は、私はファシズムとはぜんぜん違うと思ってきたが、これからの安倍政権はファシズムに限りなく近づいていく。
民進党のような腑抜けた野党第一党と野党共闘したくらいでどうこうなるものではない。
むしろ、トランプ、習近平、プーチンとの共闘で安倍を潰す くらいのことを考えないといけない。
共産、社民、自由の各党も、それぞれのルートをフル活用して、米・中・露の国益にとって安倍政権がいかにハイリスクかを説得することを視野に入れるべきだ。
そして、私たちは言葉を発し、街頭にでることを諦めてはいけない。
これから急速に激化していく安倍政権の振る舞いに、「ええっ ほんまかいな」「いくらなんでもちょっと」と思う人が、一気に増えていく。
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