7月13日午後10時(その1) - 奇岩城(4)
※以下の文章は「奇岩城(4)」の内容に触れています。※
7月14日(フランス革命の記念日)の前日に、アルセーヌ・ルパンの伝記作家である「わたし」はルパンと再会する。しかし、「わたし」は訪問相手がルパンであることを認識するのに、少々時間がかかっているようである。
「あなたはだれですか? どうやってここへ入ってきたのですか? なにをしにきたんですか?」
彼はわたしの顔をじっとながめて、言った。
「ぼくがわからないのかね?」
「さあ……わからない!」
「へえ! そりゃ、おかしいね……よく考えてごらん……君の友人のひとりだよ……ちょっと特殊な種類の友人ではあるが……」
わたしは相手の腕をさっとつかんだ。
「うそおっしゃい!……あなたは、そういう人じゃない……そりゃ、うそだ……」
「じゃあ、なぜ、ほかの人のことよりその人のことが頭にあるのかね?」と彼は笑いながら言った。(岩波少年文庫「奇岩城」P137)
なぜ「わたし」はここまで相手がルパンだと認めるのに抵抗があるのだろうか。
一つには、部屋の照明の問題があるだろう。「わたし」は、男がやってくるまで、読書灯しかつけていなかった。
それから六週間めの、ある晩のことだった。わたしは、召使たちにあらかじめ休暇をやっておいた。七月十四日(フランス共和国革命記念日)の前夜だった。あらしがやってきそうな暑い晩で、外出する気にもなれなかった。バルコニー側の窓をあけっぱなしにし、電気スタンドをつけると、わたしはひじかけいすに腰をおろした。そして、まだ新聞を読んでいなかったので、目を通すことにした。もちろん、新聞はアルセーヌ・ルパンのことを報道していた。(岩波少年文庫「奇岩城」P131)
ボートルレを迎えるのが10時である。
彼は懐中時計をとりだして、ながめた。
「おや、十時か。電報が先方についていれば、まもなくくるはずだ……」(岩波少年文庫「奇岩城」P141)
ボートルレが到着した後、部屋の灯りをつけている。
ルパンは、口をきかず、わたしを不安にさせるような荘重な身ぶりで、部屋じゅうの電灯をつけた。部屋じゅうに光があふれた。(岩波少年文庫「奇岩城」P141)
暗がりから突如まばゆい灯りの中へ。灯りで浮かび上がる美少年。いいね。それにしても、「戯曲アルセーヌ・ルパン(3)」といい、この男は電気をつけるのが好きなようだ(笑)
※以上の文章は「奇岩城(4)」の内容に触れています。※
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