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2008/11/23

腕ひしぎ(その4)

気になっていた情報はほぼ分かったが、そうでないのが腕ひしぎは「udi-shi-ghi」かという点。こればかりは一次資料を当たらなければならないが、どうしようもない。フランス語の場合「e」は「ウ」と読むので避けたのかも知れない。フランス国立図書館のガリカで2005年10月27日付の新聞を調べたが、「フィガロ」紙と「プレス」紙でアーム・ロックという技名が見えるが、日本語の技名は出ていなかった。

面白いのが「プレス」の見出しである(記事前半部記事後半部)。レ=ニエが日本人であるかのように見える。「プレス」では一面で扱い、ボクシングより柔術の名前が先に来ているのも独特だ。

柔術とボクシング
日本式勝利

午後のセンセーショナルな試合
教師デュボワ対日本人レ=ニエ
《アーム・ロック》技

1893年に刊行された天神真楊流の極意書では、同じ漢字(腕挫)で「ウデシキ」と読ませている。Bのサイトの「Ude-shighi」表記は「うでひしぎ」と「うでしき」との折衷のような感じもする。

近代デジタルライブラリー:天神真楊流柔術極意教授図解:140頁
http://kindai.ndl.go.jp/BIImgFrame.php?JP_NUM=40075953&VOL_NUM=00000&KOMA=67&ITYPE=0
国立国会図書館 NDL-OPAC(書誌 詳細表示 ):天神真楊流柔術極意教授図解
http://opac.ndl.go.jp/recordid/000000493376/jpn
ソフトマインド - livedoor Wiki(ウィキ):天神真楊流柔術極意教授図解の目次
http://wiki.livedoor.jp/pg_gifu_dojoo/d/%c5%b7%bf%c0%bf%bf%cd%cc%ce%ae%bd%c0%bd%d1%b6%cb%b0%d5%b6%b5%bc%f8%bf%de%b2%f2%a4%ce%cc%dc%bc%a1


もう一点。ルパンがかけた技は「腕ひしぎ」か。これは柔道は全くの門外漢なので分からない。ルブランの描写が簡潔で、翻訳により解釈が違うのがまた混乱する。レ=ニエが使ったのは寝技で、ルパンは立ったまま使っているからレ=ニエの「腕ひしぎ」とは違うことは分かる。所謂時事ネタというやつで、どんな形の技であれ、「柔術」であり「腕ひしぎ」であることが肝心だったのだと思う。読者はレニエ=デュボワ戦を知っているわけだから、四角四面に技を披露する必要はないわけだ。

前半期のルパンシリーズの魅力の一つは、ベル・エポックと呼ばれる時代との同時代性にある。「アルセーヌ・ルパンの脱獄(1-3)」の発生を1900年頃と解釈するのは後の作品との兼ね合いで、むしろ初期短編は「今からほんのちょっと未来」を見据えて書かれていたのではないかと思っている。たとえば第1作でルパンは執筆当時にはまだ就航していない船の上に登場した(→未来の船・プロヴァンス号)。「ジュウジツが知られていなかった時代」というのは、今まさに柔術が脚光を浴びようとしている様を捉えた言葉だとも言える。

あるいは、

立ったまま、本来は寝技でかける”腕ひしぎ”を極めているあたり、ルパンも並の人間ではない。立ち技で極める”腕ひしぎ”もあることにはあり、最近でいうと、PRIDEで、桜庭がヘンゾ・グレイシーの腕を折ってしまったあの技が近いかもしれない。(夢枕獏の格闘塾第48回「ルパン対ホームズ その2」毎日新聞夕刊2006年4月11日。単行本「薀蓄好きのための格闘噺」に収録)

との意見もあるので、立ち技でもアリなのだろう。柔術の教師をやっていたことになっているのだから、ルパンが技を考案したと主張することもできる。


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