サモトラケの勝利の女神 - ルパン最後の事件(21)
敵が集結した銀行から無事帰還した主人公は「勝利だ!」と叫ぶ(偕成社全集「ルパン最後の事件」P236)。それが乳母と同じ名前なものだから、乳母は何事かと驚いて飛んでくる。その乳母にさては自分の名前に飽きたな、変えろ、と言って出した名前がサモトラケである。
「湯たんぽだ、サモトラケー(ギリシアの島。サモトラケー沖海戦でギリシア海軍が勝利した地として有名)? 湯たんぽとは、すばらしいぞ! そうだ。この勝利を意味する島の名前を、おまえの苗字にくっつけたらどうかね? サモトラケーなんて、かなりいい名前だぞ!(略)」
※括弧内は割書きの訳注
サモトラケー(サモトラキ、サモトラケ)はギリシャにある島で、古代には神殿があった場所。
サモトラキ島 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%A2%E3%83%88%E3%83%A9%E3%82%AD%E5%B3%B6
お前の苗字に付けたらどうだというのは、ヴィクトワール・ド・サモトラケ(フランス語読みだとサモトラス?)と名乗ればどうか、と言っているわけである。フランス語でヴィクトワール・ド・サモトラケすなわちサモトラケのヴィクトワール(La Victoire de Samothrace)といえば、これ。
《サモトラケのニケ》 ルーヴル美術館(外部リンク)
古代ギリシア・エトルリア・ローマ美術 : ヘレニズム時代のギリシア美術(前3-前1世紀):サモトラケのニケ ルーヴル美術館(外部リンク)
ルーヴルの至宝 - デカダンとラーニング!
http://blog.goo.ne.jp/phantom_o_t_o-0567/e/121e5377b68891e22a005a8cbbc737d8
ルーヴル美術館に所蔵されている3メートルは有に越す巨大な勝利の女神像である(台座を除く女神像の部分は約2.5メートル)。頭部を欠いているものの、翼を有した美しい肢体が復元されている。日本では「サモトラケのニケ」と呼ばれているが、ニケ(ニーケー)はギリシア神話の勝利の女神で、ローマ神話ではウィクトーリア(ずばり勝利を意味する)に該当する。フランス語ではヴィクトワール。まったくこの子はいくつになっても…とヴィクトワールが思ったかどうかは分からないけれど、グロッグを飲み干すしかない気持ちは分かる。
サモトラケのニケ - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%A2%E3%83%88%E3%83%A9%E3%82%B1%E3%81%AE%E3%83%8B%E3%82%B1
テオポリス:ニケ(長音表記ニーケー)
http://www.h6.dion.ne.jp/~em-em/page125.html
この男がこういう戯言を言うのは珍しくない。同じ作中でも、偽名でオートゥイユ=ロンシャン公爵(Archiduc d'Auteuil-Longchamp)だなんて名乗っている(同P64)。これは単にパリ郊外にある競馬場の名前をくっつけたもので、オートゥイユとロンシャンの競馬場は、パリの西の郊外、ブーローニュの森に隣接した東と西にある。オートゥイユは周辺の地名でもあり、高級住宅地のイメージがある土地で、この男が住んでいる場所でもあるが、。イニシャルをあわせたつもりなのかしらん。
他にヴィクトワールの名前候補として出てきた名前は「テルモピュレー」と「トルビアック」である。テルモピュレー(テルモピュライ、テルモピレー)は、古代しばしば戦場となった土地で、紀元前480年にスパルタ軍が少数でペルシアの大軍を相手に3日間善戦したことで有名。その数300対200万とも。この戦いを題材にした映画が「300(スリーハンドレッド)」で、2007年に日本公開された。
映画 300 <スリーハンドレッド> - allcinema
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=327079
テルモピュレ - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%83%AB%E3%83%A2%E3%83%94%E3%83%A5%E3%83%AC
トルビアックは、フランク王国の建国者であるクロヴィスがアラマン族を打ち破った場所。ヴィクトル・ユゴーはレ・ミゼラブルにおいて、アウステルリッツの戦いをトルビアックの戦いになぞらえている。二つに共通しているものは歴史的大勝利ということか。
Bataille de Tolbiac - Wikipedia(仏語)
http://fr.wikipedia.org/wiki/Bataille_de_Tolbiac
ビクトル・ユーゴー Victor Hugo 豊島与志雄訳 レ・ミゼラブル LES MISERABLES 第三部 マリユス
http://www.aozora.gr.jp/cards/001094/files/42602_25760.html
一つの世紀は他の世紀の模倣にすぎない。マレンゴーの戦いはピドナの戦いの模写であり、クロヴィスのトルビアックの戦いとナポレオンのアウステルリッツの戦いとは、二滴の血潮のように似通っている。
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