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2008/04/21

怪盗紳士という称号(その5) - 付記

※以下の文章は前半期の作品を中心にルパンシリーズの内容に触れています。※


「戯曲アルセーヌ・ルパン(3)」においては、次の箇所で紳士強盗の肩書きが使われている。

Hein! est-ce assez la revanche de Guerchard! de cette vieille ganache de Guerchard?... Brummell des voleurs en bonnet de prison... Le gentleman cambrioleur sous les verrous!.. Pour Lupin ca n'est qu'un petit ennui, mais pour un duc, c'est un desastre... ("Les aventures extraordinaires d'Arsene Lupin" Vol.1 P525-526 OMNIBUS)

「(略)どうだね? ゲルシャールにとっては……君があざけった、おろかでまぬけな老いぼれのゲルシャールにとって、すばらしい復讐じゃないか? 囚人帽をかぶった、いかさまの伊達男! 監獄入りの泥棒紳士め! ルパンにとってはそんなことはなんでもないだろうが、ひとりの公爵にとっては災難だ!(略)」(偕成社文庫「ルパンの冒険」P320)

偕成社文庫は英語ノベライズ版からの翻訳なので少し内容が違うけれど、分かりやすいので引用した。ゲルシャールは、ルパンが普段紳士強盗と名乗っていることを皮肉って「監獄入りの紳士強盗!」と言っているのである。(監獄入りというのは未来に起こることを言っているので、め、とつけるとニュアンスが違うかな)

なお「gentleman cambrioleur」は英語ノベライズ版では「gentleman-burglar」となっている。英語の「burglar」もフランス語の「cambrioleur」と同じく押し込み強盗の意味。ブランメル(Brummell)は実在の人物で、ここでは伊達男、ダンディの代名詞として使われている。ダンディやスノッブという言葉は、小説にはなく戯曲だけに現れる言葉ではないかと思う。ルパンがダンディかどうかは別として。ルパンの肩書きがゲルシャールの口から発せられることを含めて、小説と戯曲ではいくつかの差異が感じられるため最初の考察からははずした。


ルパンの先達であるラッフルズの単行本タイトル「The Amateur Cracksman」は、ラッフルズの出自がジェントルマンであり、アマテュアのクリケット選手(cricketer)であることを表している。しかし、盗みの動機には困窮、生活資金の不足がある。しかし紳士強盗は金に困ることがないし、盗みをしなくても生活できる。アルセーヌ・ルパンの出自はジェントルマンではない。
ラッフルズとルパン

余談として、紳士強盗で検索して引っかかる映画「ブランケット&マクレーン」のGentleman Highwaymanは、「礼儀正しい追い剥ぎ」を意味するようだ。
CINEMA TOPICS ONLINE|プランケット&マクレーン
http://www.cinematopics.com/cinema/news/output.php?news_seq=431
James MacLaine - Wikipedia, the free encyclopedia(英語)
http://en.wikipedia.org/wiki/James_MacLaine


前→怪盗紳士という称号(その4) - 対義語あるいは類義語

※以上の文章は前半期の作品を中心にルパンシリーズの内容に触れています。※

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