「奇岩城」探求(その5) 城館の様式
※以下の文章は「奇岩城(4)」の内容に触れています。※
エギーユの城館はルイ14世が建てたことになっている。私は建築様式について全く知らなかったので、いくつか建築の本をぱらぱら見てみていると、なんとなく、屋根の上をごちゃごちゃ装飾するのはルイ14世の時代より古いのでは…という感想を持った。とくに教会において、尖塔や小尖塔などが建物の上に林立しているのはゴチック建築に多い。それでエギーユの城館は何様式だったかと確認してみて初めて気づいた。ルイ13世様式! ルイ何世っていっぱい出てくるんだものややこしい。
→該当箇所の引用は「奇岩城」探求(その4)にある。
専門的なことは抜きにして単純に考えるならば、ルイ13世の頃の建物がルイ13世様式で、ルイ14世の頃は別の様式なんじゃないの?(例えばルイ14世様式とか。適当に言ってるけど) とすれば、ルイ14世は城館を建てるときにわざと少し古い様式にしたってことになる。まさに“歴史のわな”。
ルイ13世…生没年1601-1643、在位1610-1643
ルイ14世…生没年1638-1715、在位1643-1715(ルイ13世の子。1682年ヴェルサイユに遷宮)
城館が立てられたのは1680年。だから1680年を強調していたのだ。怪文書が出回った翌年であることが一つ。そして、建築様式と年代が合わないことがもう一つ。ルイ14世のシャトーといえばヴェルサイユ宮殿だけれど、ヴェルサイユ宮殿は建物により建築様式がさまざまで、ルイ13世様式も採用されていたらしい(大きなくくりで言えばヴェルサイユ宮殿もルイ13世様式もバロック様式)。もともとルイ13世の時代に建てられた館があって、1660年代から増築が始まったようだ。
ここで年代を誤魔化すというルイ14世の意図を読み取るか読み取らないかで、作中でのリアリティが変わってくる。ボートルレが学業を中断してエギーユを探すには信じ続けられる何かがあったはずで、それを用意しないはずはない。それがこの城館だ。そして、わなが発覚するマシバンの手紙は読者が一般的に知っている歴史・現実との乖離が始まると言うことでもある。というのは「鉄仮面」の挿話にしても、フランス人にはもっと身近だったはずで、当然鉄仮面の正体について一家言持っている人もいるわけなのだ。そういう読者は自分の知っている“史実”と違うと思っただろう。一味違う「奇岩城」流の歴史というのが、このエギーユ城館の発覚から始まっているのである。
そういうことを考えていたら、鉄仮面が投獄されたのは1669年らしいと知った。史実と違うと言ったのは“正体”について言ったつもりだったけど、年代についても考える必要がありそう。嘘と言う記号なのか認識違いなのか、さてまた鉄仮面は一人じゃなかった説があるのか。以下のサイトに「奇岩城」関連の略年表がある。
怪盗ルパンの館:奇岩城その3
http://www2s.biglobe.ne.jp/~tetuya/lupin/kiganjo3.html
前→「奇岩城」探求(その4) 城館の概要
次→「奇岩城」探求(その6) 城館の塀
※以上の文章は「奇岩城(4)」の内容に触れています。※
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