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2006/10/02

フランスの切手「探偵小説のヒーローたち」

1996年にフランスで発売された「Heros francais du roman policier」と題された切手です。「探偵小説(推理小説)のフランス人ヒーローたち」となるでしょうか。ロマン・ポリシエ(roman policier)は探偵小説のこと。ポリシエは警官のことですが探偵を意味します。

シリーズとして6種の切手が出ていますが、6枚一組になったシートが発売されており、その台紙には各ヒーローについての説明が書かれています。それを引用しつつ紹介します。引用部はフランス語か英語が分かる方はリンク先をどうぞ。私は分かりませんので自動翻訳を元にした内容です。


Detective Fiction on Stamps: French Heroes of Detective Fiction
http://www.trussel.com/detfic/france.htm

◆ロカンボール(Rocambole)

前世紀(19世紀)の新聞読者が貪り読んだロマン・フィユトン(新聞小説)の英雄、ロカンボールは大変人気があり、現在の言葉になった「rocambolesque」という形容詞を生みました。ピエール=アレクシス・ポンソン・デュ・テラーユ(1829-1871)によって生み出された、あらゆる悪行をする望ましくないこの人物は、しかしながら、強きものに対峙する弱きものの味方につく方法を知っていました。

※rocambolesque…荒唐無稽な、奇想天外なという意味

1857年登場。悪人だけれども義賊であるということでしょうか。rocamboleを辞書で引くとニンニク、蒜の仲間の植物が引っかかります。ロカンボール的=荒唐無稽なという言葉が生まれたほどでしたが、日本ではあまり紹介されず、戦後に出た翻訳はないようです。


◆アルセーヌ・ルパン(Arsene Lupin)

紳士強盗は心底貴族であり、ジャン=ポール・サルトルにとっては「裏社会のシラノ」、彼は奪うに値した金持ちから奪取しました、変装の名人アルセーヌ・ルパンはあらゆる役割を演じ、全てのアイデンティティを奪いました。作者モーリス・ルブラン(1864-1941)はこの永遠の冒険家におよそ50の小説を捧げています。

※シラノ…シラノ・ド・ベルジュラックのこと。17世紀に実在した人物で、1897年にエドモン・ロスタンが戯曲化した。

1905年登場。パリの市会議員の名前をもじったのだという俗説がありますが、真偽は不明です。初登場時から「アルセーヌ・ルパン」でした。ルパンという名前自体偽名であるとも本名であるとも示唆されていますが、フルネームをアルセーヌ・ラウール・ルパンだと推定する人もいます。翻訳でほぼすべての作品を読むことができます。


◆ルールタビーユ(Rouletabille)

ルパン同様、ルールタビーユはあらゆる神秘と変化を知悉し、読者をなぞの解けない冒険に引き寄せました。今世紀(20世紀)初頭に大変人気があったこの明敏なアマチュア探偵は、もう一人の英雄シェリ・ビビの利益のために、著者ガストン・ルルー (1868-1927)に早くに見捨てられました。

※シェリ・ビビ…ルルーが生み出した怪人タイプのヒーロー

1907年登場。名前はそのまま読めば「お前の玉を転がせ(roule-ta-bille)」という意味で、当時の俗語で「頻繁に職を変える人」という意味があったらしい。名前のとおり大きくて丸い頭、小さくて丸っこい体型のようです。初登場時はボワタビーユという名前でしたが、同名をペンネームとしている記者がいたため改名。フルネームはジョゼフ・ルールタビーユ、本名はジョゼフ・ジョゼファン。ルールタビーユシリーズは8冊出版されていますが、現在も翻訳で読めるのは「黄色い部屋の謎」(「黒衣夫人の香り」は新刊では入手難)のみで、シェリ・ビビシリーズはおそらく日本に紹介されていません。


◆ファントマ(Fantomas)

エレガントでスポーティで自分自身のマスクをかぶらない世界の男、ファントマは黒い衣装を身につけると凶悪な犯罪者に変わります。1911年にピエール・スーヴェストル(1874-1914)とマルセル・アラン(1885-1969)によって生み出されたこの不吉な天才は読者の世代を恐れさせ、しばしばスクリーンに登場しました。

1910年登場。ファントマはFantome(幽霊)とFantomusという言葉をヒントに創られた名前です。ファントマは映画のほうがなじみのある方もいるかもしれません。有名なのは1910年代のルイ・フィヤード監督の5作、1960年代のアンドレ・ユヌベル監督の3作でしょうか。ハヤカワ文庫から3冊抄訳が出ましたが絶版。


◆メグレ(Maigret)

彼の大きなシルエットと永遠のパイプは伝説的になりました。 1930年代にジョルジュ・シムノン(1903-1989)によって生み出されたメグレ警視は人間味のある警官を体現し、内面から解くためにその状況に身をおきます。「彼は隙間、プレイヤーの人間が見える瞬間を注意して見た」とシムノンは書いています。

1931年登場。Maigretはmaigre(痩せた)という言葉に通じるとか。といってもメグレ警視は巨漢。ファーストネームはジュール。フランス人には複数のファーストネームを持つ場合がありますが、他の名前については異論があるようです。かなりの数の翻訳が出ましたが、入手しやすいのは集英社文庫の1冊、偕成社文庫3冊あたりかも。


◆ネストール・ビュルマ(Nestor Burma)

生意気で、冷笑的で、激しく独立的で、おかしくて、魅力的な…つまりフランス人の典型、それがフランスのロマン・ノワールの父レオ・マレ(1909-1996)によって生み出された優れた私立探偵ネストール・ビュルマです。その傑作「新編パリの秘密」シリーズでビュルマは首都の15の地区を探検します。

1943年登場。ジョゼフ・ジョゼファンのように(?)、それは名前じゃないといわれるような名前のようです。Nestorといえばギリシア神話の登場人物、Burmaといえばビルマ(ミャンマー)が引っかかるのですけど。どういう意味か分かりません。何冊か邦訳がでましたがすべて絶版。


見てのとおり翻訳事情がよくないので、ロカンボールとファントマは読んだことがありません。探偵側が3人が怪人(怪盗)側が3人と同比率なのがフランスならではのようで興味深いです。日本で同種の切手が発売されるとしたら、怪人二十面相じゃなく明智小五郎か少年探偵団がモチーフになるでしょうし。

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