ゼロ・グラビティ
こういう映画は映画館で観なきゃ駄目でしょ、というわけで。一応ネタバレ注意。
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スペース・デプリによる事故で宇宙空間にたった一人、放り出されてしまった宇宙飛行士役にサンドラ・ブロック。嫌いな役者じゃないが、私が観るような映画にはあまり出ないので、『デンジャラス・ビューティー2』以来だ。
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果たして彼女は無事、生還できるのか……いや、生還できるでしょ、でなきゃ商業作品として成り立たない(だから、「一応」ネタバレ注意、なのである)。見所は、どうやって帰還するのか、と映画というジャンルにおいては稀に見る「科学的に正しい」宇宙空間の描写である。
いや、細かい粗は探そうと思えば探せるんだが、SF者としては、「科学考証が蔑ろにされていない」というだけで感涙ものなのである。
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ただ、サンドラ・ブロックやジョージ・クルーニーが太陽光パネルに叩きつけられると、ばーんって音がする時があったのは(しない時もあった)、いくらなんでも。そりゃ自分の宇宙服の中の音は聞こえるから、自分が叩きつけられた音は聞こえるだろうけど(「ばーん」という音かどうかは知らんが)、そういう「本人にだけ聞こえる音」(および「本人が感じる衝撃」)を表現するつもりだったら、もっとクローズで撮るべきではなかろうか。ロングショットで「ばーん」じゃあなあ。
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それと音楽も、一般的な映画に比べれば少なめだが、もっと少なくてもいいと思う。普通すぎる音楽だしな。ジョニー・グリーンウッド(『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』)みたいな、美しいけど神経に障る、シンプルなストリングスとかだったらよかったんだが。
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ジョージ・クルーニーは、あのジョージ・クルーニー以外の何者にも見えない濃い顔があまり好きではないんだが、今回は宇宙服のせいで顔がほとんど見えない。宇宙服のせいで仕草でニュアンスを出す演技もできず、ほぼ声のみの演技だが、これがなんというか、非常にというか妙に説得力があるのであった。ベテラン宇宙飛行士らしい声と口調というか。サンドラ・ブロックを助けるための「決断」や、その後の「再会」は、暗く重い演技だったら、しらじらしくなってしまったと思う。あくまで明るく軽く、しかし明るすぎも軽すぎもしない、たいそう説得力のある演技でした。
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