お蔵出し1
ふと思い立って、未発表の短編を上げてみることにしました。「本を買ったり借りたりする前に、仁木稔の作風を知りたい」という需要があるかもしれない、と思い付いたからです。未発表というのは要するにデビュー前に書いて、どこにも応募してないもの、ということですが、短いし(400字詰め22枚)、話もきれいにまとまっているので、この目的には相応しかろうと思うのです。
ジャンルは異世界ファンタジーになります。私は異世界ファンタジーのいわゆる世界設定が作れないので、長編で書くことはないでしょう。短編なら世界設定をあまり作り込む必要がないので書けますが、今のところ書こうという気になりません。というわけで、これが最初で最後かもしれない。私にとって異世界ファンタジーとは、何よりもまず70年代半ばから80年代初めの海外女性作家作品なので(マキリップとかタニス・リーとかジェイン・ヨーレンとかエリザベス・A・リン)、この短編もその辺りを目指しています。
また、耽美風美形が登場するのも珍しい。実は美形や耽美といったものは苦手なのです。しかし80年代以降のファンタジーやSFは国産も海外ものも美形だらけで(タニス・リーも初期は必ずしも耽美じゃなかったのにな)、私はなんとなく違和感を覚えながらも、それが苦手だという自覚を持たずに来てしまったのでした。で、この短編で初めて美形、しかも耽美風キャラを出してみたものの、ついついおひゃらけた言動を取らせてしまい、その次の長編で再チャレンジしたら、途中で飽きた。まあ、取り澄ました美形より突っ込み易い隙のある美形のほうがもてる、という意見もありますしね(沙村広明『おひっこし』より)。仁木稔作品では、美形キャラ自体が希少なわけですが。
といった相違点もありますが、この短編はいろんな意味で仁木稔らしさが出ていると思います。書いたのは確か2000年、小説を書き始めて1年くらいしか経っていない頃ですが、仁木稔ができるまで、というよりすでにいろいろ出来上がっちゃってるのが笑えます。佐藤先生にも「おもしろい」と言っていただいた作品なので、今晒してもあまり恥ずかしくはありません。全然恥ずかしくないわけじゃありませんが。
タイトルは『鴉の右目の物語』。当たり前ですが、著作権は仁木稔にあります。
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