こんばんは、すいもうです。
なんか、FC2の調子が悪いんですかね?
昨日の更新分が、更新の一覧に載っていないな←汗
でも、実際には更新されているんですよねぇ。
カレンダーで昨日の日付を選ぶと、表示されていますし。
どうなっているんだろう←汗
まぁ、それはさておき。
今回もたぬきさんです。
謎の女性の正体が明らかに←棒読み
では、お黄泉ください。
夢、吹きすぎし~月想う~ 百七十九話
「え、ノっちゃん?」
恐る恐ると、ノっちゃん(仮)に声をかけた。
成長した娘はこうなるだろうなぁと思わせてくれる人だった。だからなのか、親しみはあるけれど、同時になれなれしくしすぎるのもどうかと思えてしまう。
それでもあたしが第一声に発したのは、娘の名前だった。あまりにも似すぎているのだから無理もない。もっともに過ぎていると言っても、あくまでもあの子が無事に成長すれば、こうなるだろうなぁと思わせてくれるという意味だから、本当にこういう風に育ってくれるかどうかはわからなかった。
だけど少なくとも、あたしの中では、あの子はこういう風に育ってくれると思えた。不思議なことだけど、なぜかそう断定することができた。それもまたわからないことだけど。
「お、おい、子鴉。あまりふざけた名前で」
「構わぬよ、王」
「し、しかし」
「特に問題があるわけではない。それにだ。そう呼ばれるのがあたり前なのだ。なら問題などあろうはずもない」
「よろしいので?」
「ああ、構わない」
「承知しました」
ノっちゃん(仮)に対するあたしからの呼び名が気に食わなかったのか。もしくはまずいと考えたのか。いつもでは考えられないほどに、恐縮しながら王さまが言う。そんな王さまに対して、ノっちゃん(仮)は微笑みを携えながら、余裕ある態度を見せている。そんなふたりのやり取りを見ているだけでも、ノっちゃん(仮)は王さまよりも立場が上の人間なのだろう。ただ少し上程度の人間であれば、さすがにここまで恐縮するとは思えなかった。ここまで恐縮するとなると、王さまにとっては、雲の上の存在に近い地位の人なのかもしれない。言葉面を見ると、なんだかおかしい気もするけれど、いまの王さまを見るかぎり、そう判断するしかなかった。
「えっと、王さま? この人と知り合いなん?」
「知り合いと言えば、そうだな。ただあまりにも畏れ多くて、知人なんて言葉では」
「お初にお目にかかります。ノアと申します。よろしくお願いいたします。夜天の王殿」
どういう人なのかを尋ねると、王さまが説明に苦慮しはじめた。どうにも説明しづらい人のようだ。というか、畏れ多い方とか、王さまの口から聞くなんて初めてだった。いったいどんだけ地位のある人なのだろうか。そもそもその地位自体、どういう意味でのものなのかが、非常に気になるところだった。そんなとき、急にノっちゃん(仮)、いや、ノアさんが名乗ってくれた。穏やかな笑みとともに、そっと右手を差し出してくれる。握手を求められているのだろう。見れば王さまは完全に固まっている。王さまをフリーズさせるようなことを、ノアさんは平然とやらかしているのだろう。本当にあたしはこのまま握手してもいいのか、一瞬悩んだ。悩んだけど、考えても仕方がないことだった。だっていくらノアさんが地位のある人だったとしても、どういう人なのかもあたしはよく知らないのだから、畏まろうにも畏まれない。なら開き直って、いつも通りで接した方がいいだろう。まぁ念のために、年長者に対する態度で接しよう。見た感じ、あたしよりもいくらか年上のようだし、そのつもりで接すれば問題はないはずだ。
「あ、こりゃどうも御親切に。八神はやてって言います。よろしゅう頼んます」
頭を軽く下げながら、気さくに握手に応じる。王さまが、このたわけ、とか言いそうな表情であたしを睨んでいるけれど、ノアさんがちらりと見やると、また表情を固まらせてから、大きく肩を落とした。いまの一瞬でなにかしらの攻防があったのかもしれないけれど、いまはどうでもいいことだった。
「そんでノアさんは」
「ノア、と呼び捨てで構いませぬ」
「いやいや、さすがに見た目で年長者とわかる人に対して、呼び捨てとかは」
言いながら、どこぞのシスコンお兄ちゃんに、俺に対してはいいのか、と言われそうな気はしたが、まるっとスルーしよう。どうせあのシスコンお兄ちゃんに対しては、年長者への畏敬の念を向ける心つもりなど最初から存在しない。それはそれであのシスコンお兄ちゃんになにかしらのことを言われるかもしれんけれど、こんなよくわからない世界で言った言葉が、あのシスコンお兄ちゃんに伝わるとは思えない。だから特に問題はない。少なくとも、全あたしの中では、すでに決定事項である。
「むしろ、あなたにそういう風に接していただく方が、私としてはあまり好ましくない、とまでは言いませんが、どうにもむずがゆいのですよ」
「そんなものですか?」
「そんなものです。まぁ無理にとは言いませんから、いまのままでも結構ですが」
「そうですか。じゃあ、申し訳ないですけど、やっぱりいまのままでいいですか?」
「はい、承知しました」
ちょっと残念そうな顔をするノアさん。いったいなにが彼女をそうさせているのかが、いまいちわからん。わからんけれど、とりあえずノアさんに対してどう接するかは置いておこう。いま大事なのは、もっと別のことだった。
「それでノアさん」
「なんでしょう、八神殿」
「さっき言っていたことは」
「ああ、そのことですが。簡単ですよ」
ノアさんはそう言うと、笑顔を消して、真剣な表情を浮かべた。その表情はやっぱりノっちゃんによく似ていた。
「あなたの行動を決めるのはあなた自身です。たとえどんな前例があろうとも、あなたはあなたの思うままに行動すればいい。あなたがもっとも望む行動を、あなたは行えばいいのですよ」
ノアさんはあたしをまっすぐに見つめながら、そう言ってくれた……。
テーマ : 二次創作 - ジャンル : 小説・文学
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