こんばんは、すいもうです。
昨日はわりと散々でした。
いやぁ、自転車の前輪のパンクから始まり、昼を食べるのがいろいろなことが重なって遅くなるし、艦これでは、まともに艦載機が開発できないというね←汗
途中からなんかおかしいような気もしますが、わりと散々な一日でした。
今日はいい日になるかな?
まぁ、それはさておき。
今回は視点が変わりました。
誰なのかは、追記にて。
では、お黄泉ください。
夢、吹きすぎし~月想う~ 百六十五話
「──頑張って生きるよ、ってあたしは言ってほしいかな?」
あの世界のあたしに向けて言えたのは、当たり障りのない言葉だった。
正直な話、取って代われるのであれば、代わりたい、と思っていることは事実だ。けれどそれを選べば、いままであたしが支払ってきた代償がすべて意味のないものになってしまう。あたしたちの世界の「あの子」を捨てて、別の世界の「あの子」を選ぶと言うようなものだ。
そんなことは絶対に許されない。もしもそれを選べば、シグナムたちはあたしを失望し、あたしのもとからいなくなるだろう。あの子たちが、あたしのそばからいなくなるなんてことはない。でも少なくともあたしは、あの子たちのそばからいなくなるだろう。いやいられるわけがなかった。いていいわけがなかった。そんな恥知らずなことをして、どうしてあの子たちの主として一緒にいられるだろうか。
だから抑え込む。代われるものであれば代わりたいという言葉を必死に飲み込んだ。言った瞬間、あたしはあたし自身を認めることができなくなる。いま以上に、いまの自分を嫌いになってしまう。あたしはそんなに自分が好きじゃない。「あの子」のことを救えなかったあたし自身を嫌っている。でもそんなあたしをあたしの家族たちはみんな好きでいてくれる。みんなに好かれているあたしを、あたしは嫌っていない。
だけどもし代わりたい、なんて口にしてしまえば、そんなあたしすらもあたしは嫌いになってしまう。これ以上自分を自分で嫌いにはなりたくなかった。
だからこそ言えることがあるとすれば、それは代わりたくても代わることのできないあたしの分まで、あの世界で頑張って生きてほしい、ということ。いまはその手にはなにもなくても、いずれあたしが望むすべてを手に入れられる、あの世界で思う存分に生きてほしい。そしてあたしができなかったことを、あの子を誰よりも幸せにしてあげてほしい。あたしに言えることは、それくらいだった。それ以上はなんて言えばいいのか、まるでわからなかった。
「それだけでええの?」
あの世界のあたしが、恐る恐ると聞いてくる。どうやら予想外の返事だったみたいだ。恨み言のひとつやふたつは言われて当然だと考えていたのかもしれない。まぁ正直恨み言は言わないけれど、羨ましいとは思う。その気持ちを隠すことはできないし、隠そうとも思わない。
でもそんなあたしの願いや気持ちをすべて受け止めたうえで、この子には頑張って生きてほしい。いまは生きる気力を失いつつあったとしても、それでもめげることなく、前を向いて生き抜いてほしい。できることならば、いまでも十分に羨ましい世界で、あたしが歯切りしたくなるくらいに、羨ましがられるようになってほしい。もし本当にそういう風に生きることができたのであれば、こう言ってあげよう。そう──。
「「喧嘩売っとんのか、このガキャぁっ!」と叫びたくなるように生きてほしいって思うよ。まぁだからそういう風になってな。ちなみに本気で言わせられるようになったら、どんな手段を用いても、確実にあたしの魔法をぶち込むから、堪忍してな」
最後にひとつ余計かと思うことを言っておいた。これくらいの嫉妬ゆえの発言は許してほしい。むしろ許せと思う。だってな、あたしが喉から手が出るほどに羨ましい状況なんやから、これくらいのかわいらしいヤキモチくらい大目に見てもらっても構わないと思うんよ。だから問題はないと思う。うん、少なくとも全あたしの中では、確定事項やから問題はないな。
「……笑顔で言うことやないと思うけど、それ」
「ええやんか。特に減るもんやないし」
「いや、減るよ。確実にあたしの命のともし火が減る。っていうか下手したら消えかねないと」
「あっはっはっは、さすがに殺傷設定ではぶち込まんって。せいぜい半分くらいにとどめておくよ」
「半分ってなに? なにを以て半分なんよ? っていうか、半分は殺す気やんか!?」
あの世界のあたしがなぜか叫び出す。おかしいな、あたしはジョークを言ったつもりなんやけど。あくまでも半分はだけど。まぁそれを言うたら、さらに叫び出しそうな気がするから、あえて言わんとこうかね。
「まぁ、うん、あれや。それを含めても頑張って生きてな」
親指を立てて、いわゆるサムズアップをする。それでもあっちの世界のあたしは困惑しているみたいだった。でも最終的にはがくりと肩を落として、深いため息を吐きながら頷いてくれた。うん、これで問題はなにもないな。少なくともあたしの中では、問題解決やね。
「やれやれ、最終的にはそれか。本当に貴様という奴は。まぁそれが貴様か」
喉の奥を鳴らしながら、王さまが笑った。呆れてもいるようではあるけれど、あたしらしい返事だったのが、お気に召したようだ。もっとも王さまに気に入られようがいられまいが、あたしには関係ないことだけど。
「で、だ。もうひとりの「子鴉」よ。貴様は、このアホの言う返事で満足したか?」
「え?」
「このアホの言う返事で貴様は納得できたか? それともまだ納得できぬのか? どっちだ?」
「えっと、そうやな」
性急すぎとちゃう、と思うけれど、それもまた王さまらしいことだった。っていうか、誰がアホや、誰が。いま言うても聞いてくれんとは思うから、あえてなにも言わんけど。
「少なくとも、あたしは──」
あっちの世界のあたしは恐る恐るとだけど、口を開いた……。
テーマ : 二次創作 - ジャンル : 小説・文学
コメントの投稿