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2015年3月16日 (月)

『農業過保護論』のウソ   

民主党管政権のTPP参加表明から、4年以上が経った。
TPPは当初から農業の関税問題として論じられ、農業過保護論が振りまかれてきた。
その論調は、第二次安倍政権になって、さらに強化され、今や「競争力ある農業」あるいは「農業の競争力」が課題であるとされる。


最初のボタンのつけ違えが、どこまでも誤りを拡大していく。

第一に、日本の農産品に関する関税は、低い。
そんなことすら、メディアは明らかにしようとしない。
下のグラフを見れば、一目瞭然である。
日本の農産品に関する関税は極めて低い水準にある。
(以下、篠原孝議員の昨年2月27日付の予算委員会質問にデータによる)


Nousanhinkanzeirituhikaku


第二に、日本の農業は、過保護どころか、日本政府から不当に冷遇されてきた。
世界の主要な主家国家は、食糧の問題が主権の問題に絡むことから、産業構造が高度化した後も、農業を特に保護している。


Nougyouhogohikaku

数字だけではわかりにくいので、グラフにしてみた。


Noukaatariyosan


一農家当たりの農業予算、日本と韓国が群を抜いて低い。
日本が一農家当たり概算100万円程度にあるのに対して、ドイツは500万円を超えている。
アメリカですら400万円を超えている。


日本の農業政策がいかに貧しいものであったかは、農家に対する直接の所得保障になると、いっそう顕著である。


Nougyoutyokusetusiharaigaku


農家一戸当たりに対する直接の支払額は、日本が35万円程度なのに対して、フランスやドイツに至っては、240万から250万円に及んでいる。
直接支払は、農家に対して、作況を問わず、その生活を保障する。
農家の生活を安定させることによって、不安なく農業を続けられる基盤をヨーロッパの国々は与えているのだ。
ドイツの食糧自給率は90%を超え、フランスの食糧自給率は130%近い食糧輸出国である。


日本の農業を衰退させてきたのが、自民党の農業政策であることは明らかである。
日本農業の現状が農業を軽視した国の政策にあるのを踏まえず、農家の努力が不足しているかのように論じるメディアには明らかに問題がある。


たとえ最小限のものであったとしても、生活の安定が保障されるのであれば、農業という仕事に魅力を覚える若者は、決して少なくないはずである。



以下は、これらの資料を示して行われた昨年2月27日の民主党首議員議員篠原孝氏の質問を報じる民主党のホームページからの引用である。
農業過保護論、農業競争力論は、データを無視した、全くプロパガンダである。


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   衆院予算委員会で27日、TPP・エネルギー等に関する2014年度予算に関する集中審議が行われ、民主党の2番手として篠原孝議員が質問に立ち、(1)日本農業の現状(2)TPP交渉(3)ISD条項(4)外交(5)NHK会長と経営委員――等の問題を取り上げ、安倍総理をはじめ関係大臣の認識を質した。

 篠原議員は「日本の農業に関していろいろと誤解が多い。国民の皆さんにも誤解を解いていただきたい」と述べ、日本農業の実態を確認したいと表明した。平均耕地面積が2・3ヘクタールであるなか、「牛肉と豚肉の関税を絶対になぜ守らなければいけないかということを考えてほしい」として6カ国の畜産業の平均飼養規模比較(下記ダウンロードPDF参照)を提示した。


 1戸当たりの肥育牛について1位がアメリカだが日本は2位、ドイツやイギリスの6倍の規模であると指摘。また乳用牛では日本は3位で、豚に至っては1位となりアメリカをはるかにしのぎイギリス・フランス・ドイツなどと比較すると3~4倍であること、ブロイラーは3位、採卵鶏は2位であると説明。「日本の農業はだらけているなどと言われたりするが、畜産業については血のにじむような努力をして規模拡大をしてきている」と評した。


 努力の過程も見ていくとして篠原議員は、日本の畜産業の平均飼養規模拡大の推移(下記ダウンロード参照)についても取り上げ、対1970年比で平均耕地面積は2.23倍しか増えていないなか、肥育牛は32.6倍、乳用牛も11.5倍、豚は100.3倍、ブロイラーは14.8倍、採卵鶏は701.7倍だと伸びている実情も篠原議員は説明した。


 「卵・丸太・米等の価格推移(下記ダウンロード参照)も取り上げ、サラリーマン給与が1960年比で17.5倍であるなか「卵は物価の優等生。1.0倍だ」として、米が3.5倍、ビールが2.5倍となるなか「いかに卵が努力してきたかがわかる」と語った。


 篠原議員は「農業はたるんでいる。関税ゼロにしてもやれるじゃないか。関税ゼロにすれば競争原理が働いてやるなどとする声があるが違う。畜産などは極限に達しているのだ」との見方を示した。また、各国の平均農業経営面積比較(下記ダウンロード)についても取り上げ、日本が2.3ヘクタールであるのに対してアメリカは170、オーストラリアは3024、カナダは315ヘクタールであることにふれ、「こういうところと競争するために関税が認められている。WTOはゼロにしろなどと一言もいっていない。関税は1ミリも譲る気はないとする甘利大臣の発言は正しい」と評した。コメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味の農産物の重要5品目の関税を守るよう強く求めた。


 また、一般会計予算に占める農林水産業予算の推移を示し、総予算が対1970年比で11.6倍となり、防衛省予算が8.2倍、文部科学省予算が5.9倍、厚生労働者省予算が24.1倍となるなか、農林水産省予算は2.5倍にとどまっている点を取り上げ、「農林水産業をきちんとバックアッしてきたとはいえない」と批判するとともに「予算を確保できないなら関税だけでもというのが農家の気持ちだ」と篠原議員は語った。林農林水産大臣は「増減を繰り返しながら減少傾向で推移してきた。しっかりとした政策を打ち出して予算の増額に努めていく」と前向きに答弁した。


 篠原議員はまた、ISD条項について取り上げた。同条項は、主に自由貿易協定(FTA)を結んだ国同士で、企業と政府との賠償を求める紛争解決に向けた方法を定めている。


 篠原議員は、TPPにおけるISD条項の取り扱いについて国民に情報を示し対応を広く検討するよう政府に求めるとともに、「韓国では国家主権を侵すということで再交渉すべきということで問題になっている。マレーシアもEUも問題にしている。民間企業が国家を訴えるのは発展途上国の話でオーストラリアのような先進国ではいらないということで米豪FTAではこの条項は入っていない」と指摘。「これこそ憲法76条違反だ」「国家の主権を危うくする」との考えを篠原議員は述べ、安倍総理に対して慎重な対応を求めた。それに対して安倍総理は「主権が侵されるようなものは受けることはないとはっきり申し上げておく」とした。


PDF「6カ国の畜産業の平均飼養規模比較」6カ国の畜産業の平均飼養規模比較

PDF「日本の畜産業の平均飼養規模拡大の推移」日本の畜産業の平均飼養規模拡大の推移

PDF「卵・丸太・米等の価格推移」卵・丸太・米等の価格推移

PDF「各国の平均農業経営面積比較」各国の平均農業経営面積比較

PDF「主要国の農業保護比較」主要国の農業保護比較

PDF「一般会計予算に占める農林水産予算」一般会計予算に占める農林水産予算

PDF「主要国の農産物平均関税率について」主要国の農産物平均関税率について

PDF「内閣参与及び内閣府参与の数・発言」内閣参与及び内閣府参与の数・発言

PDF「ISDS」ISDS


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