動画で流れているBGMの詳細を聞く前にやるべき2つの事
デジタル社会の現在では,個人でも高画質・高音質のリソース(素材)を入手・保存・発信することが簡単にできます.また近年の動画編集ソフトは,無料の物でも多機能を備える事も珍しくありません.そのため質の高い作品が手軽にアップロードされ,多くの人の目に触れる機会が増えました.
このような "手軽さ" は私たちに様々な娯楽を与えてくれますが,いくつかの弊害を同時に生み出す事も事実です.そしてその中でも視聴者にとって経験が多いのは…
「この動画で使われている音楽のタイトルが知りたい!」
――まさにコレです.制作者が動画内で使用した曲名をエンドロールやテロップ等で明記する事は意外と少ないため,視聴者は動画を見て気に入った曲が流れていると,掲示板などに動画のアドレスを貼り付け,安易に BGM の詳細を尋ねる人が多くなっています.
この他人に聞く行為すべてが悪だとは言いませんが,「少し調べるだけで簡単に見つけられるはずなのに…」と思う事が多いのも事実です.また,そのほとんどが調べるための簡単な知識を有していれば,1分もかからずに解決する内容ばかりです.
そこで今回,その "知識" の一部をエントリーにまとめたので,この機会にぜひ参考にしてください.これを読み終える頃には,今までの "他人から返答を待つ受動的なネットユーザー" から "自分の求める情報をドンドン探せる能動的なネットユーザー" に少しでも近づけてもらえれば嬉しいです.
ちなみに,この記事で扱っている内容は全て Google を利用することを前提にしています.Google 以外の検索エンジンでも探せない事はありませんが,利用したい検索機能が実装されていなかったり,期待する検索結果を得るのが難しかったりするので,あまりお勧めはしません.
1. 歌詞を文字起こしする
「歌詞の文字起こし」は,動画内で流れている BGM の歌詞を聴き取り文字に起こす作業です.この文字に起こした一部の歌詞を検索キーワードにすることで,素早く目的の曲名を探し出せるので,最もお勧めできる検索方法だと思います.
良くも悪くもネット全盛期のこの時代,新曲がリリースされると掲示板やブログ等で歌詞が起こされる事は日常茶飯事ですし,また,JASRAC の許諾を得て歌詞を載せているサイトも多いです.このようなページが検索サイトによってクロール(収集)されると,曲中のほんの一部の歌詞を検索キーワードに使ったとしても,期待する検索結果を得ることができます.
しかしこの「歌詞を文字起こしする」という検索手段を使う場合,ライトユーザーが行う一般的な検索方法のみでは,曲名を見つけるまでに至らない可能性があります.そこで,この検索手段に適している検索方法をご紹介したいと思います.
「フレーズ検索」を活用する
歌詞を検索するのに適している検索方法は「フレーズ検索」と呼ばれるものです.フレーズ検索を使う事で,入力した検索キーワードそのままの文字列を含むページを検索することができます.
フレーズ検索の有用性を説明するために,まず始めに「通常の検索」について,誰もが知っている "ドラえもん" を例にして少し触れたいと思います.
この作品には「骨川スネ夫」という少し性格の悪いキャラクターが登場します.その性格からあまり視聴者に好かれてはいなさそうなスネ夫君ですが,世の中には彼の事を大好きだと思う人もいるはずです.そこで以下の検索キーワードで,スネ夫君の事が大好きだという人を探したいと思います.
――しかし実際に検索してみると,期待する検索結果を得ることができません.
理由はとても簡単で,検索キーワードをスペース(空白)で区切ると,それぞれのキーワードを含むページを検索結果として表示するからです.つまり,今回の検索キーワードでは「ドラえもん」「スネ夫」「大好き」の 3 つのキーワードをページ内に含むサイトが検索結果としてヒットしています.
そのため以下のような,スネ夫君をあまりよく思っていない内容の文章を載せているページがあったとしても,検索条件に当てはまっているため検索結果として表示されてしまいます.
ウチの4歳になる息子はドラえもんが大好きで,毎週欠かさずに見ています.
今週のドラえもんも家族で見ていたのですが,のびた君に対して冷たく当たるスネ夫君の態度が気に障ったらしく「すごくいやなやつだ!」と怒っていました(笑)
ではスペース(空白)を使わないで,以下のような検索キーワードにしたらいいのではないか? と思う人もいると思います.
たしかにこちらの検索キーワードだと,先の検索よりも期待する検索結果を得ることができます.しかし,まだ検索結果がファジー(あいまい)であり,これから歌詞を検索して曲名を探し出す目的がある私たちにとっては,まだまだ納得できる検索結果ではありません.
何故このような検索結果になるのかというと,検索キーワードを受け取った検索エンジンは,検索キーワードの中身を解析して「助詞」の優先度を低くするからです.日本語で書かれた文章には必ず「助詞」が含まれるため,この作業を行わなければ低い検索精度になってしまいます.
ちなみに,今回の「ドラえもん スネ夫が大好き」の検索キーワードでの助詞は「が」です.
――さて困りました.これでは「スネ夫君の事が大好き!」と思っている人を検索エンジンで探し出すことができません.そこで活躍するのが「フレーズ検索」と呼ばれる検索方法です.
フレーズ検索の使い方はとても簡単です.このようにダブルクォーテーション(”)で文字列を囲うことで,その囲った文字列と完全に一致する文字列を含むページを検索できます.
フレーズ検索の便利な所は,囲った文字列の中に助詞やスペース(空白)が入っていたとしても問題なく機能し,さらに,日本語のみならず英語など他の言語で歌われている文字列でも検索することができます.
このフレーズ検索を用いた検索結果を見るとわかりますが,ヒットしているページ全てに,囲った文字列「スネ夫が大好き」というフレーズを含んでいるのが確認できると思います.
このように,歌詞という完全に一致する文字列を検索する場合において,フレーズ検索が有用な検索方法である事が理解してもらえたと思います.
歌詞をフレーズ検索する際のコツ
歌詞の検索方法としては,ここまでに触れてきた内容で全て説明し終えたのですが,実際に歌詞をフレーズ検索しても,目的の曲名を探し当てるまでに相当な時間がかかったり,思い通りの検索結果を得られない方もなかにはいると思います.
たしかにフレーズ検索を用いる事で,歌詞がある音楽であれば,日本語のみならず英語など他の言語で歌われていても探し出すことができます.しかし日本語には「ひらがな・カタカナ・漢字」と3つの表記があるため,英語などの歌詞と比べると,検索フレーズに使用するキーワードの選び方には多少のコツが必要になります.
そこで,そのコツを会得するために,童謡の「赤い靴」の歌詞を例にして,検索フレーズに使用するキーワードを選ぶときに気をつける事をいくつか説明します.
ただ注意してほしいのは,基本的に歌詞検索する時の正攻法は,聴いた日本語の歌詞をそのまま普通の漢字に変換してフレーズ検索する事です.これから紹介する方法は正攻法でいくら検索しても見つける事ができない場合に考える手段ということです.
『赤い靴』
赤い靴(くつ) はいてた 女の子
異人(いじん)さんに つれられて 行っちゃった横浜の 埠頭(はとば)から 汽船(ふね)に乗って
異人さんに つれられて 行っちゃった今では 青い目に なっちゃって
異人さんの お国に いるんだろう赤い靴 見るたび 考える
異人さんに 逢(あ)うたび 考える
"ひらがな"のままの表記
歌詞から受け取るイメージを大切にするために,あえて漢字を使わずに "ひらがな" で表記している場合も多々あります.今回の赤い靴の歌詞では,「はいてた」と「つれられて」の2つの節が当てはまります.
そのため,このように「"履いてた"」や「"連れられて"」と漢字にしたキーワードを1つでも使ってフレーズ検索を行っても,実際の歌詞には含まれていない文字列なので,多くの場合は期待する検索結果を得ることができません.
しかし,実際にこの検索キーワードで検索してみると「赤い靴」にたどり着けてしまいます.そのため,ここで言っている事と実際に起きている事が違うよ! と思われる方もいると思うので少し補足しておきたいと思います.
「赤い靴」はとても有名な童謡のため,多くのサイトやブログ等で歌詞の一部が記載されています.そしてその中には正しい歌詞もあれば,聴いたままの歌詞を曖昧に記載しているものも数多くあります.そのため Google がそれらの WEB サイトをクロールすると,「赤い靴」の歌詞には「つれられて」もあれば「連れられて」もあるように見えてしまいます.
そのため,今回のように本来の歌詞には存在しない「"履いてた"」や「"連れられて"」をキーワードにフレーズ検索を行っても,結果的には「赤い靴」の曲名にたどり着けてしまいます.ですが,世間的にはあまり知られていない楽曲の場合は,Google が正しい歌詞を転載しているサイトしかクロールしていない可能性もあります.その場合は正しい歌詞でフレーズ検索をしなければ,その楽曲を見つける事ができないということです.
音楽を聴いている時点では,その歌詞が "ひらがな" と "漢字" のどちらの表記なのか把握する事が難しいので,聞き間違いがないと思えば色々変換してみたり,またはそのキーワードを諦めて別の聴き取れる歌詞をキーワードにしたりと,このあたりは柔軟に対応してコツを掴んでください.
当て字・当て読みの"漢字"表現
歌詞をフレーズ検索する際に最も癖のあるキーワードは,当て字・当て読みの漢字表現です.私たちが普段目にする機会が多いのは「本気(マジ)」や「理由(わけ)」などが挙げられます.音楽の世界観を伝えるためには必要な表現の1つだと思いますが,これが歌詞を検索する面では結構な障害になります.
今回の赤い靴では「埠頭(はとば)」と「汽船(ふね)」の2つの部分で,この漢字表現になっています.そのため,実際に聞こえてくる「はとば」を検索キーワードに決めたとしても「"波止場から"」と,このようにフレーズ検索してしまうと,本来の歌詞には存在しない文字列なので曲名を見つけ出す事が難しくなってしまいます.
この問題を避けるにはいくつか方法があります.1つは,必ずひらがな表記であろうと思われる歌詞を検索キーワードに選択することです.今回の赤い靴では「なっちゃって」の部分がどうやっても漢字に直せないため,このような部分はフレーズ検索の検索キーワードとしては最適です.
次に,当て字・当て読みになりにくいと思うキーワードを選択することです.今回の赤い靴では「横浜」がそのキーワードに最適だと思います.音楽を聴いて「よこはま」と聴き取れた箇所が,歌詞カードでは「箱根」や「長崎」等と書かれている事なんてまずありえないはずですから.
同訓異字の表記
"同訓異字" とは,同じ読みでも表記が異なる漢字のことです.例えば「あう」には「会う・合う・逢う・遭う・遇う」と複数の漢字表現があり,日常的には「会う・合う」がよく使われますが,歌詞の表現においてはその限りではありません.そのためフレーズ検索をするときには,同訓異字も意識の範疇に入れておくと検索効率が良くなると思います.
今回の赤い靴では「逢う」が日常的には使用しない「会う」の同訓異字になっています.そのためいくら「"会うたび"」などで検索しても,間違った歌詞を探していることになるため注意が必要です.
2. 既に回答済みの情報を探す
インターネット上に歌詞情報が存在する音楽であれば,ここまでに書いてきた方法を講じることで,あなたはかなりの確率でその曲名を知るに至っている事と思います.しかし,"それでも見つけられなかった場合" も十分に可能性があるため,ここからの内容は歌詞に頼らない最後の探し方になります.
あなたが今見ているその動画は,インターネットにアップロードされて一体どれほどのユーザーに視聴されているのでしょう? 正確な人数はわからないにしても,とりあえず言える事は,あなたが1番最初の視聴者である確率はかなり低いはずです.
――ということは,あなたがその動画で使われている BGM がとても気に入った! と思ったのなら,過去にもその動画を見て同じ気持ちになった人がいるかもしれません.そしてその人が "他人から返答を待つ受動的なネットユーザー" であれば,既に BGM の詳細を聞く質問をしていて,さらに曲名の返信までついている可能性もあるので.それを探す事にしましょう.
検索キーワード
歌詞をフレーズ検索するのと比べれば,こちらの検索方法はとっても簡単です.動画内で流れている音楽の詳細を所望するユーザーは,その動画のアドレスと,以下のような単語を含んだ本文を投稿しているはずです.
etc...
- 詳細
- 音楽
- BGM
- 教えて
- 曲名
つまり,動画のアドレスとこれらの単語を含んだものが検索キーワードになります.ちなみにアドレスを検索するときには「http://」部分を取り除いた文字列にすると良いです.
例えば「http://www.example.com/video/123456」に,あなたが気に入った BGM 付きの動画があったとすると,この場合は,以下のような検索キーワードにすることで,既出の質問を検索することができます.
etc...
- 「www.example.com/video/123456 詳細」
- 「www.example.com/video/123456 曲名 教えて」
- 「www.example.com/video/123456 詳細 音楽」
あなたが曲名を知りたいと思っている動画が,ピンポイントで既に質問されている事は稀なので,こちらをフレーズ検索に次ぐ2番目の検索方法としましたが,実際はこっちの方がお手軽なので,とりあえず最初にアドレスを検索してみてから,フレーズ検索に移るのも悪くはないと思います.
あとがき
ここまで書いたのを改めて見直してみると,意外とスクロール量が多いような気がして,こりゃライトユーザーさんは全部読んでくれないんじゃないかな…? と心配になったのだけれど,もう後の祭りで書き終わった祭り開催中です.
でも,文字数を数えてみると約 5,900 文字みたいなので,400 字詰め原稿用紙だと 15 枚弱ということになるため,そんなに長くはないはずですし,むしろ 15 枚弱で意外と使いどころが多い一生ものの知識手に入れちゃったー! ってぐらいで考えてもらえば時間対効果は良いと思います.
話は変わりますが,この記事の中で取り上げた「赤い靴」の童謡にピッタリ合う写真を見つけたので,ちゃっかり本文に差し込んでみたのですが,本当にあの写真はイメージが赤い靴そのままで,とても良い作品だと思います.
写真から感じ取れる秋冷さが,赤い靴の悲壮感とマッチしてますし,さらに落ち葉が朝露か小雨で少し濡れているように見えますよね.これが涙をこらえて,目が潤んでいる比喩にも見えます.だって私がイメージするこの童謡の彼女は,表面上では弱さを見せない女の子なので,地面が濡れる(涙を流す)ほどの雨は降っていないと考えてしまうわけです.
しかし,なぜ外国に行くと目が青くなるのでしょう…? 昔からの疑問ですね.