パレスチナ人のジェノサイドを可能にする嘘(要点)
2023/11/11のUKコラムのヴァネッサ・ビーリィ氏の解説動画の要点。多少補足した。イスラエルによるジェノサイドを支えている4つの神話を解体している。
Lies that enable genocide of Palestinians
イスラエルが植民地主義勢力、またはその手先であるかどうかについては、イスラエルを熱烈に支持する大統領候補、ロバート・F・ケネディJr.が解説してくれている。彼はイスラエルを独立主権国家ではなく、アメリカ帝国主義の覇権を中東に及ぼす為の道具として描いている。米国がイスラエルを支援するのは、自由や民主主義やイスラエル人の権利と云った崇高な諸問題とは全く関係無い、単にマネーロンダリングと石油の利権の問題だ。
イスラエル政府によるパレスチナ人に対する民族浄化とジェノサイドを正当化する為に様々な虚偽の口実が持ち出されるが、それらには一切正当性は無い。
1)イスラエルには自衛の権利が有る?
独立ジャーナリストのサム・フセイニ氏は、著名な国際弁護士であり国連報告者も務めたことの有るリチャード・フォーク氏に質問したが、彼の回答に拠れば、
「国際法と国連の観点からすれば、ガザは依然として第4次ジュネーヴ条約の対象となるパレスチナ占領地です。
これは、イスラエルが占領国であり、民間人の安全を守る優先的義務が有ることを意味します。その様な攻撃(2023/10/07のハマスの攻撃のこと)の直後には、安全を回復する為に合理的な合法的措置を講じる権利が有ります。
ですから、国際法上の自衛権は有りません。仮にその様な自衛の権利が有ったとしても、ジェノサイド的攻撃を行う為の法的または道徳的根拠は存在しません。その性質はイスラエルの最高指導部によって強く確認されています。」
つまり国際法的にはイスラエルは占領者、侵略者であり、ガザ地区はイスラエル政府が正当な領有権を主張出来る土地ではない。従ってガザに於てイスラエルが自衛権を主張するのは居直り強盗の様なものだ。攻撃されたくなければ、占領を止めて出て行って、正当な所有者にその土地を返せば良いだけの話だ。
2)ハマスは残虐行為を働いている?
ハマスの残虐行為に関する主張が虚偽であることは過去に何度も暴かれて来たが、例えば他ならぬイスラエルのメディア報道を見てみよう。
この記事に拠ると、10/07に攻撃を行ったイスラエル軍のヘリコプターのパイロット達は、基本的に未確認の標的に向かって、4時間に亘って300の標的を攻撃した。こうした状況に於ては、テロリスト、兵士、民間人を区別するのは極めて困難だった。つまり彼等は自分達が何を撃っているのかはっきり判っていなかったにも関わらず、4時間もの間攻撃を続けたのだ(記事にリンクされた動画で実際の攻撃の様子が確認出来る)。
RTが公開した攻撃跡の動画(08:40から)からは、攻撃がアパッチ・ヘリコプターによって行われたものであり、ハマスが通常使っている軽火器によるものではないことを見て取ることが出来る(しかもハマスは逃亡して群衆の中に紛れることを禁じる指示を受けていた)。
3)ハマスは「人間の盾」を使っている?
イスラエルは民間人に犠牲者が出ることを、「ハマスが民間人を人間の盾として利用しているからだ」と主張して正当化しようとする。だがそうした主張に全く法的な裏付けが取れていないことは、過去に何度も証明されて来た。
それどころか、イスラエルが少なくとも1967年以降、パレスチナ人の、特に子供を「人間の盾」として利用して来たことは十分に証明されている。「人間の盾」として利用されたパレスチナ人の子供達は屢々暴行や拷問を受け、性的に虐待され、一定期間囚人として拘束されて来た。
興味深いことにこの慣行はイスラエル政府が始めたものではない。これは大英帝国の植民地主義的計画としてイスラエルが建国される前、1922〜47年の大英帝国の委任統治下で始められたことだ(特に30年代)。ヨーロッパ系ユダヤ人の大量流入に抗議して蜂起したパレスチナ人を弾圧する為に、英軍はパレスチナ人を「人間の盾」として利用した。シオニストはその慣行を引き継いだだけで、彼等が始めた訳ではない。
4)ハマスはテロ組織である?
ガザ地区だけでも17の抵抗派閥が存在するが、ハマスの政治部門は武力闘争部門とは或る程度切り離されている。
詳しくはイスラエルの歴史家ザカリー・フォスターの解説動画を観て欲しいが、そもそもハマスはイスラエルが創設を支援した組織だ。当初は別の名でムスリム同胞団系の非政治的な慈善団体として発足し、1973〜88年頃は主に教育プログラム等に力を入れていたが、イスラエルが当時有力だったPLO(パレスチナ解放戦線)に対抗させる為にこれを政治的・暴力的な組織に作り替えた。これは古典的な「分断統治」政策の結果であって、パレスチナ以外でも無数に繰り返されて来たパターンに従っている。
1967年のエルサレム占領から1987年の第1次インティファーダまでの20年間、パレスチナ人はイスラエルの暴力的な軍事占領に虐げられて来た。1987年末〜88年に抗議活動を弾圧する為にイスラエルはガザに侵入し、142人のパレスチナ人(多くは小さな子供)を殺害したが、この時パレスチナ人が報復として殺害したイスラエル人はゼロだった。この時ハマスは慈善団体から軍事抵抗組織へと変質させられたのだが、この時殺害したのはイスラエル兵だけで、またしても子供達が標的にされたことへの報復として民間人を標的にし始めたのは1990年からだ。
西洋大手メディアがパレスチナの旗を掲げることがハマスを支持することと同義であるかの様に言い立て始めたのは少なくとも2007年からで、パレスチナ人が選挙でハマスを選んだことへの集団的懲罰として、パレスチナ人全員が武装抵抗勢力であるかの様な印象操作が行われ、それによってガザを封鎖してパレスチナ民間人を苦しめることが正当化された。
イスラエル指導部は今だに「パレスチナ人などと云うものは存在しない」と主張し、ユダヤ人が入植する前はパレスチナは無人の未開拓の地であったかの様な歴史の改竄を行っているが、これは入植植民地主義国が用いる常套手段だ。
ハマスが当選した2006年の選挙は正当なものだったが、この後ハマスはファタハと話し合って2007年にメッカ合意(挙国一致政府樹立)に漕ぎ着けた。この合意は今日では殆ど忘れ去られているが、これは対話こそが政治的不一致を解決する為の唯一の手段であると謳っている。つまり暴力を拒否し、平和的な交渉のみを用いることを約束したのだ。ところが米国とイスラエルはファタハに圧力を掛け、ハマスをテロ組織呼ばわりして合法的で民主的な選挙の結果である挙国一致政府を拒否させた。その結果内戦が勃発し、ハマスが勝利したが、イスラエル政府はこの展開を受けて、「テロリスト」がガザを支配したことで交渉の必要が無くなったと大喜びした。
現在パレスチナの代表はパレスチナ自治政府と云うことになっているが、幾つもの世論調査結果が示している様に、マフムード・アッバスは非常に人気が無く、イスラエル占領政府の代弁者だと思われている。実際、彼は反対派や批判者を暴力的に弾圧しており、事実上、イスラエルによる占領が確実に行われるように協力していると言って良い。
ハマスはまたこの30年間に何度も和平の提案を行っているが、その都度全てイスラエル政府によって拒否されている。この事実は西洋大手メディアでは殆ど報じられていないので、交渉による解決を望んでいないのはハマスの方だと信じる人が多いが、実際は逆だ(ウクライナ紛争に於て、交渉を拒否しているのがモスクワ側だと信じる人が多いのと同じだ。ロシアは何度も交渉の呼び掛けを行っているが、キエフは交渉を法的に禁止している)。
The untold history of Hamas
Lies that enable genocide of Palestinians
イスラエルが植民地主義勢力、またはその手先であるかどうかについては、イスラエルを熱烈に支持する大統領候補、ロバート・F・ケネディJr.が解説してくれている。彼はイスラエルを独立主権国家ではなく、アメリカ帝国主義の覇権を中東に及ぼす為の道具として描いている。米国がイスラエルを支援するのは、自由や民主主義やイスラエル人の権利と云った崇高な諸問題とは全く関係無い、単にマネーロンダリングと石油の利権の問題だ。
Robert F. Kennedy Jr.:
— S p r i n t e r F a c t o r y (@Sprinterfactory) November 8, 2023
Israel is a stronghold for us... It's almost like having an aircraft carrier in the Middle East. This is our oldest ally.
If Israel disappears, Russia, China and the BRICS+ countries will control 90% of the world's oil, and this will be a disaster for US… pic.twitter.com/ivU5Eo2lcv
イスラエル政府によるパレスチナ人に対する民族浄化とジェノサイドを正当化する為に様々な虚偽の口実が持ち出されるが、それらには一切正当性は無い。
1)イスラエルには自衛の権利が有る?
独立ジャーナリストのサム・フセイニ氏は、著名な国際弁護士であり国連報告者も務めたことの有るリチャード・フォーク氏に質問したが、彼の回答に拠れば、
「国際法と国連の観点からすれば、ガザは依然として第4次ジュネーヴ条約の対象となるパレスチナ占領地です。
これは、イスラエルが占領国であり、民間人の安全を守る優先的義務が有ることを意味します。その様な攻撃(2023/10/07のハマスの攻撃のこと)の直後には、安全を回復する為に合理的な合法的措置を講じる権利が有ります。
ですから、国際法上の自衛権は有りません。仮にその様な自衛の権利が有ったとしても、ジェノサイド的攻撃を行う為の法的または道徳的根拠は存在しません。その性質はイスラエルの最高指導部によって強く確認されています。」
つまり国際法的にはイスラエルは占領者、侵略者であり、ガザ地区はイスラエル政府が正当な領有権を主張出来る土地ではない。従ってガザに於てイスラエルが自衛権を主張するのは居直り強盗の様なものだ。攻撃されたくなければ、占領を止めて出て行って、正当な所有者にその土地を返せば良いだけの話だ。
2)ハマスは残虐行為を働いている?
ハマスの残虐行為に関する主張が虚偽であることは過去に何度も暴かれて来たが、例えば他ならぬイスラエルのメディア報道を見てみよう。
この記事に拠ると、10/07に攻撃を行ったイスラエル軍のヘリコプターのパイロット達は、基本的に未確認の標的に向かって、4時間に亘って300の標的を攻撃した。こうした状況に於ては、テロリスト、兵士、民間人を区別するのは極めて困難だった。つまり彼等は自分達が何を撃っているのかはっきり判っていなかったにも関わらず、4時間もの間攻撃を続けたのだ(記事にリンクされた動画で実際の攻撃の様子が確認出来る)。
RTが公開した攻撃跡の動画(08:40から)からは、攻撃がアパッチ・ヘリコプターによって行われたものであり、ハマスが通常使っている軽火器によるものではないことを見て取ることが出来る(しかもハマスは逃亡して群衆の中に紛れることを禁じる指示を受けていた)。
3)ハマスは「人間の盾」を使っている?
イスラエルは民間人に犠牲者が出ることを、「ハマスが民間人を人間の盾として利用しているからだ」と主張して正当化しようとする。だがそうした主張に全く法的な裏付けが取れていないことは、過去に何度も証明されて来た。
それどころか、イスラエルが少なくとも1967年以降、パレスチナ人の、特に子供を「人間の盾」として利用して来たことは十分に証明されている。「人間の盾」として利用されたパレスチナ人の子供達は屢々暴行や拷問を受け、性的に虐待され、一定期間囚人として拘束されて来た。
興味深いことにこの慣行はイスラエル政府が始めたものではない。これは大英帝国の植民地主義的計画としてイスラエルが建国される前、1922〜47年の大英帝国の委任統治下で始められたことだ(特に30年代)。ヨーロッパ系ユダヤ人の大量流入に抗議して蜂起したパレスチナ人を弾圧する為に、英軍はパレスチナ人を「人間の盾」として利用した。シオニストはその慣行を引き継いだだけで、彼等が始めた訳ではない。
4)ハマスはテロ組織である?
ガザ地区だけでも17の抵抗派閥が存在するが、ハマスの政治部門は武力闘争部門とは或る程度切り離されている。
詳しくはイスラエルの歴史家ザカリー・フォスターの解説動画を観て欲しいが、そもそもハマスはイスラエルが創設を支援した組織だ。当初は別の名でムスリム同胞団系の非政治的な慈善団体として発足し、1973〜88年頃は主に教育プログラム等に力を入れていたが、イスラエルが当時有力だったPLO(パレスチナ解放戦線)に対抗させる為にこれを政治的・暴力的な組織に作り替えた。これは古典的な「分断統治」政策の結果であって、パレスチナ以外でも無数に繰り返されて来たパターンに従っている。
1967年のエルサレム占領から1987年の第1次インティファーダまでの20年間、パレスチナ人はイスラエルの暴力的な軍事占領に虐げられて来た。1987年末〜88年に抗議活動を弾圧する為にイスラエルはガザに侵入し、142人のパレスチナ人(多くは小さな子供)を殺害したが、この時パレスチナ人が報復として殺害したイスラエル人はゼロだった。この時ハマスは慈善団体から軍事抵抗組織へと変質させられたのだが、この時殺害したのはイスラエル兵だけで、またしても子供達が標的にされたことへの報復として民間人を標的にし始めたのは1990年からだ。
西洋大手メディアがパレスチナの旗を掲げることがハマスを支持することと同義であるかの様に言い立て始めたのは少なくとも2007年からで、パレスチナ人が選挙でハマスを選んだことへの集団的懲罰として、パレスチナ人全員が武装抵抗勢力であるかの様な印象操作が行われ、それによってガザを封鎖してパレスチナ民間人を苦しめることが正当化された。
イスラエル指導部は今だに「パレスチナ人などと云うものは存在しない」と主張し、ユダヤ人が入植する前はパレスチナは無人の未開拓の地であったかの様な歴史の改竄を行っているが、これは入植植民地主義国が用いる常套手段だ。
ハマスが当選した2006年の選挙は正当なものだったが、この後ハマスはファタハと話し合って2007年にメッカ合意(挙国一致政府樹立)に漕ぎ着けた。この合意は今日では殆ど忘れ去られているが、これは対話こそが政治的不一致を解決する為の唯一の手段であると謳っている。つまり暴力を拒否し、平和的な交渉のみを用いることを約束したのだ。ところが米国とイスラエルはファタハに圧力を掛け、ハマスをテロ組織呼ばわりして合法的で民主的な選挙の結果である挙国一致政府を拒否させた。その結果内戦が勃発し、ハマスが勝利したが、イスラエル政府はこの展開を受けて、「テロリスト」がガザを支配したことで交渉の必要が無くなったと大喜びした。
現在パレスチナの代表はパレスチナ自治政府と云うことになっているが、幾つもの世論調査結果が示している様に、マフムード・アッバスは非常に人気が無く、イスラエル占領政府の代弁者だと思われている。実際、彼は反対派や批判者を暴力的に弾圧しており、事実上、イスラエルによる占領が確実に行われるように協力していると言って良い。
ハマスはまたこの30年間に何度も和平の提案を行っているが、その都度全てイスラエル政府によって拒否されている。この事実は西洋大手メディアでは殆ど報じられていないので、交渉による解決を望んでいないのはハマスの方だと信じる人が多いが、実際は逆だ(ウクライナ紛争に於て、交渉を拒否しているのがモスクワ側だと信じる人が多いのと同じだ。ロシアは何度も交渉の呼び掛けを行っているが、キエフは交渉を法的に禁止している)。
The untold history of Hamas
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