ロボット開発ベンチャーのZMPとソニーモバイルコミュニケーションズは2015年8月24日、自動運転のドローン事業を手がける共同出資会社「エアロセンス」の事業戦略を発表した。ZMPの自動運転やロボット、ソニーグループのカメラや各種センサー、通信といった技術を活用。自動運転のドローンを独自開発し、土地の測量や調査、農地の管理、設備の点検など法人向けサービスを2016年に始める。
「ZMPはこれまで、家庭用のロボットや自動車の自動運転を開発し、応用事業を展開してきた。これらは全て陸上のもの。空へとフィールドを広げて、陸上ではできなかった新たな価値を提供する」。会見したZMPの谷口恒社長は、新会社の意義をこう述べた(写真1)。ZMPとソニーモバイルは8月3日付けでエアロセンスを設立した。資本金は1億円で、出資比率はソニーモバイルが50.005%、ZMPが49.995%。ZMPの谷口社長が新会社の社長も兼務する。
共同出資会社エアロセンスのサービスは、独自開発する自動運転ドローンを使った全自動の撮影、撮影データの蓄積と分析、用途に応じた2次元地図や3次元モデルの制作などだ。撮影データはクラウドサービス上に蓄積し、エアロセンスの顧客企業が自由に分析できるようにする。この分析システムの開発やデータの運用といったサービスも提供する。
具体的な用途の一つが農地の観測。水田の上を低空飛行させて、稲の生育状況の調査や収穫時期の予測に役立てられるという。このほか資源採石場で採石量を推測したり、土木測量で土質を測ったりできる。「既に大手マンションデベロッパーやゼネコンと、事業モデルを作っている」(谷口社長)。
開発するドローンはヘリコプター型(写真2)と航空機型の2種類(写真3)。航空機型は垂直離着陸の性能を持つ。
自動運転にする利点は安全性と低コスト化という。「交通事故のほとんどはヒューマンエラーが原因。自動化することで安全性を高められる」。飛行エリアを事前に設定すれば自動的に飛行、撮影するため、操作担当者の人件費もかからない。
課題は自動運転の精度向上と法整備という。墜落や誤動作など、「事故につながるおそれがないとは言えない」(谷口社長)。同社は当面、建設現場や農地といった私有地でサービスを提供することを想定。「一般の人がおらず、作業員がヘルメットをかぶっているような現場の上空を飛ばす」(同)。
将来的には私有地を超えて、物流などにも使えるようにしたいとの意向を示す。その場合には現行の法規制が壁になる可能性が高い。谷口社長は「ドローン活用範囲を広げるため、実績と信頼を積み重ねていきたい」と語った。