前回、「SEは評論家的姿勢を改めて討って出て、SEが抱えているSEのモノ扱い、人月扱いや技術偏重、受身姿勢などSEの問題はSEで解決せよ」と読者のSEの方々へ訴えた。筆者の意見に賛同される方、異論のある方などいろんな方がおられると思う。筆者は長年の経験で本当にそう考えている。

 今回は賛同される方や「話は分かるが…」と悩んだり迷ったりしている方々に向けて「では、そのためにSEは何をどう考えて何をやればよいか」について筆者の考えを述べたい。この問題はIT業界で長年続いている非常に難しい問題であるがSEの方々の参考になれば幸いである。

 30~40年前の話だが、筆者が現役のSEだった時代はメインフレームの全盛期だった。当時も今と同様、SEがいなければシステムの導入や開発はできなかった。IT企業はもちろん、ユーザー企業もそのことは百も承知だった。だが、メーカー同士の競合が激しかったせいか、システムの売り込み時にはユーザー企業の中には「お宅はSEを何人付けるんだ」とか「SEの体制図を出してほしい」などと言う企業が少なくなかった。一方、メーカーの側も「買っていただけるのならSEを何人付けます」とか「SEの体制図はこれです」などとユーザー企業に言うところが多かった。それを売り文句にしていたメーカーさえあった。すなわち、SEをモノ扱いしていたのだ。

 その上、SEの体制図をユーザー企業に出すと、SEは往々にユーザー企業に拘束された。例えば「なぜ今日は○○SEがいないのか」「なぜ研修に出るのか」などとチェックされるケースがままあった。またIT企業の多くの営業担当者は、SEに相談もせずに「それはSEにやらせます」などと顧客と約束していた。SEはそれを仕方なくやらされることもあった。全員がそうだというわけではないが、そんな営業担当者はSEを子分のように見ていた。

 これは筆者の時代のSEのビジネス上での扱われ方だが、今でもそれがIT業界のビジネスの世界の根底にある。今のSEの請負的派遣や人月扱いはその一例だし、体制図の提示や常駐は依然として続いている。こんな人月扱い、モノ扱い、営業主導のやらされる世界で仕事をしていると、SEは往々に受身になりやすいし、消極的にもなる。ビジネス意識もなくなるし、壁も作りたくなる。文句も言いたくなる。評論家的にもなる。3Kと言われる仕事にもなる。

 筆者はこのSEのモノ扱いなどの問題がSEが長年抱えている諸問題の根っこにあると考えている。言い換えれば、この“SEのモノ扱い、人月扱い、営業にやらされる世界”という問題を解決しないと、SEが抱えている問題は決して解決しない。従って、SEは討って出てこのモノ扱いなどの根っこの問題と真正面から戦うべきである。

 それには、SEは”SEの価値を顧客に売って、これまでの売り方や体制図の提示などをやめても売れることを社内に分からせる””SEを子分のように扱う営業担当者の言うことは、納得がいかない限りやらない”ことが不可欠である。もちろん、これはSEだけでは出来ない、営業担当者への働きかけも必要である。すると段々と先に述べた根っこの問題がなくなり、SEの世界が変わり、SEがこれまで抱えていた諸問題がなくなるはずだ。以下 それについて具体的に説明する。

 きっと、読者のSEの中には「SEがなぜそんなことをしなければならないのか、会社や営業担当者が人月扱いや体制図の提出、SEの子分扱いをやめればよいではないか」と考える人も少なくないと思う。筆者も現役時代からそのたぐいの話をよく耳にした。そう思うSEの方の気持ちも分かる。しかし、現実のIT業界のビジネスの世界では、なかなかそうはいかない。それをやめても販売競争で競合他社に勝って受注できればよいが、それが難しいからである。実際、企業は売れないことには経営が成り立たない。そう考えると会社や営業担当者はなかなかそれを決断はできないのだ。その結果、長年“SEの人月扱い、モノ扱い”が続いていると言えよう。

 では、どうすればよいか。答えは一つだ。会社がそんなやり方をしなくても、顧客がSEの価値を認めれば売れることを、SEが自ら証明することだ。乱暴なことを言うようだが、それしかこの問題を解決する方法はない。では、SEはそのために何をやればよいか。戦略的に考えてみよう。

 それは次の通りだ。(1)まずSEが顧客の信頼を得る、顧客に頼りにされる、(2)顧客にSEは頭数ではない、SEの仕事はスキル・能力が重要であることを分かってもらう。(3)そして顧客との信頼関係を武器に技術者として営業担当者を支援して会社のビジネス、特に売り込みに貢献する。この3点である。