世界初の商用LTE(Long Term Evolution)サービスが北欧で始まってから1年が過ぎた。LTEならではといえる目新しいサービスは提供されていないが、一方で高いスループットにプレミアム料金を設定する通信事業者の動きが目立つ。今回は各社の料金メニューを紹介しながら、LTEの料金面について考察していく。
2010年9月上旬に香港で開催されたLTE Asia 2010で、台湾・中華電信の林 一平氏(国立交通大学教授)がプレゼンテーションの冒頭で発した一言が印象に残っている。「通信事業者各社はコストの安さを主な理由にLTEを導入しようとしているが、LTEを導入してどのようなサービスでマネタイズするのかという戦略はほとんど聞かれない」---。この指摘には同感と言わざるを得ない。数々の国際カンファレンスや通信事業者各社のプレスリリースからも、LTEならではといえる目新しいサービスは見当たらない。オンラインゲームや高精細動画といった単語が出てくる程度で、これをもってサービス戦略とは言い難い。
コンテンツなどに収益源を求められないとすれば、通信事業者にとっての収益アップの源泉は通信料金に限られる。LTEの商用サービスが始まっている海外市場を見ると、LTEの高い通信速度(スループット)にプレミアム料金を設定する傾向があることが分かる。今回は主に料金面からLTEについて考察していく。
テリアソネラが料金プランを改定
2009年12月に北欧で世界初の商用LTEサービスを開始したテリアソネラは、2010年末までにスウェーデンの28都市にカバレッジを拡大し、2011年には228都市に広げていく。
当初はトライアル的な意味合いもあって、2010年6月末まではかなり割安な料金を設定していた。それを7月以降は500クローナ(約6000円、1クローナ=12円換算)に引き上げ、9月23日には新たな料金プラン「Total 4G」を設定。月額599クローナ(約7200円)とした(表1)。これまで最も高かった「Stor」(HSPA向け)の269クローナに対して実に55%高となる。平均的なユーザーからすればこの金額はかなり高いと感じるはずだが、テリアソネラはこの料金体系でLTEのプレミアム課金が可能かどうかを確かめたいとしている。
このほかボーダフォン・ドイツは9月にリゾート地で商用LTEを開始。「LTE Zuhause(LTE At Home)」という料金プランを発表した(表2)。最上級の「50000S」は69.99ユーロ(約7700円、1ユーロ=110円換算)と従来からすると高額であり、かなり果敢な料金設定といえる。
平均的なユーザからすれば、従来より55%も高い月額599クローナ(約7,200円、1クローナ=12円換算)という金額はかなり高いと感じるのではないかと考えられるが、テリアソネラは、この料金体系でLTEによるQoS機能にどれだけの課金が可能かを確かめたいとしている。