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XOOPSの管理画面(上)とインストールウィザード
XOOPSの管理画面(上)とインストールウィザード
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今回紹介するのは、オープンソース製品の「XOOPS(ズープス)」です。もともとCMSとしても知られていましたが、特にコミュニティ系ポータルサイトの構築に向いたシステムとして、広く支持されています。前回まで2回に渡って紹介したMovable Typeは、blog関連機能が特徴でしたが、XOOPSは個人のblogだけでなく、メンバー登録の必要な会員制サイトも運営することが可能です。こうした機能は、Movable Typeと同様に、“モジュール”と呼ばれるプログラムで後から追加できます。この拡張性により、非常に多機能でありながら、無償で使えるというのも大きな魅力です。

オープンソース発CMSの成功例

 XOOPSが、これまで紹介してきた各製品と最も違う点は、オープンソースで開発されている製品だということです。オープンソースとは、ソフトウェアをプログラミングするのに使ったソースコードを、インターネットを通じて文字通り“オープン”にし、世界中からボランティアの参加者を募って、それぞれのできる範囲で協力して開発プロジェクトを進めるやり方です。

 オープンソースでは、プロジェクトがうまく進めば、ユーザからのフィードバックや利用ノウハウが広く共有され、ソフトウェアの改善がスピーディーになって、結果としてさらにユーザが増える、といった好循環が生まれます。

 CMSという分野は、もちろんソフトウェアメーカーによって供給されているものもありますが、実はオープンソースで開発されたユニークな製品が多いのが特色です。XOOPSは、まさにこうした成功例の1つだと言えるでしょう。

 ただし、欧米主体で開発された製品は、日本語などいわゆる2バイト言語を利用するために、いろいろと苦労が必要なケースが多いという側面があります。例えば、Movable Typeも当初は日本語版がなく、「パッチ」と呼ばれる改修プログラムの追加が必要でした。その点、XOOPSプロジェクトは、日本人の開発者が主要メンバーであることもあって、日本語の利用に問題がなかったため、日本国内でも知名度を高めてきました。

 また、XOOPSがPHPというインターネットで広く使われているスクリプト言語で書かれていることも、支持された理由の1つでしょう。Movable Typeの場合のPerlと同様で、インストール作業自体は必要なものの、プラットフォームに依存するタイプの製品に比べて、サーバ環境の選択の自由度が高いのです。

コミュニティ向け機能を満載したCMS

 XOOPSは、これまでの分類で言うと、ダイナミック型CMSに属します。基本的に他のCMSと同様で、テキストや画像などのコンテンツはXOOPSがデータ格納に利用するデータベース(MySQL)によって管理され、この管理はすべてWebブラウザ上から行えます。

 もちろん、サイト運営スタッフを管理する機能も備えており、複数のスタッフをグループごとにまとめて異なる作業権限を与えるといった設定が可能です。つまり、これまで説明してきた基本的なCMSとしての仕様はカバーされているわけです。

 しかし、XOOPSの最大の特徴はやはり、いわゆる“コミュニティ系ポータルサイト”を容易に構築できることでしょう。XOOPSは、閲覧者(サイトを訪れたユーザ)を登録管理し、認証する機能を持っているのです。

 しかも、登録ユーザはXOOPSの管理機能によりパーソナライズされており、自分の好みに応じてあらかじめ用意したサイトの外観(テーマ)を変えることができます。さらに、掲示板(フォーラム)や日記(blog)機能、投票システム、サイト内を串刺し検索できる機能など、いわゆるメンバー制のポータルサイトに必要とされる主な機能もしっかり網羅されています。

コアはシンプルに小さく、機能は追加で

 このように標準状態でもかなり多機能なXOOPSですが、実際にはその多くの機能はほとんどが“モジュール”と呼ばれる追加プログラムによって実装されています。前述のポータル向け機能のほかにも、リンク集構築機能や問い合わせフォーム機能などが標準で含まれています。

 XOOPSの本体(コア)は、CMSとして必要最小限の機能を持つ小さなプログラムです。ユーザは、モジュール管理機能を使って簡単に、好きな機能を追加したり、不要な機能を外したりできます。モジュールは標準で提供されるもの以外にも、各地のプログラマーがさまざまなものを作って配布しています。

 XOOPSのモジュールは、「Movable Typeのプラグインのように簡単に作れるわけではないが、すでに300ほどはある」(日本でのXOOPSプロジェクトの支援組織「日本XOOPS協会」の瀧澤勇人氏)そうです。同じ掲示板やblogでも、モジュールによって実現できるサービスの内容や仕様が異なります。標準状態でニーズに合わなかったとしても、解決できる可能性があるというわけです。

“異色仕様”でもニーズは高い

 コミュニティ系ポータルサイトの構築を軸にしたXOOPSの仕様は、単純にCMSとして見るとかなり異色な印象ですが、瀧澤氏によると「こうしたさまざまな内容のサービスやコンテンツを統合的に管理することで、容易にデザインやセオリーに一貫性を持たせて、サイト内を統一できるのが、XOOPSを使う大きなメリット」だと言います。

 確かに、大掛かりなケースでなくても、何らかの非営利団体のサイト、あるいはイントラネットで運用する企業内のとある部署のポータルサイトなど、規模が小さくても、今後こうしたサービスを持つサイトのニーズは増えていくことが予想されます。

 それぞれのサービスを別々に調達しようとすると、非常にコストがかかってしまったり、あるいは個別のシステムに仕様上、サイト内でサービス間の一貫性を保つことが難しくなってしまうといった問題が起きるのが普通です。これが、XOOPSなら、極めて低コスト(ソフトウェア自体は無償)で、かつ簡単に実現できるわけです。


星野 純 (ほしの じゅん) ■ 主にデザインやトレンドに関する市場調査などを行う日本カラーデザイン研究所で、ソフトウェア開発や企業向け情報資料の編集に従事。ちょうどそのころ、一般に開放されたばかりのインターネットと出会い、衝撃を受ける。「今この『デジタル革命』に立ち会わないでどうする!」と思い立ち、日経BP社で記者としてインターネットとデジタルパブリッシングを追いかける生活に転身。その後、Webプロダクション「WebBakers(ウェブベイカーズ)」を設立してWeb制作の現場に。以来、「CMSを使って、最小限のリソースで最大限のパフォーマンスを」を標榜しつつ活動中。