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日常考えたことを書きます

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マカジキの刺身 〜懐かしい昭和の味


カジキというと、今はほぼメカジキですね。メカジキの切り身は魚屋の常連ですが、最近随分高くなりました。養殖はできない魚だから、資源保護に十分留意しつつ漁獲してほしいものです。


 さて今回紹介するのは、マカジキです。マカジキは昔も頻繁に見掛ける魚でなかったと思いますが、そこそこはありました。しかし、最近は非常に稀になり滅多に見ません。上の身は浅草松屋デパートに11月末出ていたものですが、この時は珍しく安く3切れで500円ちょっとでした(上のはその1切れを3等分したもの)。切り身状態で売っていましたが、写真を見て判るように非常に鮮度がよいものでした。「これ、生で刺身にして食べられますか?」と売り場の大将に聞くと、ちょっと渋い顔をして「うーん、これ生食用におろしたものじゃないんで。それに今日入荷したものじゃないんですよ。」と言います。確かに鮮度が良くても下処理時に汚染されると、食中毒の原因になります。どうしようか迷いましたが、思い切って買って一部は上の切り身から刺身にしていただきました。美味しい!そのほのかにオレンジ色をした身はあっさりだけではない、少し脂も舌に残るねっとりとした味でした。たくさんは食べず、残りは煮付けにしましたが、こちらもメカジキと違い旨みのある仕上がりになりました。


 カジキの刺身、懐かしいです。自分が幼稚園生の頃、弟が生まれるためしばらく父方の実家に預けられていました。祖母がいて伯父家族と暮らしていましたが、2週間ほど面倒をみてもらった記憶があります。伯父夫婦は日中仕事に出ており、日中は祖母とまだ小さい従弟ひとりだけでした。ある日祖母がお昼に店屋物をとってくれると言いました、「お刺身丼にするね」と言うので、僕はわくわくしました。当時刺身はあまり食べる機会がなかったですからネ。待っていると登場した丼、蓋を開けると赤い刺身がたっぷり乗っています。おお!さっそくいただきまーす!となりましたが、刺身が異常に硬い!なんか筋張ってごりごりした身もあります。「おばあちゃん、これ何の魚?」と訊くと、「カジキだよ」と言います。カジキは初見でしたが、いや硬いのなんの。噛んでいると段々味がしてきますが、飲み込むのも大変でした。「おばあちゃん、カジキ硬いんだね」と言うとぎろっと睨まれました。「いろいろな身が入ってて美味しいじゃないか。文句言わずにお食べ。」と言われてしまいました。あの頃の昭和の庶民はまだ貧しいものでした。祖母からすると奮発して頼んだのに、そういう感想を孫に言われてむっとしたのでしょう。


 しかし、今回浅草松屋で手に入れたマカジキは柔らかく上品な味でした。マカジキの旬はまさに今、真冬の時期と聞きます。時期とか身の場所の違いがあるせいと思いますが、こういうマカジキなら下手なクロマグロに負けません。寧ろその軽い脂の乗り具合が独特で、クロマグロとは違う美味です。「あの時の刺身丼もこういう身を使っていれば旨かったろうな」と思いました。しかし、僕のことを可愛がってくれた祖母を思うと、あれはあれで60年近く経つ今も記憶に残っているという意味で悪くないことだったかもしれません。昭和の昔、冬は今よりずっと寒かった。酷暑だった今年も急速に気温が下がり、マカジキを久しぶりに食べてふと昔を思い出しました。


 マカジキの美味しさ、だれか述べてないかな?と思って調べてみました。すると「美味しんぼ」で紹介されてたようです。元がすぐには見られないですが、「ろくまるぶろぐ」さんにあら筋が書かれていたので、少し引用します。僕の経験とすごく似たエピソードだったようです。

帝都新聞学芸部部長の平野法明と社員もやってきたところで近城がカジキの寿司を頼むも、カジキなんぞゴリゴリしていて油臭い場末の大衆食堂で食べるようなものだとバカにされ、過去にも似たような出来事があったことを懐古します。

近城の過去

    近城がまだ偉い先生の下でアシスタントをしていた頃に寿司屋でカジキを頼んだところ、食道楽の師匠らに母親までも侮辱されたことで大喧嘩になって退職。

    近城の父は勇が幼い頃に他界。母は再婚せず、身を粉にして働くも三度の飯がやっと。それでもたまのご馳走として、皿に綺麗に並べて出してくれたのがカジキの刺し身だった。

4人は近城の出身地・千葉県銚子から少し荒れた冬の海に出て突きん棒漁を写真に収めます。


現像してみると、近城の撮った写真はどれも上手でテクニックには問題なし。しかし、何か物足りなくイマイチ。

気を取り直して寿司ともでカジキの握りを食べると、近城は再び家族でカジキを食べた時の情景を思い浮かべ、食べ物には人の心が込められていることや自分の写真に足りなかったものを実感し、後日、素晴らしい出来の写真を撮ることに成功します。

マカジキ

身は橙色掛かった桃色。

脂が乗ってコッテリしているのに脂臭くなくしつこくなくて(まり子評)、冷凍マグロにあるようなエゴいようなしつこさもなく、軽い甘みがあって後口がスッキリして爽やか。(クリコ評)

1月と2月、房総沖から三浦半島沖の突きん棒で取れる冬のマカジキは、本マグロも敵わない。

季節外れのクロカワ、シロカワは大して美味しくないからカジキは低くみられがちだが、カジキの真価を云々するためには、真冬のマカジキを食べなければいけない。(士郎評)


うーむ、まったく同じといっていいそっくりな経験と感想ではないか! びっくり!!