« 2013年7月 | トップページ | 2013年9月 »

2013年8月

珍しく消費者の人と直接対話してみた

先日、高校の同窓会に出席して来た。およそ30年ぶりに会う人達ばかりだったが、よく言われるように初めだけ緊張していたが、慣れてくるとすぐ30年前と同じ感覚でしゃべることができた。

とまあ、ここまではこの文章の趣旨とは関係なさそうだが、その後行った2次会で、クラスの女子(!)と話していて、ここに至ってなお農薬に対するイメージの悪さと、自分たちの仕事での、あるいはこういったブログ等による発信での浸透の小ささに愕然とした。最も、主に1人の女子(まだいうか)と話していたため、それが世間一般の見解だというつもりはないが、今回はその会話について考えてみたい。

はじめは他愛のない世間話をしていたのだが、自分が農業にかかわる仕事をしているという話をしていたところ、こう聞かれた。
「農薬ってやっぱり危ないんやろ?無農薬のやつ買うた方がええんやんな?」
一瞬返答に詰まった。当然の前提としてそう思っているようだ。
「いや、危なくないとは言い切れへんけど(この辺がもどかしい)結局量の問題やねん。農家が散布する農薬も散布する時点で一部を除いてそんな危なくないし、消費者の手元に届く時点で残留はほとんどない。無農薬とか減農薬栽培の野菜とかって、安全性の問題だけでいえばまったく違いはないよ」
「え~、ほんま?だって農薬やろ?農薬言うたら危ないもんちゃうのん?」
「あのね、農薬言うてもいろんなもんあるし、農薬という名前の物質があるわけではないし、危ないかどうかはそれぞれの農薬ごとにやね・・・」
「せやけど、虫とかにかけたら死ぬやん」

この後、農薬とは最近は種類ごとに対象病害虫に特異的に作用して、安全性が非常に高まっていること、それでなお非常に厳しい残留基準値が決められていることなどを説明した。出来るだけわかりやすさを心がけて・・・。
「ごめん、〇〇君(私の本名)の話難しいわ」
「そ、そう?」
「うん、これが私ら普通のおばちゃんの感覚」

しかも色々聞いてみると、「買ってはいけない」を読んでいたり、あまつさえ安部司の講演会も聞きに行ったという。そっちの方が話が単純化されていて理解し易いのだろうか。しかし、自分の話もこれ以上端折ると誤解を生みかねないし、断言してスパッと言い切ってしまうのも難しいことが多い。誠実であろうとするほど、それら偽科学の言説には対抗が難しくなってくるのだ。

とにかく、日本の農薬の残留基準は非常に厳しいこと、流通段階でのチェック(ただし防除履歴の確認が基本で、残留検査はごく一部であること)がしっかりなされているので残留しているものが市場に出回ることはまずないことから無農薬にこだわることはほとんど意味がないことは(とりあえずその場では)納得してもらった。また、虫が食べているから安全などではなく、かえって危険な場合もあるということも話させてもらった。
「ほんなら結局はこだわらんと、品質と値段で選んだらええっちゅうことやね?」
「そうそう、そういうこと。気をつけるとしたら、いろんな食材を出来る限り満遍なく食べる、言うことかな」

彼女によると、自分のような立場の人間と話する機会はほとんどないらしい。だとしたら、世の中に氾濫する書籍やテレビでの言説に飛びつくのも致し方ないだろう。だって、それしか判断材料はないのだから。しかし、本当はその気になれば農林水産省のサイトなどいくらでも資料は出てくる。しかしそれらはあまり知られておらず、また敷居も高いと感じられているのだろう。そのあたりは自分らの力不足を強く感じる。とはいえ、あれだけきっぱり言い切るわかりやすい偽科学に誠実な対応で対抗するのは並大抵ではないだろう。

「これからは変なこだわりはせえへんようにするわ。急にはできへんかもしれへんけど」
「わかってくれた?」
「ううん、〇〇君の話はやっぱり難しくてようわからんけど、熱意もって話してくれたから、信用してみよかなって」
結局そこかい!(ぐったり)

| | コメント (6) | トラックバック (0)

« 2013年7月 | トップページ | 2013年9月 »