打ち込んだ曲を音声ファイル化する(マスタリング/フリーズ/アンフリーズ)
今回は、打ち込んだ曲やトラックを音声ファイル化する方法を紹介します。
紹介する内容は次のとおりです。
・用語の整理
・曲全体を音声ファイル化する(マスタリング)
・トラックをフリーズする(レンダリング)
・トラックをアンフリーズする
・フリーズしてもCPU負荷が軽減されない場合の対処
■ 用語の整理
通常、音を録音することを単に録音(レコーディング)と呼びますが、DTMの世界では録音する目的や方法で様々な用語が登場しますので、用語を簡単に整理しておきます。
なお、ここでの説明は厳密には正しくない可能性もあります。というのも、人・業界・DAWソフトの種類によって用語の定義に若干のばらつきがあるようなのです。また、私の理解も十分ではありません。ですがそんなに的は外していないと思います。その点を念頭に置いて読んでください。
レンダリング:
ライブ演奏を録音する場合、演奏している間ずっと録音機器を作動させる必要があります(リアルタイムレコーディング)。
DAWソフトでは音の再生をソフトウェア的に処理しているので、曲を実際に演奏することなく、音声ファイルに直接音を書き込みできます。こうした録音手法のことをレンダリングと呼びます。
本ブログでは、リアルタイムレコーディングとレンダリングを対となる用語として定義します。
参考リンク [ Wikipedia - レンダリング ]
マスタリング:
曲全体を音声ファイル化し、CDプレスやMP3ファイル化のための原盤を作ることです。
参考リンク [ Wikipedia - マスタリング ]
バウンス(ピンポン録音):
選択したオーディオトラックを1つのトラックにまとめて録音することです。
昔(マルチトラックレコーダーを使っていた時代)にはピンポン録音などと呼んでいたと思いますが、最近はこう呼ばれているみたいですね。
昔はトラック数に制限があったので、トラックを節約するためにバウンスが必須だったのですが、DAWではそういった制限がかなり緩和されていますので、CPU負荷軽減のために行うことが多いと思います。
参考リンク [ Wikipedia - バウンス ]
フリーズ/アンフリーズ:
DAWソフトで使用するトラックやVSTの数が増えてくるとCPU負荷が増大し、制作作業に支障が出てきます。このようなときにトラックを一時的に音声ファイルに変換してCPU負荷を下げることをフリーズと呼びます。制作作業が終わって最終レコーディング時に元のMIDIトラックに戻すことをアンフリーズと呼びます。
残念ながらFL Studioには、SonarやCubaseのような「ワンタッチ操作の」フリーズ/アンフリーズ機能はありませんが、手作業でこれ相当の機能を実現することができます。
■ 曲全体を音声ファイル化する(マスタリング)
プレイモードをソングモードに切り替えます。

プレイリストで音声ファイル化する小節の範囲を選択します(タイムラインを[CTRL]キーを押しながらドラッグします)。小節の範囲を指定しない場合、全ての小節が音声ファイル化されます。

MP3ファイルを作成する場合、[OPTIONS]-[Project info]メニューで設定した情報をMP3ファイル内に埋め込むことができます。

[FILE]-[Export]-[Wave file]または[FILE]-[Export]-[MP3 file]メニューを選択します。

保存先のフォルダとファイル名を指定し、[保存]ボタンを押します。

レンダリング画面が表示されます。
出力するファイル形式を選択します。
[WAV][MP3]の両方を選択すると、2種類のファイルを同時に作成できます。
[Start]ボタンを押すとレンダリングが始まります。

[Save ACIDized]をチェックすると、アシッダイズされた(ACID等で利用可能な)WAVEファイルを作成することができます。
[Looping Mode]に指定する値によって、次のような違いがあります。
・Cut Remainder
小節の最後でぶつ切りにしたループを作成します。
ACIDからは「Loop」素材として利用できます。
・Leave Remainder
音の余韻に合わせて長さを調整します。
通常の曲データを出力するにはこれが最適です。
ACIDからは「Beatmapped」素材として利用できます。
・音の余韻をループの先頭にマージします。ループを作成するにはこれが最適です。
ACIDからは「Loop」素材として利用できます。
[Background rendering]ボタンを押すと、FL Studioをアイコン化して他の作業を行うことができます。

■ トラックをフリーズする(レンダリング)
プレイモードをソングモードに切り替えます。

プレイリストで音声ファイル化する小節の範囲を選択します(タイムラインを[CTRL]キーを押しながらドラッグします)。小節の範囲を指定しない場合、全ての小節が音声ファイル化されます。

ミキサー画面で、音声ファイル化するトラックのディスクアイコンをクリックし、出力ファイル名を指定します。


複数のトラックをまとめてフリーズする場合には、フリーズするトラックすべてに対して出力ファイル名を指定します。

[Disk recording]-[Render to wave file(s)]メニューを選択します。

[Start]ボタンを押します。

[Save ACIDized]をチェックすると、アシッダイズされた(ACID等で利用可能な)WAVEファイルを作成することができます。
[Looping Mode]に指定する値によって、次のような違いがあります。
・Cut Remainder
小節の最後でぶつ切りにしたループを作成します。
ACIDからは「Loop」素材として利用できます。
・Leave Remainder
音の余韻に合わせて長さを調整します。
通常の曲データを出力するにはこれが最適です。
ACIDからは「Beatmapped」素材として利用できます。
・音の余韻をループの先頭にマージします。ループを作成するにはこれが最適です。
ACIDからは「Loop」素材として利用できます。
トラックがフリーズされ、音声ファイルが自動的にクリップトラックに貼り付けられます。

この例ではフリーズ結果の曲の最後に余分な小節が付いていますが、これは音の余韻がぶつ切りにならないよう、FL Studioが付加してくれたものです。
不要な場合は、[Shift]キーを押しながらドラッグしてカットする良いでしょう。

最後にフリーズ前のチャンネルをミュートし、音が出ないようにします。

■ トラックをアンフリーズする
フリーズ後のオーディオクリップを削除します。

フリーズ元チャンネルのミュートを解除します。

■ フリーズしてもCPU負荷が軽減されない場合の対処
フリーズしてもCPU負荷があまり軽減されないことがあります。これは、チャンネルをミュートしてもプラグインがCPUを消費するためです。
使っていないプラグインに対してSmart disableを設定すると、状況が改善される場合があります。

個別に設定するのが面倒であれば、[TOOLS]-[Macros]-[Switch smart disable for all plugins]メニューを使ってすべてのプラグインに対して設定することができます。

Smart disable機能は、「動作させる必要がない」プラグインをFL Studioが自動的に判断し、動作を止めることでCPU負荷を軽減する仕組みです。フリーズ時以外にも有効な機能ですので積極的に利用しましょう。
Smart disable機能を使ってもCPU負荷が軽減されない場合は、あきらめてフリーズ前のチャンネルを削除しましょう(ー。ー)
#削除せずに、負荷の低いジェネレータに置き換える手もあります。
■ 最後に
次回はリアルタイムレコーディングによるフリーズの方法とバウンスの方法を紹介します。
次回に続く