ライオンの隠れ家 (第8話・2024/11/29) 感想
TBS系・金曜ドラマ『ライオンの隠れ家』
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第8話『姉の覚悟…そして別れのとき』の感想。
楓(桜井ユキ)は警察で愛生(尾野真千子)と面会し、洸人(柳楽優弥)のメッセージを伝え、釈放後の意向を尋ねる。釈放後、愛生は柚留木(岡山天音)の助けを得て、息子ライオン(佐藤大空)や洸人、美路人(坂東龍汰)が待つ佐渡島へ向かう。佐渡島で洸人は久々に姉と再会するも戸惑うが、愛生はライオンとの再会を喜ぶ。その夜、洸人は愛生に息子・愁人を託した理由や祥吾のDVについて聞き出し、自身の想いを初めてぶつける。一方、記者の天音(尾崎匠海)は、たちばな都市建設と亀ヶ谷議員に関する重要な情報を得ていた…。
---上記のあらすじは、当ブログのオリジナル---
原作:なし
脚本:徳尾浩司(過去作/おっさんずラブシリーズ,恋はDeepに,六本木クラス)
一戸慶乃(過去作/ドラマ初)
演出:坪井敏雄(過去作/妻、小学生になる。,さよならマエストロ) 第1,2,6話
青山貴洋(過去作/グランメゾン東京,ユニコーンに乗って,マイ・セカンド・アオハル) 第3,4,7話
泉正英(過去作/TOKYO MER,ユニコーンに乗って,王様に捧ぐ薬指) 第5,8話
音楽:青木沙也果(過去作/ユニコーンに乗って,すきすきワンワン!)
劇中絵画協力:太田宏介,太田信介(ギャラリー宏介株式会社 )
自閉症スペクトラム症監修:伊庭葉子,宮本一哉(株式会社Grow-S さくらんぼ教室 )
警察監修:古谷謙一
タイトルバック監修:Vaundy
主題歌:Vaundy「風神」
自閉スペクトラム症監修:伊庭葉子(特別支援教育士)
P:佐藤敦司(過去作/大恋愛~僕を忘れる君と,インハンド,俺の家の話)
※敬称略
ドラマは、登場人物の"日常"が、"非日常"になることだから
「初めまして」の皆様も、ご常連の皆様も、管理人のみっきーです!
お仕事や学校の休憩時間や移動中の方、就職活動中の方、病気療養、子育て、介護など、それぞれの生活を送る読者の皆様…
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―――ここまで、ごあいさつ―――
何よりも大いに評価したいのは、きっちりと「ドラマ」としての骨格ができていること。
それは、私は、「ドラマ」とは、登場人物の “日常” が、異分子の投入によって “非日常 になることだから。
そして、そんなことは普通に生きていたら体験も経験もできないから、「ドラマチック」と言うのだってこと。
そして、見ても分かるように「ファンタジー」の要素も含まれている。
私の「ファンタジー」とは、登場人物が生きている “現実” の先にあるであろう(あるはずの) “もしかすると想像できないことが起こるかもしれない” を楽しむ世界のこと。
似た言葉に「メルヘン」があるが。
メルヘンの登場人物たちは一定の法則やルールに従って動く設定あるため、“もしかすると想像できないことが起こるかもしれない” があっても、想定内の動きはしない。
だから、メルヘンは、その世界観全体を安心して楽しむことができる。
でも、ファンタジーは想定外の出来事が起きて、想定外の行動をするから、視聴者や読者がハラハラドキドキできるのだ。
「ホームドラマ」と「ファンタジー」のいい塩梅こそ!
なぜ、冒頭でこんな話をしたのか?
今回には、今作が秀逸な「ドラマ」であり、かつ「ファンタジー」でもあることを裏付けざるを得ないセリフがあったからだ。
まず、冒頭、市役所に勤務している小森洸人(柳楽優弥)が、DV夫から逃れてきた橘愛生(尾野真千子)を自転車に乗せて走る場面。
洸人(M)「姉の渦にのまれていく」
まさに、洸人の “日常” に、愛生という異分子の投入にって “非日常 になったことを示している。
次は、中盤、雨降る夜のペンションの一室で洸人が愛生に逃走した理由を聞く場面で。
洸人「なんで ライオンと離れてまで
こんな普通じゃない やり方」
今度は、愛生と‘ライオン’こと橘愁人(佐藤大空)の “日常” に、夫で父の山梨県で建築会社を経営している橘家の次男で、建築会社「たちばな都市建設」に勤務する橘祥吾(向井理)という異分子の投入によって “非日常 になったことを示している。
そう、前半の約20分間で、これまで別々に動いていた二つの「ドラマ」を、ここで一つに合体させたのだ。
そのシーンを、明るい昼間でもなく、美しい夕景でもなく、虫の音が聞こえる静かな夜でもなく、会話が外にもれず、他の部屋にも聞こえないようにマスキング効果のある寝静まった雨振りの夜に設定したことで…
「ドラマ」に、きょうだいや夫婦や親子を描く「ホームドラマ」の要素が組み込まれる。
そう、この「ホームドラマ」と「ファンタジー」をいい塩梅に組み合わせていることが、今作らしさなのだ。
この塩梅、かなりち密に計算されているからこそ、あざとさを感じにないことも、付け加えておきたい。
サスペンス要素を感じさせる終盤の洸人のモノローグ
そして、今作が「ドラマ」であり「ホームドラマ」で、かつ「ファンタジー」でもある上に、さらに「サスペンス」や「ミステリー」の要素を感じさせるのが、終盤の洸人の印象的なモノローグだ。
洸人(M)「頭が まるで ついていかない」
これこそが、今作がメルヘンではなく、ファンタジーであることを示している。
登場人物も、この先に怒ることが予想できなくて困惑しているし、視聴者も洸人と同じ心境になれるのだ。
もちろん、これだけ、洸人と、アート事務所でアーティストとして働く、自閉スペクトラム症の弟・美路人(坂東龍汰)と、愁人のやりとりが秀逸に描かれていれば、洸人がこの上なく翻弄されているのは、とっくに伝わっている。
しかしだ。
第8話となり、恐らく次週からが最終章になると考えれば、「この先、まだまだ何が起こるか分からない!」と強調したほうが、単純に期待感が増す。
それだけでなく、ラストの愛生とライオンがいない荒らされた部屋を提示することで、まだほぼ描かれていない “恐怖による支配” と “闇の世界” への脅威や危機感が増大された。
そう、テレビの中も外も、見事に「頭が まるで ついていかない」で帰着したのだ!
あとがき
何気にスゲーっと思ったのは、第8話からガッツリ絡んできた愛生の描き方です。
これまで謎に包みまくってきたのに、自転車の二人乗りの現実と回想シーンとのカットバック(切り返し=2つ以上の異なる場面を交互に見せる手法)で、一気に洸人との姉弟感(間)を詰めて。
その後は、食卓の料理と絵画を通して美路人との姉弟感(間)を詰めて。
それでいて、マヨネーズでライオンとの母子感(間)も一気に詰めて。
脚本の畳みかける構成と、演出と俳優が創出する空気感や世界観が、スパッと “愛生色”、“尾野真千子色” に染まりましたよね。
「ドラマ」「ホームドラマ」「ファンタジー」「サスペンス」「ミステリー」の豪華五点盛りの上に、シリアスとコミカルの程よい味付けが施されており、“唯一無二のドラマ” になっていると思います。
そして、この品質をオリジナル脚本でやっているのは、まだまだ日本のドラマも可能性があるってことだと思います。
★すべての読者様に愛と感謝の “ありがっとう!!”
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【これまでの感想】
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