10分で分かるNUKE*2
- 2020/12/15
(最終更新 2024/05/23)
前回からの続きです。
初心者向けNuke入門。Nuke11~Nuke14あたり。キーボードショートカットはWindowsで記載。
内容:
Transform / バウンディングボックス / Black Outside / フィルター / コンカチネーション / キーフレーム / ドープシート / カーブエディタ / 2Dモーションブラー
ノードグラフ上で[T]キーを押してTransformノードをつくります。Transformノードでは位置 / 回転 / スケールなど基本的な変形操作を行います。
数値入力でも調整できますが、ビューアに表示されるハンドルをドラッグすることでも調整できます。
ハンドルの位置は[center]ノブと対応しています。画像サイズを持っているノードを選択した状態でTransformノードをつくれば、centerがその画像サイズの中心点になってくれるので便利です。
centerはビューア上で[Ctrl]+ドラッグで好きな場所に変更できます。スケール / 回転させるときはcenterを調整すると効率的です。接地のあるようなモノでは、足元にcenterを設定しておくと非常に快適に作業できます。
Transformノードには"invert"(=反転)のチェックがあります。これは入力した数値の逆の結果を与えます。複数のTransformノードを組み合わせて使うような場合で役に立ちます。
画像サイズとは別に、バウンディングボックス(BBOX)と呼ばれる、有効なピクセルがあるとNukeが見なす範囲があります。ビューア上で点線で表示される四角形です。左下のx,yと右上のx,y、合計4つの数字で定められます。
BBOXは無駄に重いコンポジットの原因になるので注意が必要です。画像を移動させるだけで、BBOXはすぐに「画面外に」広がります。この画面外に行った部分がもう不要だとしてもNukeは計算してしまいます。Nukeが「無駄な処理」を行っていないか、常に見張るべきです。変形ノードはBBOXを広げがちです。CornerPinノードを使うとBBOXがめちゃくちゃ広がることがあるので気を付けてください。Blurノード、DefocusノードなどでもBBOXは広がります。
画面の外側に広がったBBOXは、Reformatノードで捨てることができます。Reformatノードのresizeは"none"にして、"preserve bounding box"(=バウンディングボックスを保持)のチェックは外します。
Nuke 11.3から環境設定(Preferences)でBBOXの警告をノードグラフ上で表示できるようになりました。Panels > Node Graph > "bounding box warning" のチェックを入れてください。BBOXが画面外に10%広がったら赤枠を表示する、というふうにスレッショルド(しきい値)を設定できます。
※ただしこの機能はNukeを遅くするので普段はオフにするのが良いと説明する人もいます。個人的には気になりませんが。参考:https://www.youtube.com/watch?v=vIvOmGkAMP8&t=48s
素材に不要なエリアがあるなら、CropノードでBBOXを小さくできます。ビューア上に表示される四角形で囲み、Nukeに計算させる範囲を最小限に狭めることで、コンポジットが軽くなります。
CurveToolノードという分析専用のノードを使えば、クロップ処理を自動化することができます。ノードの下にCurveToolノードを追加し、ドロップダウンから「Auto Crop」を選んだら [Go!] ボタンをクリックします。分析が始まります。
分析が終わったら[AutoCropData]タブに移動します。ここには、BBOXを定義する4つの数字のキーフレームアニメーションが出来ています。新たにCropノードをつくり、アニメーションメニューボタンを[Ctrl]+[Shift]キーを押しながらドラッグ&ドロップすることでキーフレームをコピー&ペーストすれば終了です。CurveToolノードはもう用済みです(ちなみに[Ctrl]キーを押しながらドラッグ&ドロップだとリンクになるので、お好みでどうぞ)。
Writeノードでクロップすることもできます。EXR形式でレンダリングするときは、オプションにあるautocropのチェックを入れると、クロップ処理されたファイルが保存されるので便利です。
MergeノードにもBBOXを調整するノブがあります。[set bbox to]ノブです。デフォルトは"union"になっており、AとBを合計したBBOXで出力されます。必要に応じて"A"や"B"に変えて、無駄に計算範囲が広くなるのを防ぐことができます。ただ、「マージすると画面外にBBOXが広がる」というのであれば、そもそもマージする前にReformatノードを付けて、画像サイズやBBOXを揃えておくのが良いのではないかと思います。
また、作業によっては、広がったBBOXをきちんと保持しないといけないケースもあります。あえて少し広めのBBOXが必要なケースもあります。BBOXを調整するためのノードもあります。AdjustBBoxノードはBBOXを広げたり狭めたりできます。また、CopyBBoxノードは他のノードが持つBBOXを移し替えます。
BBOXと一緒にBlack Outsideを知っておく必要があります。BBOXを調整すると、BBOXの外側にあるピクセルが画面の端まで伸びて、「縞模様」が発生することがあります。これはNukeの仕様です。
NukeではBBOXの外側のエッジに黒ピクセルを追加することで、この問題を解決します。Transformノード、Reformatノード、Cropノードなどにある"black outside"のチェックが役に立ちます。また、BlackOutsideノードを利用することもできます。
TransformノードやReformatノード、CornerPinノードなど変形ノードのほか、ScanlineRenderノードなどには[filter]ノブがあります。
Nukeのフィルターとは画像補間のことです。たとえば、画像を回転すると元のピクセルは中途半端な場所に来てしまうため、周囲のピクセルの色をブレンドするなどして、新たにピクセルを生み出さなければなりません。
画像を拡大、縮小するときも、0.5ピクセル移動するといったときも同様です。新しいピクセルを生み出す必要があります。この処理を日本語では「画像補間」とか「再サンプリング」と呼んだりします。
[filter]ノブはこの画像補間のタイプを選ぶためのものです。デフォルトの"Cubic"のままで問題ないことも多いですが、素材をゆっくり移動やズームなどさせるとピクセルが「めらめら」と揺らめくように見えることがあるので、そういうときは"Lanczos4"などに変えたりします。このフィルターはシャープさを保つため、画質を悪化させたくないときにもオススメです。Nukeではさまざまなフィルターが用意されているので、必要に応じて使い分けることができます。(参考リンク:Shizlog: [CG][Nuke]filter type)
なお、Lanczosもそうですが、フィルターによってはマイナス値を発生させるものがあります。コントラストの高いエッジ部分で真っ黒のピクセルが出現するなら、Log2LinノードやOCIOLogConvertノード、OCIO Colorspaceノードなどを使用して、ログ空間で処理させることで対処できます。Sharpenノードでシャープネス処理を掛けるときもマイナス値が出ることがあり、同様に対処します。(参考リンク:VFXワークフロー LogToLin | yamagishi-2bit-BLog)
Transformノードでscaleを「0.1」にすると、1/10のスケールに縮小されます。もう1つTransformノードを追加してscaleを「10」にすると、10倍に拡大されて元に戻ります。当たり前のように思うかもしれませんが、当たり前ではありません。これはNukeが「複数の処理を統合した後に1つの処理として実行している」からです。Nukeではこの仕組みをコンカチネーション(Concatenation)=「連結」と呼んでいます。
2つのTransformノードの間にGradeノードを追加すると、連結が分断され、画質が悪化します。画像を縮小した処理が一度完結されてしまうからです。
画質の悪化を防ぐため、Transformノードなどの変形ノードはなるべく連続させて使ってください。Reformat、CornerPinノードなども連結されます。Mirrorノードは以前のバージョンではダメでしたが、今は連結されます。変形ノードでも、連結の仕組みが働かないノードもあります。CropノードやBlackOutsideノードなどは連結しません。
コンカチネーションの仕組みは、フィルターを何度も適用して画質が悪化するのを防ぐためにあります(フィルターは不可逆的に画質を悪化させます)。ノードが連結されている場合、最後のノードのフィルターのみが働くようになるので、最後のノードの[filter]ノブを調整します。(参考リンク:Concatenation of transforms in Nuke - Written Tutorials - Nukepedia)
ノブの右端にある「~」みたいなボタンはアニメーションメニューのボタンです。ここをクリックするとアニメーションメニューが出てきます。
入力欄を右クリックしても、同じようにアニメーションメニューが出てきます。こちらをクリックすると、個々の値(xのみ、yのみなど)にアニメーションを設定できます。
[Set key]を選ぶと、キーフレームが作成されます。入力欄が青くなり、現在のフレームにキーフレームが存在することが示されます。ビューアのタイムスライダー上にも青いラインが表示され、キーフレームの存在が示されます。
他の時間に移動すると、入力欄が水色に変わります。これは「アニメーションがあるが、現在のフレームにはキーフレームがない」ことを示しています。
この状態で値を調整すると、新しいキーフレームがつくられます。Nukeはオートキーのため、[Set key]を何度もクリックする必要はありません。キーフレームを削除するときは[Delete Key]。全体のアニメーション自体をやめたいときは[No animation]です。アニメーションメニューからは、エクスプレッションを設定したり、アニメーションのコピー&ペーストなどができます。(参考:NUKEのエクスプレッション(Expression)の便利な使い方 - コンポジゴク)
アニメーションを持っているノードは「A」マークが表示されます。
プロパティパネルに表示させているアニメーションは、ノードグラフの横のタブにあるドープシート(Dope Sheet)やカーブエディタ(Curve Editor)でも調整できます。後からキーフレームを移動したり削除したくなったときに便利です。
ドープシートとカーブエディタ上でも、マウスの中央ホイールのスクロールや中ドラッグで画面を操作できます。[F]キーも便利です。キーフレームを選択して[F]キーを押すと、そこにズームインします。何も選択せずに[F]キーで、アニメーション全体を表示します。
キーフレームを設定した後で、「前後のフレームにずらしたい」という場合があります。ドープシートを使うと良いです。キーフレームを左右にドラッグして移動できます。ドラッグで囲むことで複数のキーフレームを選択すれば、複数のキーフレームも一括でずらせます。複数選択ではトランスフォームボックスが表示されているので、キーフレームの間を広げたり、縮めたりすることもできます。
「キーフレームをきっちり100フレーム前にずらしたい」というように移動量がハッキリしている場合は、左下の入力欄がオススメです。キーフレームを選択したら「-100」と入力し、[Move]ボタンをクリックすれば終了です。
カーブエディタはキーフレーム間をどのように補間するか調整するときに便利です。単純にリニア(直線的)な補間にしたいなら、キーフレームを選択して[L]キーを押します。
滑らかなアニメーションにしたいなら、[Z]キーを押します。
キーフレームのあたりで減速させたいときは、[H]キーを押します。「動き始め」「動き終わり」などで役に立ちます。
これらは、キーフレームを選択して右クリックすると出てくるメニューの"Interpolation"の中にあります。ショートカットを忘れたらここを探してください。また、ここにはいろいろな便利機能があります。
"Before"、"After"の中にある"Linear"は、最初のキーフレームや最後のキーフレームの外側に、「続きのアニメーション」をつくってくれます。便利です。
カーブエディタにもMoveがあります。キーフレームを選択してから、右クリック > Edit > Move を選びます。横軸であるxは時間、縦軸であるyはノブのパラメータ数値を意味しています。「y+100」とすれば値を100上げられますし、「y*2」として値を倍増したり、「y/2」として値を半減させたりできます。
2Dのアニメーションをつけた素材にモーションブラーを追加したいときは、VectorBlurノードを使います(※TransformノードやCornerPinノード等のプロパティの下部に[motionblur]というノブがありますが、そっちはあまり使われません)。
VectorBlurノードでは2段階の行程によって2Dモーションブラーを適用します。まず、MotionBlur2Dノードをつくります。MotionBlur2Dノードには2つのインプットがあるので、それぞれにTransformノード等をつなぎます。[Output UV]ノブを"motion"チャンネルなどして、ピクセルの移動量(Velocity)の情報をアウトプットします。その後、VectorBlurノードを追加します。
VectorBlurノードでは[uv channels]ノブを"motion"チャンネルに設定。[motion amount]ノブでブラー量を調整します。VectorBlurノードを使ったときにBBOXの外側に「縞模様」が伸びてしまうことがあるため、[expand blur bbox]ノブに適当な数値を入れ、bboxを拡張することで対処します。
次回へつづく
前回からの続きです。
初心者向けNuke入門。Nuke11~Nuke14あたり。キーボードショートカットはWindowsで記載。
内容:
Transform / バウンディングボックス / Black Outside / フィルター / コンカチネーション / キーフレーム / ドープシート / カーブエディタ / 2Dモーションブラー
Transformノードで画像を変形させる
ノードグラフ上で[T]キーを押してTransformノードをつくります。Transformノードでは位置 / 回転 / スケールなど基本的な変形操作を行います。
数値入力でも調整できますが、ビューアに表示されるハンドルをドラッグすることでも調整できます。
ハンドルの位置は[center]ノブと対応しています。画像サイズを持っているノードを選択した状態でTransformノードをつくれば、centerがその画像サイズの中心点になってくれるので便利です。
centerはビューア上で[Ctrl]+ドラッグで好きな場所に変更できます。スケール / 回転させるときはcenterを調整すると効率的です。接地のあるようなモノでは、足元にcenterを設定しておくと非常に快適に作業できます。
Transformノードには"invert"(=反転)のチェックがあります。これは入力した数値の逆の結果を与えます。複数のTransformノードを組み合わせて使うような場合で役に立ちます。
バウンディングボックスに注意する
画像サイズとは別に、バウンディングボックス(BBOX)と呼ばれる、有効なピクセルがあるとNukeが見なす範囲があります。ビューア上で点線で表示される四角形です。左下のx,yと右上のx,y、合計4つの数字で定められます。
BBOXは無駄に重いコンポジットの原因になるので注意が必要です。画像を移動させるだけで、BBOXはすぐに「画面外に」広がります。この画面外に行った部分がもう不要だとしてもNukeは計算してしまいます。Nukeが「無駄な処理」を行っていないか、常に見張るべきです。変形ノードはBBOXを広げがちです。CornerPinノードを使うとBBOXがめちゃくちゃ広がることがあるので気を付けてください。Blurノード、DefocusノードなどでもBBOXは広がります。
画面の外側に広がったBBOXは、Reformatノードで捨てることができます。Reformatノードのresizeは"none"にして、"preserve bounding box"(=バウンディングボックスを保持)のチェックは外します。
Nuke 11.3から環境設定(Preferences)でBBOXの警告をノードグラフ上で表示できるようになりました。Panels > Node Graph > "bounding box warning" のチェックを入れてください。BBOXが画面外に10%広がったら赤枠を表示する、というふうにスレッショルド(しきい値)を設定できます。
※ただしこの機能はNukeを遅くするので普段はオフにするのが良いと説明する人もいます。個人的には気になりませんが。参考:https://www.youtube.com/watch?v=vIvOmGkAMP8&t=48s
素材に不要なエリアがあるなら、CropノードでBBOXを小さくできます。ビューア上に表示される四角形で囲み、Nukeに計算させる範囲を最小限に狭めることで、コンポジットが軽くなります。
CurveToolノードという分析専用のノードを使えば、クロップ処理を自動化することができます。ノードの下にCurveToolノードを追加し、ドロップダウンから「Auto Crop」を選んだら [Go!] ボタンをクリックします。分析が始まります。
分析が終わったら[AutoCropData]タブに移動します。ここには、BBOXを定義する4つの数字のキーフレームアニメーションが出来ています。新たにCropノードをつくり、アニメーションメニューボタンを[Ctrl]+[Shift]キーを押しながらドラッグ&ドロップすることでキーフレームをコピー&ペーストすれば終了です。CurveToolノードはもう用済みです(ちなみに[Ctrl]キーを押しながらドラッグ&ドロップだとリンクになるので、お好みでどうぞ)。
Writeノードでクロップすることもできます。EXR形式でレンダリングするときは、オプションにあるautocropのチェックを入れると、クロップ処理されたファイルが保存されるので便利です。
MergeノードにもBBOXを調整するノブがあります。[set bbox to]ノブです。デフォルトは"union"になっており、AとBを合計したBBOXで出力されます。必要に応じて"A"や"B"に変えて、無駄に計算範囲が広くなるのを防ぐことができます。ただ、「マージすると画面外にBBOXが広がる」というのであれば、そもそもマージする前にReformatノードを付けて、画像サイズやBBOXを揃えておくのが良いのではないかと思います。
また、作業によっては、広がったBBOXをきちんと保持しないといけないケースもあります。あえて少し広めのBBOXが必要なケースもあります。BBOXを調整するためのノードもあります。AdjustBBoxノードはBBOXを広げたり狭めたりできます。また、CopyBBoxノードは他のノードが持つBBOXを移し替えます。
Black Outsideを使う
BBOXと一緒にBlack Outsideを知っておく必要があります。BBOXを調整すると、BBOXの外側にあるピクセルが画面の端まで伸びて、「縞模様」が発生することがあります。これはNukeの仕様です。
NukeではBBOXの外側のエッジに黒ピクセルを追加することで、この問題を解決します。Transformノード、Reformatノード、Cropノードなどにある"black outside"のチェックが役に立ちます。また、BlackOutsideノードを利用することもできます。
フィルターに注意
TransformノードやReformatノード、CornerPinノードなど変形ノードのほか、ScanlineRenderノードなどには[filter]ノブがあります。
Nukeのフィルターとは画像補間のことです。たとえば、画像を回転すると元のピクセルは中途半端な場所に来てしまうため、周囲のピクセルの色をブレンドするなどして、新たにピクセルを生み出さなければなりません。
画像を拡大、縮小するときも、0.5ピクセル移動するといったときも同様です。新しいピクセルを生み出す必要があります。この処理を日本語では「画像補間」とか「再サンプリング」と呼んだりします。
[filter]ノブはこの画像補間のタイプを選ぶためのものです。デフォルトの"Cubic"のままで問題ないことも多いですが、素材をゆっくり移動やズームなどさせるとピクセルが「めらめら」と揺らめくように見えることがあるので、そういうときは"Lanczos4"などに変えたりします。このフィルターはシャープさを保つため、画質を悪化させたくないときにもオススメです。Nukeではさまざまなフィルターが用意されているので、必要に応じて使い分けることができます。(参考リンク:Shizlog: [CG][Nuke]filter type)
なお、Lanczosもそうですが、フィルターによってはマイナス値を発生させるものがあります。コントラストの高いエッジ部分で真っ黒のピクセルが出現するなら、Log2LinノードやOCIOLogConvertノード、OCIO Colorspaceノードなどを使用して、ログ空間で処理させることで対処できます。Sharpenノードでシャープネス処理を掛けるときもマイナス値が出ることがあり、同様に対処します。(参考リンク:VFXワークフロー LogToLin | yamagishi-2bit-BLog)
コンカチネーションを理解する
Transformノードでscaleを「0.1」にすると、1/10のスケールに縮小されます。もう1つTransformノードを追加してscaleを「10」にすると、10倍に拡大されて元に戻ります。当たり前のように思うかもしれませんが、当たり前ではありません。これはNukeが「複数の処理を統合した後に1つの処理として実行している」からです。Nukeではこの仕組みをコンカチネーション(Concatenation)=「連結」と呼んでいます。
2つのTransformノードの間にGradeノードを追加すると、連結が分断され、画質が悪化します。画像を縮小した処理が一度完結されてしまうからです。
画質の悪化を防ぐため、Transformノードなどの変形ノードはなるべく連続させて使ってください。Reformat、CornerPinノードなども連結されます。Mirrorノードは以前のバージョンではダメでしたが、今は連結されます。変形ノードでも、連結の仕組みが働かないノードもあります。CropノードやBlackOutsideノードなどは連結しません。
コンカチネーションの仕組みは、フィルターを何度も適用して画質が悪化するのを防ぐためにあります(フィルターは不可逆的に画質を悪化させます)。ノードが連結されている場合、最後のノードのフィルターのみが働くようになるので、最後のノードの[filter]ノブを調整します。(参考リンク:Concatenation of transforms in Nuke - Written Tutorials - Nukepedia)
キーフレームアニメーションのやり方
ノブの右端にある「~」みたいなボタンはアニメーションメニューのボタンです。ここをクリックするとアニメーションメニューが出てきます。
入力欄を右クリックしても、同じようにアニメーションメニューが出てきます。こちらをクリックすると、個々の値(xのみ、yのみなど)にアニメーションを設定できます。
[Set key]を選ぶと、キーフレームが作成されます。入力欄が青くなり、現在のフレームにキーフレームが存在することが示されます。ビューアのタイムスライダー上にも青いラインが表示され、キーフレームの存在が示されます。
他の時間に移動すると、入力欄が水色に変わります。これは「アニメーションがあるが、現在のフレームにはキーフレームがない」ことを示しています。
この状態で値を調整すると、新しいキーフレームがつくられます。Nukeはオートキーのため、[Set key]を何度もクリックする必要はありません。キーフレームを削除するときは[Delete Key]。全体のアニメーション自体をやめたいときは[No animation]です。アニメーションメニューからは、エクスプレッションを設定したり、アニメーションのコピー&ペーストなどができます。(参考:NUKEのエクスプレッション(Expression)の便利な使い方 - コンポジゴク)
アニメーションを持っているノードは「A」マークが表示されます。
ドープシートとカーブエディタ
プロパティパネルに表示させているアニメーションは、ノードグラフの横のタブにあるドープシート(Dope Sheet)やカーブエディタ(Curve Editor)でも調整できます。後からキーフレームを移動したり削除したくなったときに便利です。
ドープシートとカーブエディタ上でも、マウスの中央ホイールのスクロールや中ドラッグで画面を操作できます。[F]キーも便利です。キーフレームを選択して[F]キーを押すと、そこにズームインします。何も選択せずに[F]キーで、アニメーション全体を表示します。
ドープシートを使う
キーフレームを設定した後で、「前後のフレームにずらしたい」という場合があります。ドープシートを使うと良いです。キーフレームを左右にドラッグして移動できます。ドラッグで囲むことで複数のキーフレームを選択すれば、複数のキーフレームも一括でずらせます。複数選択ではトランスフォームボックスが表示されているので、キーフレームの間を広げたり、縮めたりすることもできます。
「キーフレームをきっちり100フレーム前にずらしたい」というように移動量がハッキリしている場合は、左下の入力欄がオススメです。キーフレームを選択したら「-100」と入力し、[Move]ボタンをクリックすれば終了です。
カーブエディタを使う
カーブエディタはキーフレーム間をどのように補間するか調整するときに便利です。単純にリニア(直線的)な補間にしたいなら、キーフレームを選択して[L]キーを押します。
滑らかなアニメーションにしたいなら、[Z]キーを押します。
キーフレームのあたりで減速させたいときは、[H]キーを押します。「動き始め」「動き終わり」などで役に立ちます。
これらは、キーフレームを選択して右クリックすると出てくるメニューの"Interpolation"の中にあります。ショートカットを忘れたらここを探してください。また、ここにはいろいろな便利機能があります。
"Before"、"After"の中にある"Linear"は、最初のキーフレームや最後のキーフレームの外側に、「続きのアニメーション」をつくってくれます。便利です。
カーブエディタにもMoveがあります。キーフレームを選択してから、右クリック > Edit > Move を選びます。横軸であるxは時間、縦軸であるyはノブのパラメータ数値を意味しています。「y+100」とすれば値を100上げられますし、「y*2」として値を倍増したり、「y/2」として値を半減させたりできます。
モーションブラーを追加する
2Dのアニメーションをつけた素材にモーションブラーを追加したいときは、VectorBlurノードを使います(※TransformノードやCornerPinノード等のプロパティの下部に[motionblur]というノブがありますが、そっちはあまり使われません)。
VectorBlurノードでは2段階の行程によって2Dモーションブラーを適用します。まず、MotionBlur2Dノードをつくります。MotionBlur2Dノードには2つのインプットがあるので、それぞれにTransformノード等をつなぎます。[Output UV]ノブを"motion"チャンネルなどして、ピクセルの移動量(Velocity)の情報をアウトプットします。その後、VectorBlurノードを追加します。
VectorBlurノードでは[uv channels]ノブを"motion"チャンネルに設定。[motion amount]ノブでブラー量を調整します。VectorBlurノードを使ったときにBBOXの外側に「縞模様」が伸びてしまうことがあるため、[expand blur bbox]ノブに適当な数値を入れ、bboxを拡張することで対処します。
次回へつづく
【参考書籍】
・Ganbar, Ron. Nuke 101: Professional Compositing and Visual Effects. Peachpit Press, 2011. (ロン・ガンバー, Bスプラウト訳. NUKE 101 コンポジット & ビジュアルエフェクト. ボーンデジタル, 2011.)
・Ganbar, Ron. Nuke 101: Professional Compositing and Visual Effects. Peachpit Press, 2011. (ロン・ガンバー, Bスプラウト訳. NUKE 101 コンポジット & ビジュアルエフェクト. ボーンデジタル, 2011.)
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