ドキュメントスキャナー「ScanSnap」シリーズで有名なPFUから興味深い製品が登場した。「Omoidori(おもいどり)」は、紙のアルバムに貼り付けた写真をデータ化するための専用デバイスだ。デジカメがなかった時代の写真を紙のアルバムに貼り付けている家庭は多いだろう。しかし、いまどきの写真は、スマートフォンやデジカメで撮影したものがほとんど。紙焼きにした写真とデジタルの写真が混在しているのが実情だと思う。

 紙のアルバムは見ていて楽しいのだが、長期的な保存には不安がある。僕も、今回の記事のために15~20年ほど前のアルバムを開いてみたところ、古い写真は盛大に黄ばんでいた。長く保存しておきたいなら一刻も早くデジタル化するべきだ。

 とはいえ、紙焼きの写真をデジタルデータにするのは結構大変だ。台紙から無理に剥がしたら写真を傷つけてしまうかもしれない。かといって台紙に貼り付けたままスマートフォンやデジカメで撮影しても、フィルムが貼り付けてあったり光沢仕上げの写真だったりすると、光の反射で白く飛んでしまう。

 そこで登場したのが、iPhoneを使ってアルバムの写真をデータ化するのに特化したデバイス、Omoidoriなのだ。なんという割り切りだろうか。PFUは、思い切ったことをするものだ。

Omoidoriは、折り畳みケータイのような形で、畳んだ状態では文庫本2冊程度のサイズになる
Omoidoriは、折り畳みケータイのような形で、畳んだ状態では文庫本2冊程度のサイズになる
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iPhone 6 Plusシリーズには対応しないのが残念

 Omoidoriの本体は、折り畳み式のケータイのような形で、開くと四角錐のような形になる。本体にiPhoneをセットし、写真の上にOmoidoriを置いてiPhoneで撮影する。本体と両サイドのカバーで写真は覆われた状態になる。

 開発者はカバーで覆うことで周囲を暗くし、写真表面の反射を抑えようとしたわけだが、それでも完全に反射をなくすことはできない。そこで、本体の内側にはLEDフラッシュを搭載し、左右別方向から光を当てて撮った2枚の写真を合成するという荒技を編み出した。

 本体にセットできるのは、iPhone 6シリーズとiPhone 5シリーズ、iPhone SEだ。僕にとっての最大の不満は、iPhone 6 Plusシリーズをセットできないこと。また、サイズの合わないAndroidスマートフォンも利用できない。せっかく優れたデバイスでも、対応モデルが限られるのはいただけない。

 画面の大きいiPhone 6 Plusシリーズは、年配の人が使っているケースも少なくないと思うのだが、実はこの層こそが、紙焼きの写真を取り込みたい層ではないだろうか。ここはなんとか対応してほしかったところだ。

本体にはiPhone 6/6sがぴったりはまる。同梱のアダプターを使えばiPhone 5/5sやSEもセットできる
本体にはiPhone 6/6sがぴったりはまる。同梱のアダプターを使えばiPhone 5/5sやSEもセットできる
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iPhone 6 Plusシリーズは物理的にセットできない。またAndroid端末はスキャンアプリすら用意されていない
iPhone 6 Plusシリーズは物理的にセットできない。またAndroid端末はスキャンアプリすら用意されていない
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撮影は簡単だが写真のサイズが限定される

 さて、実際の撮影は簡単だ。OmoidoriをセットするとiPhoneの画面に写真が表示されるので、うまく収まるように本体の位置を調整する。後はアプリのシャッターボタンを押すだけだ。

 作業してみて不満に思ったのが写真のサイズの制約だ。Omoidoriが対応している写真は、L版と2L版だけなのだ。しかも、Omoidoriで覆えるスペースに収まらない2L版の写真は、左右2回に分けて撮影したものを合成する。合成の精度はかなり高く、ほぼ問題はなかったが、空を撮影した写真など、画像に特徴がないものはうまく合成できないことがあるという。実際に2L版を合成してみたところ、写真に写った芝など、きれいに重ならない部分ができてしまったものもあった。

 写真を取り込む時間は、1枚当たり数秒だ。慣れてくるとセットもうまくできるようになるだろう。取り込んだ際に赤目を補正する機能や、写真に記載された日付けを認識してExifデータを修正する機能もある。こうしてOmoidoriで取り込んだ写真はそのまま保存しておいてもいいが、アプリでフォトブックとして編集して直接注文することもできる。

写真を覆うように本体をセットしてシャッターボタンを押す
写真を覆うように本体をセットしてシャッターボタンを押す
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撮影は2回行われるが、自動で合成されて1枚の写真になる
撮影は2回行われるが、自動で合成されて1枚の写真になる
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2L版はカバーに収まらないので、左右2回に分けて撮影する
2L版はカバーに収まらないので、左右2回に分けて撮影する
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2L版の合成モード。自動で合成され、精度はかなり高い
2L版の合成モード。自動で合成され、精度はかなり高い
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2L版を取り込んだところ、端の部分がちょっと段差になった
2L版を取り込んだところ、端の部分がちょっと段差になった
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画質、手間ともに他社製品に勝る

 取り込んだ画像の画質をほかのデバイスと比較してみたので報告しておこう。

 まずスキャナーアプリ「CamScanner+」で取り込んだ写真は、画質はかなり高いのだが、反射がひどい。光沢のある写真も斜めから写すことである程度は反射を抑えられるとはいえ、完全には防げない。この辺がスキャナーアプリの限界だろう。

 続いてブラザーのレーザー複合機「MFC-L2740」のフラットベッドスキャナーでスキャンしてみた。解像度を600dpiにセットしたのだが、こちらもやや反射が気になった。許容できるかどうかは微妙なところだろう。

 試してみると、Omoidoriは画質、手間共に現時点では最高点を与えることができた。ポケット式のアルバムや、透明なカバーを掛けるフリー台紙(粘着式)式のアルバムでは、写真を取り出す手間を省略できるのが大きい。

 問題は、それだけの用途のために1万1852円を支払うかどうかだろう。また、僕は対応するスマートフォンを持っていないので、使いたくても使えない。そういうユーザーも多いはずなので、なんとか対応機種を増やしてほしいところだ。

Omoidoriではアルバムのフィルムを剥がさずにスキャンしても、反射はまず気にならない
Omoidoriではアルバムのフィルムを剥がさずにスキャンしても、反射はまず気にならない
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CamScanner+ではアルバムのフィルムを剥がさずにスキャンしたので、盛大な反射にガッカリ
CamScanner+ではアルバムのフィルムを剥がさずにスキャンしたので、盛大な反射にガッカリ
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複合機も光を当ててスキャンするため、完全には反射を取り除けない
複合機も光を当ててスキャンするため、完全には反射を取り除けない
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筆者/戸田 覚(とだ さとる)

1963年生まれのビジネス書作家。著書は120冊以上に上る。パソコンなどのデジタル製品にも造詣が深く、多数の連載記事も持つ。ユーザー視点の辛口評価が好評。近著に、『一流のプロから学ぶ ビジネスに効くExcelテクニック』(朝日新聞出版)がある。
Facebook:https://www.facebook.com/toda001
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