米VMwareがついに、「vSphere」の名前を冠さないサーバー向けの仮想化製品を発表した。コンテナベースの仮想化製品である「Photon Platform」だ。同社は「クラウドネイティブ」と呼ぶ新しいタイプのアプリケーションの開発者を取り込むと説明している。
Photon Platformは、同社が2015年8月30日から9月3日まで米サンフランシスコで開催した「VMworld 2015 US」で発表した。コンテナベースの仮想化とは仮想的なOS環境である「コンテナ」単位でサーバーを論理分割する手法だ。VMwareの既存のサーバー仮想化製品である「vSphere」は、「仮想マシン」によってサーバーを論理分割する。
今回の発表によってVMwareはコンテナベースの仮想化製品を2種類持つことになった。一つは既存のvSphereをコンテナに対応させた「vSphere Integrated Containers」、もう一つがvSphereの名前を冠さないPhoton Platformだ(表)。
製品名 | vSphere Integrated Containers | Photon Platform |
---|---|---|
位置付け | 既存vSphereユーザー向け | クラウドネイティブ向け |
運用管理 | vCenter | Photon Controller |
OS | Photon OS | Photon OS |
ハイパーバイザー | vSphere hypervisor | Photon Machine |
vSphere Integrated Containersでは、既存のハイパーバーザー「vSphere hypervisor(ESXi)」で稼働する仮想マシンの上で、「Photon OS」という軽量なLinuxディストリビューションを稼働し、その上でコンテナを稼働する。コンテナの運用管理には既存の「vCenter」を使用する。
Photon Platformでは、新規に開発した軽量ハイパーバーザー(同社は「マイクロバイザ」と呼んでいる)である「Photon Machine」を使用し、その仮想マシンの上でPhoton OSを稼働し、その上でコンテナを稼働する。コンテナの運用管理には新しいツールである「Photon Controller」を使用する。
既存vSphereをコンテナに対応させたvSphere Integrated Containersは、1年前の「VMworld US 2014」で開発方針を発表した製品であり、今回はその製品名を発表しただけだ。既定路線の製品と言える。それに対してPhoton Platformは、今回のVMworld US 2015で全く新規に発表した製品だ。
VMwareは、vSphere Integrated Containersを「既存のvSphereベースのITインフラを最大限活用できる製品」、Photon Platformを「クラウドネイティブ向けの製品」と位置付けている。
なぜVMwareは、2種類のコンテナベースの仮想化製品を用意する必要があるのか。また、そもそもなぜサーバー仮想化製品のベンダーであるVMwareが、コンテナベースの仮想化も手がけなければならないのか。以下ではその点を解説しよう。
開発者の熱狂的な支持を集めた「Docker」
まずはコンテナベースの仮想化製品がどのようなものかを確認しておこう。コンテナは古くからある技術だが、米Docker(当時の社名はdotCloud)が2013年3月にオープンソースソフトウエア(OSS)として公開した「Docker」がアプリケーション開発者から熱狂的な支持を集めるようになったことから、注目が集まった。
Dockerと、vSphereのようなサーバー仮想化製品との違いは大きく二つある。一つはサーバー仮想化が仮想マシンを使うのに対して、Dockerがコンテナを使う点。そしてより重要な違いは、サーバー仮想化が運用担当者を主なターゲットに作られているのに対して、Dockerが開発者をターゲットにしている点だ。
Dockerは、開発者が慣れ親しんだ手法や概念を、ITインフラストラクチャーの運用管理に取り込んだ(関連記事:急躍進した「Docker」、GitHub世代の支持を得られた理由)。例えば、「Infrastructure as Code」と呼ぶ「コードによってITインフラをコントロールする」という概念を採用。開発者は「コード」を書くだけで、つまりITインフラの運用担当者に作業依頼をしなくても、アプリケーションに必要なITインフラを用意できるようになった。
先進的な開発者の間ではここ数年来、「DevOps」と呼ばれる取り組みが流行している。DevOps(デブオプス)とは、開発(Development)と運用(Operations)を合成した言葉で、開発者と運用担当者との連携を密にすることで、開発者によるITインフラの調達や変更の要求に対して、迅速に応えられる体制を作り出すことを指す。DockerはDevOpsを実現するための理想的な仕組みとして、開発者の人気を集めた。
【初割・2カ月無料】お申し込みで…
- 専門記者によるオリジナルコンテンツが読み放題
- 著名経営者や有識者による動画、ウェビナーが見放題
- 日経ビジネス最新号12年分のバックナンバーが読み放題