駐車場の「タイムズ24」を運営するパーク24が、街中の「バレットサービス」を開始した。バレットサービスは、ホテルでおなじみの人も多いだろう。玄関まで自車を運転していき、従業員に運転をパス。あとは従業員がしかるべき場所に停めてくれる。ホテルを出るときには玄関前にクルマを運んでくれる、あのサービスだ。
これをパーク24は2月24日から日比谷・銀座エリアで「銀座バレットサービス」として実験的に開始した。どういうサービスか。目的は「『街中で駐車場を探す』という行為をなくすこと」。現段階では実証実験と位置づけているため銀座近辺に限定しているが、決められたエリア内であれば、利用者はどこででもクルマをパーク24の従業員に預けることができる。対象は自家用車か、パーク24が提供するレンタカー・カーシェアリングのクルマだ。
あらかじめ電話で場所や時間を予約すれば、指定の場所でクルマを預け、空いているパーク24の駐車場に駐車してもらえる。銀座エリアを一通り楽しんだあとは、指定した時間と場所でクルマを返してもらえばいい。決済は、モバイル端末でクレジットカード決済ができる「スクエア」を利用する。利用料金は3時間3000円から。当該エリアの駐車場料金は1時間で平均800円。バレットサービスの利用そのものは1時間当たり実質200円ということになる。
駐車場を核に周辺サービスを展開
パーク24はバレットサービスを高島屋柏店などの駐車場などですでに展開していた。こうしたサービスの利用率が徐々に高まってきたことから、今回街中のバレットサービスに踏み切った。
実験期間は2016年8月31日まで。だが、「実験で得られたデータをもとに本格サービスを検討していきたい。地域の拡大も考える」(パーク24の企画管理本部の池田絋生氏)としている。エリアとしては、ぶらぶらと徒歩で観光や買い物を楽しめる場所が適していると見る。例えば、横浜エリアや鎌倉エリアなどだ。
今は、電話からのみ予約が可能。今後は、タクシー配車サービス「UBER」のようにスマートフォンで予約する方法も模索していくという。
利用者からすれば「どこにでも停められる駐車場」のパスを持っているようなものだ。場所によっては、潜在需要が大きいサービスになり得るだろう。事実、米国ではすでにこうしたサービスが拡大する傾向がうかがえる。サンフランシスコに本社を置くベンチャー企業のラックスは、同様のサービスをサンフランシスコで開始し、すでにシカゴやニューヨークにまでサービスエリアを広げている。依頼すれば、預かっている間に洗車や給油までしてくれる。
停車中に点検サービスも
パーク24は駐車場運営に加えて、レンタカー、カーシェアリングなどにサービス分野を拡大している。今回のバレットサービスもその一環だ。パーク24の西川光一社長のビジョンは一貫している。「減らない路上駐車を、時間貸しの駐車場を適切に配備することで減らし、その駐車場資産を有効活用する」ということだ。そのために、今でも駐車場の数を年率約10%増やしながら、今回のバレットサービスなど自社の駐車場資産を活かすサービスを展開する。
「世の中のサービスは、UBERのように『今ここでお願いしたい』ものになってきている。レンタカーやカーシェアリングもその方向に向かうはずだ。つまり、デリバリーの世界。駐車場の周りには、我々の社員が数多くいる。駐車場を点検している人、各地点の営業所。そうしたフィールドワーク従業員をもっと利活用していく」(パーク24の佐々木賢一取締役)のがパーク24の狙いだ。その視点に立てば、国内随一の駐車場数を誇るパーク24にはまだまだやれるサービスは多い。
パーク24のグループ会社に、クルマの点検を行うタイムズサービスがある。例えば同社が、バレットサービスで預かったクルマを時間内で簡単に点検するサービスを施すことも可能だろう。今回は、バレットサービス専用のドライバーを新たに5人雇ったが、「現状の人員プラスアルファくらいで展開が可能で、専用の人員を補強するなど大幅な人員施策は不要」(佐々木氏)と見込む。むしろ、今ある人材を活用し別の周辺サービスができないかを模索した結果が今回のバレットサービスなのだ。
ほかにも法律や保険制度さえ整えば、駐車場に停める必要さえなくせるかもしれない。ドライバー付きのシェアリングカーや、その時間に誰かに貸すレンタカーとして預かったクルマを“稼ぐクルマ”にすることも考えられる。
パーク24はすべての駐車場のデータを管理しており、稼働する曜日、時間帯、出入庫、などのビッグデータ解析はお手の物。銀座界隈の駐車場稼働率からはじき出した「勝算」はある程度見えているはずだ。観光地で駐車場を探してさまよう時間の無駄がなくなる日も、そう遠くはないのかもしれない。
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