shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

Ramones Greatest Hits Live

2010-10-28 | Ramones
 よく言われることだがラモーンズの神髄はライヴにある。スタジオ録音ヴァージョンよりも速いテンポで立て続けに演奏される疾走系ロックンロールの波状攻撃は圧巻の一言だ。クラッシュのジョー・ストラマーが「エンド・オブ・ザ・センチュリー」DVDの中で語っていたように1つの曲が終わると間髪を入れずに次の曲が始まるから、聴いている方は息つく暇もなく、聴感上のスピード感に更に拍車がかかるという案配だ。
 彼らはオフィシャルなライヴ盤を何枚かリリースしている。具体的に言うと、デビューして間もない頃の野放図なエネルギー放射を音盤に刻み込んだロンドン・レインボー・シアターでのライヴ「イッツ・アライヴ」(1977)、CJ 加入直後のスペイン・バルセロナでのコンサートの模様を収めた「ロコ・ライヴ」(1991)、サヨナラ・ツアーのハイライトとも言うべき地元ニューヨーク公演のダイジェスト版「グレイテスト・ヒッツ・ライヴ」(1996)、そしてロスのザ・パレスで行われた正真正銘のラスト・ライヴ「ウィーアー・アウタ・ヒア」(1996)の4枚だ。
 ジョーイの艶のあるヴォーカルを楽しむなら初期の「イッツ・アライヴ」に限るが、私が愛聴しているのは多分ファンの間で話題に上ることが最も少ないであろうこの「グレイテスト・ヒッツ・ライヴ」なのだ。確かに他の3枚は30曲前後入っていてショー全体をカヴァーしているのに対し、この盤はその約半分の16曲しか入っていない。ボートラのスタジオ録音2曲を除けば時間にしてわずか34分、これではいくら何でもちょっと短すぎるし、せめてあと数曲入っていればなぁとも思うが、それでもやはり4枚のライヴ盤の中ではCDプレイヤーのトレイに乗る回数が圧倒的に多い。
 一番の理由は抜群の選曲センスとその配列の妙である。この盤はそのタイトルが示すようにライヴ音源で構成したグレイテスト・ヒッツ、つまりベスト盤的な色彩が濃いが、数多く出ている彼らのライヴ盤、ベスト盤の中でもこのアルバムの曲の並べ方は “これしかない!” という感じで、小気味よいスピードで次々と演奏される2分前後の曲の連続が大きなうねりを生み出しているのだ。ラフでアグレッシヴな音録りも他のライヴ盤よりラモーンズらしさが出ているように思えるし、何よりも彼らのライヴ・アルバムの中で一番最初に買った(←大好きな「スパイダーマン」が入ってたもんで...)ということもあって、その演奏はもちろん、MC の一語一語までしっかりと覚えてしまっているというのも大きい。音楽は思い入れで聴くものだ。
 オープニングSEの「夕陽のガンマンのテーマ」から①「デュランゴ'95」を経てジョーイの “Yeah... here we are, home sweet home New York City. This goes out to all of you. Take it, CJ!!!” という MC に被さるように CJ の “1-2-3-4” カウントが炸裂、一気に②「ブリッツクリーグ・バップ」へとなだれ込む一連の流れがめちゃくちゃカッコ良い。しかもこの②から立て続けに③「ドゥー・ユー・リメンバー・ロックンロール・レイディオ」、④「アイ・ウォナ・ビー・セデイテッド」、⑤「スパイダーマン」、⑥「アイ・ドント・ウォナ・グロウ・アップ」、⑦「シーナ・イズ・ア・パンクロッカー」、⑧「ロッカウェイ・ビーチ」と、目も眩まんばかりのスピードで演奏される名曲名演のアメアラレ攻撃が凄まじい(≧▽≦) ジョーイのドスの効いたヴォーカルで聴くラウドでキャッチーでノリノリのハイスピード・ロックンロール... これ以上何が望めるというのだろう?
 ここからは CJ がヴォーカルを取る⑨「ストレンクス・トゥ・エンデュア」、⑩「クリーティン・ファミリー」の2曲が続く。「サイコ・セラピー」の二番煎じみたいな⑩も面白いが、90年代のラモーンズ・スタイルとでも言うべき⑨が何と言っても聞き物だ。そして再びジョーイが登場、 “Hey, are you ready... to DANCE?” からいきなり⑪「ドゥー・ユー・ウォナ・ダンス」を歌い出すカッコ良さ!ホンマにシビレますわ。そして⑫「ウィーアー・ア・ハッピー・ファミリー」、⑬「ザ・クラッシャー」とオーディエンスを煽りまくり、1st アルバムに入ってたラアモーンズ・クラシック⑭「53rd & 3rd」、⑮「ビート・オン・ザ・ブラット」へと続く流れも完璧だ。この⑮のスタジオ録音ヴァージョンは空耳で “beat on the brat♪” が “ヴィトンのブランド♪” と聞こえていたのだが、ここでは “ヴィトンのバッグ♪” に聞こえるぐらい高速化されている。
 ジョーイの “Now, you don't know this, but beneath this building lies the pet sematary!” という MC(←初めて聴いた時 “へぇ~凄い偶然もあるモンやなぁ...” と感心していた私は実におめでたい... 因みに下の YouTube 映像のように他所では beneath your feet って言うことが多いですね)がイントロの一部と化した⑯「ペット・セメタリー」もスタジオ・ヴァージョンを遙かに凌ぐ説得力でグイグイ迫ってくる。やっぱり彼らは最高のライヴ・バンドだ。尚、原題の「Pet Sematary」とは “ペットのお墓” という意味だが正しい綴りは cemetery。「セマタリー」と「セメタリー」を間違えたワケじゃないので責めたりしないで下さいね(笑)

RAMONES - Sheena Is A Punk Rocker - LIVE 03.16.1996


Ramones - Rockaway Beach & Strength to Endure


The Ramones - Pet Sematary The Last Show 1996


Ramones - Beat on the brat Live at The Palace (last concert)



We're A Happy Family ~ A Tribute To Ramones ~

2010-10-26 | Ramones
 トリビュート・アルバムはアーティスト・ステイタスの一つの目安である。大衆から愛され、同業のミュージシャン達からリスペクトされている証だからだ。パンク・ロックの先駆者と言われ、多くのフォロワーを生んだラモーンズに対しても数多くのトリビュート盤が作られてきており、ここでも “キッズのためのラモーンズ”、 “ロカビリー・ラモーンズ”、 “萌え萌えボッサ・ラモーンズ” と、敢えて変化球ネタのトリビュート盤をいくつか紹介してきた。別に面白半分で取り上げたワケではなく実際に好きで聴いているのだが、今日は正攻法と言うか、よくあるタイプの “有名アーティストによるオムニバス・トリビュート盤” でいってみようと思う。
 「ウィーアー・ア・ハッピー・ファミリー」と題されたこのオムニバス盤、まずは何と言ってもジャケットのインパクトが大きい。人によって好き嫌いが分かれそうだが(笑)、CDショップであれネット・オークションであれ、人目を引くことだけは間違いない。次にこの手のオムニバス盤の生命線ともいえる参加アーティストなのだが、アマゾンの解説によると “豪華すぎる顔ぶれ” らしい。参加している16組のアーティストは次の通り;

 ・CD 持ってるアーティスト:④メタリカ、⑤U2、⑥キッス、⑩プリテンダーズ
 ・名前だけは知ってるけど曲は聴いたことないアーティスト:①レッド・ホット・チリ・ペパーズ、⑮トム・ウェイツ
 ・名前すら知らないアーティスト:②ロブ・ゾンビ、③⑯エディ・ヴェダー、⑦マリリン・マンソン、⑧ガービッジ、⑨グリーンデイ、⑪ランシド、⑫ピート・ヨーン、⑬オフスプリング、⑭ルーニー、⑰ジョン・フルシアンテ

 このアルバムは2003年リリースなので、90年代以降の洋楽を聴かない私にとっては “豪華なメンツ” どころか “アンタ誰?” 状態で、参加アーティストの大半を知らないのも当然と言えば当然だが、ネットで試聴して気に入った曲がいくつかあったのと中古で安かったこともあって迷わず購入、ヤフオクで600円だった。
 まずこのアルバムでダントツに気に入ったのがキッスの⑥「ドゥー・ユー・リメンバー・ロックンロール・レイディオ」だ。ウキウキワクワク感に溢れたこの曲を、パーティー・ロックを演らせたら右に出る者はいないキッスが演奏しているのだからコレはもう大当たりなのだ。あれこれ細かいことを気にせずにとにかく “ノリ一発” で楽しいロックンロールを演奏していた70年代の全盛期を彷彿とさせるキッス・サウンドの復活が何よりも嬉しい。YouTube にアップされたビデオがこれまた実によく出来ていて、キッスのライヴ映像の要所要所にラモーンズのサブリミナル映像(?)が挿入されているのが泣けるなぁ...
 メタリカの④「53rd & 3rd」もいかにもメタリカらしいドスの効いたアグレッシヴなサウンドがエエ感じ。ただ、吐き捨てるようにがなり立てるジェームズらしさ丸出しのヴォーカルが楽しめるのはシングル「セント・アンガー」のB面に入っているラモーンズ・カヴァー「クリーティン・ホップ」の方だろう。多分同時期にレコーディングされたものだと思うので、この盤には入ってないけど一緒に貼っときます。
 U2 はラモーンズの大ファンで、MTV ミュージック・アウォーズにおけるボノの “もしラモーンズがいなかったら U2 も存在しなかっただろう” というスピーチは有名だが、ここでは “チビに一発” こと、⑤「ビート・オン・ザ・ブラット」をカヴァーしている。ボノがあの声で身をくねらすように歌い始めると唯一無比の “U2の世界” がパァ~ッと眼前に広がるから不思議だ。これが一流アーティストの存在感と言うヤツだろうか。逆にプリテンダーズの⑩「サムシング・トゥ・ビリーヴ・イン」はグルーミィで陰鬱な感じで、軽快なオリジナルの良さを完全に殺してしまっている。何でもっと明るいアレンジにしなかったのだろう?クリッシー・ハインドは好きなヴォーカリストだけに残念だ。
 初めて聴いたアーティストはハッキリ言って収穫ゼロ。世評は高いらしい①レッチリはどこが良いのかサッパリわからないし、この盤の共同プロデュースも兼ねている②ロブ・ゾンビは名曲「ブリッツクリーグ・バップ」をズタズタに破壊し尽くして反省のかけらもなし。⑦マリリン・マンソンに至っては原曲とは似ても似つかぬアヴァンギャルドな歌と演奏で、二度と聴きたくないキモいヴァージョンになっている。酔っ払いが呻いているような⑮トム・ウェイツもあんまり聴きたいとは思わないし、ゴスペルっぽいアレンジの⑰ジョン・フルシアンテも全然心に響いてこない。
 残りの③⑯エディ・ヴェダー、⑧ガービッジ、⑨グリーンデイ、⑪ランシド、⑫ピート・ヨーン、⑬オフスプリング、⑭ルーニーは原曲に忠実すぎる演奏で、何だか出来の良いコピー・バンドを聴いているようだ。決して悪くはないのだが所詮はエピゴーネン、こんなん聴く暇があったらオリジナルを聴いてヘイホー・レッツゴーしている方がいい。結局キッス、メタリカ、U2 の3曲しか聴かないアルバムだが、1曲200円と考えれば問題ない。いや、キッスの「ロックンロール・レイディオ」1曲のためだけでも買ってよかったと思っている。とにかくキッスといい、ラモーンズといい、ノリノリのロックンロールに勝るモンはありませんわ(^.^)

KISS "Do You Remember R'n'R Radio" 2


U2 - Beat On The Brat


53rd & 3rd - Metallica


Metallica - Cretin Hop

Bossa n' Ramones

2010-10-23 | Ramones
 ラモーンズ・トリビュート特集第3弾はおなじみの “ボッサン・シリーズ” である。ストーンズに始まってガンズ&ローゼズ、U2 からボブ・マーリィに至るまで、様々な大物アーティストの作品を超脱力系女性ヴォーカルで次々と “萌えボッサ化” していくという大胆不敵なこのシリーズ、あろうことか正統派パンク・ロックの象徴であるラモーンズまでをもボッサ化してしまおうというのだからコレはもう興味津々だ。
 このシリーズはボッサだけでは飽きたらず、最近では「ジャズ & 70's」「ジャズ & 80's」のように各デケイドのヒット曲をオシャレ・ジャズ化するなどやりたい放題なのだが、これらはすべてアルゼンチンの “ミュージック・ブローカーズ” という、エレクトロ・ボッサ専門レーベルが仕掛けたもの。今回も “ラウド&ファスト” が売りのラモーンズをその対極に位置するユルユル・ボッサに、という発想が凄いが、それもライヴでは数万人規模のスタジアムがソールド・アウトになるなど、南米で異常なまでの人気を誇るラモーンズだからこその企画なのだろう。ジャケットはこのシリーズお約束のセクシー系ながら、これまでの水着から打って変わって革ジャンにデニムの超ショートパンツで、はだけた胸元からのぞいた DEE DEE のプリント柄シャツなど、相変わらず芸が細かい。
 単なる効果音に過ぎない①「イントロ」⑭「アウトロ」を除けば全12曲、他のトリビュート盤では必ずと言っていいほどカヴァーされる「ロックンロール・ハイスクール」、「ドゥー・ユー・リメンバー・ロックンロール・レイディオ」、「サイコ・セラピー」といったバリバリのロックンロールはさすがにボッサ化不可能だったようだが、それでも⑧「アイ・ウォナ・ビー・セデイテッド」、⑨「シーナ・イズ・ア・パンクロッカー」、⑩「ロッカウェイ・ビーチ」といった彼らの代表曲が換骨堕胎され、パンクのパの字も感じさせない萌え萌えボッサに生まれ変わっているのにはビックリ(゜o゜) ⑧の意表を突いたアレンジには唸るしかないし、⑨の脱力のサジ加減なんかもう絶妙、⑩の萌え萌えヴォーカルには腰が砕けそうだ。スロー化された⑥「ポイズン・ハート」もヴォーカルとバック・コーラスの絡み具合いが絶品で、聴けば聴くほど味が出るスルメ・チューンに仕上がっている。知らない人が聴いたら美しいボッサの名曲だと思うだろう。頭の固いラモーンズ・ファンは怒り出すかもしれないが...(笑)
 アルバム「プレザント・ドリームズ」に入っていたジョーイ作のラヴ・ソング⑤「シーズ・ア・センセイション」と⑬「ザ・KKK・トゥック・マイ・ベイビー・アウェイ」の2曲も素晴らしい。⑤は他のトリビュート・アルバムであまり取り上げられないミディアム・テンポのパワー・ポップだが、ボッサ化することによってこの曲が本来持っていた旋律美が浮き彫りになったような感じがするし、要所要所を引き締めるフルートのオブリガートも実に良い味を出している。⑬はバックのシンセが耳障りでオーヴァープロデュース気味なのが玉にキズだが、アンニュイな雰囲気を湛えたヴォーカルが曲の髄を見事に引き出しており、ラモーンズ・ナンバーの楽曲としての素晴らしさを再認識させてくれる。ラモーンズというとついついライヴ・パフォーマーとしての凄さばかりがクローズアップされる傾向があるが、コレを聴けばメロディ・メーカーとしても実に非凡な才能を持っていたことがわかるだろう。
 このように大好きなトラックが満載のこのアルバムだが、⑪「ペット・セメタリー」はいただけない。いくら何でもヴォコーダーを通した YMO みたいなヴォーカルがラモーンズ・ナンバーに合うワケがない。 “エレクトロ・グルーヴ・ヴァージョン” だか何だか知らないが、せっかくの名曲が台無しだ。⑦「ビート・オン・ザ・ブラット」のタンゴ・アレンジもイマイチ曲に合っておらず、ヴォーカリストが頑張ってエエ雰囲気出してるだけに余計に勿体ないと思う。この2曲を除けば実に面白いカヴァー・アルバムだ。
 私のような軟派なロック・ファンにとって目が離せないこのボッサン・シリーズ、次はボッサン・ゼッペリンかボッサン・イーグルス、ボッサン・スプリングスティーンあたりか?ボッサン・キッスやボッサン・Tレックスなんかも面白そうやし... 楽しみに待っとこ(^.^) 

bossa n' ramones -she's a sentation-


United Rhythms Of Brazil - The K.K.K. Took My Baby Away


Bossa n' Ramones - Sheena Is A Punk Rocker

The Rockabilly Tribute To The Ramones

2010-10-20 | Ramones
 ラモーンズ・トリビュート大会第2弾はロカビリー、その名もズバリ「ロカビリー・トリビュート・トゥ・ザ・ラモーンズ」である。パンク・ロックとロカビリーと言うと一見ミスマッチに思えるかもしれないが、コレが中々エエ感じなのだ。そもそも “パンク” というと “安全ピンをアクセサリーに奇抜なファッションで身を包み、ライヴではオーディエンスに向かって唾を吐きながらワケのワカラン曲をムチャクチャに演奏する” というネガティヴなイメージばかりが先行してしまうが、70年代に入って長尺ソロだの変拍子だのと難解になってしまったロックへのアンチテーゼとして、躍動的なリズムとスピーディーなギター・リフで贅肉を削ぎ落としたシンプルで分かりやすいロックンロールを演奏しよう、というのが本来のパンク・ロックの原点なのだから、50年代スタイルのロカビリー・フォーマットでラモーンズをカヴァーするというのは、まさにラモーンズ・ミュージックの本質を鋭く見抜いた素晴らしい企画だと思う。
 ジャケットにアーティスト名が明記されていないのでタイトルから Various Artists によるトリビュート盤だと思っていたら、演奏はすべてフル・ブロウン・チェリーというアメリカのネオ・ロカビリー・バンドだった。彼らはこのアルバムの前に「ロカビリー・トリビュート・トゥ・AC/DC」という盤を出しており、2匹目のドジョウを狙った感がなきにしもあらずだが、出来としてはこっちの方が良い。ただ、ヴォーカルにジョーイのような強烈な吸引力がないので、アレンジがイマイチだと凡演になってしまうキライがある。これがブライアン・セッツァーのようなヤクザなヴォーカルだったら間違いなく名盤になっただろうと思う。
 まずはアルバム1曲目の①「ブリッツクリーグ・バップ」、ヴォーカルもバックのサウンドもエディー・コクランを彷彿とさせるバリバリのロカビリーだ。コレでつかみはOKといったところか。続く②「ロッカウェイ・ビーチ」、③「シーナ・イズ・ア・パンクロッカー」、⑤「シーズ・ザ・ワン」、⑥「ジュディ・イズ・ア・パンク」あたりはやや単調で今一つパンチが足りないように感じるが、④「クリーティン・ホップ」は思わず踊りだしたくなるようなノリノリのロックンロールになっていてめっちゃ気に入っている。
 このアルバムで一番ロカビリー化が成功していると思えるのが、ラモーンズでは異色のパワー・ポップ⑦「ザ・KKK・トゥック・マイ・ベイビー・アウェイ」だ。絶妙なテンポ設定が原曲の魅力を十分引き出していてロカビリーとしても十分楽しめるように思う。⑧「ティーンエイジ・ロボトミー」では重厚なドラムの乱打がインパクト大だし、ラモーンズ屈指の大名曲⑨「アイ・ウォナ・ビー・セデイテッド」もまるでエルヴィスが憑依したかのようなカッコ良いヴァージョンに仕上がっているのが嬉しい。
 シンプルの極み⑩「ドゥー・ユー・リメンバー・ロックンロール・レイディオ」では「エンド・オブ・ザ・センチュリー」のリマスター盤に入っていたデモ・ヴァージョンとの聴き比べも一興だろう。チビに一発...じゃなかった⑪「ビート・オン・ザ・ブラット」はやや平凡なトラックで、可もなし不可もなしといったところか。ラストの⑫「バップ・ティル・ユー・ドロップ」はあまりロカビリーに向いていないような気がするが、どうなんだろう?個人的には「サイコ・セラピー」あたりを火の出るようなロックンロールで聴かせてくれたら最高やったのに、と思うのだが。
 このアルバムはさすがに全曲聴いているとだんだん飽きてくるので、私のように気に入ったトラックを何曲かつまみ聴きするか、あるいはお気楽なパーティーの BGM なんかに使えばぴったりハマるように思う。

Rockabilly - Blitzkrieg Bop - Full blown cherry


Rockabilly - I Wanna Be Sedated - Full Blown Cherry


Rockabilly - The KKK Took My Baby Away - Full Blown Cherry

Brats On The Beat ~ Ramones For Kids ~

2010-10-17 | Ramones
 ラモーンズの最高傑作と言われる 1st アルバム「ラモーンズの激情」で、彼らの代表曲「ブリッツクリーグ・バップ」に続くA面2曲目に「ビート・オン・ザ・ブラット」という曲が入っている。カタカナで書くと何のこっちゃ?なのだが、brat とは “行儀の悪い子供、ガキ” という意味で beat は “叩く” だから、このタイトルを日本語に訳すと “ガキをぶん殴れ” となる(←昔の邦題「チビに一発」にはワロタ...)。このアルバムには他にも “俺はナチ” とか “人殺しの男娼” とか、物凄い歌詞が満載なのだが、“ガキをバットでぶん殴れ、オーイェー、オーイェー♪” と歌うこの曲のインパクトは特に強烈だ。
 今日取り上げるアルバムはサブタイトルが「ラモーンズ・フォー・キッズ(子供のためのラモーンズ・カヴァー集)」で、タイトルは「ブラッツ・オン・ザ・ビート(ビートに乗った子供達)」と言う。「ビート・オン・ザ・ブラット」を一捻りしたワケだが、この遊び心溢れるユーモアのセンス、めっちゃ洒落てると思いません?私なんかこのタイトルだけで星3つあげたいぐらいだ(←ミシュランかよ!)。
 まぁそうは言いながらも実際に金を出して買うとなると話は別。いくらラモーンズが大好きといっても所詮は “子供のための” カヴァー集だし、ジャケットを見てもエエ歳したオッサンがスピーカーに対峙して聴くような代物とはとても思えない。一旦はパスしようかとも思ったが、話のネタにちょっとだけ試聴してみようと思い、USアマゾンのミュージック・サンプラーをクリックしてみると、原曲に忠実なアレンジのロックンロール・サウンドに乗って元気溌剌とした子供達のコーラスが聞こえてきた。音楽的にどうこう言う以前に何かめっちゃ新鮮な感じがしてすっかりこの盤が気に入った私は、迷うことなく “オーダー” をクリックしていた。
 届いたCDを聴いてまず感じたのはラモーンズ・ナンバーの楽曲としての素晴らしさである。ジョーイのあのくぐもったような深みのある歌声、ジョニーの鬼神の如きダウンストローク、そしてディー・ディー&トミー(or マーキー)のタテノリ・リズムが一体となって生まれるあの唯一無比のサウンドでなくても、そして子供達たちの可愛らしいコーラスが入っていても、少なくとも私にとっては十分楽しめるだけの吸引力をそれぞれの曲が備えているのだ。私はいかに彼らの曲が優れているかを改めて再認識させられた。
 バックの演奏はすべてガバ・ガバ・ヘイズというラモーンズ・コピー・バンド(←それにしても単純明快なバンド名やね!)が担当し、曲ごとに有名なパンクロック・バンドのシンガーをリード・ヴォーカルに迎え、子供たちがバック・コーラスをつけている。曲目とリード・ヴォーカリストは以下の通り;
  ①「ブリッツクリーグ・バップ」by ジム・リンドバーグ(ペニーワイズ)
  ②「ロックンロール・ハイスクール」by マット・スキバ(アルカライン・トリオ)
  ③「カリフォルニア・サン」by ブレット・アンダーソン(ザ・ドナス)
  ④「ロックンロール・レイディオ」by グレッグ・アットニト(バウンシング・ソウルズ)
  ⑤「スージー・イズ・ア・ヘッドバンガー」by ニック・オリヴェリ(クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ)
  ⑥「ロッカウェイ・ビーチ」by ブラグ・ダリア(ドゥワーヴズ)
  ⑦「アイ・ジャスト・ウォント・トゥ・ハヴ・サムシング・トゥ・ドゥ」by エミリー・ウィン・ヒューズ(ゴー・ベティ・ゴー)
  ⑧「スパイダーマン」by アッシュ・ガフ(ガフ)
  ⑨「ウィー・ウォント・ジ・エアウェイヴズ」by スプーニー
  ⑩「シーナ・イズ・ア・パンクロッカー」by ジョシー・コットン
  ⑪「クリーティン・ホップ」by トニー・リフレックス(アズ・アンド・アドレッセンツ)
  ⑫「バップ・ティル・ユー・ドロップ」by ジャック・グリシャム(TSOL)
 私は90年代以降の洋楽は聴いてないので上記のシンガーもバンドも全く知らないのだが、そんな予備知識なんかなくても十分楽しめる内容だ。全12曲、わずか30分弱のこのアルバムは個々の曲について云々するよりも1枚丸ごとパーティー感覚で一気呵成に聴くのが正しい。あえて選ぶとすれば子供たちのコーラスで原曲の持っていたウキウキワクワク感が更にパワーアップされた⑩が一番気に入っているが、シンプルなロックンロールに子供たちのコーラスがぴったりハマった①②③⑤あたりも捨てがたいし、イントロの子供DJのキュートな声に思わず頬が緩む④も楽しさ一杯だ。ロック色の濃い⑦⑨⑫なんかもそれなりにカッコ良く仕上がっており、見た目以上に聴き応え十分だ。逆に期待していた⑧はアッシュ・ガフとかいうリード・ヴォーカリストがプロとは思えないぐらい下手くそで、折角の名曲が台無しだった。
 この盤はサブタイトルにあるように表面的には確かにキュートなコーラス満載の子供向けアルバムだが、演奏もしっかりしていて個々のリード・ヴォーカリストの個性も楽しめるし、どのトラックもパワー全開でロックしているので、 “ちょっと変わったラモーンズ・トリビュート・アルバム” として大人が聴いても結構楽しめる1枚だと思う。

シーナはパンクロッカー


Brett Anderson of The Donnas - California Sun


Matt Skiba (Alkaline trio)- rock n' roll High School

「ハヴ・ユー・エヴァー・シーン・ザ・レイン」特集

2010-10-14 | Cover Songs
 前回取り上げたラモーンズのカヴァー・アルバムに入っていた「ハヴ・ユー・エヴァー・シーン・ザ・レイン(雨を見たかい?)」は “この曲が入ってたら必ず買う!” レベルの超愛聴曲なので、ラモーンズ・ヴァージョンが出たついでに今日はこの曲のオススメ他ヴァージョンを特集しようと思う。

①Creedence Clearwater Revival
 オリジナルは言わずと知れたクリーデンス・クリアウォーター・リバイバル(CCR)1971年のヒット曲で、初めて聴いた時、その顎が落ちそうなグルーヴ感に一発でノックアウトされたのを今でもハッキリと覚えている。しかしこの曲を語る上で忘れてならないなのはその歌詞である。
 最初 “Have you ever seen the rain, comin' down on a sunny day? (晴れた日に降る雨を見たことがあるかい?)” というパートを聴いて “キツネの嫁入りの歌かいな?シングル曲にしては変わったテーマやな...” と思っていたのだが、この一見お天気ソングみたいな歌詞の裏に秘められた真の意味を何かで読んだ私は愕然としてしまった。“晴れた日に降り注ぐ雨” とはアメリカ軍がベトナム戦争で使ったナパーム弾のことだというのだ。そう言われてみると shinin' down like water (水のようにキラキラ光りながら降ってくる雨)という表現なんか、油を撒き散らしながら落下して四方を焼く尽くすナパーム弾そのものだ。何かめっちゃシュールな歌詞やなぁ...(>_<)
 後に作者のジョン・フォガティが語ったところによると、この曲は当時のバンド内人間関係の崩壊を比喩的に歌ったものらしい(←確かにこの時期に実兄のトムが脱退してる...)が、この曲がリリースされた1971年というのはベトナム戦争が泥沼化していった時期で、そういった社会情勢もあって、フォガティがCCRの崩壊を例えた「雨」という言葉をリスナーが「晴れた日にも降ってくるナパーム弾の雨」と解釈し、反戦歌として受け止めたということだろう。
 私はこんな大名曲がビルボード・チャートで8位止まりというのがどうにも解せなかったのだが、上記の理由から多くのラジオ局で放送禁止を食らいながらもトップ10入りしたというのは今から考えればむしろ大健闘と言うべきなのかもしれない。まぁこの曲に関してはチャート成績云々するのは野暮というもので、これまでも度々CMソングに起用されるなど多くの人々に親しまれており、まさに “記録よりも記憶に残るヒット曲” の典型と言えるだろう。
CCR-Have You Ever Seen The Rain? Lyrics


②クワタバンド
 この曲は綺麗な声でスムーズに歌うよりもジョン・フォガティのようなちょっとクセのあるしわがれ声で歌ってこそ映えると思うのだが、そういう意味でも桑田師匠が1986年の1年限定ソロ・プロジェクト、クワタ・バンドでこの曲をカヴァーした時は我が意を得たり!と大喜びしたものだった。それもアルバムには入れずにシングルのB面である。私にはA面の「One Day」がイマイチだったせいもあって、アホの一つ覚えみたいにB面ばかり聴いていた。師匠もこの曲が大好きで相当聴き込んだのだろう、まるでジョン・フォガティが憑依したかのような熱唱を披露、CCR愛に溢れた傑作カヴァーに仕上がっている。ラモーンズの高速回転ヴァージョンも好きだが、やはり原曲が内包しているアーシーなグルーヴ感をこれ以上ないぐらい見事に表出したという点において、このクワタ・バンド・ヴァージョンが私的№1カヴァーであり、CCRのオリジナルに比肩する吸引力を持っているように思う。
「雨を見たかい」KUWATA BAND


③Joan Jett & The Blackhearts
 私がクワタ・バンド・ヴァージョンと同じくらい気に入っているのがジョーン・ジェット姐さん(←師匠とか姐さんとか、そんな人ばっかりやね...)によるカヴァーだ。やはり美声とは言い難い姐さんのドスの効いたヴォーカルがこの曲にベストのマッチングを見せ、聴く者の心にグイグイ食い込んでくる説得力抜群のヴァージョンになっている。又、この曲を収めた姐さんのカヴァー・アルバム「ザ・ヒット・リスト」もロック・ファンには超オススメだ。
have you ever seen the rain?


④noon
 noon は大阪育ちの在日コリアン・シンガーで、その歌声は絵に描いたような癒し系。デビュー当初はジャズのスタンダードを中心に歌っていたが、この人の声質はジャズよりもポップスの方が合っている。特にカーペンターズやモンキーズのカヴァーなんか大好きだ。この「雨を見たかい」は原曲のネチこさがすっかり漂白されて聴きやすいポップスになっており、そこが物足りなく感じる人もいるかもしれないが、あのグルーヴィーな曲をこんなヒーリング・ミュージックに染め上げてしまうのはある意味凄いと思う。
ヌーン


⑤Karen Souza
 以前このブログで取り上げた「ジャズ& '70s」に入っていたのがコレ。原曲のイメージは影も形もなく、ジャジーなサウンドをバックにカレン・ソウザのダウン・トゥ・アースなヴォーカルが気だるさを演出し、そこにブルージーなギターが絡んでいくという実にユニークなカヴァーになっている。ジョン・フォガティがコレを聴いたら何と言うだろうか?
カレン・ソウザ
コメント (4)

Acid Eaters / Ramones

2010-10-11 | Ramones
 ラモーンズというと “1-2-3-4のカウントで始まるラウド&ファストなパンク・ロック” というイメージが先行してしまい、その音楽性についてはあまり語られていないように思うのだが、彼らはセックス・ピストルズやストラングラーズ、ダムドのように偉大なる先人達を “オールド・ウエイヴ” として否定した身の程知らずの UK パンクとは激しく一線を画する正統派ロックンロール・バンドである。
 ラモーンズの音楽の中には彼らが敬愛する60年代のロック・ポップスの伝統が脈々と息づいており、それはパンキッシュな色合いが最も濃かった初期の3枚のアルバムを聴いても一聴瞭然だ。乱暴な言い方をすれば “ガレージ色の強いビーチ・ボーイズ” であり、表面的なサウンドはアグレッシヴだが、細かいアレンジやコーラス・ワークなんかにはパンクどころか私がこよなく愛する古き良き60年代の薫りが濃厚に漂っているのだ。
 それは彼らが初期にカヴァーしていた曲目を見ても明らかで、クリス・モンテスの「レッツ・ダンス」、ボビー・フリーマンの(というよりもビーチ・ボーイズがカヴァーしたヴァージョンが下敷きになっていると思われる...)「ドゥー・ユー・ウォナ・ダンス」、リヴィエラズの「カリフォルニア・サン」、トラッシュメンの「サーフィン・バード」など、どれもこれもパンク・ロックのイメージとは程遠いキャッチーなポップスやサーフィン・サウンドばかりであり、それらを換骨堕胎して “ラモーンズのロックンロール” として見事に再生しているのだから凄いとしか言いようがない。
 フィル・スペクター・プロデュースの「エンド・オブ・ザ・センチュリー」以降、バンドはサウンド面でもマネージメント面でも暗中模索を繰り返しながら混迷期に入ってしまい、70年代に比べてオリジナル曲の名曲率が下がってしまったように思えるのだが、カヴァー曲には相変わらず名演が多い。ドアーズの「テイク・イット・アズ・イット・カムズ」なんか鳥肌モノのカッコ良さだし、トム・ウェイツの「アイ・ドント・ウォナ・グロウ・アップ」もラモーンズのオリジナルと間違うぐらいにハマッており、カヴァーがオリジナルを超える瞬間を体験できる。そんな彼らが1993年にリリースしたオール・カヴァー・アルバムがこの「アシッド・イーターズ」だ。
 初期のカヴァーは60年代前半までのポップ曲ばかりだったが、ここでは60年代後半以降の本格的な “ロックの時代” のナンバーを中心に選ばれているのが一番の注目ポイントで、まずは何と言っても①「ジャーニー・トゥ・ザ・センター・オブ・ユア・マインド」のカッコ良さ、コレに尽きるだろう。テッド・ニュージエント率いるアンボイ・デュークスの隠れ名曲を1曲目に持ってきて、いきなりエンジン全開で一気呵成に突っ走るところがたまらない(^o^)丿
 ストーンズの③「アウト・オブ・タイム」ではミック・ジャガーばりの深みのあるヴォーカルを聴かせるジョーイが堪能できるし、ジェファーソン・エアプレインの⑤「サムバディ・トゥ・ラヴ」も聴きごたえ十分だ。しかし聴く前から一番興味があったのは我が愛聴曲⑩「ハヴ・ユー・エヴァー・シーン・ザ・レイン(雨を見たかい?)」で、CCR の原曲があまりにも素晴らしいので期待半分・不安半分で聴いたのだが、やはりラモーンズはラモーンズ(笑)、竹を割ったようなケレン味のない真っ向勝負のラモーンズ・スタイルでこの名曲を見事に料理しており、 “偉大なるワン・パターン” はここでも健在だった。
 ボブ・ディランの⑧「マイ・バック・ペイジズ」も素晴らしい。私は昔からディランの酔っ払いみたいなヴォーカルに馴染めず、レコードも持っていないせいもあって、この曲の存在を知ったのはキース・ジャレットによるカヴァーが最初だった。ジャズ・ピアニストがディランの曲を取り上げたという話題性もあってか(?)名演扱いされることが多いのだが、私的には別にどうってことのない凡演に思えたし、その後に聴いたバーズやホリーズによるカヴァーもイマイチだったこともあって、このアルバムを買った時も完全にノーマークだった。しかしさすがはラモーンズ! 曲の髄を見事に引き出した “ハード&スピーディー” なノリが圧巻で、血湧き肉躍るスリリングなヴァージョンになっている。又、ボートラとして追加されたビーチ・ボーイズの⑬「サーフィン・サファリ」もジャン&ディーンの「サーフ・シティ」共々実に楽しいカヴァーに仕上がっており、改めて彼らのルーツの一端を垣間見たような気がする。
 この「アシッド・イーターズ」はジャケもエグイし、解散間際の、しかもカヴァー・アルバムということであまり話題に上ることのない盤だが、ラモーンズ・ファンはもちろん、すべてのロック・ファンに自信を持ってオススメできる1枚なのだ。

Have you ever seen the rain The Ramones


Ramones - my back pages


Ramones - Surfin Safari

「スパイダーマン」特集

2010-10-06 | Cover Songs
 前回ラモーンズの「スパイダーマン」に少し触れたので、折角だからこの曲の愛聴カヴァー・ヴァージョンを特集しよう。この曲は元々1967年にアメリカのTVアニメ用テーマ・ソングとして作られたもので、私は20年ぐらい前に「テレビジョンズ・グレイテスト・ヒッツ Vol. 2」という盤に入っていたのを聴いて “Spider-Man, Spider-Man, does whatever a spider can~♪” というラインの韻の踏み方とそのキャッチーなメロディー展開が耳に残ったものだったが、愛聴するまでには至らなかった。
 私がこの曲に本格的にハマッたのは数年前のことで、下の②The Frank & Joe Show のヴァージョンを聴いて曲のキモと言うべきめくるめくスピード感に開眼、それから立て続けに③レ・フレール→④クルーノといった快演に出くわし、①ラモーンズの決定的ヴァージョンでトドメを刺されたというワケだ。
 ビデオ・クリップでも使われている1-2-3-4カウント入りのオリジナル・ヴァージョンは「サタデー・モーニング・カートゥーンズ・グレイテスト・ヒッツ」というアメリカ版アニソン・トリビュート的なオムニバス盤に入っており、その後日本独自編集の後期ベスト盤「ラモーンズ・マニア2」にも収録された。彼らのラスト・アルバム「アディオス・アミーゴス」の隠しトラック、「モンド・ビザーロ」の Captain Oi! 再発盤、そして前回取り上げた「ウィアード・テイルズ・オブ・ザ・ラモーンズ」に入っているカウント無しの別ヴァージョンの方がテンポは速いが、私的にはうねる様なグルーヴ感がたまらないオリジナル・ヴァージョンの方が気に入っている。

①Ramones
 権利関係やら何やらがややこしそうなので映画で使われることはないと思うけれど、ラモーンズの疾走感溢れるカヴァーこそが映画のシーンにぴったりハマると思っていたら、やっぱりいてるんやねぇ、こんな映像↓を作る人が...(^.^) スピーディーな展開が圧巻の「蜘蛛男2」の映像がラモーンズお得意の疾走感溢れるサウンドとコワイぐらいにマッチしてます。
The Ramones - Spiderman


②The Frank & Joe Show
 マヌーシュ・ギタリストのフランク・ヴィニョーラとベテラン・ドラマーのジョー・アショーネの双頭プロジェクトであるフランク&ジョー・ショウによるこのヴァージョンも先のラモーンズ同様、疾走するようなスピード感がたまらない。特に目も眩むようなブラッシュ・ワークは何度聴いても鳥肌モノだ。
フランク & ジョー・ショウ


③レ・フレール
 日本が世界に誇るブギウギ・ピアノ・デュオ、レ・フレール。兄弟による連弾は息もピッタリで、演奏にグイグイ引き込まれていってしまう。やっぱりピアノはガンガン弾かなきゃいけない。パラパラとキレイに弾く軟弱ピアノはクラシックに任せればいい。ここでも左手の低音域が生み出すゴツゴツしたグルーヴ感が絶品で、ノリノリの演奏が楽しめる。
レ・フレール


④Kruno
 マヌーシュ・ギタリストの新星クルーノがデビュー作「ジプシー・ジャズ・ギター」で数々のジャンゴ・ラインハルト・クラシックスと共にこの曲を取り上げていたのにはビックリ(゜o゜) 先のフランク・ヴィニョーラもそうだが、旋律にジプシー魂を刺激する何かがあるのだろうか?ザクザク刻むリズム・ギターをバックに “そう来るの(!)か...” と唸りたくなるような斬新なフレーズが楽しめて実にスリリングだ。
クルーノ


⑤Aerosmith
 ロック系のカヴァーではエアロスミス御大を忘れるわけにはいかない。エアロにしては軽く流している感じだが、ややスローなテンポ設定で重厚なカヴァーに仕上がっている。ただ、この曲はスピード感が命だと信ずる私にとってはラモーンズ・ヴァージョンの方が数段上だ。
Spiderman 2 music video "Aerosmith Theme For Spider Man"
コメント (2)

Weird Tales Of The Ramones

2010-10-03 | Ramones
 10月に入ってすっかり朝晩涼しくなり季節の変わり目を実感している今日この頃だが、音楽面では相変わらず9月のラモーンズ・フィーヴァーが継続中。私は彼らに最初にハマッたのが数年前という “遅れてきたラモーンズ・マニア” なのだが、今まさに第2次マイブームの真っ最中で、当時買いそびれていた CD や DVD を大人買いして(?)楽しんでいる。そんな中でも最大の収穫がこの「Weird Tales Of The Ramones」(邦題:ラモーンズ・ストーリー)だ。
 コレは彼らのデビューから解散までの22年間に発表された作品の中からジョニー・ラモーンが選曲した85曲を収めた3枚のCDと、過去にVHSで出ていたビデオクリップ集「Lifestyles Of The Ramones」にボーナス・トラックとして新たに6曲分の PV を追加収録した DVD 、更に彼らを題材にした52ページもあるコミック・ブック(しかもコレが3-Dメガネ付き!)まで付いた、超豪華なA4サイズ(!)のボックス・セットになっているのだからファンとしては垂涎モノの逸品だ(≧▽≦) コレこそ何種類も出ている彼らのベスト盤の中でも史上最強と言えるだろう。
 私は以前紹介した「ラモーンズ・アンソロジー」というベスト盤を始め、初期のオリジナル・アルバム5枚やライヴ盤3枚、それに後期のカヴァー盤などを既に持っていたのでこのボックス・セットにまで手が出なかった。輸入盤でも送料込みで軽く$50以上するし、DVDのリージョン・コードが明記されていない(海外版 DVD ってリージョンとか NTSC/PAL とかホンマに鬱陶しいわ...世界統一規格にせぇよ!)のも気になる。日本盤に至っては1万円近いボッタクリ価格で論外だった。
 そしてラモーンズ・フィーヴァーに明け暮れた先月、“未曾有の円高で $1=83円!” のニュースをヤフー・ニュースで見た私はすぐにUSアマゾンのサイトをチェック、するとラッキーなことに中古で1セットだけ$28で状態 very good というブツを発見。送料込みでも3,000円でお釣りがくる計算だ。 International Shipping Available となっているのはコレ以外すべて$45以上なので超お買い得である。アマゾンには何も書かれていないが HMV のサイトによると DVD はどうやらオール・リージョンらしい。私は即 “Place Your Order” をクリックした。
 CD に関しては Disc 1 が「ラモーンズの激情」~「ロード・トゥ・ルーイン」、Disc 2 が「エンド・オブ・ザ・センチュリー」~「アニマル・ボーイ」、Disc 3 が「ハーフウェイ・トゥ・サニティ」~「グレイテスト・ヒッツ・ライヴ」までと、各アルバムから代表作がまんべんなくセレクトされているという印象だ。もちろん全曲デジタル・リマスタリングされているが、彼らの CD は2001年のリマスター以降の盤ならどれも迫力満点のサウンドが楽しめる(←それ以前の盤は悲しくなるほどプアーな音です...)ので手持ちの盤と音質的な違いは感じられない。
 そんな中で嬉しかったのは Disc 3 に入っていた(21)「スパイダーマン」がイントロの1-2-3-4カウント無しの別ヴァージョンだったこと。私はこの曲のメロディー展開が大好きで数少ないカヴァー・ヴァージョンをせっせと集めているのだが、今のところダントツに気に入っているのがラモーンズのヴァージョンだ。疾走感溢れる曲想がラモーンズのラウド&ファストな演奏スタイルと見事にマッチしてめちゃくちゃカッコ良いロックンロールに仕上がっている。この曲の素晴らしさについてはまだまだ言い足りないが、先に進まなくてはいけない。
 私が一番楽しみにしていたのが DVD だ。私が持っている彼らの DVD は、バンドの歴史を見事にドキュメンタリー・フィルム化した名作「エンド・オブ・ザ・センチュリー」、マーキー・ラモーンが撮りためていた貴重な映像を中心にメンバーのオフ・ステージでの素顔を追った「ラモーンズ・ロウ」、そしてその圧倒的なライヴ・パフォーマンスの模様を詰め込んだ「イッツ・アライヴ 1974-1996」の3枚だったので、「エンド・オブ・ザ・センチュリー」以降の18曲分の彼らのビデオ・クリップの映像を見れるというのがファンにとっては大変ありがたい。
 今まで YouTube の小さな画面で見るしかなかった⑰「スパイダーマン」をテレビの大画面で見れるようになったのも嬉しいし、初めて見る映像も一杯入っていて、この DVD だけでもこのボックス・セットを買った甲斐があろうというものだ。私的には USA フォー・アフリカをパロッた⑦「サムシング・トゥ・ビリーヴ・イン」のビデオが面白かった。いつものように脚を踏ん張って歌うジョーイがカッコイイ⑯「アイ・ドント・ウォナ・グロウ・アップ」も何度見ても飽きないし、ラストに入っている⑱「電撃バップ」のライヴ映像ではレコードの1.5倍ぐらいの猛スピードで爆走するそのスリリングなパフォーマンスが圧巻だ。ただ、④「サイコ・セラピー」は曲と演奏は最高(←ベタなギャグですんません...)だがビデオの方はホラーが苦手の私には後半ちょっとキツかった...(>_<)
 最後の最後まで “パンク” というイメージが足かせとなったのかコマーシャルな面では成功したとは言い難い彼らだが、バンドが解散しフロントメンの3人が既に鬼籍に入ってしまった今でも彼らを愛するファンは減るどころか全世界規模で増えているような感すらある。常にロックンロールの原点としての凄みを見せ続けてきた、 “記録よりも記憶に残るバンド” の最高峰ラモーンズ、私はこれからもずっと彼らのロックンロールを聴き続けていきたいと思う。

Ramones - Spider-Man


Psycho Therapy - The Ramones


The Ramones - I Don't Want To Grow Up


Something To Believe In - The Ramones

Suzy Susie Collection ~'93春~ / スージー・スージー

2010-10-01 | J-Rock/Pop
 数年前のこと、私は友人の901さんやplincoさんから教えていただいたフレンチ・イエイエにすっかりハマり、寝ても覚めてもイエイエという時期があった。特にフランス・ギャルの「夢見るシャンソン人形」が大好きで、 “この世に出ている「シャンソン人形」音源は全部集めよう” と決意、何やかんやで30ヴァージョン以上集めたと思う。あの時は確か日本、アメリカ、イギリス、そして当然フランスのアマゾンでそれぞれ曲名検索を行い、網に引っかかってきた盤を片っ端から購入するという暴挙(?)に出たのだが、一番収穫が多かったのが日本のアマゾンで、そんな中でも意外な拾い物がスージー・スージーというガールズ・ロックバンドだった。
 この「Suzy Susie Collection ~'93春~」というアルバム、アマゾンの紹介ページで収録曲目を見て、私は我が目を疑った。そこにはフランス・ギャルの③「夢見るシャンソン人形」はもとより、シナロケの②「ユー・メイ・ドリーム」やジューシィ・フルーツの④「ジェニーはご機嫌ななめ」、そして何と岡崎友紀の⑤「ドゥー・ユー・リメンバー・ミー」やミカ・バンドの⑧「タイムマシンにお願い」といった超愛聴曲がズラリと並んでいるではないか!私はコレほど自分の嗜好にピッタリ合った選曲のカヴァー・アルバムを他に知らない。ただ、このアルバムはすでに廃盤らしく、アマゾンでもプレミアが付いてかなりの高値だったのでヤフオクで探してみるとラッキーなことにサンプル盤が100円(!)で出ており、そのまま無競争でゲット出来た。オークションって時々こんな嘘みたいな値段でレア盤が入手できるからやめられない(^o^)丿
 1曲目に入っている①「リトル・スージー」はちわきまゆみという女性シンガーのカヴァーだという。ちわきまゆみって確かT.レックスのCDのライナーノーツに寄稿してた人で、当時の私はちあきなおみと混同し、“何で歌謡曲の歌手がT.レックスのライナー書いてんねん?” と不思議に思っていたものだった(笑) だから名前だけは知っていても実際にオリジナル・ヴァージョンを聴いたことはなく、“一体どんな曲やろ?” と思いながらプレイボタンを押すと、いきなりスピーカーから「ゲット・イット・オン」そのまんまのギター・リフが勢いよく飛び出してきた。コレはもう完全に “女性版T.レックス” だ(笑) 演奏はお世辞にも上手いとは言えないが、チープな雰囲気を醸し出すガレージ・サウンドが耳に心地よく、私はいっぺんにこのバンドが気に入ってしまった。特にヴォーカルとギターがヘタウマ路線全開で、このグラム・ロック・チューンにぴったりハマっており、アルバムのベスト・トラックになっていると思う。
 クリスタルズの「ゼン・ヒー・キスド・ミー」をアダプトしたイントロにニヤリとさせられる②「ユー・メイ・ドリーム」は、シナロケの原曲を意識したのかスペクター・サウンドへのオマージュとして耳に響く。③「夢見るシャンソン人形」もゲンスブールなリズムを刻むベースがブンブン唸り、歪んだギターが毒を撒き散らすという何ともタマラン展開で、単調なドラム以外は言うことナシだ。
 ギャルのカヴァーではもう1曲⑨「涙のシャンソン日記」を取り上げているが、コレがまたエッジの効いたギター・リフが支配する実にハードボイルドな演奏で、イントロを聴いただけでは一体何の曲かワカランかった。曲は甘く、演奏は辛くという、理想的なパターンである。このアルバムは全編を通して見事なアレンジがなされており、プロデューサーはかなり洋楽に精通したマニアックな人物なのではないかと思う。
 シルヴィ・バルタンの「アイドルを探せ」に日本語詞を付けた⑦「恋の振り子」もシャープなギター・リフとよく歌う闊達なベース・ラインに耳が吸い付くカッコ良いナンバーに仕上がっているし、⑧「タイムマシンにお願い」でもギターとベースの頑張りが特筆モノなのだが、⑦⑧共にペタペタ・パタパタ・ドラムが玉にキズ。逆に少年ナイフの⑩「ツイスト・バービー」ではそれが良い方向に作用して初期ナイフのローファイ・サウンドを巧く再現している。それにしてもヴォーカルの人、ナオコさんの歌い方そっくりに真似ててすっかり感心してしまったのだが、解説によるとこの曲がスージー・スージー結成のきっかけになったとのこと。かなり歌い込んだ十八番なのだろう。
 ⑥「恋のメキシカン・ロック」は何と橋幸夫のカヴァー、いわゆるひとつの“リズム歌謡”というヤツだ。橋幸夫をロック・バンドで演ろうという発想自体も凄いと思うが、コレはコレで立派なガールズ・ロックになっている。⑪「ラヴ・パニック」はこのアルバム中唯一の非カヴァー曲で、“あるフレンチ・ポップスの名曲を下敷きにレコーディング中に初めて作ったオリジナル曲” と解説にあるが、何の曲かサッパリわからない私としては気になって仕方がない。演奏スタイルは完全にラモーンズやねんけど...(笑)
 グラム・ロック、ウォール・オブ・サウンド、フレンチ・イエイエ、リズム歌謡、NYパンクにガールズ・ロックと、私の大好物ばかりをごった煮風に詰め込んだ感のあるこのアルバムはある意味キワモノ的色合いの濃い1枚で、頭の固い音楽ファンはこういう盤をバカにする傾向があるが、 “音楽は楽しけりゃそれでいい” と信じる私にとってはかけがえのない超愛聴盤なのだ。

SUZY SUSIE / LITTLE SUSIE
コメント (4)