shiotch7 の 明日なき暴走

ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です

【2023年のがっかり盤】「Hackney Diamonds」Zoetrope LP

2024-02-18 | Rolling Stones / The Who
 レコード・コレクターというのは因果な商売で、届いたレコードが期待通り、あるいはそれ以上ならまるで天下を取ったような気分になれるが、もしも期待ハズレだった場合はめちゃくちゃ落ち込んで、それをずーっと引きずってしまう。私がブログに書くのは基本的に前者のケースだが、たまには失敗例も話のネタに面白いかもと思ったので、今回は私が去年買ったレコードの中で最低のがっかり盤について書こうと思う。
 そのレコードというのはストーンズの「Hackney Daimonds」で、通常盤LPとはまた別の、ゾートロープ(回転のぞき絵)仕様の盤。ゾートロープというのは平たく言うと、盤の回転に合わせて絵が動いているように見える特殊な視覚効果を持ったピクチャー・レコードの一種なのだ。百聞は一見にしかずなので、とにかくこれ↓をご覧下さい。
Rolling Stones Hackney Diamonds Picture Disc Blood Records.


 どうです? 面白そうでしょ? 実を言うと今を遡ること約50年前、中学生の時に喜び勇んで買った「Sgt.Pepper's」「Abbey Road」「Band On The Run」の3枚がどれもこれも当時のシステム・コンポで聴いてもわかるくらいプアーな音質だったのに失望し、それ以降はピクチャー・レコードに対してネガティヴなイメージしか持っておらず、購入対象から完全に外してきたのだ。例外としてジュリー・ロンドンとケイト・ブッシュの7インチ・ピクチャー盤を買ったが、それらはあくまでも部屋に飾って目で見て楽しむ用に購入したのであって、決して聴くためのものではない。
 去年の10月に出たストーンズの「ハックニー」を私は大いに気に入り、確かここでも大絶賛した覚えがあるが、どうやら世間の評判も良かったらしく、その後もカラー・ビニール・レコードやらノーマルなピクチャー・レコードなど、様々な形態でリリースされた。私が目を付けたのは特殊な盤面加工を施したレコードを扱う Blood Records というところが配給元となって全世界1万枚限定で本体価格£30(約5,500円)で発売されたゾートロープ盤だ。
 ピクチャー・レコード否定派の私は最初 “ゾートロープって何やねん?” くらいの軽い気持ちで Blood Records のHPを覗いたのだが、そこにあった動画を見て“うわぁ、これめっちゃオモロイやんヽ(^o^)丿” と気に入り(←特に外周の、ダイアモンドをカットするナイフの動きが最高!)、送料込みの£50(約9,000円)で即購入。買ってしばらく経ってから販売元サイトを見たら既に完売しており(←そりゃそーなるわな...)eBayやDiscogsでは本体だけで15,000円を超えるプレミア価格で取り引きされている。売りに出ている盤のほとんどすべてがミント、つまりシールド状態ということはつまり “転売ヤ-・パラダイス” っちゅーことだ。
 このレコードを首尾よく手に入れた私はしめしめと思いながらターンテーブルに乗せて回転させ盤面を覗きこんだのだが、絵の回転が速すぎて思っていたような視覚効果が全く得られない。あら?こんなはずやないのに... と思いながら回転数を上げたり下げたりしてみてもあまり変化が見られない。これって詐欺なんか? それとも自分の動体視力がアカンのか、どっちなんや...? まぁいずれにせよ、HPにあったような面白い動きが全く見られずにめちゃくちゃガッカリさせられたことだけは確かだ。どうでもいいことだが音の方もゴーッというサーフェス・ノイズが邪魔で、ハッキリ言って音質は全然良くない。う~ん、9,000円がドブに消えたか... やっぱりレコードは面白半分で買うモンやないですな。

Hackney Diamonds / Rolling Stones

2023-10-28 | Rolling Stones / The Who
 ストーンズの新作「Hackney Diamonds」を買った。私が初めてリアルタイムの新作として聴いた彼らのアルバムは例の傑作ライヴ盤「Love You Live」で、その後も「Some Girls」から「Steel Wheels」まで(全く好きになれない「Undercover」を除いて)新作が出るたびに買って楽しんできたのだが、ベースのビル・ワイマンが脱退して以降の「Voodoo Lounge」と「Bridges To Babylon」はどこが良いのかさっぱりわからず、“やっぱりビル・ワイマンがおらんとアカンなぁ...” とレコードどころかCDすら買わずにスルーしてきた。更に追い打ちをかけるように2021年にチャーリー・ワッツが亡くなってしまい、“これでストーンズも終わりかな...” と思っていた。そんなところへ今回の新作発表である。
 そういうわけで、初めてこのニュースを知った時は “へぇ~、ストーンズが新作出すんか... 一体何年ぶりになるんやろ???” と少し冷めた目で見ていたというのが正直なところだったが、ゴミ溜めのような今の洋楽シーンの中で彼らが一体どんな作品を生み出すのだろうという一片の好奇心から、とりあえず 1stシングルの「Angry」をYouTubeで観てみることにした。YouTubeはしつこく出て来る広告が超ウザいという致命的欠陥があるが、少なくとも手軽に音楽を聴けるという点においては利用価値大だ。
The Rolling Stones' new album, "Hackney Diamonds"


 その「Angry」だが、イントロで炸裂するキースのギター・リフを聴いて私は思わず “おぉ、コレめっちゃエエやん!” と全身に電気が走るような衝撃を受けた。これこそ我々みんながよ~く知ってる、まごうことなきストーンズのサウンドである。今や絶滅危惧種とでも言うべきロックンロールそのものである。今のこの時代、リフ一発で周りの空気を自分たちの色に染め上げて聴き手をその世界に引き込んでしまうバンドなんて世界広しといえども AC/DC とストーンズぐらいだろう。ミックのヴォーカルもエネルギーが漲っていて好調そのもの。いやぁ... 今回のストーンズは凄い、いや、凄すぎる。かつて私を夢中にさせた “グルーヴィーなストーンズ” が帰ってきたのだ。
 ビデオクリップのコンセプトも実に面白いもので、いかにもアホそうなネーチャンがオープンカーの後部シートで曲に合わせてクネクネ踊りながらロスの街中をクルージングしていくという、いかにもストーンズらしいというか、その猥雑なイメージを具現化した映像で、道路わきの巨大看板に次々と映し出されるのが過去のストーンズの様々な演奏シーンという仕掛けなのだ。「女たち」の、USツアーの、そして “水兵さんPV” の(←チャーリー・ワッツが泡まみれになるヤツwww)懐かしい映像が次から次へと出てきて、私はもうテンション爆上がりだ。今にして思えば80'sってこういう “観てるだけで楽しい” プロモ・ビデオが多かった気がする。
The Rolling Stones - Angry (Official Music Video)


 「Angry」のビデオクリップがすっかり気に入った私はすぐに YouTubeで他の曲も試聴し、それらがこちらの予想の遥か上を行く素晴らしい出来だったこともあって、アマゾンでLPを即オーダー。CDではなく値段が倍もするLPを買うというのはそれだけ内容が気に入っている証拠である。
 届いたレコードは “Made In Czech Republic” というシールが貼ってあるEU盤で、音質もすこぶる良い。シールドされた新品LPを買うのはホンマに久しぶりなので、針飛びを恐れずに最初から大音量で聴けるのが嬉しい。今回このレコードを買うきっかけとなったA①「Angry」はアナログLPサウンドで聴くとその魅力が2倍3倍と引き立つコテコテのストーンズ・サウンドで、この曲と同様に印象的なギター・リフから始まる80’sストーンズの代表曲「Start Me Up」と比べてみても楽曲のレベル/クオリティーにおいて遥かに凌駕していると思うし、それより何よりあの曲から40年(!)も経っているというのに未だにこれほどのエネルギーを放っているというのは驚異的だ。
 このアルバム最大の話題はチャーリー・ワッツが生前最後にレコーディングした2曲に元メンバーのビル・ワイマンが参加していることだろう。「Live By The Sword」と「Mess It Up」がその2曲だが、ストーンズ鉄壁のリズム・セクションの復活が楽曲に唯一無二のグルーヴを与えており、聴いててめちゃくちゃ気持ちが良い。顎が落ちそうなその “ノリ” はまさに “これぞストーンズ!!!” と叫びたくなるような素晴らしさで、ストーンズ・ファン、いや、ロックンロール・ファンなら絶対に気に入ると思う。特に「Live By The Sword」は「Angry」に次ぐお気に入りのトラックだ。
THE ROLLING STONES - Live by the sword - HACKNEY DIAMONDS (2023)


 ポール・マッカートニーが「Bite My Head Off」という曲にベースで参加しているのもビートルズ・ファンとしては重要なポイント。ネットの記事によると最初はバラッド曲で弾いてもらおうかという話だったところをプロデューサーのアンドリュー・ワットの “アルバム中で最もアグレッシブなロックトラックでポールに演奏してもらえたらどんなにクールだろう” という考えから「Bite My Head Off」に決まったというが、これを慧眼と言わずして何と言おう? それもヴォーカル/コーラスではなく、バンドの一員としてピック弾きでブンブン唸るベースを披露しているのが何とも嬉しいではないか。“ポールはまるで長年一緒にやってきた仲間のようにバンドに馴染んで本当に楽しそうだった。とてもしっくり来たよ。” とミックも大満足だったという。実際、ビートルズ・ファンの贔屓目を抜きにしても非常に出来の良いトラックに仕上がっていると思う。
The Rolling Stones — Bite My Head Off Feat. Paul McCartney (Lyric video)


 このアルバムにはポールの他にもスティーヴィー・ワンダーやエルトン・ジョン、レディー・ガガといったゲスト達が参加しているが、私に言わせれば主役はあくまでもストーンズであり、豪華なゲスト陣はそれに華を添えているに過ぎない。とにかくこれだけのクオリティーを持った楽曲を揃え、それらを熟練の技で唯一無二のストーンズ・サウンドに仕上げ、1枚のアルバムとしてまとめたところはさすがとしか言いようがない。
 プロデューサーのアンドリュー・ワットはキースに憧れてギターを始めたという生粋のストーンズ・フリークで、この新作のプロデュースを依頼された時は天にも昇る気持ちだったというが、ちょうどビートルズのアンソロジー・プロジェクトを任された時のジェフ・リンみたいなモンだろう。そんな彼の言葉を借りれば “ロイヤル・ストレート・フラッシュになる組み合わせを選び出した” のだそうだが、楽曲の配置が “ファン目線” というか、実に見事と言う他ない。「Let It Bleed」を思い起こさせるカントリー・ホンク「Dreamy Skies」や自らのルーツに向き合ったコテコテのブルース「Rolling Stone Blues」など、どこを切っても100%ピュア―なストーンズ節が心ゆくまで堪能できて、私としては大満足のアルバムなのだ。
The Rolling Stones - Dreamy Skies


 LPが全12曲収録なのに対し、日本盤のみのボーナス・トラック(←日本盤の割高感から目を逸らさせようという姑息なやり方が好かん...)として3年前にデジタル・ダウンロード方式のストリーミング・シングルとしてリリースされた「Living In A Ghost Town」が日本盤CDに収録されているのだが、私はこの曲が大好き。「Gimme Shelter」に「Harlem Shuffle」を振りかけてよくかきまぜ、レンジでチンしてレゲエ・フレイバーに仕上げました... みたいな曲想がコロナのロックダウンを歌った歌詞を引き立てていて実にエエ感じなのだ。このヒンヤリした涼感は一度ハマるとクセになる。一般的知名度は低いかもしれないが、これはストーンズにしか作れないような名曲名演だと思う。尚、デジタル・ダウンロード嫌いの私は遅れてリリースされたアナログ・シングルを入手して楽しんでいる。
The Rolling Stones - Living In A Ghost Town


ストーンズは終わった... と思っていたところへ “まだまだワシらは転がり続けるで!” と言わんばかりに凄いアルバムを作り上げたミック、キース、ロンの3人。私にとっては80年代以降の彼らのアルバムでは断トツで№1の出来だし、60年代後半から70年代の名作群と比べても遜色ない素晴らしいアルバムだと思う。2023年度の私的 “レコード・オブ・ザ・イヤー” はストーンズで決まり!だ。

ストーンズのシングル盤特集⑤【1971-1974】

2020-07-30 | Rolling Stones / The Who

① Brown Sugar [英RS 19100 /1971.4]
 ストーンズが最も得意としているのは軽快なリフに乗って疾走するこの「Brown Sugar」のようなアッパー・チューンだ。この手の曲を演らせたら彼らの右に出るバンドはいないだろう。曲自体はシンプルそのもので「Jumpin' Jack Flash」の70年代版という感じがしないでもないが、バックでかき鳴らされるアコギや気分を高揚させるマラカスが絶妙な隠し味として響き、彼らにしか出せないノリで聴き手をグイグイ引っ張っていくところがたまらない。アルバム「Sticky Fingers」はあのジッパー付きジャケットとこの曲のおかげで名盤化したのではないか。尚、B面に収録されたチャック・ベリー・カヴァー「Let It Rock(Live Version)」も負けず劣らずの名演だ。
Brown Sugar (2009 Mix)

The Rolling Stones - Let It Rock


② Tumbling Dice [英RS 19103 / 1972.4]
 私がこの「Tumbling Dice」という曲を初めて聴いたのはリンダ・ロンシュタットがアルバム「Simple Dreams」でカヴァーしたヴァージョンで、ストーンズのオリジナル・ヴァージョンを聴いたのはそれからかなり後になってからのことだった。だから今でも「Tumbling Dice」と言えばリンダの力強いヴォーカルが頭の中に鳴り響いてしまうが、ストーンズによるオリジナル・ヴァージョンには洗練されたリンダ・ヴァージョンとは又違った “ダイヤモンドの原石” 的な魅力があるのも事実。この曲は他の派手派手なシングル曲と比べるとイマイチ目立たないかもしれないが、アルバム「メインストリートのならず者」の一連の流れの中で聴くと一際強い存在感を感じさせる重要な1曲だ。
Tumbling Dice ~ The Rolling Stones

Tumbling Dice


③ Star Star [仏RS 19.108 /1974.2]
 この「Star Star」はイギリスでもアメリカでもシングル・カットされず、アルバム「Goats Head Soup」のB面ラストにひっそりと(?)収められていたこともあって、最初はこの名曲名演の存在に気付かなかった。そもそもあのアルバムはAラスに大嫌いな「Angie」が入っているので(←ミックのくどいヴォーカルにゲップ出ませんか?)ストーンズの全アルバム中もっとも聴かないレコードと言ってもいいくらい敬遠していたのだ。そんな私にこの曲の素晴らしさを再発見させてくれたのはジョーン・ジェット姐さんによるリスペクトに満ちたカヴァーで、“おぉ、これめちゃくちゃカッコエエやん!” と思って調べてみるとストーンズがオリジナルだったでござる... というオチだ(笑) 改めてストーンズ・ヴァージョンを聴いてみるとこれがもうむしゃぶりつきたいくらいカッコイイ(^o^)丿  チャック・ベリー直系のシンプルでストレートアヘッドなロックンロールは彼らのレパートリーの中に散見されるが、この曲はそれらの中でも最上の1曲と言えるものだ。
The Rolling Stones Star Star (Starfucker) (Uncensored)

Joan Jett - Star Star


④ It's Only Rock 'n Roll [英RS 19114 /1974.7]
 先の2曲は秀逸なカヴァー・ヴァージョンを聴いてその素晴らしさを知ったようなものだが、この曲に関してはもちろんストーンズのオリジナル・ヴァージョンこそが唯一無比の存在で、この顎が落ちそうなグルーヴは本家ストーンズ以外ではとてもじゃないが再現不可能。今やストーンズの登録商標となった “I know it's only rock 'n roll but I like it.” というフレーズを繰り返すだけでこれほどまでの快感を与えてくれる曲はちょっと他では思い出せないし、泡だらけになるプロモ・ビデオも大いに笑わせてくれる。私的にはストーンズの最盛期は1966年から1970年くらいまでで、ここ一番という名曲名演はこの時期に集中しており、70年代前半は爛熟期... 花で言えば散り始める直前というイメージなのだが、その中でもこの曲はまさに “巨星ストーンズ最後の輝き” という感じがする必殺のキラー・チューンだ。
The Rolling Stones - It's Only Rock 'N' Roll (But I Like It) - OFFICIAL PROMO

ストーンズのシングル盤特集④【1968-1969】

2020-07-27 | Rolling Stones / The Who
① Jumpin' Jack Flash [F.12782 英Decca / 1968.5]
 器楽アレンジメント面でブライアン・ジョーンズ色の強い「Their Satanic Majesties Request」での迷走(←私個人はこのアルバム結構好きなのだが...)を経て、新たにジミー・ミラーをプロデューサーに起用し、“俺らにはコレしかない” と完全に吹っ切れたかのようなストーンズのノリノリ・ロックンロール宣言がこの「Jumpin' Jack Flash」だ。 “ジャン、ジャン♪” というイントロのギター(←しかもアコギ!!!)から始まるシンプルなリフ攻撃に血湧き肉躍るのは私だけではないだろう。チャーリー・ワッツのツボを心得たドラミングも最高だし、絶妙なアクセントになっているマラカスの使用も心憎い。とにかくすべての楽器が然るべきところで鳴っている感じで、まさにシンプル・イズ・ベストを絵に描いたような名曲名演だ。
Jumpin' Jack Flash (Original Single Mono Version)


② Sympathy For The Devil [F13635 英Decca / 1976.4]
 前回書いたように「Paint It Black」と並ぶ私的№1ストーンズ・ソングがこの「Sympathy For The Devil」だ。「A Night In Tunisia」にインスパイアされたと思しきサンバのリズムを刻むパーカッションとマラカス、要所要所でここぞとばかりに飛来する “フッ フゥ~♪” コーラス、キンキンに尖ったギター、不安をかき立てるピアノの連打、そしてそういったすべての要素が混然一体となってまるでトランス状態に突入したかのように曲の終盤に向かってどんどん盛り上がっていく様はとても言葉では表現できないカッコ良さ(≧▽≦)  歌詞の中の “Who killed the Kennedys?” というフレーズもこの曲の持つ悪魔的雰囲気に拍車をかけている。時代の空気というのもあるのだろうが、この風雲急を告げる緊張感、ただならぬ雰囲気、二度と再現不可能な異様な世界は何度聴いても実にスリリング!!! まさにストーンズ一世一代のスーパーウルトラ大名演だ。尚、私が持っているシングル盤は73年に出たオランダ盤(6103 066)と76年に「Honky Tonk Women」のB面として再発されたUK盤(F13635)の2枚だが(←この曲の発表当時は本国イギリスではシングル・カットされなかった...)、UK盤が6:25のフル・ヴァージョンなのに対し、オランダ盤は4:12のショート・ヴァージョンなので注意が必要だ。
The Rolling Stones - Sympathy For The Devil (Official Lyric Video)

Sympathy for the Devil recording sessions with The Rolling Stones - 1968 (HD)


③ Honky Tonk Women [F.12952 英Decca / 1969.7]
 顎が落ちそうなリフを刻むギターにもう一本のギターが絡み、そこへ迫力満点のバスドラが入ってくる... いやぁ~、これはもうたまりまへんな(≧▽≦) ゆったり流れるリズムも “場末の酒場のオンナたち” にピッタリのルーズな雰囲気を醸し出していて言うことナシ。ブルージーでレイドバックした感じは快感そのもので、随所にカントリー・フレーバーを散りばめたこの曲を聴いて身体が揺れなければストーンズ流 “グルーヴ” の気持ち良さは一生分からないだろう。これこそまさに “音楽は理屈じゃない!” というのが実感できる名曲名演。それにしてもこの曲はどの時代のライヴで聴いても盛り上がれますな(^.^)
Honky Tonk Women (Original Single Stereo Version)


④ Gimme Shelter [TOP-1659 日London / 1971.11]
 この曲はイギリスでもアメリカでもシングル・カットされておらず、私の知る限りでは日本、ベルギー、フランスだけでしかシングルになっていないが、私的にはストーンズを語る上で欠かせない曲なので気にせず紹介。世評の高いアルバム「Let It Bleed」の冒頭を飾ると共にブライアン・ジョーンズ亡き後のストーンズの再出発を高らかに宣言したキラー・チューンで、この曲の存在こそが「Let It Bleed」の過大評価(→正直言ってこの曲以外は印象に残る曲が無い...)につながっていると思う。とにもかくにもこの殺気をはらんだ緊張感がたまらなくスリリングで、ゲスト・ヴォーカルとして起用されたメリー・クレイトンのソウルフルで存在感抜群の歌声もこの曲の泥臭いグルーヴ増幅に一役買っているし、ひんやりとした感触にゾクゾクさせられるイントロもカッコイイ。前半の “War, children, it's just a shot away.(戦争なんてたった一発の銃声で始まるものさ。)” と後半の “I tell you, love, sister, it's just a kiss away.(1つのキスから愛が芽生えるのさ。)” というフレーズの対比の妙がたまらなく好きだ。
The Rolling Stones - Gimme Shelter (Official Lyric Video)

ストーンズのシングル盤特集③【1966-1967】

2020-07-23 | Rolling Stones / The Who

① Paint It Black [F.12395 英Decca / 1966.5]
 もしもストーンズのベスト曲を選べと言われたら、「Sympathy For The Devil」かこの「Paint It Black」を選ぶだろう。前者が音楽の範疇を超えた得体のしれない吸引力で聴く者をグイグイ引き込んでいくのに対し、この曲はメロディー、リズム、そして器楽アレンジといった純粋に音楽的な要素のみで聴き手を圧倒するところが凄い。ブライアン・ジョーンズのシタールが絶妙な隠し味になっており、この曲の持つ妖しげな魅力をアップさせているし、後半部のベースがうねりまくるところなんかもうたまらない。尚、ベンチャーズ歌謡として有名な渚ゆう子の「京都の恋」はこの曲にインスパイアされたもので、実際に「ベンチャーズ・オン・ステージ'71」以降の来日公演でしばしばこの2曲をメドレーで演奏している(←ジェリー・マギーのエレキ・シタールがエエ味出してます...)のが面白い。
Paint It, Black (Mono)

Paint it Black - Ventures live in Japan 1990


② Let's Spend The Night Together [F.12546 英Decca / 1967.1]
 リンゴ・スターのあのドラムの音がなければビートルズのサウンドにならないのと同様に、“ストーンズの音” を形作っているのは間違いなくチャーリー・ワッツのドラミングだ。この曲でもドコドコ叩きまくるチャーリーが目立っていて思わず頬が緩んでしまうが、もう一つこの曲のイメージを決定づける重要な役割を担っているのがジャック・ニッチェの弾くピアノで、曲を前へ前へと押し進めていく大きな推進力になっている。尚、[エド・サリバン・ショー」出演時に “歌詞が性的な意味を連想させる” という理由で圧力がかかり、サビの部分を “Let's Spend Some Time Together” へと変えて歌わされたという話は有名だが、「Brown Sugar」といい、「Starfucker」といい、いかにも下ネタ上等を信条とする(?)ストーンズらしいエピソードだ。
Let's Spend The Night Together (Mono)


③ We Love You [F.12654英Decca / 1967.8]
 この「We Love You」はビートルズの「All You Need Is Love」のレコーディングにミックとキースが参加したことに対するお礼としてジョンとポールがコーラスで参加したという理由でビートルズ・ファンにも知られているが、この曲の一番の魅力は何と言ってもニッキー・ホプキンスの弾くスピード感溢れるピアノに尽きるだろう。彷徨浮遊系のヴォーカル、妖しい雰囲気を醸し出すコーラス・ワーク、そして混沌としたサウンドを生み出すバックの演奏と、どこを切っても典型的なサイケデリック・ロックのサウンドだが、そんな中でホプキンスの硬質なピアノの音が曲全体をグイグイ引っ張っていくところが超カッコイイ(^o^)丿 この曲はオリジナル・アルバムには未収録だが、コレを「Their Satanic Majesties Request」のAラスかBラスに入れてたらあのアルバムの評価も変わっていたかもしれない。
We Love You


④ She's A Rainbow [AT15088 オランダDecca / 1967.12]
 ストーンズの名曲というのはほとんどがキャッチーなリフを中心としたタテノリ・ロックなのだが、ごくごくたまにめちゃくちゃメロディアスな曲に出くわして “これ、ホンマにストーンズ???” と驚かされることがある。この「She's A Rainbow」なんかその典型と言ってもいいような名曲で、まるでポール・マッカートニーが作曲したかのような流麗なメロディー・ラインに耳が吸い付く。曲全体をリードするピアノはまたまたニッキー・ホプキンスで、彼のピアノがこの時期のストーンズ・サウンドに欠かせないものであったことがよくわかる。一度聴いたら耳に残るバックコーラスも絶妙で、ミックのヴォーカルを見事に引き立てているところはさすがという他ない。かなり昔のことになるが、この曲がCMソングとしてテレビから流れてきたのを聴いた時、選曲担当者のセンスに唸ったのを覚えている。尚、ストリングス・アレンジはレッド・ゼッペリン加入前のジョン・ポール・ジョーンズが担当している。
She's A Rainbow ((Original Single Mono Version))

iMac [She's a Rainbow]

ストーンズのシングル盤特集②【1965】

2020-07-18 | Rolling Stones / The Who

① The Last Time [F.12104英Decca / 1965.2]
 ストーンズが世界的に大ブレイクを果たしたのはこの次のシングル「Satisfaction」だが、その伏線となったのがこの「The Last Time」だ。それまではカヴァー曲に名演が集中していた彼らがジャガー&リチャーズの自作曲で初めて強烈なインパクトを残したのがこの曲で、“キャッチーなメロディーラインやリフを繰り返して印象的なフレーズを紡ぎ出し、大衆にアピールするシングル曲を作る” という手法は続く「Satisfaction」、「Get Off Of My Cloud」を経てストーンズ屈指の名曲「Paint It Black」へと繋がっていく。そういう意味でもストーンズ史において非常に重要なナンバーと言えるのではないか。チャーリー・ワッツの刻む正確無比なビートに乗ってブライアン・ジョーンズが繰り返し弾き続けるあの印象的なリフが脳内リフレインを起こすようになれば、もう立派なストーンズ中毒だ。
The Last Time (Mono)


② Satisfaction [F.12220 英Decca / 1965.5]
 ストーンズは聴かないけれどこの曲だけは知っているという一般の音楽ファンも多いのではないかと思えるぐらいの知名度を誇る、言わずと知れたストーンズの代表曲。ビートルズで言えば「Yesterday」や「Let It Be」、「Hey Jude」的な位置付けの曲で、マニアにとっては耳ダコかもしれないが、改めて聴いてみるとやっぱりエエなぁ...と思わせてくれるのがこういった超有名曲だ。一番の魅力は何と言っても一度聴いただけで頭に残るあのカッコ良いギター・リフで、ミックの歌唱もコレしかない!という感じで迫ってくる。ミック・ジャガーは決して好きなタイプのシンガーではないが、ストーンズのサウンドにはアクの強い彼のヴォーカルが一番あっていると実感させてくれる一曲だ。
[I Can't Get No] Satisfaction


③ Get Off Of My Cloud [F.12263 英Decca / 1965.9]
 この「Get Off Of My Cloud」はこの時期のストーンズとしては一番好きな曲で、イントロのチャーリー・ワッツの切れ味鋭いドラミング(←何回聴いてもシビレるわ...)で一気に引き込まれ、ミックのアグレッシヴなヴォーカルが印象的なサビメロの強烈なフックに耳が吸い付く。“Hey, you, get off of my cloud!” での掛け合いもインパクト絶大だし、バックで呪文のように上昇下降を繰り返すメロディー・ラインも絶妙な隠し味になっている。それにしても「満足できない!」(I Can’t Get No Satisfaction)に続いて「とっとと失せろ!」(Get Off Of My Cloud)というタイトルのシングルをもってくるところがいかにもストーンズらしい。
Get Off Of My Cloud (Mono)


④ 19th Nervous Breakdown [F.12331 英Decca / 1966.2]
 この曲を初めて聴いた時は弾むようなイントロがめちゃくちゃカッコ良くてウキウキワクワク... アップテンポで快調に飛ばし(←特にギターがふるいつきたくなるぐらいにカッコイイ!)、更にサビの“Here it comes...♪” 4連発で気持ちが高まり一気にクライマックスへ... とここまでは完璧な流れだったのだが、続く “Here comes your 19th nervous breakdown...♪” のラインの凡庸なメロディーが生み出す尻すぼみ感に “えっ、これで終わり???” と肩透かしを食ったのを今でもよく覚えている。その後何十回何百回とこの曲を聴いてきたが、残念ながらこの第一印象が覆ることはなかった。前半部分がカッコ良いロックンロールに仕上がっているだけに、本当に惜しいと思う。
19th Nervous Breakdown (Mono)

ストーンズのシングル盤特集①【1963-1964】

2020-07-11 | Rolling Stones / The Who
 10年間愛用しているパソコン(Lifebook AH550)の冷却ファンが先週壊れてしまって修理に出していたのだが、そいつが昨日やっと返ってきた。“ガリガリ...” “ギギギ...” と凄まじい異音がしているのに使い続けた私が悪いのだが、その代償は修理代24,000円(←ファンだけでなくマザーボードまで熱でやられてたのでそっちも交換するハメに...)と結構高くついてしまった(*_*)  まぁ今となっては貴重なwindows7機なのでwindows10(←使いにくいので嫌い!!)に買い替えずにすんで正直ホッとしたし、これでネット・オークションもブログ更新も再開できるので良しとせねば... 
--------------------------------------------------------------------------------------------------
 私はローリング・ストーンズの大ファンというわけではないが、レコードは結構持っている。ビートルズに比べるとアルバム曲のクオリティーに大きな差があるように思えるので(←あくまでも私見です...)ビートルズのようにスタンパーに拘ったり各国盤を集めたりするところまではいかないのだが、シングルに限って言えばそのほとんどが名曲名演のオンパレードで、かなりのレベルにあるのではないか。というワケでこれから数回に亘って“ビートルズ者” の視点からストーンズのシングル盤を特集していきたいと思う。

① I Wanna Be Your Man [F.11764英Decca /1963.11]
 レノン&マッカートニーがストーンズに贈ったとされるこの曲は本家ビートルズも「With The Beatles」の中で演っているのだが、両者のヴァージョンを聴き比べてみると、筋金入りのビートルマニアの私でさえもこのストーンズ・ヴァージョンに軍配を上げざるを得ない。ビートルズのヴァージョンにはリンゴのヴォーカルがロックンロールに向いていないという弱点があるが、それ以上に違いを生んでいるのがストーンズの尋常ならざるアグレッシヴなサウンドだ。まるでヘビー級ボクサーのパンチの乱打のような圧力で迫ってくるビル・ワイマンのゴツゴツしたベースがうねりまくって凄まじいグルーヴを生み出し、バンドが一体となって疾走するさまはまさにガレージ・パンクそのもので、理屈を超えた原始的なロックンロールの初期衝動がマグマのように押し寄せる...(≧▽≦)  初期ストーンズを聴くというのはつまりそういうことなのだ。
I Wanna Be Your Man ((Original Single Mono Version))


② Money [DFE 8560 英Decca / 1964.1]
 ビートルズ vs ストーンズのカヴァー対決(?)第2弾はバレット・ストロングの「Money」だ。ジョン・レノンのドスの効いたシャウト・ヴォイスによってこれ以上ないと思えるぐらいヘヴィーに仕上げたビートルズのヴァージョンこそが史上最強だという確信は1ミリたりとも揺るがないが、原曲を換骨奪胎して暴力的とさえ言えるパンキッシュな演奏で対抗したストーンズもかなりいい線いっていると思う。尚、この曲はイギリスではアルバムにもシングルにも入っておらず、4曲入りEP盤「The Rolling Stones」でしか聴けない貴重な音源なのだが、ドイツでは上記の「I Wanna Be Your Man」とのカップリング(←凄い!!!)でシングル・カットされているので、そちらを狙うのもいいかもしれない。
The Rolling Stones - Money (EP version)


③ Carol [72.025 フランスDecca JukeBox用プロモ・シングル/ 1964.6]
 ビートルズと同様、いやそれ以上にストーンズ(特にキース)のチャック・ベリー愛はハンパない。カヴァーした曲数も(オフィシャル・リリースに限って言えば)ビートルズが「Rock & Roll Music」と「Roll Over Beethoven」の2曲なのに対し、ストーンズはデビュー・シングルの「Come On」を始め、「Bye Bye Johnny」「Carol」「Around And Around」「You Can’t Catch Me」「Talkin’ ‘Bout You」「Little Queenie」「Let It Rock」「Don’t Lie To Me」と、私の知っているだけで9曲も演っている。そのどれもが名演なのだから恐れ入るが、中でもこの「Carol」の出来は群を抜いている。切れ味抜群のキースのギターといい、お約束のハンド・クラッピングといい、ノリ一発で一気呵成に駆け抜けるようなハイ・テンションの演奏は圧巻で、ビートルズの「Live at the BBC」ヴァージョンに比肩するベスト・カヴァーだと思う。
Carol (Mono)


④ Route 66 [23.536 ベルギーDecca / 1964.8]
 私が最も愛聴しているストーンズのアルバムは名盤の誉れ高い「Let It Bleed」でも「Exile On Main St.」でもなく、ほとんど話題にも上らない彼らのUKデビュー・アルバムなのだが(←UKオリジナル盤とは似て非なるUS盤は論外...)、そんな愛聴盤の1曲目を飾るのが他でもないこの「Route 66」だ。この曲のオリジナルはジャズ・ピアニストのボビー・トゥループで、多分ナット・キング・コールのヴァージョンが一番有名だと思うが、ストーンズはチャック・ベリーがカヴァーしたものをベースにしながら、ラウドなギターやハンド・クラッピングを加えてノリノリのロックンロールに仕上げている。この後も様々なロック系アーティストがこの曲をカヴァーしているが、その原型はすべてストーンズにあると言っても過言ではない。
Route 66 (Mono)

The Ultimate Collection / The Who

2011-12-30 | Rolling Stones / The Who
 今年も残すところあと1日、振り返ってみれば世間的には3月の大震災に始まって放射能騒ぎやら何やらで悪いニュースばかりだったし、自分のプライベートでも色々とストレスの多い1年だったのだが、こと音楽生活に関しては非常に充実していて、特にブリティッシュ・ロックと昭和歌謡の2つのジャンルで収穫が大きかったように思う。試しにこのブログでのエントリー数をアーティスト別に数えてみると、1位:ザ・フー(15)、2位:クイーン(9)、3位:西田佐知子(8)、ということでザ・フーが断トツだった。
 そもそもの始まりはウチに遊びに来てくれたサムとデイヴの影響でブリティッシュ・ロック熱が再燃したことで、それからイーベイでオリジナル盤獲りまくり → 「ライヴ・アット・リーズ」でザ・フーにハマる → 念願だった「マイ・ジェネレイション」の UK オリジ盤を遂にゲット→ザ・フー熱がピークに... という流れで、来る日も来る日も彼らの爆音を聴いてコーフンしていた。ということで、今年最後のエントリーは当ブログの “アーティスト・オブ・ザ・イヤー” ザ・フーだ。
 彼らは日本で人気が無いと言われるが、その割にベスト盤は何種類も出ている。私はあるアーティストに興味を持った時はまずベスト盤を聴いてから気に入った曲が入っている盤へと進むことが多いのだが、ザ・フーの場合はどのベスト盤を買っていいのか分からなかったので、知っている曲を頼りにオリジナル・アルバムを買っていき、一通り聞いた後でヴァージョン違いやミックス違いの穴を埋めるためにベスト盤を物色するという変則的な順番になった。
 ベスト盤で一番大切なのはもちろん選曲だと思うが、ザ・フーのような60年代のバンドの場合、モノラル/ステレオのミックス違いも重要だ。ただ、選曲にしてもミックス違いにしても人によって好みは様々なのでどれが良いとは一概に言えないので、彼らのように長い歴史を持ったバンドのベスト盤を選ぶのは非常に難しい。
 まず一番手っ取り早いのはシングルを集めたものだが、彼らにもそのものズバリの「ザ・シングルス」(1984)という盤がある。しかしビートルズの「1」と同様に無味乾燥きわまりない選曲で全く食指が動かない。大体「アイ・キャント・エクスプレイン」も「ババ・オライリー」も入ってない盤など論外だし、そもそもザ・フーの魅力はシングル曲だけではとうていカバーできない多面性にこそあると思う。そういう意味では1988年に出た「フーズ・ベター・フーズ・ベスト」も似たようなもんだし、リマスターされていない旧規格 CD なのであまり音が良くない。ほぼ同じ選曲でリマスターされた「マイ・ジェネレイション~ザ・ベリー・ベスト・オブ・ザ・フー」(1996)という盤もあるにはあるが、全20曲中7曲が疑似ステレオだなんてアホらしくてハナシにならない。一体何が悲しゅうて今の時代にスカスカの疑似ステを聴かにゃあならんのか! そんなこんなで悩んだ挙句、私が買ったベスト盤がこの「アルティメット・コレクション」という40曲入りの2枚組 UK 盤(←初回盤には更にもう1枚、レア・ヴァージョン4曲と映像2曲が入ったボーナス・ディスクが付いてます!)だった。
 私がこの盤を選んだのは、2枚組ということで収録時間の制限が撤廃され、シングルになっていない隠れ名曲も一杯入っていることが一番の理由で、ちょうどビートルズの赤盤と青盤を足したような位置付けだ。それともう一つ、今現在出回っている CD は “リミックス・リマスター” といってミックスの段階から様々な修正を加えた盤が主流なのだが、コレに入っているのはオリジナル・ミックスに手を加えずにリマスターだけを施したものなので、今となっては音源的にこっちが貴重だということ。過去の音源を再発する時に、それが最初に世に出た時のオリジナル・フォーマットを尊重するという見識が素晴らしい。ということで、これからザ・フーを聴いてみようかな、という人にはこの「アルティメット・コレクション」がオススメだ。
 下に貼り付けたのは2010年スーパーボウルのハーフタイム・ショーに彼らが出演した時の映像で、「ピンボール・ウィザード」~「ババ・オライリー」~「フー・アー・ユー」~「シー・ミー・フィール・ミー」~「ウォント・ゲット・フールド・アゲイン」と、まさにベスト・オブ・ベストという選曲だし、レーザー光線が会場中を照らし出す光と音の壮大なスペクタクル・ショーは圧巻の一言。特に、飛び散る火花、迸る閃光をバックにザック・スターキーがブチかます爆裂ドラミング(11:15~)なんかもう鳥肌モノで、ロックな初期衝動がマグマのように押し寄せる決定的名演だ。
 ということで、今年はこれでおしまい。ここまで読んで下さった皆さん、ホンマにどうもありがとうございました。来年も好きな音楽だけを徹底的に極めていこうと思うとりますので宜しければまたお付き合い下さいね。それでは良いお年を...(^.^)
The Who - Live at the Super Bowl (full)
コメント (2)

Live at the Royal Albert Hall / The Who

2011-07-05 | Rolling Stones / The Who
 5月の半ばから何となく始めた “ザ・フー祭り” も何やかんやでもう7月なのだが、懲りずにまだ継続中である。前回はケニー・ジョーンズ時代のライヴ盤「フーズ・ラスト」を取り上げたので、今日はザック時代のライヴ盤「ライヴ・アット・ザ・ロイヤル・アルバート・ホール」でいってみたい。
 彼らは1983年に一旦解散した後、ライヴ・エイド(1985)や結成25周年記念ツアー(1989)で再結成しているが、他の多くのバンドのリユニオンと同様にザ・フーの場合も、メンバーが何となく集まってハイ弾きましたハイ叩きましたという同窓会的なプレイに終始しているように聞こえ、見ていて迫ってくるものはあまり感じられなかった。ザ・フーとしての必然性が感じられず、バンドとしての集中力は拡散し、演奏のテンションも低いように思えたのだ。
 しかし1996年にハイド・パークで行われたプリンス・トラスト・コンサートではドラマーにリンゴ・スターの息子であるザック・スターキーを起用、かつてのザ・フーの片鱗を感じさせるパフォーマンスを見せつけた。その後1999年の再々結成コンサート・ツアーでは大編成を止めてよりロック向きの5ピース・バンドに切りかえ、ピートもアコギから再びエレキに持ち替えてエネルギッシュなプレイを披露、ザ・フー本来のタイトで引き締まったバンド・サウンドが戻ってきた。結局このツアーは2000年末まで続けられたのだが、その最終日にあたる11月27日のライヴの模様を収めたのがこの「ライヴ・アット・ザ・ロイヤル・アルバート・ホール」である。
 恥ずかしながら私はこの CD を買うのをずっと後回しにしていて、他のザ・フー盤をほとんど聴き尽くした後で “そー言えばコレまだ聴いてへんかったなぁ...” ぐらいの軽いノリであまり期待もせずに買ったのだが、実際に聴いてみてビックリ(゜o゜) めちゃくちゃエエのである。そのハイテンションな演奏は1980年代以降では抜きん出ているのではないか。マネージャーのビル・カービシュリーと同じく、私がザ・フーのステージで最も感銘を受けたのは以前取り上げた「コンサート・フォー・ニューヨーク・シティ」(2002)なのだが、彼らはこのツアーでの好調ぶりをそのまま維持してニューヨークに乗り込み、あの神懸かったパフォーマンスが生まれたのだと思う。
 このようにザ・フーが完全復活したのは一にも二にもザックのダイナミックなプレイによるところが大きい。これだけガンガンとプッシュされたらピートも難聴を理由にアコギでお茶を濁しているわけにはいかないだろうし、同じリズム隊のジョンも本気になってスーパー・プレイを連発、ここに躍動感溢れる21世紀のザ・フー・サウンドが生み出されたのだ。
 ディスク1では①「アイ・キャント・エクスプレイン」や③「ピンボール・ウィザード」、⑤「マイ・ワイフ」から⑩「フー・アー・ユー」、⑪「ババ・オライリー」に至るまで、耳慣れたライヴの定番曲がザックの躍動感溢れるドラミングによって息を吹き返している。そんな中で注目はそれまでのライヴ盤には収録されていなかった②「エニーウェイ・エニーハウ・エニーウェア」、⑥「ザ・キッズ・アー・オールライト」、⑦「メアリー・アン・ウィズ・ザ・シェイキー・ハンド」、⑧「バーゲン」といった楽曲群。特に間奏のドラム・ソロが重要な②はこれまであまりライヴで演奏されてこなかったように思うのだが、彼らがこの曲をセット・リストに加える気になったのは、キース直系のスリリングなプレイを身上とするザックを得たからだと思う。 又、1st アルバムに入っていた甘口ビート・ポップスの⑥もシャキシャキした演奏で旨口ロックに仕上げている。大好きな⑦⑧をザック・ヴァージョンで聴ける幸せもこの盤でしか味わえない(^o^)丿
 このように良いことずくめに思えるこのライヴ盤なのだが、私的にどうしても許容できない点が一つある。ディスク2の半数以上のトラックでしゃしゃり出てくるゲスト陣がめちゃくちゃ鬱陶しいのだ。ブライアン・アダムス、ポール・ウェラー、エディー・ヴェダー、ノエル・ギャラガー、ケリー・ジョーンズといった連中が “スペシャル・ゲスト” として登場し、あろうことかヴォーカルまで取っている。図々しいにも程があるというか、厚顔無恥も甚だしい。例えるならロネッツやスプリームズのリユニオン・ライヴでレディー・ガガやビヨンセが歌うようなモンである(←極端な例えだが...)。ファンはザ・フーが聴きたくて身銭を切るのであり、こんな若手連中の下手くそな歌が目当てでこの盤を買う人なんてそんなにいないと思うのだが...(>_<) 私はこいつらが入ったトラックはすべて飛ばして余計な不純物の混じらない真正ザ・フーの演奏だけを CD-R に入れて楽しんでいる。こーいう時にパソコンってホンマに便利やね。
 とまぁこのようにあまり好きになれないディスク2だが、そんな中では⑦「ユー・ベター・ユー・ベット」、⑧「ザ・リアル・ミー」、⑨「5:15」と続く流れがめっちゃ好き。特に⑨で聴けるジョン・エントウィッスルの驚異のベース・プレイは圧巻で、涼しい顔して物凄い速弾きをブチかましている。リード・ベースの真髄ここにありと言えるトラックだ。
 尚、このCDにはジョン・エントウィッスルにとって最後のステージとなった2002年2月の同所でのライヴ4曲を収録したボーナス・ディスクが付いており、不要なゲスト参加の数トラックを除けば(←しつこい!)ファンとしてはお買い得感溢れる3枚組ライヴ盤なのだ。

The Who Live at The Royal Albert Hall - Can´t Explain


John Entwistle bass solo


The Who at The Royal Albert Hall - The Real Me

Who's Last / The Who

2011-07-02 | Rolling Stones / The Who
 ザ・フーはそのサウンドの屋台骨を支えていたキース・ムーンが1978年に急死した後、元スモール・フェイセズのケニー・ジョーンズを後任ドラマーに迎えて再出発を図った。このあたりはボンゾの死をもって活動を停止したレッド・ゼッペリンとは好対照だが、とにかく彼らは “続ける” ことを選んだのだ。しかし残念なことにシュアーなプレイを信条とするケニーのスタイルはザ・フーとは合わなかった。それはケニー時代のスタジオ録音アルバム「フェイス・ダンシズ」と「イッツ・ハード」を聴けば明らかで、キース時代の諸作に比べれば気の抜けたビールというか、決定的な何かが欠けていた。
 キースの死後、バンドへの熱意を失いつつあったピートはそんな状態でバンドを続けていくことに限界を感じたのか、ついに1983年にザ・フーの解散を発表、当時の北米ツアーがそのまま “サヨナラ・ライヴ” となったのだが、その時の模様を収録したライヴ・アルバムが1984年の末に出たこの2枚組「フーズ・ラスト」である。
 このアルバムの収録曲はすべてキース時代の作品(英Track、米MCA)で占められており、ワーナー・ブラザーズから発売されたケニー在籍時代の2枚のアルバムからの曲が1曲も入っていないのだが、それは多分このライヴ盤が MCA レコードからリリースされたからだろう。いずれにせよ、いきなり①「マイ・ジェネレイション」から始まって②「アイ・キャント・エクスプレイン」、③「サブスティテュート」と続く流れはまさに “ライヴ音源によるベスト盤” 的な色合いの濃い選曲であり、私としては大歓迎。しかし好事魔多しと言うべきか、私が買った1枚物の輸入盤CDは情けないぐらいに薄っぺらいサウンドで、私の中では “「フーズ・ラスト」はイマイチ元気がない” という刷り込みがなされてしまった。
 しかし今年に入って “ザ・フー・アナログ盤フィーバー” に突入した私は、あのユニオン・ジャックが燃えているジャケットを LP サイズで欲しくなったのと、CD はスカスカでもアナログ盤ならエエ音するかもという好奇心から、UK オリジナルの MCA レーベル盤を£4.99でゲット。このあたりの盤になるとほぼ無競争で買えるのが嬉しい。支払いを済ませてからちょうど1週間でイギリスからブツが到着、スモール・パケットから取り出した2枚組 LP の “燃えさかるユニオン・ジャック” のジャケットはインパクト抜群だ。
 肝心の音の方だが、コレがもう手持ちの旧規格ヘタレ CD とは異次元のリッチなアナログ・サウンドで、イマイチ面白味に欠けると思っていたケニーのドラミングはキースやザックには及ばないまでも、ライヴということもあってか彼にしてはかなり頑張って叩いているように思う。さすがに⑬「ウォント・ゲット・フールド・アゲイン」なんかはキースやザックの爆裂ドラムが恋しくなるが、それ以外のトラックに関しては大きな不満はない。一旦音楽が始まってしまえばドラマー比較などという悠長なことを考えていられないくらいの圧倒的な説得力を持って迫ってくるところがライヴで最高の魅力を発揮するザ・フーのザ・フーたる所以だろう。
 とにかく息をもつかせぬ名曲のつるべ打ちといった感のあるこのアルバム、①②③の60年代大ヒット3連発に続くのは④「ビハインド・ブルー・アイズ」、⑤「ババ・オライリー」、⑥「ボリス・ザ・スパイダー」、⑦「フー・アー・ユー」、⑧「ピンボール・ウィザード」、⑨「シー・ミー・フィール・ミー」と、彼らのライヴには欠かせない大定番曲がズラリと並んでいる。この期に及んで “ドラムスが云々...” というのは素直に音楽を楽しめない野暮な人達のタワゴトに聞こえてしまうぐらいの充実した内容だ。
 ⑩「ラヴ・レイン・オーヴァー・ミー」で一旦クール・ダウンした後、⑪「ロング・リヴ・ロック」とその⑫「リプリーズ」の連続攻撃でオーディエンスは一気にヒートアップ。「ジョニー・ビー・グッド」を裏返しにしたようなメロディー展開が楽しいこの曲は、映画「キッズ・アー・オールライト」のエンディングでも実に印象的に使われていたが、ライヴ・ヴァージョンでは更にテンポが上げられ、ノリノリのロックンロールに仕上がっている。私がこのアルバム中で一番好きなトラックだ。
 LP の D面にあたるラスト4曲も凄まじい。⑭「ドクター・ジミー」、⑮「マジック・バス」、そして彼らの十八番である⑯「サマータイム・ブルース」と、フィナーレへ向けて一気に加速していき、トドメが何とあの⑰「ツイスト・アンド・シャウト」である。「ツイスト・アンド・シャウト」といえばもちろんビートルズのヴァージョンがスタンダード化しているが、ザ・フーも例のコーラスで始まるビートルズ・アレンジで演っている。
 このサヨナラ・ツアーの模様は「ライヴ・フロム・トロント」という DVD でも見れるのだが、ベースを弾きながらヴォーカルを取るジョン・エントウィッスルの歌い方はもろにジョン・レノンを想わせるし、身を寄せ合って1本のマイクでバック・コーラスを付けるピートとロジャーの姿はポールとジョージそのものだ。オーディエンスはもう大盛り上がりである。やっぱりロックのライヴはこうでなくっちゃ(^.^)  尚、その DVD では「5:15」でロジャーが振り回すマイクのコードがピートのギター・シールドに絡まってしまい、ロジャーが焦って必死にほどこうとするシーンが微笑ましくて好きなのだが、画質が VHS 3倍モード並みに悪いのが玉にキズか...(>_<)
 キース・ムーンが叩いていないということでファンの間では何となく黙殺されているように感じられるこのアルバムは、ドラムスが大暴れしない分、むしろ “聴きやすいザ・フー・ヒット・パレード・ライヴ” として気軽に楽しめる1枚と言えるのではないだろうか。ザ・フーの歴史はここで幕を閉じる... はずだった。

The Who-Long Live Rock


The Who - Twist & Shout - (Live)
コメント (2)

The Real Me / The Who

2011-06-29 | Rolling Stones / The Who
 私はザ・フーは大好きだがロック・オペラはどうも苦手である。「ア・クイック・ワン」や「ラエル」のように1曲だけならまだいいが、1枚丸ごとオペラ形式のコンセプト・アルバムとなると正直しんどい。だからアメリカで大ヒットしたアルバム「トミー」は一応CDで持ってはいるものの滅多に聴かない。コンセプト・アルバムというタガがはめられたせいか、私がザ・フーに求める野放図なエネルギーの爆発が希薄なのだ。そもそも何でロックにオペラなどというクラシックもどきの要素を取り入れにゃならんのか理解に苦しむ。私がザ・フーに求めているのは一にも二にも “ロックの初期衝動” であって、 “アタマで考えて精緻に作り込まれた音楽” というのはザ・フーには似合わない。
 そういう意味では世評の高いロック・オペラ第2弾アルバム「クアドロフェニア」も私的にはビミョーである。まぁ「トミー」よりは数段マシだが、それでも「フーズ・ネクスト」を聴いた耳にはイマイチ物足りない。もちろん曲単体ではめっちゃ気に入ってるものもあるし、随所に顔を覗かせる演奏技術の高さはさすがザ・フーと言えるものなのだが、アルバムとして考えた場合どうしてもロック・オペラ的な(というか映画のサントラっぽい...)構成がしんどくて、この2枚組を丸ごと通して聴く気にはなれないのだ。1枚に絞り込んで普通のロック・アルバムとして出ていたら愛聴盤になったかもしれないが...(>_<) 結局いつも好きな曲を何曲かだけ “つまみ聴き” しているのが現状だ。
 そんな中でも特に「ザ・リアル・ミー」はザ・フー名曲トップ10に入れたいぐらいの愛聴曲。ウネウネと上昇下降を繰り返しながら凄まじいグルーヴを生み出すジョン・エントウィッスルのリード・ベースが圧巻(←これホンマに凄いです...)で、信じられないような手捌きで縦横無尽に暴れ回るキース・ムーンの爆裂ドラムとの絡みがめちゃくちゃスリリング! この曲だけは何としてもアナログの良い音で聴きたいと考えた私は eBay でシングル盤を狙うことにした。
 いざ検索してみるとUS盤とフランス盤が5アイテムほど出てきたのだが(← UK ではシングル・カットされてない)、その中に何とステレオとモノラルが片面ずつに入った US盤プロモ・シングルがあった。1973年にモノラルって??? 一般的に言うと、モノラル・ミックスが作られていたのは1969年頃までで、ビートルズでいうと「ホワイト・アルバム」、ストーンズでは「レット・イット・ブリード」あたりまでということになり、それ以降はステレオ・オンリーになっていくのだが、1973年という時期を考えればザ・フーのこのモノ・ミックスにはめちゃくちゃ興味をそそられる。
 というのも私が持っているゼッペリンの「グッド・タイムズ・バッド・タイムズ / コミュニケイション・ブレイクダウン」の USシングルがモノラルで(←ゼップのモノラル・ミックスってめっちゃレア。ブラジル盤とかでは色々ありそうだが...笑)、それがもうエゲツナイぐらいのド迫力サウンドだったからだ。ゴリゴリ度ではゼップに引けを取らないザ・フーのこと、しかもこの「ザ・リアル・ミー」もバリバリの疾走系ロック・チューンなので、是非ともモノラルのガツン!とくるサウンドで聴いてみたい。幸いなことに BUY IT NOW で $9.75 だったので即ゲット、送料を入れても1,200円という超お買い得価格である。
 それからちょうど1週間ほどしてアメリカからブツが届いた。ワクワクしながらオルトフォンのモノ針を落とす。このモノ・ミックスはプロモ盤オンリーで通常盤には入っていないレア音源なのだが、耳に馴染んだ CD ヴァージョンよりもヴォーカルが前面にグイグイ出てくる感じ。ジョンの超絶ベース・プレイをクリアな音で楽しむならステレオに限るが、スピーカーから迸り出るエネルギーの奔流を味わうなら断然このモノ・ヴァージョンだろう。しかも “Can you see the real me me me me...” とヴォーカルをリピートしながらスパッと断ち切るように終わるアルバム・ヴァージョンとも普通に演奏が終わるサントラ盤ヴァージョンともエンディングの処理の仕方が違っていて、こちらは演奏がフェード・アウトしていく。コース料理ではその食事全体の印象は最後に出てくるデザートの一皿で決まると言われるが、曲のエンディングもほんのちょっとした違いで全体の印象が変わるから面白い。私の場合、このようにミックス違いで楽しませてくれるのはビートルズとザ・フーぐらいだ。
 せっかくなので YouTube にアップして聴き比べてもらおうと思ったのだが、心の広い UMG さん(笑)の妨害で動画がブロックされてしまい断念。しゃあないので趣向を変えて1996年ハイド・パークでのリユニオン・ライヴ(←ピートが難聴でアコギ弾いてた時のヤツ)と、トリビュート・バンド(←めっちゃ似ててワロタ...)がこの曲を演ってる動画を貼っときます。

The Who - The Real Me


The WHO -The Real Me w/bass WCSX by LIVE THE WHO Tribute

Petra Haden Sings: The Who Sell Out

2011-06-20 | Rolling Stones / The Who
 ザ・フーのカヴァーと言えば、ヴァン・ヘイレンの「ウォント・ゲット・フールド・アゲイン」、ラモーンズやグレイト・ホワイトの「サブスティテュート」、スコーピオンズの「アイ・キャント・エクスプレイン」、WASPの「ザ・リアル・ミー」、シェリル・クロウの「ビハインド・ブルー・アイズ」、ピンク・クリーム69の「ピンボール・ウィザード」なんかが思い浮かぶ。中にはスミザリーンズの「トミー」のようにアルバム1枚全部ザ・フーのカヴァーなんていう凄い盤もあるが、これらのカヴァーに共通しているのはみんなザ・フーへの愛情とリスペクトに溢れているということ。ハードロック系であれ、パンク系であれ、ザ・フーが後進のロック・バンドに与えた影響はとてつもなく大きい。
 私はビートルズを筆頭に、大好きなバンドのカヴァー曲を発掘するのがライフ・ワークの一つなのだが、最近 YouTube で The Who の動画を検索していて凄いカヴァーを見つけてしまった。何と女性だけのアカペラで、初期の名盤「ザ・フー・セル・アウト」をアルバム1枚丸ごとカヴァーしているのだ。タイトルはそのものズバリ「ペトラ・ヘイデン・シングス・ザ・フー・セル・アウト」。最初ペトラ・ヘイデンという名前を聞いても “誰、この人?” という感じで全くピンとこなかったが、調べてみたら何とあのジャズ・ベーシスト、チャーリー・ヘイデンの娘ではないか。蛙の子は蛙というか、鬼才の娘は鬼才ということなのだろう。
 それにしてもアカペラだけでザ・フーのアルバムを丸ごとカヴァーするとは何とまぁおバカな企画だろう(笑) 以前このブログで取り上げた「ダーク・サイド・オブ・ザ・ムーン」のアカペラ盤に比肩する大胆不敵な発想だ。実際に聴いてみると、ヴォーカル・パートはもちろんのこと、各楽器のサウンドからジングルやCM、挙げ句の果てはインナーグルーヴ(←例の “Track Record, Track Record...” と延々繰り返すパート)に至るまでアカペラで再現したマニアックさといい、細部まで徹底的にパロッたユニークなアルバム・ジャケットといい、原盤を知っている者にとってはこたえられない面白さである。
 ユル~いヴォーカルでテープの逆回転を再現した①、もう笑うしかないぐらいピタリとハマッたCM曲②、美曲の随を見事に引き出したコーラス・アレンジが絶品の③⑤⑫、ヤル気のないケイト・ブッシュみたいな④、ピートが作った愛らしい旋律の美しさを再認識させてくれる⑥⑩、幾重にも重ねられたコーラス・ハーモニーで原曲のキャッチーなメロディーが浮き彫りになった⑦、肩の力を抜いてお茶でも飲みたくなるような素っトボケた味わいがたまらない⑧、このまま CM に使えそうな⑨、アカペラ曲として立派に通用する名唱⑪、キースのドラミングまでアカペラで表現した驚異の⑬、パロディー盤はこうでなくっちゃと言いたくなるような最後っ屁⑭と、約40分にわたって女性だけのアカペラによるポップな “アメイジング・ジャーニー” が楽しめる。この CD は曲単位でつまみ聴きするのではなく、1枚丸ごと一気呵成に聴くとその素晴らしさが分かる仕掛けになっている。
 ザ・フーの全アルバム中、最もポップな味わいの「セル・アウト」からメロディーの美しさを抽出して濃縮還元したようなこのアルバムは初めて聴いて一発で気に入り、今ではドライヴの BGM としてもヘビロテ状態の超愛聴盤だ。ザ・フーのオリジナル・ヴァージョンをご存じの方にとってはニヤリと笑えるような仕掛けが満載の超オススメ盤だが、たとえ出自を知らなくても明るく楽しいアカペラ盤として十分通用するクオリティーの高さを持った大傑作ポップ・アルバムだと思う。尚、“リクエストによる埋め込み無効” ということで貼り付けられなかったが、2005年7月にロスで行われたプレミア・ライヴでの「アイ・キャン・シー・フォー・マイルズ」のパフォーマンスが YouTube にアップされていたので “アカペラで聴くザ・フー” に興味のある方はこちらをご覧下さい。

petra haden sings the who sell out - armenia city in the sky

Petra Haden sings the who sell out - heinz baked beans

Petra Haden sings the who sell out - mary anne with her shaky hands

petra haden sings the who sell out - tatoo

petra haden sings the who sell out - sunrise

petra haden sings the who sell out - rael

The Concert For New York City DVD / The Who 他

2011-06-17 | Rolling Stones / The Who
 ザ・フーの真骨頂は聴く者の魂を揺さぶるようなそのライヴ・パフォーマンスにある。そんな彼らのライヴの成否の鍵を握っていたのはドラマーのキース・ムーンだった。ピートがインタビューで “ジョンのベースがリード楽器で自分はリズム・キープ、キースのドラムがオーケストラだ。” と語っていたが、ザ・フー・サウンドの要であるキースが絶好調だった1970年前後あたりがライヴ・バンドとしてのザ・フーの全盛期であり、「ウッドストック」、「ワイト島」、「ロンドン・コロシアム」、「リーズ大学」など、名演が目白押しだ。逆に「キルバーン」(1977)なんかは死兆星を見てしまったキースの不調が響いたのかバンド(特にピート)のテンションが下がってしまっているように感じられる。まぁそれでも凡百のロック・バンドよりは遙かに演奏のレベルが高く、見ていてついつい引き込まれてしまうのがザ・フーの凄いところなのだが...
 キースの死後に2代目ドラマーとなったのは元スモール・フェイセズのケニー・ジョーンズ。彼のプレイはとても正確でスピード感もあり決して悪いドラマーではないと思うのだが、残念なことにザ・フーには合わなかった。ドラマーが変わったことによってザ・フーをザ・フーたらしめていた野性味が消えてしまったのだ。ちょうどドラムがフィリー・ジョー・ジョーンズからジミー・コブに変わって地味になったマイルス・デイヴィス・クインテットのようなモンである。このあたりの違いはキース時代の「アット・リーズ」(1970)とケニー時代の「フーズ・ラスト」(1982)とを聴き比べれば一聴瞭然だが、とにかくザ・フーのあの唯一無比のサウンドはキースの手数の多いドラミングが生み出すうねるようなグルーヴがあって初めて成立する類のものだということを痛感させられる。だから不本意ではあるが “キース抜きでザ・フー・サウンドの復活はありえない” と諦めざるを得なかった。
 ところがそんな私の考えを木っ端微塵に打ち砕いたのが、キース・ムーンにドラムを教わったというザック・スターキー、何を隠そうあのリンゴ・スターの息子である。いくらリンゴの血を受け継いでいても、いくらキースの愛弟子だといっても、ザ・フーのドラマーの重責を果たすのは正直キツイんちゃうかと思っていたが、初めてザック入りザ・フーの演奏を聴いた時、まるで墓場からキースがよみがえってきたかのようなそのエモーショナルでダイナミックなプレイに圧倒された。今ではザック入りのザ・フーはどれもこれも大好きだが、中でも私が一番気に入っているのがこの「コンサート・フォー・ニューヨーク・シティ」である。
 これは9・11テロで殉職した消防士や警察官の遺族のために2001年10月20日にニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデンで行われたチャリティー・コンサートのライヴDVDで、ポール・マッカートニーの呼びかけでミック・ジャガー&キース・リチャード、エリック・クラプトン、デビッド・ボウイ、ビリー・ジョエル、ボンジョヴィといった錚々たる顔ぶれが集結したのだが、そんな中で圧倒的に素晴らしいライヴ・パフォーマンスで “全部持って行った” 感がある(←英語で steal the show というらしい...)のがザ・フーである。
 このコンサートで彼らが演奏したのは4曲。まずはキャッチーな「フー・アー・ユー」、背後からガンガンとプッシュしまくるザックの躍動感あふれるドラミングを得て生き返ったかのようなピートの豪快な風車奏法全開でMSGはコーフンのるつぼと化す(3分48秒)。マネージャーに “長年ザ・フーを見守ってきたがあんな凄いステージは初めてだ...” と言わしめたこの超絶パフォーマンスの立役者は間違いなくザックだろう。下に全曲貼り付けておいたので、ザックのスリリングなプレイに注目してご覧下さい。
 2曲目は「ババ・オライリー」、オーディエンスの大合唱が起こるところなんか見ていて熱いモノがこみあげてくるが、この曲でもザックのドライヴ感溢れるドラミングが音楽を前へ前へと押し進めていく様が圧巻だ。3曲目は「ビハインド・ブルー・アイズ」、曲の半ばでスロー・パートからテンポ・チェンジするところでマイクをブンブン回しているロジャーにピートが体当たりし、ロジャーが嬉しそうな表情でよろめくシーン(2分55秒)がたまらなく好きだ。
 ピートの We are honored to be here. (この舞台に立てて光栄だ)という言葉に続いてラスト曲はもうコレしかない「ウォント・ゲット・フールド・アゲイン」、バックのスクリーンには星条旗に挟まれたユニオンジャックが誇らしげに映し出されている。会場の盛り上がりは最高潮だ。キースの魂が乗り移ったかのように全身全霊でドラムを叩き続けるザック、あんまり画面に映らへんけど黙々とリード・ベースを弾き続けるジョン(←例のガイコツのジャンプ・スーツ着てたらもっと映ったかも... 笑)、そして出たッ!!! ピートとロジャーのシンクロナイズド風車(4分47秒)、まさにライヴの鬼、ザ・フー完全復活である。ステージ右脇のTVカメラを持ったスタッフが曲に合わせて大声で歌いながら撮影(5分38秒)してるのには大笑い(^.^) バックのスクリーンに映るのは自由の女神の向こうにそびえ立つツインタワーだ。ニクイなぁ、この演出。
 そしてシンセの長~い間奏で “くるぞくるぞ...” と緊張感を目一杯高めておいて一気に キタ━━━(゜∀゜)━━━!!! という感じで炸裂するザックのドラム連打にロジャーのシャウト... これこそまさにこのコンサートのハイライト! もうカッコ良すぎて言葉が出ない(≧▽≦)  客席のシェリル・クロウもノリノリだ(8分30秒)。とにかくロック・ファンでいてホンマに良かったなぁと思わせてくれる怒涛のエンディングで、コブシを突き上げて総立ちのオーディエンスの姿が全てを雄弁に物語っている。 “やったぜ!”という感じで肩を組むピートとロジャーの姿にはファンとして感無量のモノがあるが、二人ともとても60歳前のオッサンとは思えないカッコ良さだ。ただ、最後のロジャーの言葉 “We could never follow what you did.” の日本語字幕が “過ちを繰り返すなよ” という意味不明のアホバカ訳だったのには呆れてモノも言えない。何で人々のために頑張った人達の行いが “過ち” やねん! ここは “君たちの勇敢な行為は俺たちにはとてもマネのできないことさ” とでも訳さないとその後に湧き起った大歓声の説明が付かないだろう。「キッズ・アー・オールライト」の時にも書いたが、日本盤 DVD の字幕の酷さには目を覆いたくなる。よぉこんなんで金取るわ(>_<)
 理不尽なテロにより失意のどん底に突き落とされた人々に夢と希望を与えたザ・フーの力強いロックンロール、私はこの DVD を見て音楽の持つ底知れぬパワーを実感させられた。Long Live Rock!!!

The Who-Who Are You@Concert For New York City 1/4


The Who-Baba O'Riley@Concert For New York City 2/4


The Who-Behind Blue Eyes@Concert For New York City 3/4


THE WHO " Won't Get Fooled Again" Concert For NYC 10-20-2001
コメント (2)

The Who Sell Out

2011-06-14 | Rolling Stones / The Who
 今日はザ・フーの 3rd アルバム「ザ・フー・セル・アウト」である。 Reactionレーベルの活動停止もあって、このアルバムは彼らのマネージャーであるキット・ランバートとクリス・スタンプが設立した Track Record から、ジミヘンの「アー・ユー・エクスペリエンスト」に続く同レーベル第2弾として発売された。前2作はイギリスではモノラル盤のみのリリースだったが、このアルバムはモノラルとステレオの2種類でのリリースだ。
 ただ、この「ザ・フー・セル・アウト」の UK ステレオ・1stプレス盤は音がかなり悪いらしいので要注意。 Steve Hoffman Music Forums という海外マニアの情報交換サイトの “Who Sell Out --- best vinyl & CD versions” によると、このレコードはUK モノラル盤がベストだが、ステレオ盤に関して言えば、US Decca の1st プレスが一番良いとのこと。UK ステレオ盤では1st プレスよりも1970年に Back Track と題してオレンジ色のジャケットでリイシューされた 2nd プレスの方が音は良いらしい。ステレオ嫌いの私は最初からUKモノラル盤狙いなので問題なかったが、ただでさえ希少な盤なのにそういう事情もあってかビッドが集中し、結局£37.00で落札と相成った。盤もジャケットも EX コンディションのピカピカ盤だ(^.^)
 ピートによるとこの「ザ・フー・セル・アウト」はイギリスのロックンロール・シーンを形成した立役者とでも言うべき海賊ラジオ局(←民法ラジオ局がなくBBCの独占状態だったイギリスに向けて公海上に停泊した船からロックンロールをガンガン流した)へのトリビュートということで、曲間のブリッジにラジオ・ジングルを入れたり CM を入れたりすることによって、海賊ラジオ局の雰囲気を出したかったのだという。一言で言えば架空のラジオ局仕立てのコンセプト・アルバムで、中身の音楽の方でもジャケットでメンバーが宣伝している製品を扱った曲がいくつか含まれており、A②「ハインツ・ベイクト・ビーンズ」(ロジャーが浴槽で浸かってる豆の缶詰)やB②「メダック」(キースが顔に塗ってるクリーム)のようにもろにCMソングをやっている独立したトラックもあれば、A④「オドロノ(ピートが腋の下にしてる体臭防止スプレー)」のように歌詞の中に商品名を入れたり、A⑦のエンディングに「チャールズ・アトラス」(ジョンが宣伝してるボディー・ビル・コース)の短いCMを入れたりと、中々凝った作りになっている。
 面白かったのはビートルズの「サージェント・ペパーズ」を真似たのか、B面内周のインナーグルーヴに “Track Record, Track Record...” と延々繰り返す音溝が彫ってあったこと。私はこういうユーモアのセンスが大好きなので最後の最後でやってくれるわ!と喜んだものだが、CDでは何故かボートラのラスト曲「グロウ・ガール」のエンディング部分で20秒ほどコレが繰り返されている。とにかく “レコード上で広告スペースを売る” というコンセプトに則って自分のレコード会社の宣伝を入れるあたり、さすがはザ・フーである。
 個々の曲では何と言ってもA⑦「アイ・キャン・シー・フォー・マイルズ」(邦題:「恋のマジック・アイ」)に尽きる。ザ・フーに名曲名演数あれど、これほどキャッチーでありながらラウドでハードにロックンロールしている曲があるだろうか。ピートが “絶対に売れる!” と自信を持って発表したシングルだったが、英では10位、米でも9位(←それでもザ・フー唯一の全米トップ10入りシングルなんよね...)止まり。何でコレが1位にならへんねん!と怒りたくなるようなカッコ良いロックンロールだ。
 この曲はポールが「ヘルター・スケルター」を書くきっかけとなったことでも有名だが、初めてこの曲をCDのステレオ・ミックスで聴いた時はそれほどヘヴィーだとは感じなかった。不思議に思ってネットで色々調べてみたところ、Hypertext Who というサイトに the mono version makes the stereo sound like The Carpenters(モノ・ヴァージョンを聴いたらステレオ・ヴァージョンなんてカーペンターズに聞こえるぜ)という一文があり(笑)、早速 eBay で検索、取りあえず手に入れやすそうなシングル盤を狙うことにした。今時ザ・フーのシングルなんて誰も来ぇへんやろとタカをくくっていたら5人もビッドがあってビックリ(゜o゜) 何とか£6.75で逃げ切ったが、改めてザ・フー人気の高さを思い知らされた。
 その後入手したこのモノラル・アルバム・ヴァージョンもかなりヘヴィーだったが、UK シングル・ヴァージョンは更にジョンのベースをオーヴァーダブしたスーパー・ウルトラ・ド迫力なサウンドで、ミックスひとつでこうも印象が違うものかと驚かされた。地響きを立てて怒涛の勢いで押し寄せるジョンのベース、狂気さえ感じさせるキースのドラミングと、凄まじいまでの荒々しさを堪能できて大満足(^o^)丿 血湧き肉躍るとはまさにこのことだ。このシングル・ヴァージョンを聴いて「ヘルター・スケルター」の一件は大いに納得がいった。この曲の素晴らしさについてはいくら書いても足りないくらいだが、先に進まなくてはいけない。
 A①「アルメニア・シティ・イン・ザ・スカイ」はヴォーカルの電気処理といいテープの逆回転を多用したサウンドといい、ビートルズの「リヴォルヴァー」の影響が強く感じられるサイケなナンバー。ジョン・キーンというピートの友人の作ということだが、歌詞もドラッグでトリップしているような内容で、アルバムのオープニング・ナンバーとしてのインパクトは抜群だし、曲の前後に入れられた “Monday, Tuesday, Wednesday...♪” や “Wonderful Radio London~♪”(←実在した海賊ラジオ局)といったジングルもチープな雰囲気を醸し出していて面白い。
 ザ・フーというと荒々しいロック・バンドというイメージが先行しがちだが、彼らのアルバムには時々ハッとさせられるような美しいメロディーを持った曲が隠れている。このA③「メアリー・アン・ウィズ・ザ・シェイキー・ハンド」なんかその典型で、めちゃくちゃポップでメロディアス、爽やかさ横溢のフォーキーなナンバーだ。(←歌詞の内容は爽やかとは程遠い下ネタやけど...笑) この曲にはアルバムに収録された “アコースティック・ヴァージョン”(←shakyに引っ掛けてエンディングで音を震わせるサウンド・エフェクトが面白い)の他にもA⑦のUSシングルB面に採用された “エレクトリック・ヴァージョン”(←US盤ではタイトル表記が hands になってる)やアル・クーパーのハモンド・オルガンを大きくフィーチャーした “グルーヴィー・ヴァージョン”(←コレ結構好き!)があり、それぞれ味があって甲乙付け難い出来なので、アレコレ聴き比べて楽しむのもいいかもしれない。
 このアルバムは他にもピートが刻むギターのリズムが妙に耳に残るA④「オドロノ」、美しいコーラス・ハーモニーに息をのむA⑤「タトゥー」、ビーチ・ボーイズ風でありながらキースの爆裂ドラム一発でザ・フー色に染め上げたA⑥「アワ・ラヴ・ワズ」、ピートがササッと書いたようなさりげないポップ・ソングB①「アイ・キャンと・リーチ・ユー」、ピートの奏でるアコギの美メロに心奪われるB⑤「サンライズ」、イントロのコーラスからいきなり BB5節を炸裂させ後半では「スパークス」のリフまで登場するミニ・オペラ第2弾B⑥「ラエル」と、聴き所満載だ。中でもジョン作のB④「サイラス・スティンジー」は “どこかで聞いたことがあるような気がするのに中々思い出せない” 類のマイナー調のメロディーがめっちゃ気に入っている。
 ザ・フーのアルバムの中では異色とも言えるポップな内容のこのアルバム、 “ハードなザ・フーはちょっとしんどいな...” というカタギのポップス・ファンに超オススメの、ライトでポップ感覚溢れる楽しいザ・フー盤だ。

The WHO - I Can See For Miles (1968)


The Who - Armenia City in the Sky


{alt version} Mary Anne With The Shaky Hand ~ The Who (1967)


Silas Stingy
コメント (10)

A Quick One / The Who

2011-06-11 | Rolling Stones / The Who
 ザ・フーのデビュー・アルバム「マイ・ジェネレイション」はアメリカではDecca 、イギリスでは Decca 傘下の Brunswick レーベルから発売されたが、レコーディング等すべてが管理される状況に嫌気がさした彼らはプロデューサー、シェル・タルミーとの契約を破棄し、クリームのマネージャーであるロバート・スティグウッド(クラプトン関係のリイシュー盤でよく見かける赤べこ・マークのRSO は Robert Stigwood Organization の略ですね)が興したインディ・レーベル Reaction へと移籍した。
 この Reaction というレーベルは1966~67年のわずか2年弱という短命だったこともあってLPはわずか3枚しかリリースしていないのだが、その3枚というのがクリームの1st「フレッシュ・クリーム」、2nd「ディスラエリ・ギアーズ」そしてこのザ・フーの 2nd アルバム「ア・クイック・ワン」というのだから恐れ入る。ウエスト・コースト・ジャズ・ファンにとっての “タンパ” や “イントロ” と同様に、ブリティッシュ・ロックのオリジ盤マニアにとってはまさに垂涎モノの “幻のレーベル” なのであり、私なんかあの濃いブルーのセンター・レーベルを見ただけでコーフンしてしまう。
 マニア垂涎の希少レーベルだけあってこのアルバムのアナログ・オリジ盤落札競争は熾烈を極め、私は何度も競り負けた挙句、状態の良さそうな VG コンディションの盤を£23.50でゲット。 with just some light superficial surface marks (ちょっと表面的な擦れがあるだけ)という説明通りのキレイな盤で実際のプレイ・グレードはほぼNM 、「マイ・ジェネレイション」の時と同様に安く買えて大ラッキーである(^o^)丿 ザ・フーの初期盤3枚は EX や NM の盤を買おうとするとどうしても購入価格が1桁高くなってしまうので、VG 表記で状態の良さそうな盤が狙い目だ。
 1966年にリリースされたこの「ア・クイック・ワン」は有名なヒット曲が入っていないせいか世間一般の認知度は低く、バンドが新しい方向性を模索していた時期の過渡期的な作品ということもあってファンの間でもついつい見過ごされがちなアルバムなのだが、私はA①「ラン・ラン・ラン」がめちゃくちゃ好きなので、この1曲のためだけにでも買う価値があると信じている。この曲は疾走感溢れるストレートなロックンロールで、「マイ・ジェネ」に通じるようなアタック音の強さは天下一品! ジャカジャカジャ~ンとかき鳴らす感じのピートのギターは超カッコイイし、ビートリィなコーラス・ハーモニーも絶妙な味わいを醸し出しており、何でこの曲をシングル・カットしなかったのか不思議なくらいの名曲名演だ。特にロジャーの辛口ヴォーカルはどこかジョン・レノンを彷彿とさせるところがあって、ビートルズ・ファンなら一発で気に入るのではないか。「ラバー・ソウル」あたりに入っててもおかしくないようなスーパー・ウルトラ・キラー・チューンである。
 B③「ソー・サッド・アバウト・アス」はホリーズあたりが歌えばぴったりハマりそうなメロディアスなナンバーだが、「キッズ・アー・オールライト」の流れを汲むキャッチーなこの曲をキースのパワフルなドラミングで凡百のビート・ポップスとは激しく一線を画す作品に仕上げているところがザ・フーらしい。 “曲は甘く、演奏は辛く” という理想的なパターンだ。
 9分を超えるタイトル曲のB④「ア・クイック・ワン、ホワイル・ヒーズ・アウェイ」は、「ハー・マンズ・ゴーン」「クライング・タウン」「ウィー・ハヴ・ア・レメディ」「アイヴァー・ザ・エンジン・ドライバー」「スーン・ビー・ホーム」「ユー・アー・フォーギヴン」という6つの異なったパートから成る組曲風の作品で、ピートの言葉を借りると “ミニ・オペラ” ということになるのだが、これが後にロック・オペラ「トミー」へと発展していったことを考えればバンドにとっては非常に重要な1曲と言える。確かにビートルズも「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」でこの手法を用いているし、70年代のプログレではもう当たり前田のクラッカーだ。そういう意味では時代を先取りしていたとも言えるが、ピートがインタビューで語ったところによると、アルバムを作っていた時に最後の10分だけ空きが出来てしまい、プロデューサーに “他の曲と関連性のある10分間の大作を書いてぇな” と言われ “ロックは昔から2分50秒に決まっとるやん。そんなん無理や!”とピートが答えると “ほんなら2分50秒の曲を集めて10分の曲を作ったらエエがな” という経緯でこの曲が出来たという。こういう偶然が必然になってしまうところがスーパー・グループたる所以だろう。ただ、このスタジオ・ヴァージョンはやや大人し目なので、ストーンズを喰った「ロックンロール・サーカス」やジミヘンの機制を制した「モンタレー・ポップ・フェス」でのスリリングなライヴ演奏が超オススメだ。尚、タイトルの意味は “旦那の留守を狙った短い情事” ということらしく、そのせいか Decca は曲を一部差し替えて US盤のアルバム・タイトルを「ハッピー・ジャック」に変えて発売したという。
 このアルバムではザ・フーのメンバー全員がコンポーザーとしてオリジナル曲を提供しているのだが、コレは 1st アルバムの印税の大半をシェル・タルミーに搾取され、更にステージで楽器を壊しまくって超金欠状態だった彼らが “一人2曲ずつ曲を書いたら印税を前払いする” という音楽出版社との契約に飛びついたため(←ロジャーは1曲しか書いてへんけど...)と言われている。確かにお金が無くて大変だったというのは本当らしく、このレコーディングも予算不足でチェロが使えずB④のラスト・セクション「ユー・アー・フォーギヴン」のアタマの部分で本物のチェロの代わりに “チェロチェロチェロチェロ..♪”と口でコーラスしたという笑うに笑えないようなエピソードもある。
 ということでピート以外のメンバーが書いた曲ではキースのA③「アイ・ニード・ユー」がエエ感じ。日本の GS みたいなマイナー・メロディーといい、絶妙な味を出しているハープシコードのアレンジといい、キース・ムーンの隠れた才能を見る思いがする。後のライヴで定番になったジョンのA②「ボリス・ザ・スパイダー」(←邦題の「ボリスのくも野郎」にはワロタ...)も不気味な雰囲気が出ていて中々面白い1曲。A⑤「ヒート・ウエイヴ」はアルバム中唯一のカヴァー曲だが、このトラックだけ時計の針を逆戻りさせたような感じがして全体の流れの中で何となく浮いているように思える。この曲はリンロン・ヴァージョンが一番好きだ。
 「イエロー・サブマリン」のアニメを手掛けたイラストレーター、アラン・オルドリッジによるポップ・アートなジャケットがユニークなこのアルバム、ロック史に残る大名盤とは言えないかもしれないが、ザ・フーのファンが目を細めて聴き入る愛すべき1枚だと思う。

Run Run Run - The Who


The Who So Sad About Us


The Who - I Need You


A Quick One, The Who @ Monterey Pop