shiotch7 の 明日なき暴走 https://blog.goo.ne.jp/shiotch7?fm=rss shiotch7 2024-12-24T23:15:07+09:00 ja ⒸNTT DOCOMO, INC. All Rights Reserved. https://blogimg.goo.ne.jp/user_photo/f0/b10d4693c038fa7b3d30f41457aaaa87.jpg?a8484a shiotch7 の 明日なき暴走 https://blog.goo.ne.jp/shiotch7?fm=rss ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です ビートルズを中心に、昭和歌謡からジャズヴォーカルまで、大好きな音楽についてあれこれ書き綴った音楽日記です http://blogs.law.harvard.edu/tech/rss おかえりなさい / 中島みゆき https://blog.goo.ne.jp/shiotch7/e/2e912b9c7062697d7fd1af7dc8a2c4f8?fm=rss <![CDATA[  中島みゆきの「おかえりなさい」というレコードは、最高傑作に推す人も多い「親愛なる者へ」と女の情念の臨界点みたいな「生きていてもいいですか」に挟まれる形で1979年にリリースされた彼女初のセルフ・カヴァー・アルバムで、研ナオコやちあきなおみ、加藤登紀子、日吉ミミ、桜田淳子らに提供した楽曲を原作者である彼女自身の歌唱・解釈でレコーディングし直したものだ。彼女はこの後も「御色なおし」「回帰熱」といったセルフ・カヴァー・アルバムをリリースしているが、私としては最も昭和歌謡色が強いこの「おかえりなさい」が一番好きで、その親しみ易さのせいもあってか彼女の全アルバム中で最もターンテーブルに乗る回数が多いレコードになっている。
 このアルバムは彼女が他の歌手のために書いた歌を自分でどのように歌いこなすのか、又オリジナル・ヴァージョンとはアレンジをどう変えてくるのかetc、聴きどころが満載なのだが、楽曲アレンジに関しては「追いかけてヨコハマ」を除けば彼女のヴォーカルを引き立てて楽曲の魅力を引き出しオリジナルとの差別化に成功していると思うし、彼女のシンガーとしての引き出しの多さはもちろん、職業作家としての能力の高さも再認識させられる素晴らしい出来になっている。
中島みゆき “おかえりなさい”(CTアルバム)を11分台で聴く


 それともう一つ、私はこのアルバムのおかげで研ナオコという素晴らしい歌手の存在を知った。もちろんそれ以前から彼女のことは知ってはいたが、それはあくまでもお笑い芸人・色物としての彼女であって(→志村けんとのやり取りがめちゃくちゃ面白い “生卵・赤マムシ” のコントは何度観ても腹筋崩壊する笑撃の傑作だ!)スピ-カーに対峙して聴く歌手という認識は全くなかった。そんな私がこのアルバムを聴いて “へぇ~、あの研ナオコが中島みゆきの曲を歌ってんのか...” と興味を持ち、レンタルしてきて色々聴いてみたところ、これがもう “生卵・赤マムシ”と同一人物とは信じられないような昭和歌謡の王道を行くヴォーカルでビックリ(゜o゜)  それ以来私は彼女の大ファンになり、レコードもみゆき作品を中心に買い集めていった。
志村けん研ナオコ名作


 このアルバムではA①「あばよ」A③「サヨナラを伝えて」B⑤「強がりはよせヨ」と10曲中3曲がそんな研ナオコへの提供曲で占められているが、そのどれもがしみじみと心に沁みる名唱で、オリジナルの研ナオコ・ヴァージョン共々愛聴している。ちあきなおみに提供したB③「ルージュ」は、さすがちあきさんだけあって曲を自家薬籠中のものとして完璧な “ちあきワールド” を展開しているのに対し、みゆき姐さんは絶妙な湿り具合いの歌声と原作者ならではのシンプル・イズ・ベストな歌唱法でもって甲乙付け難いトラックに仕上げている。日吉ミミへの提供曲B②「世迷い言」はこのアルバム中で唯一彼女ではなく阿久悠が作詞を手掛けた曲なのだが、“よのなかばかなのよ~♪” という面白い回文(さかさことば)を見事に捌いてメロディーに乗せたみゆき姐さんはさすがの一言。わたしまけましたわ...
 このアルバムでは後藤次利(3曲)、福井峻(2曲)、鈴木茂(3曲)、戸塚修(2曲)の4人のアレンジャーが起用されて腕を競っており、福井は「わかれうた」、戸塚は「りばいばる」の編曲を担当していることもあってまさに “みゆき節の王道” といえる正統派アレンジなのに対し、後藤と鈴木はロック出身ということもあってどちらもユニークなアレンジになっている。鈴木が担当したA④「しあわせ芝居」なんか絶品だと思うし、B⑥「この空を飛べたら」のアウトロにフォルクローレ的なインストルメンタル・パートを追加することによって聴後感がオリジナルとはかなり違ってくるのも面白い。どうやら私の感性には鈴木アレンジがしっくりくるようだ。
 それに対して出来不出来の差が大きいのが後藤次利だ。A①「あばよ」ではすごくカッコいいアレンジでさすがやなぁ... と感心させられたが、B④「追いかけてヨコハマ」のふざけたアレンジは到底受け入れがたい。中国風のイントロは “横浜→中華街”という短絡的な発想なのか、そのバカバカしさに失笑を禁じ得ないが、それより何よりあのインベーダー・ゲームのような電子音の大量投下は一体何なのだ??? ふざけてんのか? ということで、このレコードで唯一気に入らないトラックがこの「追いかけてヨコハマ」なのだ。因みに後藤は次のアルバム「生きていてもいいですか」で全曲アレンジを担当することになるのだが、あのホラー(?)なアルバムは一応持ってはいるものの、ターンテーブルに乗った回数は彼女の全アルバム中、断トツで最下位に沈んでいる。どうやら後藤の音楽性とは相性が悪いようだ。とまぁこのように、オリジナル・ヴァージョンと聴き比べたり、4者4様のアレンジャーの個性を深掘りしたりと、様々な角度から楽しめるのがこの「おかえりなさい」というアルバムなのだ。
中島みゆき「おかえりなさい」提供のオリジナル曲編集
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J-Rock/Pop 2024-12-22T03:24:00+09:00 https://blog.goo.ne.jp/shiotch7/e/2e912b9c7062697d7fd1af7dc8a2c4f8
中島みゆき名曲選 70's~80's https://blog.goo.ne.jp/shiotch7/e/0d05c4cc09f999588a3d90f53ad8f572?fm=rss <![CDATA[  シングル曲だけでなくアルバム収録曲にも名曲が一杯あって、更にそんな名盤を次から次へと連発するのが私の考える “真に偉大なアーティスト” であり、その究極がビートルズなワケだが、私にとっては中島みゆきもそんなグレイトな存在だ。特に、80年代に入ってサウンド・プロダクションの面で試行錯誤を繰り返しながら迷走する、いわゆるひとつの “ご乱心の時代” 以前のアルバムは隠れ名曲の宝庫ともいえる傑作ばかりで、シングル曲だけで満足してアルバムを聴かないのは勿体ない。そういうワケで、今回は彼女の初期のアルバムの中から必殺の隠れ名曲をいくつかピックアップしてみた。

①流浪の詩
 彼女の2ndアルバム「みんな去ってしまった」はアメリカ南部のブルース/カントリー色の濃い内容で、ドリー・パートンや初期リンダ・ロンシュタット的な開放感溢れるそのサウンドは、後の「わかれうた」→「ひとり上手」→「誘惑」と続く哀愁歌謡路線とはまた違った彼女の一面が垣間見れて非常に興味深い。中でもこの「流浪の詩」は彼女がトラディショナル・フォーク・ソングの「Cotton Fields」をモチーフにして書いたというだけあって火の玉ストレートなカントリー・ロック調のアレンジが施されており、歌中で歌われている主人公の放浪感を実に上手く表現していると思う。中島みゆきのバックを初期イーグルスが務めているかのような錯覚を覚えるのは私だけかな? 尚、93年にリリースされたセルフ・カヴァー・アルバム「時代~Time goes around~」でリメイクされたヴァージョンでは気持ちの重心を下げたディープなみゆき節が楽しめるので、聴き比べてみるのも一興だ。
中島みゆき“みんな去(い)ってしまった”を約12分で聴く【7:09~】


②まつりばやし
 デビュー前の中島みゆきが吉田拓郎の追っかけをするほどの熱烈な“拓郎マニア”だったというのは有名な話だが、そのせいか彼女の作る詞、曲、そしてその歌い方の中に拓郎の影響が色濃く出ている作品がいくつかある。3rdアルバム「あ・り・が・と・う」に収録されているこの「まつりばやし」なんかもろに拓郎節全開で実に楽しい。譜割りを崩してひとつの音符に平気で3つも4つも文字を乗せ、歌でもあり語りでもあるようなその歌い方は全盛期の吉田拓郎が憑依したかのような徹底ぶりだが、拓郎っぽさ横溢でありながらもしっかりと中島みゆき色に染め上げているところが凄いと思った。
中島みゆき「まつりばやし」


③化粧
 彼女の4thアルバム「愛していると云ってくれ」はアルバムを聴いた時のインパクトというか衝撃度の凄さで言えば彼女の全作品中随一ではないか。何しろ1曲目の「元気ですか」では暗~い詩の朗読のようなネチこいモノローグが延々と続き、やっとそれが終わったと思ったら間髪を入れず “れぇ~ いこぉ~♪” と井戸の底から響いてくるかのような絶叫で2曲目が始まるのだからたまったものではない。その後「わかれうた」「海鳴り」と続いて何とか平常心を取り戻せそうかな思ったところにこのヘヴィーなブルース「化粧」で完全KOされてA面が終わるのだ。声を震わせながらの “バカだね~♪”3連発が聴く者の心に突き刺さり、クラプトンが乗り移ったかのようなギター・ソロに魂を揺さぶられる強烈無比な5分11秒だ。
中島みゆき “愛していると云ってくれ”を7分台で聴く【2:07~】


④タクシードライバー
 一昨日901さんからこの中島みゆき特集を楽しんでいただいているとのメールをもらったのだが、彼女に関する話の中でこの “「タクシードライバー」をラジオで聞いて良い歌を書くなぁと感心した...” と書いておられるのを読んで我が意を得たりと嬉しく思った。この曲は彼女の最高傑作に推す人も多い5thアルバム「親愛なる者へ」の中でも「狼になりたい」と並ぶ名曲中の名曲で、私もこの曲が大好き。“取扱い要注意” なフラれ女を苦労人ならではの大いなる包容力で受け止めるタクシードライバーの人物描写が絶妙で、車内の様子・空気感まで手に取るように伝える彼女のシンガーとしての表現力の高さに唸らされる名唱だ。。
中島みゆき「タクシードライバー」


⑤あわせ鏡
 彼女の8thアルバム「臨月」は井上陽水っぽい作風で新境地を開いた「あした天気になれ」や大ヒット・シングルの「ひとり上手」にばかり注目が集まっていたが、私はA③「あわせ鏡」がめちゃくちゃ好きだった。シングル盤特集の「あした天気になれ」のところにこのアルバムはアレンジャーの当たり外れが大きいと書いたが、この曲のアレンジを担当した松任谷正隆は実に良い仕事をしていて、彼女の持ち味を活かすアレンジでやさぐれた雰囲気を上手く演出している。この曲でも彼女はシンガーとしての実力(←残念なことに世間ではあまり言及されないが...)を如何なく発揮しており、彼女が歌う1人称 “あたい” が唯一無比のリアリティーで迫ってくる。
中島みゆき「あわせ鏡」


⑥砂の船
 この曲は9thアルバム「寒水魚」のB面ラス前にひっそりと収められていた佳曲で発表当時からあまり話題に上ることもなかったように記憶しているが、私は初めてこの曲を聴いた時から彼女が旋律に封じ込めたえも言われぬ哀愁がたまらなく好きで、“みんな何でこの曲の良さがわからんのやろ???” と不思議に思っていた。それから約20年経った2001年にジャズ・ピアニストの山中千尋がデビュー作の「Living Without Friday」でこの曲を取り上げたのを知って、この曲に目を付けてジャズ化するとは只者ではないなと思ったものだ。曲の髄を捉えて見事なピアノ・トリオ・ジャズに仕上げた山中千尋も凄いが、彼女にそれほどの演奏をさせるくらい強烈なインスピレーションを与えた中島みゆきはもっと凄いと思った。
中島みゆき “寒水魚”を8分で聴く【5:45~】

山中千尋 “Living Without Friday”より「Sand Ship」【10:27~】
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J-Rock/Pop 2024-12-15T23:26:00+09:00 https://blog.goo.ne.jp/shiotch7/e/0d05c4cc09f999588a3d90f53ad8f572
中島みゆきのシングル盤特集② https://blog.goo.ne.jp/shiotch7/e/7f1149696a07b1684c662186a730e355?fm=rss <![CDATA[
 私がリアルタイムでラジオから流れてくる中島みゆきの歌を聴いていた頃、世間では彼女のことを “ニューミュージックの歌姫” などと言ってそっち系にカテゴライズしていたが、当時の私にとって “ニュー” ミュージックの象徴はユーミンであり、中島みゆきの歌の中にそれとは真逆の “懐かしさ” すら感じさせる昭和歌謡的なエッセンスを見出していたこともあって、自分の感性と世評との隔たりがどうにも理解できなかった。あれから50年近い年月を経た今聴くと、古いとか新しいとかいった次元を超越し、中島みゆきの歌は時空を超えて永遠に聴き継がれていくのだということがよくわかる。今回はそんな彼女の80年代前半のヒット曲を集めてみた。

⑦ひとり上手(1980)
 「おもいで河」「りばいばる」「かなしみ笑い」といった一連の哀調シングルや、少し前に出たアルバム「生きていてもいいですか」で見られた過剰なまでの感情表現(←山崎ハコと並んで “根暗の極北” みたいな扱いをされてた...)への反動からか、9thシングルの「ひとり上手」は哀愁を感じさせながらもポップで聴きやすい私好みの作品になっており、めちゃくちゃハマって毎日毎日アホみたいに聴きまくっていた。とにかく歌詞と旋律の素晴らしさを極限まで引き出した彼女の歌い方が絶妙で、どうしてもソングライティングの方に話が行ってしまいがちな彼女の “シンガー” としての凄さを満天下に示した1曲であり、そこに非の打ちどころのない萩田光雄の器楽アレンジも相まって、彼女の全シングル中でもトップクラスの完成度を誇るキラー・チューンだ。
ひとり上手


⑧あした天気になれ(1981)
 邦楽の世界ではシングル・レコードというのはアルバムに先行してリリースされるのが普通で、彼女もこれまでずっとその慣例を守ってきたのだが、この「あした天気になれ」は珍しいことに既に出ているアルバム「臨月」からのシングル・カット。“です”“ます”調の歌詞とその歌詞をメロディーに乗せていく手法がまるで井上陽水が憑依したかのような面白さで、それまでの彼女になかったシャッフル・リズムを使った曲調も新境地という感じがして好きなのだが、ただ一つ残念なのは星勝のアホバカ・アレンジが彼女の良さを殺してしまっているところ。中でも初めて聴いた時から違和感があったボコーダーが最悪で、今の耳で聴いてもやっぱりダサく響く。おそらく当時一世を風靡していたYMOサウンドを意識したのかもしれないが、中島みゆきの歌にテクノ色は1,000%合わない。そもそもアレンジというのは例えるならフランス料理におけるソースのような存在で、素材(すなわち原曲)の旨味を最大限に引き出すこともあれば、素材の良さを殺してしまうこともありうる “諸刃の剣” みたいなものなのだが、この曲では残念ながら後者になってしまっている。このクソみたいなボコーダーを排した “ネイキッド” ヴァージョンがあったらエエのに...
あした天気になれ


⑨悪女(1981)
 アルバム「寒水魚」のリードシングルとしてリリースされたこの曲は、明るいメロディーとギター・アンサンブルが優しく響くポップで親しみ易いサウンドで、スプリングスティーンの「ハングリー・ハート」のようなほのぼのとした温かみを感じさせるピアノも心地良く響く。出だしの “マリコ” でガッ!と聴き手の心を掴むあたりはさすがだし、それより何よりこの頃の彼女の声は実に艶があって良かった。強がりと素直になれない女性の複雑な心の内を見事に表現した歌詞は見事という他ないし、そんな悲しい女の歌を明るく歌うところが “みゆき流”。長調で軽快なサウンドが逆に辛さを増長させているし、素直な心の声 “行かないで~♪” の歌い方も絶妙なアクセントになっている。意地を張ってるだけの心優しい女性の悲しい歌にあえて「悪女」というタイトルを付け、聴く前と聴いた後でタイトルの印象を逆転させる彼女のセンスにも脱帽だ。尚、アルバム「寒水魚」収録のヴァージョンは後藤次利アレンジのベースが効いた退廃的なサウンドでイメージがかなり違うが、私は船山基紀アレンジのシングル・ヴァージョンの方が好きだ。歌詞、メロディー、演奏、アレンジ、歌唱と、どこをとっても非の打ちどころの無い完璧なポップソングだと思う。
悪女


⑩誘惑(1982)
 この曲は彼女のオールナイトニッポンで “さしみ買った さしみ買った メシの続きを始めましょ~♪” という替え歌を聴いて以降、聴くたびにそのフレーズが頭に浮かんでしまってどうにも困っているのだが、曲自体はデビュー曲「アザミ嬢のララバイ」から延々と続いてきた昭和歌謡的哀愁路線の集大成と言っても過言ではない名曲中の名曲だ。風雲急を告げるようなイントロだけでもうつかみはOKという感じで、昭和歌謡の最良のエッセンスをこれでもかとばかりに詰め込んだメロディー展開に涙ちょちょぎれる。原曲の素晴らしさに磨きをかける船山基紀のアレンジも神ってるレベルだ。“あなた 鍵を置いて 私 髪を解いて~♪” の韻の踏み方はさすがという他ないし、“ガラスの靴を女は 隠して持っています 紙飛行機を男は 隠して持っています~♪” の対比の妙にも唸らされるが、私が一番感銘を受けたのは “悲しみをひとひら かじるごとに子供は 悲しいと言えない 大人に育つ~♪” という、凡百のポップソングとは激しく一線を画す名フレーズで、改めて作詞家としての彼女の真骨頂を見た気がした。
誘惑


⑪横恋慕(1982)
 二股をかけられた男の今カノに電話をかけるという展開は「愛していると云ってくれ」の冒頭に入っていた「元気ですか」以来だが、両者の雰囲気は全く異なっていて、ここでは敢えてアップテンポな明るい曲調で歌うことによって恋を失った喪失感を一層募らせ、諦めきれない切なく哀しい女心を表現しているところに彼女のストーリーテラーとしての匠の技を感じさせる。それにしても「悪女」「誘惑」そしてこの「横恋慕」と、この人一体どんな恋愛経験をしてきたのだろうと思ってしまうくらい失恋パターン(?)の引き出しが多い。船山基紀のアレンジの冴えも相変わらずだし、一見鏡に写った風に見せかけて、ポーカーフェイスを装った右側の表情と、どこか物憂げな眼差しを向ける左側の表情が微妙に違うという凝ったジャケットの演出にも唸ってしまう。「横恋慕」というタイトルも日本語マイスターの彼女ならではだ。
横恋慕


⑫あの娘(1983)
 サビでいろんな女性の名前を速射砲のように列挙していく歌詞(←今や絶滅危惧種といえるくらい見かけなくなった「子」で終わる女性名の連発が昭和世代の私の耳に心地良く響く...)が面白くて聴いていたら2番の歌詞が結構ヘヴィーでビックリ。“あの娘の名前を真似たなら 私を愛してくれますか... あの娘の口癖真似たなら 私を愛してくれますか... あの娘の化粧を真似たなら 私を愛してくれますか...” という If 3連発に続けて “あの娘をたとえば殺しても あなたは私を愛さない~♪” と Even if でストンと落とすところに彼女の天才を感じてしまう。キャッチーなメロディーにさりげなく “殺す” などという物騒な歌詞(←これが流行歌としてラジオから普通に流れていた昭和という時代のおおらかさが大好きだ...)を乗せて、テンポの良い軽妙洒脱なヒット曲に仕上げてしまうみゆき姐さんの鬼才ぶりが如何なく発揮された傑作だ。
あの娘
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昭和歌謡・シングル盤 2024-12-08T21:26:00+09:00 https://blog.goo.ne.jp/shiotch7/e/7f1149696a07b1684c662186a730e355
中島みゆきのシングル盤特集① https://blog.goo.ne.jp/shiotch7/e/cc7821c37045f01bcc9c816f5b7803b6?fm=rss <![CDATA[
 何を隠そう私は中島みゆきの大ファンである。ビートルズやクイーンのように四六時中聴いている... というワケではないが、時々無性に聴きたくなるアーティストの1人だ。つい最近も “みゆき熱” が再発したので、ここでも取り上げることにした。まずは彼女の原点とでも言うべき70年代後半のシングル群の中から特に気に入っている盤をピックアップ。すべてはここから始まった...

①アザミ嬢のララバイ(1975)
 中島みゆきのデビュー・シングル。洋楽邦楽を問わず、デビュー曲でこれだけのクオリティーを持った曲を他に挙げろと言われてもすぐには思い浮かばない... それほどの名曲名唱だ。この曲との出会いは松田優作の「探偵物語」で、「失踪者の影」というエピソードの冒頭でかかっているのを聞いて気に入り(←ラストでかかった「うぬぼれワルツ」もよかったなぁ...)それ以来ずっと愛聴している。彼女の声、歌い方、そして彼女の良さを最大限まで引き出した船山基紀の名アレンジと、どこをとっても文句のつけようのない完成度。“春は菜の花、秋には桔梗~♪” のラインがたまらなく好きだ。
アザミ嬢のララバイ


②時代(1975)
 中島みゆきの2nd シングルであり、彼女の代表曲の一つとして有名なこの曲にはこのオリジナル・シングル・ヴァージョンの他に、アルバム「私の声が聞こえますか」収録のシンプルなアコースティック・ヴァージョン、93年にアレンジを変えて録り直したセルフリメイク・ヴァージョン、2010~11年のツアーから収録したライヴ・ヴァージョンと、私の手持ちだけでも4種類の音源が存在し、そのどれもが個性溢れる名演なのだから参ってしまう。“そんな時代もあったねと いつか話せる日が来るわ~♪” と優しく包み込むように歌う彼女の歌声に元気をもらった人間は私だけではないはずだ。
時代 -ライヴ2010~11- (東京国際フォーラムAより)


③夜風の中から(1976)
 この4thシングルは超有名な「時代」と「わかれうた」の間に埋没した地味な存在だが、私はこの曲が大好き。初めて聴いたのはアルバム「みんな去ってしまった」にひっそりと収められていた素朴そのもののヴァージョン(←スプリングスティーンの「ネブラスカ」みたいな感じ)だったのだが、その後聴いたシングル・ヴァージョンでは歌い方やアレンジを変えて “やさぐれ度” が大幅にアップ。“みゆき節” 全開で迫る彼女の表現力の幅の広さに感心させられたものだった。女性歌手が男性目線で歌う場合の一人称は “ぼく” になることが多いが、この曲の “おいら” という言葉の選択が与えるインパクトは強烈で、ストーリーテラーとしての彼女の凄さを再認識させられた。
夜風の中から


④わかれうた(1977)
 彼女の5枚目のシングルで、「中島みゆき」という名前が一般大衆にまで認知されるきっかけとなった大ヒット曲であり、個人的には邦楽史上で五指に入る名曲中の名曲。“途に倒れてだれかの名を 呼び続けたことがありますか~♪” という導入部に “そんな奴おらんやろ...” とツッコミを入れながら聴き進むうちにいつの間にか “みゆきワールド” に引き込まれ、“恋の終わりはいつもいつも 立ち去る者だけが美しい~♪” ってめっちゃクールな表現やん!などと感心しながら脳内リフレインが止まらなくなり、気が付けば歌詞を一緒に口ずさんでいた... というのが47年前の私だった。後ろをついてくる “別れ” を北欧の民謡を想わせる翳りのあるメロディーと2拍子のリズムで上手く表現しているところもさすがという他ない。それより何より、20代前半でこの歌を書いたという彼女の天賦の才が何よりも衝撃的だ。
わかれうた


⑤おもいで河(1978)
 彼女の6枚目のシングルで、ロシア民謡を想わせるイントロのマンドリンのトレモロから哀愁舞い散るマイナー・メロディー全開で迫ってくる “泣かせ” の名曲。私はよく “心の琴線に触れる” という表現を使うが、この曲を聴くたびにその “琴線” が彼女の歌声に共鳴してビンビン震えまくる。この「おもいで河」は「わかれうた」と「ひとり上手」という大ヒット曲に挟まれてその陰に隠れてしまった感があるが、哀調曲好きにはたまらない名曲名演だ。私は一切お酒を嗜まないが、“飲めば飲むほどに想い出は深くなる... 忘れきれないこの想い深くなる~♪” のラインを聴いて、お酒を飲む人の気持ちが何となくわかる気がした。
おもいで河


⑥りばいばる(1979)
 この曲が出た1979年といえば私は高校2年生でビートルズを中心にゼップとパープル、そしてもちろんクイーン、キッス、エアロスミスとバリバリのハードロック少年だったのだが、そんな私が秘かに楽しみにしていたのが年に1枚のペースで秋口にリリースされるみゆき姐さんのシングルだった。この「りばいばる」は過去3作よりもスロー・テンポだったこともあって最初聴いた時はちょっと地味かな... と思ったが、何回も繰り返し聴くうちに初期ジャニス・ジョプリンを想わせる彼女の “ブルース魂” に圧倒され、中島みゆきってやっぱり凄いなぁ... と完全KOされたのを覚えている。特に “やっと忘れた歌が もう一度はやる~♪” のリフレイン・パートが心に沁みるが、それにしてもこんな粋なフレーズ、一体どうやったら思いつくのか凡人の私にはまったく想像もつかない。
りばいばる
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昭和歌謡・シングル盤 2024-12-01T21:34:00+09:00 https://blog.goo.ne.jp/shiotch7/e/cc7821c37045f01bcc9c816f5b7803b6
Queatles And Been ② https://blog.goo.ne.jp/shiotch7/e/67883fd56596113332a7f8be18f7dde7?fm=rss <![CDATA[
 このプロジェクトの一番の面白さは選曲の組み合わせの妙にあると思うのだが、「Yesterday」を知る人ぞ知る隠れ名曲「'39」風アレンジで聴かせるという発想が素晴らしい。同じアコースティック曲というのもあるが、結果的に「Yesterday」のテンポがアップしたことにより、この稀代のバラッド名曲を「I've Just Seen A Face」的なノリで楽しめるという実に新鮮な体験をすることができた。これはちょっとクセになりますぜ...
Yesterday - Queen play The Beatles


 「Now I'm Here」が憑依した「Day Tripper」も痛快そのもの。どちらも一度聴いたら忘れられないようなギター・リフが売り物のロックンロール・ナンバーだが、ここではそれらが見事に合体・融合させて強烈なグルーヴを生み出している。どちらもシングル・ヒットを量産しているモンスター級のバンドだけにコード進行とかも自然とクラシックというか王道的なものになって共通ポイントが多くあるのかもしれない... などという分析が野暮に聞こえるくらい縦横無尽に暴れ回るブライアン・メイ風ギターが超カッコイイヽ(^o^)丿
Day Tripper - Queen play The Beatles


 「When I'm Sixty-Four」は同じヴォードヴィル・テイストの「Bring Back That Leroy Brown」と組み合わせるというアイデアがまず秀逸。クイーンのアルバムの中でも最も多彩な曲が入っている「A Night at the Opera」だが、このマッシュアップを聴いているとあのアルバムこそまさにクイーンにとっての「Sgt. Pepper's」だったんだなぁという思いを強くさせられた。
When I'm Sixty-Four - Queen play The Beatles


 「Let It Be」も実によく出来ている。「Somebody To Love」のピアノのイントロに導かれて「Let It Be」が始まるのだが、両曲のゴスペルとしての本質を見抜いた見事な組み合わせだ。さすがは音楽プロデューサーである。旋律は完全に「Let It Be」なのにクイーンそっくりの分厚いコーラス・ワークや唯一無比の音色を誇るブライアン・メイ風ギター(笑)がここぞとばかりに降り注いでクイーンのフレイバーをまき散らすところが笑えます。最後のピアノの一音も「Somebody To Love」に忠実にパロッてあって、作成者のマニアックな拘りぶりにニヤリとさせられること間違いなし。
Let It Be - Queen play The Beatles


 「My Best Friend」のイントロからごくごく自然に「Penny Lane」が始まるのにも参った。この曲のキモであるピッコロ・トランペットもブライアン・メイ風のギターで違和感なく代用できてしまうのにビックリ。「Strawberry Fields Forever」のメロトロンと同様に、レッド・スペシャルは、とりあえず “あの音色” さえあればクイーン風になってしまう... という万能楽器的な使われ方をしているのが面白い。
Penny Lane - Queen play The Beatles (...and nobody used AI)


 “シュガー、プラム、フェアリー” を練り込んだイントロのアカペラ・コーラス(←芸が細かいというか、マニアックというか、この人のパロディー・センス凄いなぁ...)で始まる「A Day In The Life」は同じく長尺の大作「Bohemian Rhapsody」との組み合わせなのだが、「Bohemian Rhapsody」のピアノの伴奏をバックに歌われる “I read the news today, oh boy〜♪” の何と自然なことよ! “Woke up, fell out of bed〜♪” で始まる中盤のドリーム・パートも「Bohemian Rhapsody」の転調と見事にシンクロさせてあり、作成者の音楽的センスに脱帽するしかない。いやぁ、これはホンマに凄いですわ。
A day in the life - Queen play The Beatles


とまぁこのようにビートルズ・ファンとしてもクイーン・ファンとしても大いに楽しめる笑劇のケッ作。カヴァーでは原曲に対する愛情とリスペクト、そしてユーモアのセンスが如何に大事かを教えてくれる最高のお手本だ。ただひとつ難を言えば、プロジェクト名の “Queatles And Been” の “And Been” って要らんやろ... 私はこれこそ “蛇足” 以外の何物でもないと思うのだが... ]]>
Beatles Tribute 2024-11-24T22:24:00+09:00 https://blog.goo.ne.jp/shiotch7/e/67883fd56596113332a7f8be18f7dde7
Queatles And Been ① https://blog.goo.ne.jp/shiotch7/e/ad90d113971affce98d80b6d38117250?fm=rss <![CDATA[
 YouTubeで面白いものを見つけた。アルバム「Please Please Me」のジャケットのジョン・ポール・ジョージ・リンゴの顔の部分にクイーンのメンバーの顔を貼り付けただけのジャケ写(←切り貼りが丸わかりのやっつけ仕事www)が目を引いたので説明を読んでみると What if Queen had recorded The Beatles' hits in their own style?(もしもクイーンが彼らの演奏スタイルでビートルズのヒット曲をレコーディングしていたとしたら...)と書いてある。要するによくあるパロディー・カヴァーなのだが、それが私の大好きな2大バンドのマッシュアップとくればこれは聴かずにはいられない。
 早速「Revolution」を聴いてみたのだが、これがもうムチャクチャ面白い! 「Tie Your Mother Down」のイントロのギター・リフからスタートして、何の違和感も感じさせずに「Revolution」へと移行するところが痛快そのもの。どちらの曲もこれまで数百回、いやもしかすると数千回(?)聴いてきたくらいの愛聴曲だが、この2曲がこれほど合うとは思わなんだ。ミドル部分にさりげなく「Body Language」のベース・リフのフレーズをさりげなくブッ込んでくるあたりも芸が細かい。
Revolution - Queen play The Beatles


 これは一体どこのどんなグループがやってるんやろう?と思ってさらに説明を読み進めると、何とグループではなくファビオ・ダンドレアというイタリア人がほとんど一人で作り上げたというからまたまたビックリ(゜o゜)  マルチ楽器奏者で歌手で音楽プロデューサーという多才な人で、何よりもクイーンとビートルズの大ファンだという。そんな人が自分のスタジオで、ほぼすべての楽器演奏とプログラミング、歌入れ、更にミキシングまで行ってこれを完成させたというのだ。それと、クイーンの初期アルバムのジャケットに No Synthesizers(シンセサイザーは使っていません)と書かれていたのは有名な話だが、この Queatles の説明文に No one used A.I. on this!(A.Iは使っていません!)と書いてあるのが今という時代を反映していて面白い。
 「Killer Queen」風のピアノに乗って歌われる「Michelle」もツボを押さえたアレンジがキラリと光るカヴァーだ。全編で大きくフィーチャーされているブライアン・メイ風ギターはレッド・スペシャルに瓜二つの音色だけでなく、弾き方もブライアンそっくりで、“これ本人が弾いてます...” と言われたら信じてしまいそうなくらいの完成度の高さだ。「Rubber Soul」パロジャケのブライアン・メイのマッシュルーム・カットが似合わなさすぎてジワる...(笑)
Michelle - -Queen play The Beatles


 「Another One Bites The Dust」のリズムに乗って歌われる「Come Together」は “これしかない!” というくらい相性抜群の組み合わせだ。ブライアンの高速ギター・カッティングやロジャーの重たいドラミング、そしてジョン・ディーコンの粘っこいベース・ラインなど、クイーン風の演奏を忠実に再現しているところもポイントが高い。う~ん、面白すぎるwww
Come together - Queen play The Beatles


 「Ob-La-Di, Ob-La-Da」はアレンジの完成度といい、ドラムの音録りといい、エコーのかけ方といい、シンセサイザーの使い方といい、「A Kind Of Magic」とのマッシュアップ作品として非常によく出来ており、作者の音楽的センスと技量、さらに両バンドへの深〜い愛情を感じさせる素晴らしい出来映えだ。パロディー作品としての完成度としてはこの作品中でも三指に入る大傑作ではないかと思っている。クイーンはあまり知らないというビートルズ・ファンはまず「A Kind Of Magic」の原曲を聴いてからこれを聴くと面白さが倍増すること請け合いだ。
Ob-la-di ob-la-da - Queen play The Beatles


 「Strawberry Fields Forever」も上記の「Ob-La-Di, Ob-La-Da」に比肩する大傑作だ。ビートルズが原曲で用いたメロトロンをレッド・スペシャルの音色で代用するという発想が何よりも素晴らしいし、バックに流れる「The Show Must Go On」のシンセが「Strawberry Fields Forever」と見事に調和しているのも凄い。この人、マジで天才やわ。中盤で「I Want To Break Free」がちょい顔をのぞかせるところにも意表を突かれた。
Strawberry fields for ever - Queen play The Beatles (feat. Carlo Chirio on bass)


 「Eleanor Rigby」の元ネタは「Flick of the Wrist」だが(←ロジャーそっくりの爆雷ドラミングにクッソワロタ...)、有名なシングル曲ではないので熱心なクイーン・ファン以外にとってはパロディーとしての面白さはイマイチ伝わらないかもしれない。しかし「Revolver」のアルバム・ジャケットをパロったカバー・デザインのインパクトは絶大で、今回のジャケット・マッシュアップの中では一番の出来ではないかと思う。
Eleanor Rigby - - Queen play The Beatles
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Beatles Tribute 2024-11-17T21:38:00+09:00 https://blog.goo.ne.jp/shiotch7/e/ad90d113971affce98d80b6d38117250
901さんとの秋会 '24 ② https://blog.goo.ne.jp/shiotch7/e/45ef526066c901ee3df4eea760ef3db9?fm=rss <![CDATA[
901さん:じゃあ次はエヴァンスの「Sunday」いきましょか。今日は日本盤、オルフェウム盤、ABC盤の3種類持って来ましてん。ABC盤だけかなり音作りの傾向が違うのが面白いですよ。ところでShiotchさんは「Waltz For Debby」とセットになったフォンタナの2枚組はもう買わはったん?
私:いえ、待っても待っても全然出てけぇへんので、代わりに「Waltz For Debby」の日本初版を買いました。
901さん:えっ、それSRシリーズのヤツやん! めっちゃ高いねんで。いくらで買わはったん?
私:16,000円やったかな。ヤフオクのクーポン使うて安ぅ買えましたわ。
901さん:SRシリーズは音もめちゃくちゃエエし、人気があって中々出てけぇへんのよ。次の「Waltz For Debby」特集が楽しみやね。
私:僕もです。凄いことになりそうですね... じゃあ「Sunday」に戻りましょうか。
901さん:まず日本盤からいきましょう。曲は「Gloria's Step」で。
私:普通にエエですね。
901さん:でも次のABC盤は明らかに音作りが違うんですよ。【♪~】どうですか?
私:おぉ、これはかなり違いますね。こっちの方が音圧が高いし、リズムがしっかりしてます。僕はこっちの方が断然好きですわ。
901さん:聴きやすいよね。ラファロやモチアンがクリアーに聞こえる。僕も「Sunday」はこの盤で聴くことが多いですわ。どっかのブログでこのABC盤を絶賛してたから買うたんやけど、ホンマにエエ音してるね。
私:音は圧倒的にこっちでしょ! ジャケットはクソダサいけど...(笑)
901さん:このレコードはビニールがエエんやろね。何ていうか、ノイズが入りにくい感じ。ブログに書かはった人のおかげやわ。
私:その人、まずこれを買わはったっていうのが凄いですよ。ジャケットも違うし、普通なら絶対にスルーしますもん。
901さん:じゃあ最後はオルフェウム盤で。【♪~】これもさっきのABC盤に比べると音圧が低いね。でもこじんまりした感じで聴きやすくて悪くはないよね。
私:同感です。
901さん:じゃあ次はCDを聴かせてもらえますか?
私:いいですよ。僕のは「Compete Recordings」っていうヤツで、演奏順に入ってるんです。
901さん:エエ音してるねぇ。でもこれは別テイクやね。シンバルが違うもんね。
私:ホンマや。失礼しました。
901さん:この音ならもうCDで十分って感じもするね(笑)
私:そう言っちゃうと身も蓋もないですけど、エヴァンス・トリオの演奏はCDの特性と合うんでしょうね。で、次はどうしますか?
901さん:Shiotchさんとこのオーディオで聴かせてほしい高音質盤を何枚か持ってきたんやけど、聴かしてもらえる?。
私:もちろんです。なんぼでもどーぞ。
901さん:嬉しいなぁ... じゃあまずスリー・ブラインド・マイスの山本剛「ミスティ」からA②「Blues」を。
私:それ、僕はCDでしか持ってないです。【♪~】これは凄い! ピアノが躍動してますね。
901さん:エエ音してるね。ピアノの高い音がものすごくクリアー。ジャズ喫茶のオーディオ・チェック、この曲でよぉやってはりますわ。
私:なるほど、何かわかる気がします。
901さん:エエ音してるなぁ... 前からShiotchさんとこで聴かしてほしいと思うてましてん、このレコード。TBMがオリジナルなんやけど、これは再発のトリオ盤。オリジナルは聞いたことがないけれど、もうトリオ盤で十分やね。
私:突き抜けるようなクリアネスがハンパないですね。
901さん:じゃあ次はエリントンで。僕はエリントンってあんまり聴かへんのやけど、このエリントンのピアノはエエ音しとるんですよ。
私:エリントンらしいダイナミックな音がバッチリ入ってますね。
901さん:これ、ヤフオクで550円。みんな知らんのやろね。
私:まぁエリントンって名前だけは有名やけど、あんまり人気無いですもんね。
901さん:次はシェリー・マンの「2 3 4」。エディー・コスタのヴァイブの音が凄いんですよ。
私:コレは有名ですね。僕が持ってるのは確かモノラルやったはず... これですわ。
901さん:じゃあ聴き比べてみましょうか。シェリー・マンっていう人、タメがめちゃくちゃ上手いんよね。速すぎず遅すぎずで。このレコードはコールマン・ホーキンスが入ってるトラックはあんまり聴かへんのやけど、これはよぉ聴きますねん。
私:僕も全く同じです。この「The Sicks of Us」ばかり聴いてしまいます。じゃあ次はモノラルで。
901さん:ベースはこっちが凄いね。全然感じちゃうなぁ。
私:全然ちゃいますなぁ。
901さん:モノの方が凄いなぁ。聴きやすいよね。聴き慣れたステレオはシェリー・マンが左側からくるんで、モノがとっても新鮮に聞こえます。イメージ変わったなぁ... まさか Shiotchさんにインパルス聴かしてもらうとは思わへんだわ。
私:ハハハ、確かに。基本的にインパルス大嫌いですもんね。持ってるのはこれと「アルフィー」と、あと2、3枚...
901さん:じゃあ次もドラムで「The Ultimate Elvin Jones」。僕このレコード好きですねん。もちろんヴァン・ゲルダーです。A③「Ascendant」を。このエルヴィンも中々...
私:エルヴィン上手いですなぁ。
901さん:めちゃくちゃ上手いで! 両手両足どないして叩いてるんかと思うわ。60年前やで、これ。僕はコルトレーンとこでやってるよりもこんなエルヴィンが好きですわ。解放されてる感じやね。カッコいいでしょ、エルヴィン。
私:カッコエエですね、ホンマに。
901さん:次はマントヴァーニーの「Release Me」。ここのシステムで弦のキレイさを聴かせてもらおうと思って。ジャズちゃうから雰囲気ガラッと変わるけどね。【♪~】うわぁ、エエなぁ。ジャズばっかり聴いてたら疲れるでしょ。そんな時に聴くんですよ。
私:なるほど。ウチのシステムでこういう音楽が鳴るのは初めてです。いつもロックンロールばっかりやから、スピーカーもビックリしとるやろうなぁ(笑)
901さん:すごいリッチな気分。イーベイでマントヴァーニー6枚ほどまとめて買いましてん。僕もShiotchさんもジャズだけやのうて色んなジャンル聴きますやろ? せやから長続きするんやと思うわ。
私:確かに。
901さん:人数で言うたらジャズのビッグバンドなんかよりも遥かに多い人らが一斉に音を出すんやから凄いよね。じゃあ最後よろしい?
私:もちろん。
901さん:MJQの「European Concert」から「Django」。コニー・ケイが入ってくる瞬間が最高にカッコエエんですよ。
私:これはシビレますね。
901さん:「Last Concert」なんかよりも遥かに緊張感あるね。アメリカ録音でこんなにキレイな音でコニー・ケイが録音されてるの無いですよ。
私:確かにそうですね。
901さん:それと、各ソロが終わっても誰も拍手せぇへんのよね。で、曲が終わったら万雷の拍手... みんなクラシックと同じ感覚で聴いてるんやろね。
私:ホンマにクラシックの演奏会みたいや。
901さん:次はモノラル盤で聴きましょか。モノは雰囲気がちょっとちゃうんですよね。
私:おぉ、ロンドン盤ですやん。USオリジナルよりこっちの方が合うんやないですかね。【♪~】これは強烈!
901さん:「2 3 4」もモノと聴き比べできたし、今日はスゴイのいっぱい聴かせてもらって十分堪能しましたわ。 ]]>
Jazz 2024-11-14T20:07:00+09:00 https://blog.goo.ne.jp/shiotch7/e/45ef526066c901ee3df4eea760ef3db9
901さんとの秋会 '24 ① https://blog.goo.ne.jp/shiotch7/e/5ed8d90a91cfa9c9c2f1802df88ccb23?fm=rss <![CDATA[  901さんを迎えてレコードを聴きまくるオフ会はこの半年で早くも3回目。今回のお題は “スタンダード曲「When You're Smiling」聴き比べ” と “ビル・エヴァンスの「Sunday at the Village Vanguard」聴き比べ” だ。

901さん:じゃあまず「When You're Smiling」からいきましょか? 数えてみたらあんまりなかったですわ。モダン・ジャズの人はあんまり演ってへんね。僕の1枚目はこれで。
私:おぉ、デューク・ジョーダンの「As Time Goes By」ですか。
901さん:これ、何を血迷うたんか、歌うてますねんで... この曲だけね。それと、同じ日にもう1枚録音した「Time On My Hands」っていうアルバムがあるんやけど、そこでもこの曲を歌うてますねん。
私:へぇ~、何でまた?
901さん:さぁ... 多分歌いたかったんやろね(笑)
私:スティープルチェイス・レーベルですね。
901さん:僕が買うたヤツはオランダ盤なんですよ、デンマーク盤やのうて。珍しいでしょ。じゃあ次Shiotchさん。
私:僕は王道中の王道でビリーとレスター。テディー・ウィルソンのフィリップス7インチで。
901さん:あっ、それ僕と被ってる。でも僕のはコロムビアの10インチなんで、聴き比べやりましょう。
私:わかりました。
901さん:僕、この演奏は冒頭のベニー・モートンの茫洋としたトランペット・ソロが効いてると思うんですよ。ベタ吹きっていうか... ただテーマを吹いてるだけなんやけど、だからこそ後に出てくるレスターの神業ソロがひき立つんよね。
私:なるほど。
901さん:この曲の別テイク入りの「Billie Holiday Vol. 3」っていう国内盤があって、その解説の中で大橋巨泉が “モートンのこのソロだけは好きになれない” って書いてるんやけど、僕の考えはそれとは真逆でね。これがあるからエエと思うんですよ。
私:捉え方次第で180°変わるから面白いですよね、音楽の感想って。
901さん:Shiotchさん、笠智衆って役者知ってはる?
私:もちろん知ってますよ。
901さん:あの人、セリフが棒読みなんやけど、監督の小津安二郎はそれでも敢えて使い続けたんよ。周りはみんな錚々たる顔ぶれの役者ばっかりやったから余計に大根役者っぷりが際立ってて、まさにここでのモートンみたいな存在やったと思いますわ。うん、ベニー・モートンはジャズ界の笠智衆やね。
私:ハハハ、めっちゃオモロイたとえですね。そんなこと言う人、他にいてませんで...(笑) じゃあ今度はコロムビアの10インチを。
901さん: 【♪~】やっぱりちょっと違うねぇ...
私:欧フィリップスと米コロムビアの違いなのか、45回転盤と33回転盤の違いなのかはわからんですけど... でもどっちの音も魅力的ですね。
901さん:それにしてもレスターのこのソロは天才のワザやね。
私:何百回と聴いてるはずなのに、聴くたびに新たな感動があります。空前にして絶後... ジャズ史上最強ですよ、このソロは。じゃあ次はホリデイへのトリビュートで...
901さん:ひょっとしてルビー・ブラフ?
私:当たりです!
901さん:いやぁ、僕もブラフ持ってこようと思ったんやけどね... 12インチのヤツ。でも多分Shiotchさんが選ばはるやろなぁと思うてやめたんですわ。
私:僕の好み、完全に読まれてますね(笑) レスターのソロをサックス・セクションがユニゾンで吹く所がめっちゃ好きなんですよ。
901さん:わかるわぁ... その気持ち。ルビー・ブラフのレコードやのにサックスに耳が行ってしまうよね。それにしてもこのレコードが吹き込まれたのはちょうど1955年頃やったと思うけど、20年近く前のソロを再現するって凄いことですよ。デイヴ・ペルの「Prez Conference」とかもそうやけど。
私:リー・コニッツもやってますよね。
901さん:えっ、何でわかるの? 次それ出そうと思ってたんよ。何か読まれとるなぁ...(笑)
私:それはお互い様です(笑)
901さん:それにしてもこの「Tranquility」っていうアルバム、コニッツらしゅうない曲ばっかりやってるね。
私:確かに。緩い曲が多いですよね、コニッツにしては。このアルバムって何かかったるいイメージです。僕が聴くのはこの曲だけですよ。
901さん:僕も同じ。ビリ・バウアーとユニゾンでやってるところがエエんよね。
私:じゃあ僕はアルト繋がりでイントロのペッパーを。
901さん:おぉ、やっぱりきましたか。それにしてもキレイな盤やなぁ... 100万円でも買う人いてますで。
私:それは言い過ぎです(笑)
901さん:ホンマにエエ音で鳴るなぁ... じゃあ最後はビル・パーキンス。これちょっとアレンジ変わってるんやけどね。あれ? これもB面ラストか... この曲って最後に置かれること多いね。
私:確かに... 偶然の一致にしてはBラス率高いですね。何かあるんかなぁ... アレンジはレニー・ニーハウスですか... 何か “これぞウエスト・コースト・ジャズ!” っていう感じのアレンジですね。
901さん:せやね。
私:じゃあ僕はシナトラで。この曲はコロムビア時代とキャピトル時代で2回レコーディングしてるんですけど、僕は若さと勢いで突っ走るコロムビア時代の方が好きなんです。
901さん:実は僕、シナトラは1枚も持ってないんですよ。
私:何となくわかりますよ、それ。シナトラって、僕みたいに何枚も持ってるか、901さんみたいに全く縁がないかの両極端に分かれるような気がします。その中間ってあんまりないんとちゃいますか?
901さん:僕らがジャズを聴き始めた頃は周りが尖ってる人らばっかりで、“シナトラなんかジャズちゃうで。あんなエスタブリッシュメントの象徴みたいなヤツ聴くなんて恥ずかしいわ。コルトレーン聴かなあかんで!” みたいな雰囲気やったんです。
私:ハハハ、コルトレーンとかシェップとか、僕からしたら逆に何が悲しゅうてあんな気持ち悪い演奏を聴かなあかんねんと思いますわ。マゾじゃあるまいし...(笑)
901さん:あの頃そんな風に時代の流れでジャズ聴いてた人らは今どうしてるんやろね。
私:話をシナトラに戻すと、バラード系は暑苦しくてハッキリ言って聴く気になれへんのですけど、軽快にスイングするアッパーな曲はさすがという感じで大好きなんです。  (つづく) ]]>
Jazz 2024-11-10T04:55:00+09:00 https://blog.goo.ne.jp/shiotch7/e/5ed8d90a91cfa9c9c2f1802df88ccb23
「原色のスタークラブ」/ The Beatles https://blog.goo.ne.jp/shiotch7/e/7b7cdb9ef00ca5f30c1fbc94b0ba9b76?fm=rss <![CDATA[
 いつもビートルズ関連のブートレッグを買っている福武多聞堂から来たメールマガジンを見ていて“XAVELレーベル監修のオリジナル・ディミックス&リマスター・シリーズ” という項目が目に留まった。面白そうなのでクリックしてみると、以前このブログで取り上げた武道館ライヴの「聖域番外地」や映画「レット・イット・ビー」の2024ニュー・マスター・ブルーレイ盤などが載っていたのだが、その中で私の興味を引いたのがこの「原色のスタークラブ」だった。
 早速商品説明を見てみると、“ハンブルグ時代の初期ビートルズの集大成として有名なスタークラブでのライヴが、これまで出回ってきたいかなる音源とも一線を画す強烈なサウンドで登場! 大好評の武道館ライヴ『Please Don’t Go Home “聖域番外地”』に続く、XAVELレーベル・プロデュースのオリジナル・ディミックス&リマスター・シリーズ第2弾” とある。
 更に読み進めると、“現存する最良の状態のマスターを2024年最新のAIを用いてディミックス処理。ヴォーカル、ギター、ベース、ドラムといった複数のトラックに分離された素材を圧倒的なバランスのステレオ・サウンドに再構築。さらに入念なリマスター作業によって音の細部にわたり極限まで磨きあげるという、これら一連の作業の全てをXAVELレーベル監修のもとに行った完全オリジナルのスタークラブ・ライヴ” とのこと。
 Xavel レーベルはその過剰なまでの自画自賛インフォで有名なのでいつも眉に唾を付けて商品説明を読むようにしているのだが、“各パートのセパレート感、定位感はこれまでに出回っていた他のディミックス音源とは別次元の驚異的なもので、その迫力には誰もが息をのむ。さながらこれまでは会場内の最後方席から鑑賞していたライヴを、今作では最前列フロントロウで楽しむことが出来るような、そのぐらいの差がある” とまで言い切られては、これはもう自分の耳で確かめてみるしかない。
 ただ、Xavelのこのシリーズは第1弾「聖域番外地」こそ定価2,800円と許容範囲内の値付けだったが、この第2弾「原色のスタークラブ」は2枚組ながら4,000円、更に第3弾「ハリウッドランド・フォーエヴァー」(3枚組)に至っては8,200円と常軌を逸した値付けがなされているので、音を聴かずに買ってハズレだった場合のリスクを考えると正規盤を買うのはためらわれる。紙ジャケとか帯とかいった意味のないことをやらんでええからその分値段を下げればいいのに。私は他の業者が出しているコピー盤を1,600円で買った。音さえ同じならプラケース入りのCD-R盤で十分だ。
 で、肝心のディミックス&リマスター・サウンドに関して言うと、“最前列” を期待して聴くと肩透かしを食う。単体で聴いてもそれほど凄い音には思えないのだ。しかし2台のCDプレイヤーを使って同じトラックを上記のムーンチャイルドイルド盤と交互に聴き比べてみると、確かに距離感は近くなっていて、音質向上は間違いない。高音域を強調し過ぎなのかシンバル音がひしゃげて聞こえるところもあるが、全体的に言えばこれまで聴いたことのあるスタークラブ・ライヴの音としては間違いなく最上位と言えるだろう。まぁマスターテープの音自体がプアーなので、現在のテクノロジーをもってしてもこれくらいが限界なのだろうし、これを超えるには、映画「ゲット・バック」で名を馳せたピーター・ジャクソン監督の AI技術を駆使して “スタークラブ・ライヴ” をオフィシャル・リリースしてもらうしかないと思うのだが、さすがにそれは権利関係で無理かな...(>_<) 
 私はビートルズの火の出るようなロックンロールを楽しむなら「BBC ライヴ」かこの「スタークラブ・ライヴ」が一番と信じている人間なので、音質が向上したこの「原色のスタークラブ」は買って正解だった。音が良くなったことも喜ばしいが、最近聴いてなかったスタークラブのライヴを久々に聴いて初期ビートルズ熱が再燃(←しょっちゅう再燃してるけど...笑)したのが何よりの収穫だ。 ]]>
The Beatles 2024-11-03T23:00:02+09:00 https://blog.goo.ne.jp/shiotch7/e/7b7cdb9ef00ca5f30c1fbc94b0ba9b76
リベンジ完遂でスカッとするハードボイルド映画特集 https://blog.goo.ne.jp/shiotch7/e/45998caec7e71af941806dffd3ff5528?fm=rss <![CDATA[  私はアクション映画が大好きで、中でも「ジョン・ウィック」や「キル・ビル」のようなリベンジ(復讐)ものには目がない。基本的にシンプル極まりないストーリーなので難しいことが苦手な私にはピッタリだし(←サスペンス映画で登場人物が覚えられないような複雑なヤツは絶対に無理...)、最後の最後に “倍返し” で悪党がボッコボコにやられて溜飲が下がる展開になっているので、観終わった後の爽快感がハンパないからだ。先日、大好きな「イコライザー」シリーズの最新作「イコライザー3」のブルーレイを買って観てみたところ、これがもうめちゃくちゃ良かったので、同系統のリベンジ・アクション映画の中から特に気に入っているものと併せて特集しようと思う。

①イコライザー3
 デンゼル・ワシントンは大好きな俳優さんで、彼の出ている映画はほとんど観ているが、そんな彼の出演作品の中でも断トツに好きなのがこの「イコライザー」シリーズだ。彼が演じる元CIAの特殊エージェント、ロバート・マッコールがまるで “必殺仕事人” のように敵を瞬殺していく様は痛快そのもので、「1」では敵を皆殺しにするのに19秒かかっていたのが、この「3」では9秒へと“秒殺タイマー”(笑)がパワーアップしているところがいい。特に後半部分でイタリアン・マフィアのカモッラ(←「ジョン・ウィック」にも出てきたな...)一味を壊滅させるところは何度観てもスカッとする。予告編の1:52にチンピラの親指の付け根をつかむシーンがあるが、「今圧迫しているのは正中神経だ。強さを10段階で言うならこれは2だ。(力を込めて)これは3。《チンピラの悲鳴www》4はオススメしない。4までいくとクソを漏らす。嫌だよな。私も嫌だしアイツらも... 仲間に店を出るように言え。」のくだりを大塚“ライカ―”明夫さんの吹き替えで聞けるのが最高だ。
『イコライザー THE FINAL』予告


②パニッシャー
 これはマーベル・コミックに出てくる架空のヒーローを実写化した映画で、世間の評価はイマイチなようだが私はめっちゃ好き。主役のトーマス・ジェーンも頑張っているが、何と言っても敵役を演じるジョン・トラボルタの “悪のボスのくせにクソ雑魚” っぽい怪演が絶妙にハマっているのが良い。忠実な部下と愛する妻が自分を裏切ったと思い込まされて無実の2人を自分の手で殺すように仕向けられたと知らされて愕然とし、さらに最後は車で引きずられて火ダルマにされるというこれ以上ないえげつないエンディングなのだが、駐車場で車が爆発炎上するシーンで、殺された息子が着ていたTシャツに描かれていたドクロが浮かび上がるというオチに唸ってしまった。
The Punisher (2004) Ending- HD


③リベンジ・リスト
 上記の「パニッシャー」では悪役を演じていたトラボルタだが、この映画では強盗に妻を殺された元特殊部隊工作員のオッサンを好演。カタギの生活を送っていたプロの殺し屋が復讐のためにアチラの世界に戻っていくという設定は「ジョン・ウィック」を想わせるが、キレッキレのキアヌ・リーブスに比べるとトラボルタのアクションがモッサリしていて物足りない。しかしそれを補って余りあるのがクリストファー・メローニの存在で、頼りになる相棒として圧倒的な存在感があり、「ヒート」や「スコア」のロバート・デ・ニーロみたいな渋さを感じさせてくれるところが気に入っている。ただ、最後の2人で病院を抜け出すシーンにコメディー色が強く出過ぎてしまった感があるのが玉にキズだ。
ジョン・トラヴォルタが躍動する!映画『リベンジ・リスト』予告編


④ライリー・ノース
 この手のリベンジものは元CIAとか特殊工作員とか海兵隊員の男性が主人公というのが定番なのだが、この「ライリー・ノース」は女性、しかも何の特殊訓練も受けていないごく普通の主婦が家族の敵討ちをするという非常に珍しい設定だ。監督があの超名作「96時間」のピエール・モレルというだけあってシナリオもよくできているし、ママ友→汚職判事→ギャング...と復讐のストーリー展開がサクサク進んでいくところも◎。作品の知名度はそれほど高くはないが、観終わった後にスカッとした気分を味わいたい人にお勧めのハードボイルド・リベンジ・アクション映画だ。
映画『ライリー・ノース 復讐の女神』予告編
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TV, 映画, サントラ etc 2024-10-27T22:42:00+09:00 https://blog.goo.ne.jp/shiotch7/e/45998caec7e71af941806dffd3ff5528