被疑者・被告人の人権と,被害者の人権とは,決して対立しない。
ともかくも現在は弁護士であり,創価大学法科大学院で刑事法を教えている矢部善朗氏ですら,未だ,
「真犯人を適正に処罰すべし」という理想は、つまるところ、その事件の被害者および将来的に発生するかも知れない被害者の人権保障の問題なんですけど、パブ弁!さんの発想の中には、そういう観点が完全に欠落しているように思われます。
つまり、人権保障対人権保障の緊張関係が存在するということなんですけど、パブ弁!さんは刑事政策というものを考えたことがないのでしょうか?
なんてことを述べているのを見て暗澹たる思いに駆られます。
被疑者・被告人の手続的権利を保障することは,被害者の人権を損なうことはないし,犯罪発生率を高めることもない。被疑者・被告人の人権と,被害者の人権とは,決して対立しない。これは,多くの弁護士の共通理解と言えるでしょう。被疑者・被告人の手続的権利を十分に保障することなく引き出された「自白調書」に頼らなければ有罪判決を下せないような案件は,もともと冤罪である蓋然性が高いのであって,捜査機関はともかく,被害者またはその遺族としては,「真犯人がわからないのであれば,誰かがいわば生け贄となって,代わりに処罰されて欲しい」とまでは思っていないでしょう(仮にそのように考える遺族がいたとしても,その期待は「人権」として法的保護に値するものではないでしょう。)。客観証拠がなくとも,怪しげな人間を捜してしょっぴいてきて,「真犯人であろうとなかろうと自白せざるを得なくなる」方法を用いて被疑者を「自白」させて,被疑者を起訴して,無罪判決嫌いの刑事裁判官に有罪判決を下してもらっていっちょ上がり,という流れの中で,一体いかなる「被害者の人権」が擁護されたというのでしょうか。
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