零からの憲法草案(3)
人権については、何回かに分けて考えていきましょう。
日本国憲法において「国民の権利」として規定されているものの中には、主権者たる国民の一員としての権利と、人間であることにより当然に認められるべき権利とが混在しています。ゼロベースで憲法草案を起草するのであれば、国籍等によらずに全ての人が享有できる権利(基本的人権)と主権者たる国民の一員としての権利(国民の権利)とを分けて規定した方が良いように思います。
そうすると、何を基本的人権とし、何を国民の権利とするのかの切り分けをする必要があります。人格権を基本的人権とするべきことはほぼ異論はないと思います。公務就任権については色々な考え方があるとは思いますが、公務員は全て主権者たる国民の委託を受けて国民のために権力を行使するに過ぎない存在だと考えれば、公務就任権を主権者たる国民の一員としての権利と位置づける必要はないと言えます。特定の公務を委託するのにもっとも有能な人材がたまたま日本国籍を有していない場合に、これを排除するのは合理的ではないと言えます。もっとも、外国で公務に従事している人が同時に日本で公務に従事するとなると利益相反となる危険がありますので、そのような方については例外的に公務に就任する資格がないことにするのが適切ではないかと思います。
第2編 基本的人権
(基本的人権の享有主体)
第13条 この編に定める権利(以下、「基本的人権」という。)は、国籍の有無にかかわらず、全ての人がこれを享有する。
(基本的人権の限界)
第14条 基本的人権は、この憲法に特に定めがある場合の他、他の人の基本的人権との調整のためやむを得ない場合に限り、一定の制約を受ける。
(個人としての尊重)
第15条 全ての人は、個人として尊重され、その人格を貶められない。
2 全ての自然人は、その自律的な判断に基づき、その幸福を追求する権利を有する。
3 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。また、犯罪による処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。
(法の下の平等)
第16条 全ての人は、法の下に平等であって、人種、民族、信条、性別、性的指向、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
2 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
3 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴わない。
(公務就任権)
第17条 全ての成人は、その能力に応じて公務員に就任し、または選挙により公務員に選任される資格を有する。ただし、外国(国際機関を含まない。)において公務に従事しまたは従事していた者についてはこの限りではない。
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