外国会社の日本における代表者──あるいはTwitter社に要求すべきもの
会社法817条1項は、以下のとおり定めています。
外国会社は、日本において取引を継続してしようとするときは、日本における代表者を定めなければならない。この場合において、その日本における代表者のうち一人以上は、日本に住所を有する者でなければならない。
外国会社が日本における代表者を定めているとどのような良いことがあるのでしょうか。それは、同条2項に定められています。
2 外国会社の日本における代表者は、当該外国会社の日本における業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。
つまり、外国会社の日本における代表者は、当該外国会社の日本における業務に関する一切の裁判上の権限を有していますので、当該外国会社に対し訴訟を提起し、または仮処分の申立てをしようとする場合、訴状ないし申立書の送達先を、日本国内にある、日本における代表者の住所地に指定すれば足りるのです(民事訴訟法37条により準用される102条1項)。
つまり、当該外国会社が日本に住所を有する者を日本における代表者と定めていれば、当該外国会社の日本における業務に関して当該外国会社に対して権利を取得した者がこれを行使する際に、訴状等を国外に送達する際の種々の負担から解放されるわけです。訴状等を送達先の国の言語に翻訳しなくともよいという経済的な負担や、訴状等を領事送達等しなくてもよいという時間的な負担から解放されるわけです。
では、どのような取引が「日本における継続的な取引」となるでしょうか。 海外にある本社から直接日本国内にいる顧客に商品を送付する取引がこれに当たることは分かりやすい話です。また、海外にあるサーバから直接日本国内にいる顧客にデジタルデータ(コンテンツ)を送信する取引がこれに当たることも、それほど違和感はないと思います(例えば、江頭憲治郎=中村直人編著「論点体系 会社法6」69頁(金子圭子=石川祐)は「日本に営業所を設けず、専ら電子的な手法を通じた取引のみを行っている場合であっても、日本の顧客を対象に集団的・継続的に行われる場合には、継続取引に該当し得ると解されるべきである」としています。)。
そうであるならば、海外にあるサーバから日本国内にいる顧客に対してSNSサービスを提供することも、日本における継続的な取引ということができます。無償のSNSであっても、個人情報や著作物の利用権限等と引き替えに投稿資格を付与しているわけですから、金銭授受を介しないというだけで、取引を行っていることに変わりはないからです。実際、Twitter社等外国のSNSサービス業者に対して発信者情報開示仮処分を申し立てるときの国際裁判管轄の根拠条文は、民事訴訟法第3条の3第5号
(日本において事業を行う者(日本において取引を継続してする外国会社(会社法 (平成十七年法律第八十六号)第二条第二号 に規定する外国会社をいう。)を含む。)に対する訴え 当該訴えがその者の日本における業務に関するものであるとき。 )
を援用しています。
会社法818条1項は、次のように定めます。
外国会社は、外国会社の登記をするまでは、日本において取引を継続してすることができない。
外国会社が、外国会社の登記をしていれば、日本における代表者の氏名及び住所は必要的登記事項ですので(会社法933条2項2号)、その日本における取引によって当該外国会社に権利を取得した者は、その登記を見ることによって、その日本における代表者の氏名及び住所を知ることができるわけです。
問題は、日本で大量の顧客を抱えている外国のコンテンツ事業者やSNSサービス提供者の多くが、外国会社の登記をせず、日本における代表者を定めていないことです。その多くが、日本に子会社を設立していますから、日本国内で取引をする気は満々で、実際、国内企業を凌駕するほどの取引を日本国在住者との間にしているのですが、一向に外国会社の登記をしないのです。そして、日本国内の子会社を送達先として訴状等を送達しようとすると、法人格が異なるからという理由で、訴状等の受領を拒むのです。
このため、外国会社の日本における取引に関して損害を被った日本国在住者が当該外国会社に損害賠償請求を訴訟を行使しようとしたり、外国会社が運営するSNSサービス等に関して発信者情報開示仮処分を申し立てようとすると、本来必要がないはずの時間やコストがかかってしまい、泣き寝入りしやすくなってしまいます。
こんな不正義が罷り通り、日本在住者が不当に扱われている状態がなぜ放置されているのか、私は不思議でなりません。
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