Scared
池田信夫さんは、「弁護士が多いほど競争によってサービスの質も上がる。」と述べています。
いかにも俗流経済学者が言いそうな話ですが、実は実証された話ではありません。また、論理的にいっても、「弁護士の仕事は依頼者との情報格差が大きいため、依頼者が仕事を評価することは困難」である以上、サービスの質を高めることは競争に勝ち残るためのポイントとはならないからです。
そして、競争を必要以上に厳しくすることで、その職業に就くことのコストパフォーマンスを悪化させると、新規にその分野に参入する人材の質は通常悪化します。特に、その分野に参入するためには相当長期にわたる職業訓練を受けなければならない職種では、この傾向は高まります。もちろん、「ローリスク・ミドルリターン」から「ハイリスク・ハイリターン」へ転換するにとどまるのであれば、コストパフォーマンスの質が変化するにとどまりますから、山っ気のある秀才が集まってくる可能性があります。ただ、懲罰的損害賠償制度のように一攫千金がもらえる制度を導入すれば「ハイリスク・ハイリターン」への転換を果たすことができると言いうるものの、過払い金返還請求専業事務所による荒稼ぎすら許すことができない我が国の国民性のもとで、製造物責任や不当解雇等に関して懲罰的損害賠償制度を導入できるのだろうかというと、かなり悲観的です。
昨今の法曹養成制度改革は、法科大学院制度を導入し、さらに修習貸与金を導入することにより、法曹資格を取得するまでのコストを増大させる一方、新規資格取得者の大幅増員により新規資格取得者の賃金水準を引き下げるということで、「ハイリスク・ローリターン」への転換を目指してきました。それがむしろサービスの質を低下させる危険を伴っていることを見据えることができない俗流経済学というのは、百害あって一理のない学問分野だなあとしみじみと考えてしまいます。
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学者は、専任講師まで行けば職の安定性が期待できますし、教授・准教授は十分に高給です。その意味で、専任講師にたどり着くまでのリスクは高いものの、そこまでたどり着いた場合のリターンは大きいといえます。
スポーツ選手についていえば、ハイリターンが期待できるプロ市場があるか否かで、レベルが圧倒的に違ってきます(例えば、サッカーにおいて「ワールドカップに出場できるのが当たり前」になったのは、Jリーグが始まってしばらくしてからのことです。)。
Rédigé par: 小倉秀夫 | 19/03/2010 19:42
学者になるために、大学院博士課程に進学するオプションは、「ハイリスク、ローリターン」そのものですが、研究者の人材の質って低いですか?
スポーツ選手になるために、勉強を放り出して部活や社会人チームに(以下同文)
結局、「ハイリスク、ローリターン」が悪いのではなく、市場競争が人材を選別できるかどうかが重要なのだと思います。
で、私(一医師)の提案ですが、市場競争に任せるんではなくて、資格更新制度を設けるべきだと思います。
Rédigé par: 井上 晃宏 | 19/03/2010 18:32