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Weekend In 心は L.A.

音楽と楽器、そして海外に

 

ルパン三世 Love Theme(1984) Coverしてみた<サウンドメイキング編(上)>

今回のカバーサウンドは、どんな風に作られたのか。
カバーを聞きながらお読み下さい。



[1]アレンジ

ソロは当然2人で分担するつもりが、ソロ部分が7小節しかない。原曲がTV放映用なのでしょうがないのですが、このままでは余りに物足りない。コード進行を追加アレンジしたものを送ると、すぐに重ねてアイデアが提案され18小節のソロアレンジが完成。こういうアレンジが2人でサッと出来るところが嬉しい。原曲のコード進行は完全にジャズなので、この18小節のコード進行は、大野雄二テイストに馴染んだものになったと思います、自画自賛ですが。

フルートに受け持ってもらったソロパート18小節の譜面をあげておきます。
原曲のソロは、最初の4小節と最後の3小節の7小節のみです。


Arranged by Akissh

Misaさんの18小節のソロは素晴らしいですね。自分のアレンジを自分以外の人に弾きこなしてもらうのは、本当に嬉しいです。人様のソロを解説するのは野暮でしょうが、少々。

4→5小節目の上昇フレーズはタンギングというのでしょうか、フルート独特の奏法がマッチしていて、5小節目以降のゆったりしたフレーズになだれ込む展開がとてもいい。

12→13→14→15小節目、Cm9から始まって、Bbキーと同主調 Bbmキーを行ったり来たりする部分。特に12小節目3拍目から14小節目2拍までの、Ⅱm9→Ⅱm7(b5)のフレーズに惚れました。
コピーすると、小節線またがりの同じ譜割のフレーズを、メジャーサブドミナントとマイナーサブドミナントで対象的に並べている。

「今日は、このフレーズだけ覚えて帰れば授業料の元はとれるよ。このコード進行が出てきたら、必ずこのフレーズを弾けるようにしておきましょう。」と言いたい(どこで?)。
もちろんこのフレーズ、私がどこかで必ず使わせてもらいます。

[2]サウンドメイク

続いて、DAW上でのサウンド処理の一部をご紹介。DAWはCakeWalk by BandLabを使用。
所々専門用語が出てくるので、興味があれば「DAW DTM 〇〇〇」で調べて下さい。

1)生楽器のトラック内音量バランス
ボーカルや管楽器などの生楽器は音量のダイナミクスが非常に幅広く、録音したままトラックに置いても上手くいきません。このため、音量を適当な幅に圧縮する必要があります。方法は、コンプレッサーをかけるかオートメーション処理の2通り。普通はコンプ処理が多いのですが、今回のフルートはオートメーション処理としました。
言葉では何を言っているのかわからないでしょうから、画像で見てみます。

オートメーション

生楽器を録音したままの状態をAudacityで見たものです。(これはボーカルですが、フルートでも同じことです。)このままトラックに貼り付けても、前半の弱音部分は、全体のサウンドに隠れてしまうし、そこを聞こえるようにこのトラックのボリュームをあげると後半のフォルテの部分では歪んでしまいます。このためトラック音量を自動で動かしてあげる必要があります。

オートメーション2

たとえ話として、赤線がTVのボリューム、青波形がTV番組の音量と思って下さい。(下チャンネルも同じ赤線があるとして。)番組の音声が小さい時はボリュームを上げて、番組の音声が大きくなったらボリュームを下げる。TVなら普通にやっていることです。DAW上でもこうなるように、青波形を見ながら小さいところは大きく、大きいところは小さくなるように自分で赤線をひきます。この赤線引きをオートメーション処理と呼び、エンジニアの腕の見せ所です。世の中のボーカルは100%この操作がしてあります。(図はAudacityでそれ風に作ったもので、実際のDAWのオートメーション画面ではありません。)

赤線を引くこと自体は難しくありませんが、理想的な赤線をひくのはかなり難しい。
ボーカルでシャウトした部分と、ささやく部分が同じ音量というのはあり得ない訳です。
サックスでブロウした部分が、弱音部分の10000倍では歪んでしまいますが、5倍ではいくら吹いても大きな音が出ない非現実的なサックスに聞こえます。また、バッキングが小さなところは弱音でも十分に聞こえるので、青波形だけをみて赤線をひいてもうまくない。

ここまでは誰でもわかることですが、さらに先があります。ボーカルや管楽器は息継ぎをしてその息で一連のフレーズを吹く歌うという繰り替えし動作です。この一息のフレーズは、人間だと同じ音量又は(デ)クレッシェンドという滑らかな音量変化になります。一息の中で急に大きくしたり小さくしたりするのは人間には不可能なので。この一息のフレーズ毎に、滑らかな赤線で音量変化を付けてあげると、自然に、場合によっては現実の50%増しのダイナミックな演奏に聞こえる訳です。

このためには、現実のサックスやボーカルがどこで息継ぎをし、フォルテのアクセントを付けているのか、楽器は瞬間的にどの程度の音量幅で鳴るのかを知らないと赤線がひけません。ボーカルは自分で歌ってみれば、どこで息継ぎをしているか大体わかりますが、フルートの演奏を目前で注意深く見たことがないので、息継ぎの場所がよくわからない部分がある。循環呼吸法か?ここが今回苦労した点でした。まさか、ソロをコピーした譜面を送って、ブレスの位置を記入して下さいという訳にもいかないし(笑)。

オートメーション3

解説ついでにもう1つ。人間は、ボーカルのフォルテ部分を歌う直前に、必ず息を大きく吸います(管楽器も)。この音がブレスノイズで、上の赤丸部分です。ロックならバックの音でこんなノイズは聞こえませんが、バラードや、バックが一瞬静まってボーカルが声を張り上げる部分(大抵の場合、曲の一番の聞かせどころ。)では、ブレスノイズが耳障りになってしまう。ということで、ボーカルトラックはブレスノイズを消す作業が必須です。基本は手動、つまり上の波形を見ながら1つづつ消していく。1曲数分のボーカル全編に渡っての作業なので、かなり根気が必要です。

ブレスノイズ未処理のボーカルを聞くと(理由はわからなくても)ポンと置いたマイクで録りっぱなしの素人っぽい録音に聞こえたりします。素人なんだからそれでよくない?と思っても、今は処理済サウンドしか世の中にないので、無意識に違和感を感じてしまうのです。オーディオストックのボーカル曲は、どの曲も完璧に処理してありましたから。

ただし、ブレスノイズがまったくないと人工的に聞こえてしまうので、ジャズバラードのような一部の生に近いサウンドでは、不自然になったりすることもあります。曲調とサウンドによってどこまで処理するかは、まさにエンジニアの腕の見せ所です。

今回のフルートも極小のブレスノイズはありましたが、(他の曲のボーカルに比べて)非常に小さくNO処理としました。ボーカルとフルートでは息継ぎの仕方が異なるのでしょうね。

長くなってしまいました。次回に続きます。

こんなことのに興味を持つ人はほとんどいないと思うので、いつもはサッと流すのですが、どうやって作ったの?との問いに1回位書いてみるのもいいかなと‥‥‥

ルパン三世 Love Theme(1984) Coverしてみた
ルパン三世 Love Theme(1984) Coverしてみた<サウンドメイキング編(下)>
Comments
 音量調整
おはようございます。
音量調整は、オートメーション処理だったのですね。
技術と経験の要るところですね。
私はよくわからないので、いつもバッサリコンプかけちゃってますが(^^;
それにしても、フレージング処理までしていただいていたとは!
 Re: 音量調整
おはようございます、yellowmagicwomanさん。
今、マラソンが終わりましたが、大迫、中村、服部選手、素晴らしかった。
3人とも大学1年の時からみていたので。

サウンドメイキングは、素材をいかに最大限生かすか、ということなので、時々女性のお化粧に例えて話します。
そういう意味で「カリスマ美容師」は最大限の賛辞でしょうね。
今は試行錯誤の真っ最中で「町の美容師」位だと思っています(笑)。
 サウンド処理
コンプの方がポピュラーだと思いますが、オートメーション処理というのは初めて知りました。フレーズ毎にひとつひとつ処理していくというのは大変ですね。

僕はオーデイオ・インターフェイスに附属しているコンプを薄く掛け取りして録音しています。最後の仕上げにLogicに入っているリミッターを使って、全体の音圧を上げる処理をやっています。

音圧は上げた方が今風になるし、目立つ音にはなってくれますが、やりすぎると品が無くなるというか、自然な感じが無くなるので、案配が難しい所ですね。

ちょうど録音作業が終わってミックスをやっている所です。盆休み中にアップできると思います。
 Re: サウンド処理
Logicにもオートメーションはあるので、今度チャレンジしてみて下さい。
今回書いた内容は、30年前はプロスタジオでの作業でしたが、令和の今、
DTM3年目の大学生でも、やっている人がいるものとなっていますね。
新曲、期待しています。
 アレンジやサウンドメイク
自分の場合、アドリブをいれたい時は、ワンコーラスを丸々足したり、エンディングの循環コードを繰り返すくらいなので、AKISSHさんのコード進行をアレンジするというは、いかにも編曲という感じですごいです。

ブレスノイズの対応も、自分は旧式というか、気になるところが無音になるように録音ボタンを瞬間的に押して消していて、時にはボーカルまで消してしまって、丸々歌入れし直す羽目になります・・・。
(まあ、自分のボーカルの場合、ノイズ以前の問題が大きいですし)

オートメーション機能も気づかず、コンプやリミッターで音量を平板化するくらいに思っていました。
 Re: アレンジやサウンドメイク
こんばんわ、ギターマジシャンさん。
上に書きましたが、30年前のスタジオ仕事が普通のパソコンで出来るような時代が来たとは本当に凄いことです。

中学1年の時に、スピーカーの前にテープレコーダーのマイクを置いて録音したことを思い出しました。
確かビートルズのアルバム2枚くらいはこれでカセット化したような(笑)。
ジョンのギターにかぶさって「ご飯よ~」が入っていたり(大笑)。

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